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音声収録で失敗しないために

いろいろな映像制作者に話を聞くと「映像が撮れていなくても、音さえ録録れてれていればなんとかなる」と皆が口を揃えて言う。ミスショットの音声はそのままで、映像だけを違うショットやBロールなどと差し替えるのだ。

私は心配性なので、外部マイクを使用して録音している時「もし録れていなかったり、突然ノイズが入ったらどうしよう…」といつも不安になる。録り直しできる現場ならまだいいが、失敗が許されないような現場だと録音ミスは致命的だ。

そこで外部マイクとしてカメラへ音を入れつつ、バックアップとして別メディアに録音するためのコンパクトなPCMレコーダーを探していた。

そんな折、タイミングよくOMデジタルソリューションズより「LS-P5」が発売された。前機種の「LS-P4」から4年、オリンパスからOM SYSTEMに変わってから発売される同社のリニアPCMレコーダーの最上位機種だ。

今回LS-P5をお借りすることができたので、動画制作者の視点でレビューしてみたいと思う。

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カメラに載せても負担にならない大きさと重さ

できるだけ荷物を減らしたい、機材をコンパクトにまとめたい私としては機材のサイズと重量は重要な選択基準である。XLR入力ができるPCMレコーダーを所有しているが、カメラの上に載せるにはやや大きすぎ、また重すぎる。

三脚などに据えて使う場合は気にならないが、手持ち撮影だと腕や手首の負担が大きくなる。その点、LS-P5は非常にコンパクトかつ軽量で単4形乾電池2本を含む重量は78gと、私が使っているパナソニックLUMIX DC-S5用のバッテリーよりも若干軽いのだから驚きだ。

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操作性について

ボディサイズが小さいために各ボタンも小さめではあるが、REC/STOPのボタンは適度なクリック感があり、RECボタンはわずかに膨らんでいるため手元を見ずに操作しても間違える心配がない。画面の下に3つ並ぶファンクションボタンもそれぞれ異なる小さな突起があるので、どのボタンが指に触れているのかわかる。

メニュー構成は上から「ファイル設定」「録音設定」「再生設定」と並ぶ。動画制作者としては状況がコロコロと変わるような現場では「録音設定」が一番上にあったほうがありがたいが、録音中/一時停止中にメニューを開くと「ズームマイク」や「ローカットフィルター」など、よく変更しそうな項目のみが表示される。

メニューによっては振る舞いが変わってしまうボタンがあるので、とっさに設定を変更しないといけない現場では混乱しそうだが、複雑というほどでもないのですぐに慣れた。

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スマートフォンのアプリが用意されており、録音開始/停止はもちろん、リアルタイムで録音レベルをモニタリングできたり、録音経過時間の確認ができる。録音レベルや指向性などの各種設定も可能で、本体の小さな画面を見ながらボタンをポチポチ押すよりずっと快適に操作できる。

ファイル名の変更もできるので、録音直後にファイル名を変更しておけば編集時に目的の音声を探すのが楽になる。一度ペアリングしてしまえばアプリを立ち上げるとすぐにリンクするので便利だ。

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Bluetoothのワイヤレスイヤホンで音声をモニターできるので、イヤホンのケーブルがレコーダーに接触してノイズが入る心配もない。ただし録音モードがWAV、FLACの24bitでは使えず、16bitもしくはMP3に限定されてしまうのが残念だ。ぜひ24bitでもワイヤレスモニタリングできるようにして欲しい。

電池のもちが非常にいいのもありがたい。カタログによれば48.0kHz/24bitの場合、単4形アルカリ乾電池で約47時間、ニッケル水素充電池で約31時間使用可能ということだ。またニッケル水素充電池が付属しており、本体で充電ができるのでいちいち取り出す手間もない。

動画の撮影時に必須なアクセサリー

純正オプションとして用意されているウインドシールド「WJ2」を使って屋外で録音してみたところ、「ボボボ」という音はそれなりに軽減された。少しの風でも風切り音が入ってしまうので、屋外や空調の風が当たるような現場では必須だ。残念ながら防風効果はそれほど高くはなく、室内の空調程度なら問題ないが風の強い日の屋外では防ぎきれなかった。

LS-P5をそのままカメラに装着するとグリップを握り直したりするときにタッチノイズを拾ってしまうが、ショックマウント「SM2」を付けたところ、完璧ではないもののかなり軽減できた。ただ重心がやや高くなってしまうのが残念。もう少し高さを押さえた製品が欲しいところだ。

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録音機能について

LS-P5で一番気になったのは、搭載された3つのマイクの音をミックスし、指向性を21段階に変えられる「ズームマイク機能」。広がりのある音から絞り込んだ音までこれ1台で様々なシーンに対応できるのは非常に便利だ。

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最高96kHz/24bitのハイレゾ録音に対応し、WAV、MP3のほかに可逆圧縮形式のFLACでの収録も可能で、データサイズを押さえつつも高音質で収録できる。もっとも64GBのカードならWAVでも48.0kHz/24bitを59時間収録できるので、一般的な動画撮影でFLAC形式を使うメリットはあまりないかもしれない。

記録メディアはmicroSDカード(SD/SDHC/SDXC)だが、16GBの内蔵メモリーがあるのでPCで読み込んだあとでカードを戻し忘れて、当日現場で真っ青…という心配もない。

録音レベルを自動で設定してくれる「SMARTモード」もライブ収録する人にとっては便利な機能だろう。難しい操作は必要なく、RECボタンを長押するだけでモニタリングが始まり、リハーサル時の音をもとに録音レベルが設定される。あとはそのままRECボタンを押せば最適なレベルで録音が開始される。

ただしSMARTモードを利用した場合、ズームマイク設定は変更できず最もワイドな設定になる。

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動画撮影用の機能として、編集の基準点となる「ストレートトーン」や録音レベルの調整のための「テストトーン」もある。メニューでストレートトーンをONにしておけば収録中いつでもF1ボタンで鳴らすことができる。地味ではあるが編集時のひと手間を簡略化できる便利な機能だ。

ただしどちらの機能も本体スピーカーから音は出ず、ヘッドフォン端子からのみ出力される。

録音サンプル

駅のホームでアナウンスを録音した。ズームマイク設定は最も広い「0」。

男性と女性のスピーカーの方向がはっきりとわかり、音源定位はしっかりしている。チャイムの音や駅員のアナウンスもよく聴き分けられ、こういう雑多な音があらゆる方向から聞こえるシーンでも問題なさそうだ。

車が行き交う道路のそばでの声を録音した。ズームマイク設定は最も狭い「20」。

この設定ではデュアルモノラルとして収録される。マイクと口の距離は1mほど。比較として最も広い「0」でも録音してみたが、カメラ用の小さいショットガンマイク程度の指向性で、あまり鋭い指向性はない。

この日は台風一過で風が強かったためウインドシールドを付けた上でローカットをONにしたが、残念ながら風切り音は防ぎきれなかった。ローカットを入れると低音域がごっそりと抜け落ち、声質がかなり変わってしまう。またズームマイク設定「0」よりも「20」のほうが風切り音が入りやすいようだ。

知人にお願いしてピアノを演奏してもらい録音した。ズームマイク設定は最も広い「0」。

ボディサイズを考えるとよく録れていると思うが、全体的にややこもったように聴こえる。試しにズームマイク設定を最も狭い「20」でも録音してみたが当然ながら広がりを感じられず、音もさらにこもる。

改善の要望

先にもあげたように24bit収録時にはBluetoothでの音声モニターが使えないのは非常に残念だ。後編集のことを考えると24bitでの収録は必須なので、ぜひ改善して欲しい。

底面にある1/4のネジ穴はプラスチック製なので摩耗が気になる。動画撮影で使う場合はカメラなりスタンドなりに固定して使うため脱着を繰り返すので金属製にして欲しい。

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USB端子はType-Cにして欲しかった。今となってはmicroUSBの出番は多くなく、逆にType-Cはカメラ本体やモバイルバッテリーなど多くの機材で使用しており、機材バッグの中にも数本入っているので、microUSBケーブルをカバンに入れ忘れてもType-Cであれば他の機材のケーブルを使い回すことができるのだが。

本体からmicroSDカードを抜くと保存先が本体メモリーに変更され、再度挿入しても保存先がmicroSDカードに戻らない仕様には戸惑った。そのまま次の録音をしたがカードには何も保存されておらず、録音に失敗したかと慌てた。

内蔵メモリーに保存されていたが転送速度が非常に遅く、USBケーブルでPCに接続して700MBのデータを転送するのに5分以上かかった。保存先をmicroSDカードに設定した場合、再挿入したときは自動的に保存先をカードにして欲しい。

ライトな撮影に最適なPCMレコーダー

LS-P5は映像制作だけではなく、ビジネスシーンでの使用も想定されたオールラウンダーなリニアPCMレコーダーだ。コンパクトで軽量、ステレオマイクからショットガンマイクまでをこの1台でカバーできるので、XLR入力を必要としないライトな収録にはとても重宝する製品である。

単体利用のレコーダーとしてはもちろん、「バックアップ収録できるオンカメラマイク」としてマイク選びの候補のひとつとしてはどうだろうか。

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秋吉克彦|プロフィール
1973年、大阪市生まれ。個人デザイン事務所で10年勤務したのち、独立してHatsuga Designを立ち上げる。グラフィックデザイン業務を中心に現在は動画制作も手掛ける。

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。