Reviews_LUMIXS5II_top

はじめに

2023年1月5日、パナソニックから新しく像面位相差AFを取り入れた新機種「S5 II」が発表された。これまでコントラストAF方式のGHシリーズ・Sシリーズのカメラを使用していたユーザーで、この「像面位相差」というAFシステムを待ち望んでいた人は決して少なくはないだろう。

まず「コントラストAF方式」と「像面位相差AF方式」の違いとはなんなのだろうか。詳しい説明は各自Google等で検索してもらうとして、簡単に言うと「オートフォーカス動作を行うときに、カメラがピント面を動かす方向を判定できるかどうか」ということである。

コントラストAFの場合、例えば被写体もしくはカメラが動いてピントが外れたとき、被写体がカメラから遠くなったのか近くなったのかを判定することができない。一方、像面位相差AFでは遠近どちらに動かせばピントが再度合うのか判断できるため、オートフォーカス速度という点においてはやはり像面位相差AFに軍配が上がる。

筆者もGH3からGH6までのLUMIXユーザーであるが、従来のコントラストAF方式だったLUMIXカメラはどうしてもAF時に「迷い」が起こることがあり、GH6でアルゴリズムの改善で性能は向上していたものの、課題の一つと考えていた。今回のリアルタイム認識AFと銘打った像面位相差AFとコントラストAFを組み合わせた新オートフォーカスシステムは、筆者にとっては期待が持てた。

今回、メーカーから発売前のS5 IIのボディとレンズを幸運にもお借りすることができたので前モデルであるS5からの変更点と、AF性能がどの程度向上したのかをレビューしていきたいと思う。

Reviews_LUMIXS5II_01

今回はS5 II Wレンズキット(LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6、 LUMIX S 50mm F1.8単焦点レンズ)と24-70/2.8、70-200/2.8と50/1.4の3本を貸していただいた。

驚くべきは小ささ

Reviews_LUMIXS5II_02

まずやはり一番初めに持って驚いたのはボディの小ささである(左:S5 II、右:GH6)。筆者所有のGH6と並べてみたが、MFTのGH6と比べてS5 IIは驚くほどコンパクトな印象を受けた。

Reviews_LUMIXS5II_03
Reviews_LUMIXS5II_04

特にカメラ本体の厚みに関しては顕著で、グリップを含めてもコンパクトに作られている。

Reviews_LUMIXS5II_05

一方、厚さがない反面GH6で採用されたチルトフリーアングル機構はS5 IIには採用されておらずバリアングル液晶となっている。

従来機S5からの進化ポイント

Reviews_LUMIXS5II_06
Reviews_LUMIXS5II_07
Reviews_LUMIXS5II_08

ボタンの配置については前モデルのS5から大きく変わったところはなく、従来のLUMIXユーザーであれば初見でも操作に戸惑うことはないだろう。

Reviews_LUMIXS5II_09

底面には1/4ネジと縦グリップ用の電子接点とバッテリー挿入口がある。バッテリーはDMW-BLK22。こちらも変更はない。

Reviews_LUMIXS5II_10

記録メディアも変わらず、SDカードスロットが2スロット装備されている。GH6のようにCFexpressは採用されなかった。

Reviews_LUMIXS5II_11

映像制作を行っているユーザーにとって有り難い進化は、フルサイズのHDMI Type-Aが採用された点である。従来機はいわゆるマイクロHDMIであったが、フルサイズのHDMIになって、これで映像の外部出力を安心して行える。本機では有償アップデートにより外部RAW出力が行えるようになるとのことなので、RAW収録が必要な現場でも安心して外部レコーダーを繋げて収録を行うことができる。

Reviews_LUMIXS5II_12
Reviews_LUMIXS5II_13

また従来機から変わった外観の一つが、軍艦部に吸気・排気口が大きく備えられたことだ。記録フォーマットが4K60Pまでだった従来機から、6K30Pでの収録や4:2:2 10bit C4K60Pでの無制限記録に対応した本機では、熱対策をしっかりと行っていることが伺える。

新しいリアルタイム認識AFを試してみる

早速、子どもに協力してもらい、パナソニックが満を持して発表したリアルタイム認識AFを試してみた。リアルタイム認識AFは像面位相差AFと、これまで培ってきたコントラストAFでのアルゴリズム・ノウハウを組み合わせた新世代のオートフォーカスシステムである。

まずは6歳の娘に前後に歩いてもらい、人物認識とAFの精度を確認してみた。レンズはできるだけ被写界深度が浅くなるよう、70-200/2.8の望遠端・開放(200mm/F2.8)で撮影している。なお、AF追従速度と感度についてはデフォルトの設定にしてある。

ご覧の通り、後ろ姿でも確実に人物を認識して追従しているのがわかる。また、顔認識では瞳検知も動作し、正確なAFを実現している。今までのLUMIXによくあった「人物は認識しているがフォーカスが来ない」ということは一切なく、高い精度で追従している。

続いて早い動きに対応できるか調べるため、先日のクリスマスにサンタクロースが持ってきたキックボードに乗ってもらった。こちらについてもなんら問題なく人物認識とフォーカスの追従を行えていることがわかる。

最後はフレームへのIn/Outやその場で自由に動いてもらい、フォーカスが外れないか検証を行った。こちらも一切の迷いなくオートフォーカスが動作していることがわかる。

さらに進化した手ブレ補正

LUMIXのカメラといえば美しい描写をまず思い浮かべる人が多いかと思うが、生粋のLUMIXユーザーであれば、手ブレ補正についても定評があることをご存知だろう。今回のS5 IIでは従来機種のS5比で最大約200%の手ブレまで補正が可能になった。実際に24-70mmで進化したAFと手ブレ補正機能を使った映像が上のものである。

特に気にせず手に持ったまま小走りで娘を追いかけているが、まるでアクションカメラのような手ブレ補正の効いた映像になっていることがおわかりいただけただろうか。

"正常進化"を超えた進化

今回、新製品のS5 IIを先駆けてテストさせてもらった感想が、この「"正常進化"を超えた進化」である。パナソニックが像面位相差AF搭載カメラを開発している、という噂は以前から度々聞いてはいたが、一朝一夕でここまでのクオリティに仕上げることは並大抵のことではなかったはずである。

サイズや重量・ボタン配置などを保ったままHDMIのフルサイズ化や6K動画への対応という、一般的に考えられる「正常進化」だけではなく、新開発のオートフォーカスシステムと手ブレ補正機能の搭載という本機は何世代か先の、「未来のカメラ」を触っている感覚すら覚えた。

今回お借りできた実機は開発中のファームウェアとのことなので、発売時期にはより描写性能やAF精度が向上している可能性がある。LUMIX BASE TOKYOで先行のタッチ&トライ会や、今後様々なイベントで本機に触れられる機会が増えるとのことなので、興味を持った方は是非、このカメラを手にとって「良い意味で」期待を裏切られてほしい。

サカイアキヒロ|プロフィール

1984年生まれ。業務用音響機器メーカーでデザインエンジニアとして勤務する兼業映像クリエーター。長年エンジニアとして培った音響とネットワークの知識を活用し、急激に需要が高まったBtoBのライブ配信現場でテクニカルディレクター兼音響スタッフとしても活動している。最近はYouTubeで機材レビューや配信技術などの動画を発信中。

WRITER PROFILE

編集部

編集部

PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。