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GH6に付けたLEICA DG SUMMILUX 9mm/F1.7 ASPH.

LEICA DG SUMMILUX 9mm/F1.7 ASPH.はマイクロフォーサーズの超広角単焦点レンズである。私ならずともマイクロフォーサーズユーザーの中には、明るい超広角レンズが欲しいと感じていた方は多いと思うのだが、レンズラインナップが充実しているマイクロフォーサーズにおいては、明るい純正の超広角単焦点レンズが存在しなかった。今振り返るとこれは非常に不思議なことである。

そもそも純正で一桁台の焦点距離の超広角レンズを使おうとすると、パナソニック純正レンズの場合は、

  • LEICA DG VARIO-ELMARIT 8-18mm/F2.8-4.0 ASPH. H-E08018
  • LUMIX G VARIO 7-14mm/F4.0 ASPH. H-F007014

の2本しか選択肢が無かった。

他にもLUMIX G FISHEYE 8mm/F3.5 H-F008があるが、こちらは魚眼レンズのため使い所を選ぶ必要があった。F1.7という大口径単焦点レンズでオートフォーカスが使えるのは、超広角レンズではこの製品が初である。

筆者自身、このレンズが発表になった直後に販売店への予約を入れた。GH6人気と相まって「品不足になるのでは?」という不安から予約を急いだわけだが、そもそもこのレンズに期待するものが大きいところが私を予約へと駆り立てたのである。今回幸いにして、販売に先駆けてこのレンズを試させていただいたわけであるが、結論を先に述べると、軽く小さくそして値段が手頃でよく映ることから、「予約して間違いなかった」と思わせるレンズだった。

レンズ概要

毎度前置きが長くなってしまったのだが、このレンズの概要を記載すると以下の通りである。

  • レンズ構成:9群12枚(非球面レンズ 2枚、EDレンズ 2枚、UHRレンズ 1枚)
  • 開放絞り:F1.7
  • 最小絞り値:F16
  • 絞り形式:7枚羽根 円形虹彩絞り
  • 撮影可能範囲:0.095m-∞(撮像面から)
  • 最大撮影倍率:0.25倍(35mm判換算:0.50倍)
  • フィルター径:Φ55mm
  • 最大径×長さ:Φ60.8mm×約52.0mm
  • 質量:約130g(レンズフード、レンズキャップ、レンズリアキャップを含まず)

加えて同レンズは防塵防滴仕様となっている(メーカー仕様表では「当社製防塵・防滴対応カメラボディに装着時。防塵・防滴に配慮した構造になっていますが、ほこりや水滴の侵入を完全に防ぐものではありません」との記載があるが、ある程度過酷な環境での使用にも耐えられるものと筆者は期待している)。

動画作例

まずはいつものように作例を撮影したのでそちらをご覧頂きたい。

作例ではかなり低照度下での撮影やハイスピード撮影なども含めて行った。誰しも考えると思うのだが、F1.7という明るさの一番のメリットは夜間撮影だ。F1.7とISO4000の組み合わせは、街灯がちょっとあるような状況であれば大概は綺麗に映像が撮れる。

また、後述するがLEICA DG SUMMILUX 9mm/F1.7 ASPH.は、小型ジンバルとの組み合わせが抜群のレンズである。多くのカットでジンバルを使用して撮影を行ったのだが、一日中撮影していても全く苦にならない重量だった。

またブリージングも少なくフィルター装着が可能なため、動画として使い勝手が良い1本となっている。

ファーストインプレッション

このレンズを手にした印象であるが、「軽い!」というのが正直な印象。仕様表のある通り130gなので当たり前の話なのだが、モックアップかと勘違いするほど軽いのだ。

外装はプラスチックであるが見た目も悪くなく、花形フードを取り付けた状態もなかなかかっこいい佇まいである。なにより「9」と書かれたオレンジのライカフォントが写欲をそそる。

驚くほど寄れる

最短撮影距離はセンサー面から9.5cmと記載があるのだが、これがどのくらい寄れるか分かりやすく書くと、フードの先端部までピントが合うというもの。

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上の写真は被写体をフードの先端に当てて撮ったものだが、この状態でも合焦する。また最短撮影距離での最大撮影倍率は0.25倍となっており、これは35mm判換算値でいうと0.5倍となり、被写体に寄った場合ハーフマクロとして使えるレンズである。

とにかく注意して頂きたいのは、うっかり被写体をレンズの前玉にヒットさせてしまう可能性がある点だ。前玉を守るためプロテクトフィルターは近接撮影では使用したほうが安心だと思う。

背景を取り込んだ形の近接撮影はその場の雰囲気を表現しやすく、LEICA DG SUMMILUX 9mm/F1.7 ASPH.の魅力の一つである。これは一般のマクロレンズでは表現しにくいものだといえる。

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ボケ

9mmと聞くとボケ表現とは無縁のレンズというイメージがある。ところが、このレンズの場合はとにかく寄れるため、被写体に近づいた場合の背景ボケをいかした映像表現が可能となる。

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上記は作例の冒頭のカットであるが、そのボケ量から一般的なマイクロフォーサーズの広角レンズのイメージとはかなり違う印象が撮れたと思う。

ゴースト

画角内に強い光源が入光した場合のゴースト発生についてだが、これはある程度発生すると考えていたほうが良い。夜間の撮影でプロテクトフィルターを使わない状態で撮影を行ったが、それなりにゴーストは発生した印象である。とはいえこのゴーストは多くの場合は気にならないことが多く、まずまずの逆光耐性だと感じた。

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なお、斜めから光が入光するとコントラストが大きく低下する場合があるので、逆光撮影を行う場合はレンズフードを付けておいた方が良いという印象だ。

歪曲

広角レンズでは歪曲収差が気になるケースがあるが、このレンズは電子補正を使用することで歪曲を抑え込む仕様となっている。今まで個人のブログでも述べてきた通り、私は電子補正技術を適用する前提でレンズがよりコンパクトになるのであれば、それを良しとする考えの人間である。電子化が進んだミラーレス一眼全盛の時代において、電子補正をしない純正レンズの方が珍しくなってきたと思うし、この超軽量でコンパクトなレンズは電子補正のおかげで実現されたものなのだろう。

参考までに、スチルのRAWをレンズプロファイルを適用しない状態と、プロファイルを適用した状態の2つを比べてみたのが下の写真である。なお、スチルのJPG記録や動画記録の場合は強制的にプロファイルによる補正が適用された状態となる。

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レンズプロファイル非適用(左)、レンズプロファイル適用(右)
※画像をクリックして拡大

これを見る限りは樽歪が本来の状態であり、レンズプロファイルが適用された状態では綺麗に歪曲が補正されていることが分かる。逆にいえば樽歪を許容できるのであれば9mmよりも広い画角で撮影することが可能なレンズである。

おそらく7月5日に予定されているGH6の動画RAW記録のファームウェアアップデートでは、この補正前のデータを活かした撮影もできるものと期待をしている。

ジンバルとの相性性

超広角といえば気になるのはジンバルとの相性性である。超広角での移動撮影はそのパースが故に移動感がデフォルメされるためで、とにかく簡単に映える映像が撮れる。例によってGH6に9mmF1.7のレンズをつけて超小型のZhiyun CRANE M3に搭載してみたが、ほぼ問題なく運用できることを確認した。

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「ほぼ問題なく」というエクスキューズは、パン軸のバランスが完璧には取れない点、アイカップを外さないと斜め上にカメラを向けた際にアームに干渉する点の2点である。

前者は実際には問題になるようなことはなく、後者に関してはGH6ではアイカップを外すことで対応可能であり、いとも簡単に超軽量な超広角撮影システムが実現できる。

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手持ちでビデオブログ撮影ももちろん可能であるが、長時間片手で運用できるこの形態はクオリティの高い映像を気軽に実現できるシステムとしてお勧めである。

その他のカメラとの組み合わせ

筆者がスチル撮影用にカバンに忍ばせることが多いのがLUMIX G100である。このカメラのキットレンズは12-32mmと超小型のものであり、それはそれでなかなか使い勝手がよいのであるが、問題は4K動画の撮影時である。G100のクロップファクタはGH6などと比べるとかなり大きく、電子手振れ補正時のクロップファクタは1.4倍近くになる。つまり12mmのレンズを使用した場合は12x2x1.4≒34mmとなる。これはかなり標準域の画角に近い数値である。そこでG100にぴったりなのが、LEICA DG SUMMILUX 9mm/F1.7 ASPH.との組み合わせというわけである。

9mmのレンズを使った場合は9x2x1.4≒25mmとなる。つまり立派な広角レンズとして使える画角となる。12mmのレンズと9mmのレンズは画角的には35m判換算で10mm近い差となってあらわれるため、この差はあまりに大きい。

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なお、ジンバル撮影などで電子手振れ補正が不要な場合は、1.26倍のクロップファクタとなり9x2x1.26≒23mmとなる。9mmという超コンパクトなレンズの登場により、筆者所有のLUMIX G100の出番が増えるだろう。

まとめ

とにかく軽く、小さく、そして値段が安い。冒頭でも述べたように、私はマイクロフォーサーズを使うにあたって明るい超広角単焦点が欲しいと思っていたところ、タイムリーに発表されたのがLEICA DG SUMMILUX 9mm/F1.7 ASPH.というわけである。

筆者はこのレンズの登場を大歓迎している。このレンズを編集部に返却した後にもいくつか撮影依頼の機会があったのだが、「LEICA DG SUMMILUX 9mm/F1.7 ASPH.があれば良かったのに」と思えることは多かった。一度その明るさとコンパクトさに触れてしまうと無くてはならない存在となってしまったのだ。

先に述べた通り、発表日当日に即座に予約した筆者であるが、この記事を書きながらも、「一日でも早くこのレンズを使いたい」と思っている。マイクロフォーサーズでこれだけ発売を心待ちにするレンズも久々であり、今後同システムを運用する際には欠かせない一本となるだろう。

GH6を中心に、動画機としてのマイクロフォーサーズシステムが再び脚光を浴びているが、是非導入を検討してみてはいかがだろうか。

SUMIZOON|プロフィール

2011年よりサラリーマンの傍ら風景、人物、MV、レビュー動画等ジャンルを問わず映像制作を行う。機材メーカーへの映像提供、レビュー執筆等。現在YouTube「STUDIO SUMIZOON」チャンネル登録者は1万人以上。Facebookグループ「一眼動画部」主宰「とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ」更新中。

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。