2020年春頃からのコロナ禍により、多くの企業がリモートワークを導入した。リモートワークで重要な役割を果たしたのが、Microsoft TeamsやZoomなどを利用したビデオ会議であり、カメラオンでビデオ会議に参加するために必要なWebカメラの需要が急増した。一時はPCショップの店頭からWebカメラが消え、入手困難になるほどだったが、コロナ禍も落ち着きWebカメラの需給も通常に戻った。最近は、リモートワークとオフィスワークを組み合わせた働き方も増えており、Webカメラの出番はまだまだ多い。

一口にWebカメラといっても、コスト重視の低価格なものから、画質や使い勝手を重視した高級モデルまでさまざまな製品がある。今回試用した「BenQ ideaCam S1 Pro」(以下:ideaCam S1 Pro)は、非常に高機能かつ使いやすいWebカメラであり、Webカメラのフラッグシップモデルとも呼べる製品だ。

15倍拡大レンズやワイヤレスリモコンが付属、Webカメラとしての基本性能はトップクラス

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ideaCam S1 Proの製品一式。マクロ撮影用15倍拡大レンズやワイヤレスリモコン、カメラカバー、マウントなどが付属している

BenQといえば、高品質な液晶モニターやプロジェクター、電子黒板などのメーカーとして有名だが、そのBenQから2023年6月6日に発売された高機能Webカメラが「ideaCam S1 Pro」と「ideaCam S1 Plus」の2製品だ。基本的な性能は同じだが、上位のideaCam S1 Proにはワイヤレスリモコンが付属する。

ideaCam S1 Proでは、カメラ本体以外にマクロ撮影用15倍拡大レンズや高機能なワイヤレスリモコン、カメラカバー、マウントなどが付属している。15倍拡大レンズやカメラカバーは、磁力でカメラ本体に固定される仕組みになっており、着脱も容易だ。本体のデザインは円筒形状で、高級感がある仕上げだ。カメラの周囲に、白色LED6個を利用したリングライトが搭載されていることもポイントだ。リングライトを点灯させることで、暗めの室内でも明るく自然な画像を撮影できる。

カメラの上部には、リングライトボタンとフリーズボタンが用意されており、ビデオ会議中に来客対応などでいったん離席する場合など、ワンタッチで画像をフリーズさせておくことができるので便利だ。

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ideaCam S1 Proのカメラ本体。ソニー製の800万画素CMOSセンサーを搭載。画像はリングライトを点灯したところ。リングライトには白色LEDが6個搭載されている

ワイヤレスリモコンは単4乾電池2本で動作し、電池寿命も6カ月と長い。ワイヤレスリモコンとPCの間は2.4GHz帯無線で接続されるので、利用するにはPCのUSBポートに付属のUSBレシーバーを装着する必要がある。

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ワイヤレスリモコン。握って左右に回転させることで、ズーム操作も可能

ideaCam S1 ProのWebカメラとしての基本性能を見てみよう。カメラの心臓部ともいえるセンサーには、ソニー製の800万画素CMOSセンサーを採用。低価格なWebカメラでは、130万画素や200万画素クラスの安価なCMOSセンサーが使われていることが多いが、ideaCam S1 Proは、そうしたWebカメラとは一線を画す画質を実現している。単に映ればよいというのではなく、美しい映像によってより快適なビデオ会議を実現することにこだわった製品といえる。

有効画素数は3264×2448ドットで、アスペクト比は4:3となる。動画撮影時の解像度も3264×2448ドット~640×480ドットまで自由に選択でき、アスペクト比16:9での撮影も可能だ。レンズの画角は72.9°だが、デジタルズーム機能により画角も自由に調整できるので、カメラと人との距離が近くても遠くても対応できる。

もちろんオートフォーカス機能を搭載しており、10cm~無限遠まできちんとフォーカスが合う。自動露出機能やオートホワイトバランス機能も備えており、周囲の環境を問わず、美しい映像を撮影可能だ。また、ノイズキャンセリング機能付きのマイクも搭載しており、周囲の騒音に邪魔されることなく、快適に音声でのやり取りが行える。PCとのインターフェースはUSB 2.0で、ドライバ不要でPCに接続するだけで認識されるシンプルなデザインも魅力である。もちろん、WindowsとMacの両対応だ。

ideaCam S1 ProのWebカメラとしての基本性能は非常に高いといえるだろう。

ideaCam S1 Proは、付属のマウントを使って液晶モニターの上部に取り付けることができる。マウントの作りもしっかりしており、さらにつまみを締めて取り付けるため安定感がある。モニターの縁部分の厚みは10~75mmまで対応しているので、ほとんどの液晶モニターに取り付けが可能だ。ideaCam S1 Proのマウントは、カメラ本体の角度を正面から真下まで、90°の範囲で自由に調整できるようになっていることも特徴だ。

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マウントをこのように液晶モニターの上部に固定する。モニターの縁部分の厚みは10~75mmまで対応している
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マウントの上部にカメラ本体を差し込んで取り付ける
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カメラは90°の範囲で向きを変えることができ、このように真下に向けることもできる

カメラの向きで自動的にモードが変わり、カメラをマウントから外して使うことも可能

ideaCam S1 Proの素晴らしいところは、ビデオ会議などで正面のユーザーを映す人物撮影モードと、机の上に置いた資料などを映す対物撮影モード、さらにカメラをマウントから外して手持ちで使うハンドヘルドモードの3つのモードで利用できるだけでなく、それらを自動的に判別して設定を変更してくれることだ。

カメラをマウントに取り付けた状態でカメラを下に向けると、自動的に人物撮影モードから対物撮影モードに切り替わり、モニターに映し出される映像が180°回転し、机の上の資料などと同じ向きになる。再びカメラを正面に向ければ自動的に人物撮影モードになり、また映像が180°回転するので、いちいち向きを設定から変更する必要がなくとても便利だ。

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カメラを下に向けると、自動的に対物撮影モードに切り替わり、モニターに映し出される映像が180°回転する

また、カメラをマウントから取り外して手持ちで使えることも特徴だ。このモードをハンドヘルドモードと呼ぶが、ハンドヘルドモードなら自由な角度で被写体に寄ることができるので、立体物などの詳細を相手に見せたいときに便利だ。ハンドヘルドモードとワイヤレスリモコンの相性もバッチリであり、左手でカメラを持って被写体を撮影しやすいアングルにし、右手でズーム操作や静止画撮影などが行える。

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カメラをマウントから取り外すと、ハンドヘルドモードになり、手持ちで自由に見せたい場所を映すことができる。また、ワイヤレスリモコンでズーム操作やオートフォーカスに切り替えなども簡単にできる
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ハンドヘルドモードで撮影した映像。細かな部品もよくわかる。もちろんハンドヘルドモードでもリングライトを利用できる

ソフトウェアのインストールが不要ですぐに使える

本製品のような高機能Webカメラでは、その機能をフルに活用するために専用ユーティリティをインストールしなければならないことが多いが、ideaCam S1 Proでは、BenQ独自のインストール不要な「EnSpireソフトウェア」を利用できることも魅力だ。「EnSpireソフトウェア」は、Webブラウザでアクセスするだけで利用できるクラウド型アプリであり、本製品を持ち歩いて他のPCで使う場合などもすぐに使えるので便利だ。

機能的にも充実しており、UIもわかりやすい。ワイヤレスリモコンとも連動しており、リモコンの上部を左右に回すことで直感的にズーム操作が行えるほか、オートフォーカス/マニュアルフォーカスの切り替え、静止画撮影、フリーズ、マイクのミュートなどの操作が可能だ。

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インストール不要の「EnSpireソフトウェア」で操作を行う。リングライトを付けると、暗い部屋でも明るく映る
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EnSpireソフトウェアで、撮影解像度やホワイトバランス、コントラストなどを自由に変更できる。解像度は最大3264×2448ドットまで対応

15倍拡大レンズ+デジタルズームで実体顕微鏡的にも使える

ideaCam S1 Proは、マクロ撮影用の15倍拡大レンズが付属していることも高く評価できる。15倍拡大レンズは磁力でカメラに固定されるので、着脱が容易でずれてしまうこともない。マクロ撮影時は、被写体の上にカメラを載せて使うことで、ちょうどフォーカスが合うようになっている。

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マクロ撮影用15倍拡大レンズを装着したところ。15倍拡大レンズは磁力でカメラに固定されるので、着脱も簡単だ

15倍拡大レンズによるマクロ撮影は高画質であり、「EnSpireソフトウェア」のデジタルズーム機能を利用すれば、0.1mm以下の細かなカラー印刷の網点もしっかり分かるほどの倍率が得られる。実体顕微鏡的な使い方が可能であり、さまざまな応用が考えられる。例えば、精密電子機器を製造している工場と本社とのビデオ会議でのやり取りなどで、細かな部品の実装の様子を本社に伝えたい場合などに役に立つだろう。

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マクロ撮影時はこのように被写体の上にカメラを載せて使う
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15倍拡大+デジタルズームでの撮影例。カラー印刷の網点もここまで拡大できる

クリエイターやデザイナーなどのリモートワークやリモート学習にも最適

ideaCam S1 Proは、従来のWebカメラの概念を大きく打ち破る画期的な製品だ。特に、人物撮影モードと物体撮影モードを自動的に切り替えてくれるのは便利だ。実際の成果物を見せながら打ち合わせをしたいという立体造形クリエイターはもちろん、手元のノートを美しく写せるので、オンライン講習やリモート学習にも向いている。さらに簡易顕微鏡として使うこともできるなど、一台で複数の役割を実現する、まさにマルチなWebカメラである。

もちろん、ソニー製の800万画素CMOSセンサーを採用しているため、画質についてもトップクラスであり、より高い次元でのビデオ会議を実現できる。現在使っているWebカメラの画質や使い勝手に不満を持っているユーザーにもお勧めしたい。