Vol.212 Adobe Frame.ioレビュー。リモート中心の映像制作でもコミュニケーションを円滑に[OnGoing Re:View]

Frame.io概要紹介

Frame.ioは、世界で多くの人に使われているビデオレビューおよび共同作業ツール。リアルタイムのレビューおよび承認ツール、迅速なメディア共有、Camera to Cloudによるダイレクト転送の機能等を活用することで、作品の完成を早めることができる。

「Frame.io for Adobe Creative Cloud」は、Adobe Creative CloudコンプリートプランおよびPremiere Pro/After Effectsユーザー向けには「Frame.io for Adobe Creative Cloud」として追加料金なしに使用することができる。Creative Cloudのクラウドとは別に100GBのストレージが提供されており、動画編集アプリのPremiere Proからクラウドに動画を高速アップロード・レビュー・承認までが行える。

また、プロジェクトは5つまで、作業者は2人までだが、レビューできる人数は無制限となっている。Premiere Pro上から、レビューリンクを送信して複数のプロジェクトメンバーからフィードバックをもらうことが可能。レビューはスマートフォンからも可能なので、どこからでも編集中のプロジェクトの共有が出来る。

Premiere ProとFrame.ioを使うことで、リモート中心の映像制作においてもコミュニケーションを円滑にすることが出来るだろう。

「Inter BEEの歩き方2022.tv」の制作ワークフロー紹介

今回の「Inter BEEの歩き方2022.tv」でもPremiere ProとFrame.ioを使用したワークフローを構築した。

幕張メッセの会議室内に、収録・配信・記事制作の基地として会期中限定のPRONEWS編集部が開設された。筆者も編集部内に編集用マシンをセットアップし、「Inter BEEの歩き方2022.tv」取材班の収録素材を取り込み、編集、書き出し、アップロードなどの一連の作業を行った。

今回、Premiere ProとFrame.ioを使ったワークフローを構築したことで、撮影チーム、編集部スタッフ、出演者それぞれが幕張メッセ内を取材のために移動している中でも編集内容の確認をスムーズに行うことが出来たことが、それぞれの負担軽減に繋がったと考えている。

「Inter BEEの歩き方2022.tv」では、速報性を重視するスタイルのため複雑な編集を行ったわけではないが、収録された素材に対する確認をFrame.ioを通じて行うことで、これまで該当画面のスクリーンショットを撮ってメール添付で確認していたような内容が、Frame.ioを使うことで、コメントをPremiere Proのタイムライン上で確認でき、確認から修正報告までを簡単かつ迅速に行うことができた。

イベント取材現場では、取材先の都合に合わせてスタッフが移動していることが多く、ちょっとしたコミュニケーションの最適化が、ストレスの軽減に役立っていた。

Frame.ioの使い方

ここからは、実際の画面を確認しながら使い方を紹介していきたい。

Premiere Proでの編集作業後に、ワークスペースから「レビュー」をクリックし、Frame.ioのパネルを表示。Frame.ioにパネル上からサインインし、新規プロジェクトを作成する。

パネル左上のアイコンをクリックし、「Add Project」をクリック。

プロジェクト名を決めて「Create」をクリックして、新規プロジェクトを作成。

パネル左上の「Upload」をクリックし、「Active Sequence」をクリックすると、現在開いているプロジェクトの動画が書き出されアップロードが開始される。

設定画面で、書き出し動画の名称や画質、書き出しエリアなどの指定をすることができる。同時に共有したデータをローカルディスクに保存するかどうかなども指定可能だ。

作成したプロジェクトを共有する

作成したプロジェクトを右クリックしてコンテキストメニュー(ItemOptions)を表示し、「Share for Review」をクリックすることで、共有を開始することが出来る。「Copy Link」をクリックして招待リンクのURLをコピーして、「Done」をクリックするとポップアップウィンドウが閉じる。

招待リンクをメールやメッセンジャーなどでレビューをしてもらいたい相手に共有する。

確認作業はWebブラウザで

レビュー担当者は、PC・スマホからプロジェクトを確認することが出来る。招待リンクのURLにアクセスをすると、Frame.ioのプロジェクトがWebブラウザ上に展開し、レビュー担当者は、チャット入力や、動画内に手書きで指示などを書き込みが出来る。

Premiere Proの編集画面に即座に反映される

チャットに書き込まれると、Premiere Proの編集画面・Frame.ioのパネル内のプロジェクトに反映される。編集担当は、それを確認しながら修正作業を行うことができ、コメントとプロジェクトタイムラインが同期するため、修正箇所を探す必要がない。

修正後のバージョン管理は、Frame.io側で自動で行われるので、修正作業に集中して作業をすることが可能だ。

V1とV2の比較も可能(PCブラウザのみ)

修正を反映して再度アップロードすることでV2、V3…というようにバージョンが増えていく。PCブラウザではV1とV2のように修正前と後を比較しながら確認することもできる。シェアリンクはバージョンが変わっても同じURLとなるため、確認する側はリロードをするだけで最新バージョンが、チェック可能だ。

実際の現場でFrame.ioを使用して

今回の「Inter BEEの歩き方2022.tv」では、Premiere ProとFrame.ioを活用して出演者・編集部・取材先企業担当者との確認作業をリモートで行うことが出来た。

広いイベント会場内において、これまで「いま、どこにいますか?」「ちょっと確認して欲しいので編集部まで来てほしい」という作業をすることなく、それぞれのタイミングで動画のプレビューを行うことが出来た。

安定した高速のネット環境、ディスプレイの高解像度化などによってスマートフォンでの動画視聴が当たり前となり、動画制作業務の現場においてもスマートフォンは欠かせないものとなった。撮影現場だけでなく、編集や試写、確認作業などにおいても、お互いの時間や場所を気にすることなくコミュニケーションが取れることは、それぞれの本来の業務分野に集中できるという意味でも、プロジェクト参加者の満足度は高かった。

映像のレビュー作業でコミュニケーションが加速する

これまでの映像制作でのレビュー作業というと、修正箇所のTC(タイムコード)をメモして修正内容を箇条書きにすることが多く、チェック漏れ・修正漏れを防ぐという側面が大きかった。

もちろん、そういった面でも、Frame.ioを導入することでワークフローの改善に役立っている以上に、レビュー作業時のストレスが軽減されることで、ポジティブなコミュニケーションやリアクションも生まれやすくなったと感じた。

Inter BEEのような展示会取材では、「この機材がイイよね!」「このリアクション面白かったよね!」といった、これまでのレビュー作業ではノイズとされていたものが、実は大事なコミュニケーションであり、スタッフのモチベーション向上に寄与している。このようなコミュニケーションがチャット感覚ででき、スタッフ間のコミュニケーションツールとしても活用できると感じた。リモートプロダクションが増えていく中で、Frame.ioのようなツールがプロジェクトチームの繋がりをより強くしていくのだろう。

Frame.io使い方紹介動画

Frame.ioユーザーセッション

第一部「Frame.ioってなんだ?」

第二部「Frame.ioがやってきた」

WRITER PROFILE

岩沢卓

岩沢卓

空間から映像まで、幅広いクリエイティブ制作を手がける兄弟ユニット「岩沢兄弟」の弟。 デジタル・アナログを繋ぐコミュニケーションデザイン・プランニングを行う。