この6月から「GFX100S II」が発表される。
「GFX100S」の時にとうとう動画にも使用できるラージフォーマットカメラの登場に心躍った。それも3年と3カ月前になる。そして昨年秋には、より動画機能にも重点を置いた「GFX100 II」が登場した。
ただ、GFX100 IIは127万円という高額のため、フォトグラファーにとってのハイエンド機としての魅力はあるが、コンシューマー動画機としてはなかなか手の出しづらい価格ではあった。
そんな折にGFX100S IIが発表された。価格的にも84万円台くらいになるらしいので、すべての商品が価格上昇している昨今、GFX100Sの発売時から3年以上経って1割程度の上昇に抑えたのは評価すべきところかもしれない。このフルサイズの1.7倍という大きなセンサーサイズと55mmでF1.7という開放値のレンズは見たことのない世界を映し出してくれる。
まあ、一概に深度が浅い方が良いということではないが表現方法として、絞れば1億200万画素をカバーするレンズの解像度を生かした映像が、解放近辺ではボケみを生かしたファンタジックな映像と選択肢が広がるのは興味深い。
何しろGFX100 IIとほとんど同じセンサー(GFX 102MP CMOS II)で、同じX-Processor 5という画像処理Engineを持つにもかかわらず、40万円差程度になっている。ちょうどGFX100 IIのボディも一緒に借りることができたので、その違いも含めてレビューしていこうと思う。
外観
まず外観はGFX100Sの時とほとんど変わっていない。スペック上は17グラムの軽量化がなされているが、感じるほどのことはないだろう。
GFX100 IIと比較すると若干小さい感じはするが、重さも150gほどの違いで、GFX100 IIの特徴であるファインダーを取り外すとボディサイズ感は同等といえるくらいになる。
GFX100S IIは先代同様の上部が水平にカットされているのに対し、GFX100 IIは斜めに傾斜しているので、ユーザーにとって大きさの違いは感じにくいが正面から見るとGFX100S IIの方がマウント位置が低いのがわかる。これはGF55mm F1.7を付けるとフォーカスリングがボディよりはみ出す形となる。
ファインダーの解像度は若干落ちる。LCDは同性能で通常のチルト、縦構図時のチルトと同じような動きをするが、稼働幅は若干違う。GFX100 IIやX-H2に用意されている冷却ファン用の端子は付いていない。
そうなると発熱が気になってくるが、一番負荷がかかりそうな4K29.97fps、H.265 422All-i、720Mbpsで連続収録してみた。メディアの予想最大収録時間23分27秒のところで停止したが、触った感覚ではボディの発熱はそれほどでもなかった。ちなみに360Mbps収録にしたときは46分39秒収録したが、著しい発熱はなかった。やはり8K収録がなければ心配する必要はないのかもしれない。
そういえばGFX100S IIもGFX100 IIから採用された「BISHAMON-TEX」というテクスチャーのラバーになっている。Xシリーズには採用されていないところを見ると、今後のGFXのアイデンティティの一部となっていくのではないだろうか。
その右グリップ側面にはメディアのスロットが用意されている。 GFX100S IIはSDカード2スロットという仕様になっていて、これはGFX100 IIのCFexpress TypeB 1スロット、SDカード1スロットという仕様と異なり、先代GFX100Sと同じ仕様だ。
左側面に移ると、その違いはもっと如実に出る。先代GFX100Sと変わらないと言ってしまえばいいのだが、GFX100 IIとGFX100S IIの考え方の違いが端子の種類に現れている。まず、ネットワーク用のLAN端子は付いていなく、HDMIもフルサイズ(Type A)ではなくマイクロ(Type D)端子になる。その代わり、マイク用、ヘッドフォン用を別々に備えシンクロターミナルもサイドに配置している。
「HS」とそれ以外の違い
つまりGFX100 IIがかなり動画に寄り添っているのに対し、GFX100S同様、GFX100S IIは「動画も撮ろうと思えば撮れますよ」的なスタンスである。それに関して、自分はかなり肯定的に捉えている。ボディを先代と同仕様にすることによって、画質性能はGFX100 IIと同等クラスでありながら、かなりのコストダウンに貢献しているのではないだろうか?
そのコストダウンの中核ともいえる部分がGFX 102MP CMOS II HSとGFX 102MP CMOS IIの違いだろう。この「HS」という単語があるかないかでどう違うのだろう? スペック的には8K収録と4K収録という違いは出ているが、GFX100Sから進化した点はSD記録でも4K/29.97p 4:2:2 10bit収録ができるということだろう。Bitrateも最高400Mbpsから720Mbpsへとアップしている。外部SSDと接続することによってProRes収録も可能にしている。
収録画質的にはGFX100 IIと同等になっているが、解像度とフレームレートという点では劣っている。それがHSか、そうでないかの違いなのだろうか?
CMOS機にはいやらしいテストだが、2台並べて高速パンをするという、ローリングシャッター現象を見るテストをしてみた。以下がその結果である。
GFX100S IIは4K/29.97pを基準にGFX100 IIを8K/29.97p、4K/59.94p、4K/29.97pと3種類で試みた。GFX100 IIは8Kの時こそGFX100S IIに少し劣るかと思うものの、ほとんど同等の成果を出し、4K収録にってはフルサイズ機に迫る性能だと思う。GFX100S IIは44mm×33mmというセンサーサイズの割には頑張っていると思いつつも、GFX100 IIのセンサースピードには敵わない。これがGFX 102MP CMOS II HSとGFX 102MP CMOS IIの違いかと実感した。
しかし、これを必要とするかしないかは使い方次第である。何しろフルサイズ機1台分以上の価格差があるわけなので、画質が同等なのだから、今まで言ってきたようなことを差し引いても、十分、価値のある1台になっていると確信する。
それでもGFX100S IIというカメラを使う人は写真家でもハイエンドユーザーに当たる人だと思う。その高品質な写真と同じ状況でスイッチ一つをスライドするだけで動画が収録できるということは大きなメリットになる。まあ、ストロボを使うような状況では転用できないが、定常光であるならば写真家が作り上げたルックそのままの動画が生まれる。
本来GFX100S IIにしても、GFX100 IIにしてもそういった意味合いがこの動画モードにはあるのではないだろうか?
STILLとMOVIEの比較
最後にSTILLで撮ったものとMOVIEで撮ったものから1枚抜き出したものを並べてみる。今回は新しく搭載されたフィルムシミュレーションのREALA ACEで統一して撮ってみた。設定は全く変えていない。
写真のイメージそのままでムービーの撮影ができる。そこで改めて実感したのだが、1億200万画素の画像の圧倒的なインパクトだ。5倍くらいに拡大してもディテールがしっかりしている。動画の方は解像度こそ4Kなのでせいぜい2倍くらいだが、この圧倒的なディテールのあるレンズで収録しているという説得力は何物にも代え難い。
写真のアプローチと動画のアプローチは違うという考え方もあるだろう。ただ、ラージフォーマットで撮影する写真家の中には、この写真の世界観をムービーで再現できたら、と思っているハイエンドフォトグラファーは多いと思う。GFXシリーズは、それを実現する先駆けになっているように感じる。