ファーストインプレッション
ライブ配信に用いる映像機器は、カメラ、ビデオキャプチャ、ケーブルなど大掛かりになりがち。複数台のマルチカム配信となれば、なおさら機材とケーブルの量は増え、さらに電源の確保も多数必要になってくる。
特にPC環境でビデオミキシングを行う現場では、「USBケーブル1本で繋がるウェブカメラで、本格的なライブ配信もできたら…」と夢を膨らませている人は少なくないだろう。
そんな私のもとに、話題のウェブカメラ「Insta360 Link」がやってきた。
なんともコンパクトな筐体。普段使用してる一眼カメラの隣に設置、USBケーブルを接続して専用ソフトウェアをインストール。
「まぁ所詮、ウェブカメラだしね…」なんてタカを括りながらのセットアップ。しかし、プレビュー画面に表示されたカメラ映像を見て、思わず眼を疑ってしまった。
「えっ?!これどっちの映像?一眼カメラ?ウェブカメラ?」
嘘みたいな大袈裟な反応だけど、これがInsta360 Linkのファーストインプレッション。(一眼カメラと比較して)細かなディテールに差はあれど、「5万円以下の価格帯」らしからぬ解像感にビックリ。
公式サイトの「高精細な4K UHD画質、クラス最高の1/2インチセンサー搭載、傑出したHDR」の触れ込みは伊達じゃない。
シーンに合わせた細かな追い込み調整
ウェブカメラといえばフルオート使用が一般的だけど、このInsta360 Linkは、ISO感度、シャッタースピード、露光カーブなどを任意で調整できる。ホワイトバランスは色温度で数値指定が可能。調整後のカスタマイズ値は「プリセット保存」で記憶され、PCを再起動しても設定は引き継がれる。
PTZカメラ感覚でアングル自由自在
Insta360 Linkは、ソフトウェア上のジョイスティックから、レンズの向きをコントロールできる。
まるで、PTZカメラのような感覚。パン(左右の首振り)、ティルト(上下の傾き)に加えて、最大4倍までデジタルズームが可能。ウェブカメラのデジタルズームと侮るなかれ。他のウェブカメラと比較して、画質劣化が少ない点も印象的。
さらに、それぞれ可変したアングルは「プリセットポジション」で最大6つのアングルを登録できる。ライブ配信の本番中にワンボタンで呼び出しできて、これまた便利。
また、オートフォーカスのスピードも抜群。公式サイトには「位相差オートフォーカス(PDAF)と自動露出技術により、他のウェブカメラよりはるかに高速にピントを合わせます」と記述があるが、まさにそのコピー通りの性能を実感。
被写体を顔認識で自動追跡
Insta360 Linkは、被写体を顔認識して自動追跡してくれる「AI追跡アルゴリズム」を搭載している。
人物の顔を常に画面のセンター位置に捉えてくれるので、動きの多いプレゼンターを追いかけるのに最適。追跡スピードは「高速/普通/低速」の3段階から選択可能。本番中に追跡スピードを切り替えることで、いわゆる「機械的なカメラワーク」に様々なパターンが生まれるため、よりナチュラルな動きを取り入れることもできるだろう。
また、「AIズーム」機能も搭載しており、人物の「顔アップ/バストアップ/全身」それぞれのフレーミングエリアをワンボタンで切り替えてズームアクションも自動化できる。
この「自動追跡×AIズーム」の併用によるカメラワークは、本機ならではのユニークな特徴といえる。
マルチカム配信にチャレンジ
ここまで来ると「所詮、ウェブカメラでしょ?」なんて感覚は消失し、逆に「これなら本格的なマルチカム配信に使える!」という確信に満ちあふれてくる。
早速、4台のInsta360 LinkをPCに接続。それぞれの色合わせはソフトウェアから個別に設定。通常、4カメ体制だと複数人で50~60分くらい要するマルチカムのセッティングが、わずか数分で完了(しかも一人で)。
先の「自動追跡×AIズーム」のモード選択は、カメラ毎にユニークに設定できるので、例えば「CAM.1は全身構図の自動追跡」「CAM.2は顔アップの自動追跡」「CAM.3はマニュアル操作」といった具合に、カメラ毎の役割分担も任意でアサインできる。
カメラマン不在にも関わらず、臨場感あるカメラワークが付与されたマルチカム配信に仕上がっている。コンパクトなシステム構成、短時間のセットアップ、必要最低限のリソースで、ここまでの画づくりができてしまうのは驚きだ。
一眼カメラでは成し得ない、新たな可能性に満ちあふれたInsta360 Linkの魅力。私自身も新たな表現の創造に活用していこうと思います。
撮影場所:株式会社エンタミナ/ライブ配信スタジオ「BLACKHALL」