BMPCC6Kシリーズに新機種G2が登場
「Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K」(以下:BMPCC4K)の兄貴分として人気の「Blackmagic Pocket Cinema Camera 6K」(以下:BMPCC6K)がこの度、「Blackmagic Pocket Cinema Camera 6K G2」(以下:BMPCC6KG2)という名前でリニューアルされることとなった。リニューアルといっても、これまでのBMPCC6Kと今回のBMPCC6KG2ではセンサーやマウントは変更されておらず、収録できる画に関して基本的に変化はない。ボディ形状やバッテリーの種類、モニターの輝度などの使い勝手に関わる部分が、2021年に発売された「Blackmagic Pocket Cinema Camera 6K Pro」(以下:BMPCC6KPro)と共通になったというものだ。
BMPCC6KG2はBMPCC6Kから何が変わった?
BMPCC6KからBMPCC6KG2になって変更された部分をまとめると、以下のようになる。
- バッテリーがLP-E6系からNP-F570系のものに変更
- 画面が高輝度化(1500nit)
- 画面に上下のチルト機構が追加
- 別売りのEVFを装着可能に
- miniXLR端子が2つに
- BMPCC6KProと共通の「Blackmagic Pocket Camera Battery Pro Grip」が使用可能に
- 重量が900g(BMPCC6K)→1200g(BMPCC6KG2)に
使い勝手がよくなる変更ばかりだが、重量が少し重くなることには注意しておきたい。しかし、バッテリー容量が増えたり、モニターが高輝度化した分、外部バッテリーや外部モニターをつけなくても運用できる場面は増える場合もあり、システム全体の重量で考えると逆にコンパクトになるという考え方もできる。
またBMPCC4KやBMPCC6Kで使われているLP-E6バッテリーは、キヤノンの純正バッテリーなどを使うとカメラ側でバッテリー残量を%で表示することができたが、BMPCC6KG2とBMPCC6KProで使われているNP-F570バッテリーはカメラ側でバッテリー残量を%表示できるものがなく(少なくとも私はまだ見つけられていない)、BMPCC4KやBMPCC6Kから買い増し・買い替えをする方はそのあたりもご注意いただきたい。
BMPCC6KProとBMPCC6KG2の違いとは?
今回の発表により現行のBlackmagic Pocket Cinema CameraシリーズはBMPCC4K、BMPCC6KG2、BMPCC6KProの3機種となった。BMPCC4Kはマイクロフォーサーズマウント&4Kセンサーのモデルで、BMPCC6KG2とBMPCC6KProはEFマウントにSuper35mmの6Kセンサーが搭載されたモデルになる。
BMPCC6KG2とBMPCC6KProの違いはただ一点のみで、内蔵NDフィルターがあるものがBMPCC6KPro、ないものがBMPCC6KG2となっている。その他の点に違いはない。そのためこの2機種の選び方はシンプルで、外付けNDフィルターをできるだけ使わず、ランアンドガン的なスタイルでカメラをコンパクトに運用したい方にはBMPCC6KProを、マットボックスやシネマ用のIRNDフィルターなどを使って運用したい方にはBMPCC6KG2をオススメしたい。
新ファームウェア「Blackmagic Camera 7.9」でカメラ機能が大幅刷新
BMPCC6KG2の登場と同時に新しいファームウェア「Blackmagic Camera 7.9」が公開された。このファームウェアではメニュー画面のデザインや構造が一新され、BMPCC4K、BMPCC6K、BMPCC6KG2、BMPCC6KProに新しいスタビライゼーション機能が追加されることになった。
詳しく説明すると、もともと上記のBMPCC4K/6Kシリーズのカメラにはジャイロセンサー(傾きセンサー)が内蔵されていたが、この傾きのデータをメタデータとして収録ファイルに書き込み、DaVinci Resolve内でその傾きデータを使ったスタビライゼーションができるようになったのだ。こうした機構はソニーのFX9、FX6などのカメラでは実装されていたが、通常の編集ソフトのスタビライザーよりも高精度に補正可能で、撮影後に補正量を調整できることから個人的にもぜひBMPCCシリーズに搭載してほしいと思っていた機能だった。
どんな条件で最高の結果が得られるかいくつかテストをしてみたので、結果は以下の動画でご覧いただきたい。
※このテストには「Blackmagic Camera 7.9」と「DaVinci Resolve Studio 18ベータ5」を使用しています。ファームウェアのバージョンやDaVinci Resolveがアップデートされることによって、挙動は改善していくと思われるので、初期のバージョンのテストだということでご覧ください
センサーシフト式の手ぶれ補正ではないので、歩きながらの撮影などで大きな上下動などがあると、どうしても大きく変化のあった部分に違和感のあるブレは出てきてしまう。ただ、従来の編集ソフトのスタビライザーを使うよりは画が破綻することはないと感じた。
上記の動画でもテストを行った通り、シャッタースピードは早め(シャッター開角度の場合は狭め)に設定しておく方が細かいブレ感は軽減される。1/150~1/200あたりに設定すると、モーションブラーが少なくなりパラパラとした画にはなってしまうが、その分スタビライズをかけた後の細かいブレ感は感じにくくなった。このあたりは撮影したい内容にあわせて何を優先するかで調整するのがよさそうだ。
また今回テストしたBMPCC6KProやBMPCC6KG2では、レンズ内手ぶれ補正をオンにするとDaVinci Resolve側でCamera Gyroの項目が選択できなくなった。どうやら今回のジャイロデータを使ったスタビライゼーションはレンズ内手ぶれ補正とは共存できないようだ。
カメラ内でレンズデータがきちんと認識されているかを確認することも必要になりそうだ。実験してみた限りでは、電子接点のないマニュアルレンズでは手入力でレンズの焦点距離を入力しておいた方が結果はよくなった。レンズの情報欄が空欄になっている時よりも、間違った焦点距離を入れてしまっている時の方が結果は悪かったので、一番気をつけなければいけないのはマニュアルレンズを付け替えて使う時に、前のレンズのデータから変更するのを忘れてしまうことだと感じた。マニュアルレンズを愛用している方は気をつけてください。
また、電子接点のあるレンズでも付け替えた時に、カメラ側にきちんとレンズ情報が認識されているかはチェックしておいた方が良さそうだ。
今回追加されたジャイロデータによるスタビライゼーションは、センサー内手ぶれ補正とは違うものなので、それらが搭載されたミラーレス機の手ぶれ補正能力と比較する必要はないと個人的には思う。この機能のいいところは「後で補正をどれくらいかけるかを決められる」ということだ。
カメラ側で補正をかけて収録するシステムの場合、後から確認した時に変な歪みやブレが入っていてその素材ごと使用できなくなる場合もあるが、今回のような機能では補正量は多くなかったとしても後から決定ができるため、補正がうまくいかず使えなくなる素材がないのが個人的には何よりも嬉しい。まだこの機能を試していない方はぜひ一度使ってみていただきたい。
伊納達也(inaho Film代表/映像ディレクター)|プロフィール
1988年、愛知県春日井市生まれ。東映シーエム株式会社を経て、2014年から株式会社umariにて様々なソーシャルプロジェクトの映像ディレクションを担当。その後、株式会社inahoを設立し、社会課題を解決するプロジェクトについての映像制作を行なっている。