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「OBSBOT UVC to NDI Adapter」は、UVC(USB Video Class)信号をNDI(Network Device Interface)信号に変換するデバイス(コンバーター)。本体の大きさは116×70×22.5mmで、重さは202g。コンパクトで持ち運びが容易なサイズ感だ。

近年、HDMIやSDIからNDIへ変換をするコンバーターは数多くうまれているが、UVCからNDIへ変換できるものは多くないように感じる。こうしたニーズはあまり多くないのかもしれないが、有りそうでないお手軽デバイスといえるかもしれない。

PoEに対応 対応スイッチがあればよりスマートに

パッケージには本体の他に、USB-C to USB-CケーブルとUSB-C to USB-Aコネクタが付属する。このケーブルを用いて、左側面にあるUSB Type-Cの電源入力ポート(PD3.0対応)へ電源供給をして稼働させることができる。

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また、OBSBOT UVC to NDI AdapterはPower over Ethernet(PoE)にも対応。

PoEに対応したネットワークスイッチがあれば、映像音声のNDI伝送とともに、本体およびOBSBOT UVC to NDI AdapterとつながるUSBデバイス(ウェブカメラなど)への電源供給も(右側面にあるNDI+PoEポートへ挿す)LANケーブル1本で兼ねることができる。この場合は、本体に付属するUSBケーブルは不要だ。

機材構成が煩雑になればなるほど、PoEを利用したときの恩恵は大きくなる。そのデバイスたちを駆動させるための電源アダプターの数と、周辺に這うコードが減ることで、結線したあとの見た目もスマートになる。

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また、ちょっと離れた場所に設置したいとき、デバイスを駆動させるために別途、電源タップをそばに配置しなければならない面倒も減らすことができる。

LANケーブル1本で映像や音声の伝送もでき、電源も供給できるPoEへの対応がされているのは、些細なことだがとてもメリットは大きい。

設定は本体に備わるWeb UIから

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OBSBOT UVC to NDI Adapterの設定はブラウザから本体に備わるWeb UIへアクセスをして行う。

Web UIのログイン画面へアクセスする方法はいくつかあるが、OBSBOTが提供するソフトウェア「OBSBOT Center(Windows 10(64-bit)以降 / macOS 11.0以降に対応)」をパソコンへインストールし、ソフトウェアからWeb UIへ遷移するのがビギナーにはわかりやすいかもしれない。

OBSBOT UVC to NDI Adapterをパソコンと同じローカルネットワーク上に配置し、OBSBOT Centerを起動すれば、自動的にOBSBOT UVC to NDI Adapterを検出してWeb UIへのアクセスリンク(NDIウェブに入る)ボタンが表示される。

すでにNDIを活用しているならば、NDI Toolsにバンドルされている「NDI Studio Monitor(Windows)」「NDI Video Monitor(macOS)」からWeb UIへアクセスすることも可能だ。

OBSBOT UVC to NDI AdapterのWeb UIへアクセスする方法は、OBSBOTのウェブサイトにもドキュメントが公開されている。下記のリンク先も参考になるだろう。

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Web UIではNDIビデオストリームの有効・無効、本体に備え付けられたTallyライト機能のオン・オフ、SDカードへの録画の開始・停止などのコントロールをはじめ、フレームレート、NDIビデオストリームとSDカードへの録画の解像度、エンコードフォーマット、ビットレート設定を行うことができる。

なお、対応の解像度とフレームレートは下記の通り(エンコードフォーマットはH264/H265)。

  • 3840×2160@[60 59.94 50 30 29.97 25 24 23.98]
  • 2560×1440@[60 59.94 50 30 29.97 25 24 23.98]
  • 1920×1080@[60 59.94 50 30 29.97 25 24 23.98]
  • 1280×720@[60 59.94 50 30 29.97 25 24 23.98]

microSDカードへの同時録画が可能

OBSBOT UVC to NDI AdapterにはmicroSDカードスロットが備わり、USB Type-CのDataポートから入力された映像と音声を同時に録画することも可能(メディアは最大512GBまでの対応)。

ネットワークの不具合などによってNDIビデオストリームが途切れてしまうような、万が一のトラブルに備えたバックアップ手段として活用できそうで、microSDカードへの録画テストを行ったところ、特段、問題もなく録画がされていた。

テストにかける時間に限りがあった都合上、SDカードに収録された録画データがフルになるまでの検証までにはたどり着くことはできなかった。あらかじめ、手持ちのmicroSDカードとの相性や、実際の利用を想定した録画のテストを行っておく必要はあるだろう。

また、当然のことながら、PoEでOBSBOT UVC to NDI Adapterを利用している場合は、ネットワークスイッチからの電源供給が切れると落ちてしまう。microSDカードへの録画機能を活用するならば、付属のUSBケーブルによる電源供給もしておいたほうが安心かもしれない。

Tiny/Meetシリーズとの親和性

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https://www.obsbot.com/jp/store/products/uvc-to-ndi-adapter より)

OBSBOT UVC to NDI Adapterは、特に、OBSBOTのウェブカメラTiny/Meetシリーズとの親和性がある。

OBSBOTのウェブカメラをUSB-Cケーブルでパソコンと接続したときはOBSBOT Centerで設定や操作をするが、パソコンではなくOBSBOT UVC to NDI Adapterと接続した場合は、OBSBOT UVC to NDI AdapterのWeb UI画面から設定や操作をすることになる。

また、別売のTiny/Meetリモートコントローラーレシーバーをお持ちなら、OBSBOT UVC to NDI AdapterのUSB-Aポートに接続することで、リモコンから遠隔でコントロールをすることができる。

今回のレビューでは、OBSBOT Tiny 2とOBSBOT UVC to NDI Adapterを接続し、OBSBOT UVC to NDI AdapterのWeb UI画面からOBSBOT Tiny 2の操作と各種操作をすることができた。

ただ、OBSBOT Tiny 2を直接パソコンへ(UVCで)つないでOBSBOT Centerで設定や操作をするときと、OBSBOT UVC to NDI AdapterへつないでWeb UI画面から設定や操作をするときには、設定が可能な項目の差異があることに注意が必要だ(後者の組み合わせの場合は背景ぼかしや肌色補正といった美肌関連の一部の機能は利用することができなかった)。

OSMO Pocket 3のようなUVC出力に対応したカメラでも利用できる

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OBSBOT Tiny 2 のようなOBSBOTのウェブカメラ製品だけでなく、ポケットジンバルカメラやアクションカメラでも、UVC出力を備えたデバイスならばOBSBOT UVC to NDI Adapterを活用することはもちろん可能だ。

例えば、OSMO Pocket 3 とOBSBOT UVC to NDI AdapterをUSBケーブルでつなぐとOSMO Pocket 3 を1080p30の「ウェブカメラ」モードで利用することができる。

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ウェブカメラモードで動くOSMO Pocket 3 はスマートフォンのソフトウェア(=DJI Mimo)でのコントロールはできなくなるが、NDI Toolsの「NDI Studio Monitor」「NDI Video Monitor」から(とても簡易的だが)パン・チルトの最低限の制御は可能だ。

カメラデバイスをUSBケーブルを用いてUVC接続するのではなく、LANケーブルを用いてNDIへ置き換えたいケースはあまり多くないが、「制限のあるUSBのケーブル長では長さが足らないちょっと離れた(10mや20mぐらいの)場所」に「人目につきにくいカメラを置きたい」というニーズがあるとき、OSMO Pocket 3とOBSBOT UVC to NDI Adapterを置き、LANケーブルで伸ばし、NDIを通じて配信ソフトウェアのOBSや、VMixなどへ映像や音声を取り込むといったケースはあるのかもしれない。

スイッチャーのPGMをモニタリングする手段にも使えそう

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個人的にOBSBOT UVC to NDI Adapterをさらに試してみたいケースがある。Blackmagic DesignのATEM Mini/SDIシリーズなど、最近のビデオスイッチャーに備わるUSB-Cポートへつないで、UVC出力されたプログラムアウトの映像をNDIへ変換し、ネットワークを介して「NDI Studio Monitor」「NDI Video Monitor」を使うという、簡易的な映像の返しモニター手段としての活用だ。

もちろん、ネットワークを介することになるので遅延が許容される状況下での利用となるが、PoEを活用し映像音声をLANケーブル1本でプログラムアウトの映像を送ることができるメリットを活かすことができそうだ。

どんなひとにUVC to NDI Adapterが向くか

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UVC(USB Video Class)信号をNDI(Network Device Interface)信号に変換するデバイスという性質上、中・大規模のライブ配信やウェビナー配信といったプロフェッショナルな現場での活用というより、普段、UVC出力に対応したウェブカメラと外部配信ソフトウェアのOBSを利用してライブ配信を楽しむビギナーたちにOBSBOT UVC to NDI Adapterは親和性があるかもしれない。

カメラを自分の真正面ではなく、頭上からの俯瞰したアングルを作り出したり、USBケーブル長の限界を超えるところに置きたいなど、設置に工夫が少し必要な場所に置きたいニーズに活用できそう。

近年、オンラインミーティングやウェビナーのために手にしたウェブカメラなど、UVC出力に対応したデバイスたちを、OBSBOT UVC to NDI Adapterと組み合わせることで再び有効活用する一助となるのかもしれない。

利用中の気づき

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使用中の気づきとしてひとつ共有しておきたいのは、OBSBOT UVC to NDI Adapterは筐体の作りも工夫されている印象を受けるものの、本体からの放熱が大きいように感じる。

ただ、長時間の通電であっても、放熱によって動作に不具合が起きることはなく、OBSBOT UVC to NDI Adapterを介したNDIの映像も、従来のUVC出力で得られる映像と比べて大きな違いは感じられなかったが、不安があるときはファンで風を当ててあげるなどの工夫を施しても良いかもしれない。

ネットワークスイッチもNDIを活用する上で大切な要素であることを忘れずに

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最後に、今回のレビューにあたり、POE+に対応し機器全体で110Wの給電が可能で、9つの1GポートとSFPスロットを1つ搭載するフルマネージスイッチNETGEAR M4250-9G1F-PoE+を使用した。

近年、映像も音声もIPによるネットワークを通じて信号を送り合うことも増えてきた。そのひとつとしてのNDIは手軽に用いることができる伝送方式といえる。

伝送上の(映像のコマ落ちなど)トラブルはもちろん、ネットワークで起こり得る伝送遅延(ラグ)をできるだけ減らし、OBSBOT UVC to NDI Adapterのような製品の性能を十分発揮させる観点からも、その要となるネットワークスイッチ選びも大切であることを合わせて添えておきたい。

WRITER PROFILE

ノダタケオ

ノダタケオ

ライブメディアクリエイター。スマホから業務機器(Tricasterなど)までライブ配信とウェビナーの現場を10年以上こなす。