はじめに

初代EOS R5発表(2020年7月)のことは今でもよく覚えている。ミラーレス一眼として世界初となる8K動画が撮れるというスペックは、動画撮影者界隈の事前予想を大きく上回っていた。そして、それは8K動画だけでなく、RAWでの動画記録も大きな話題となった。筆者も当時、自身のブログでEOS R5について多くの記事を書いたと記憶している。そう、EOS R5は一眼動画の高解像度記録とRAW内部収録の口火を切った機種である。

記憶をさかのぼると、筆者はデジタル一眼レフカメラである初代EOS 5DでデジタルカメラのRAW現像や操作のイロハを学んだ。EOS 5D Mark IIIではフルサイズというフォーマットでの動画撮影を楽しんできた。私の撮影経験を共にしてきたカメラのひとつがEOSの「ファイブ」である。ミラーレスカメラに移行する段階でEOSは手放したものの、やはりEOSの「ファイブ」からずっと目が離せなかったのだ。

「EOS R5 Mark II」はEOS R5の純粋な後継機種で、筆者にとっても多くの動画撮影者にとっても気になる存在だと思う。歴史的なカメラの登場から4年、その動画性能の進化を紹介したい。

EOS R5 Mark IIスペック

スペック概要

  • 撮像素子:フルサイズ裏面照射積層CMOSセンサー
  • カメラ部有効画素:最大約4500万画素
  • デュアルピクセルCMOSによるAF(オートフォーカス)
  • レンズマウント:キヤノンRFマウント
  • 記録媒体:  
    • カード1:CFexpressメモリーカード
    • カード2:SD/SDHC/SDXCメモリーカード(UHS-II対応)
  • 音声記録:4ch記録対応
  • 動画記録フォーマット:  
    • RAW(8K記録)/SRAW(4K記録)/H.265/H.264
      ※SRAWはRAW動画より軽量なファイルサイズで記録可能な動画形式
  • 最大フレームレート:  
    • RAW:8K30p(標準/軽量RAW)/ 8K60p(軽量RAW)
    • SRAW:4K60p(標準/軽量RAW)
    • H.265 422 10bit:8K30p 、4K120p
    • H.264 422 10bit:4K120p
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最大フレームレートの部分は簡潔に記載しているが、EOS R5 Mark IIのコーデックの充実ぶりは相当なもので、ここで全てを書くことができないほどである。詳細はメーカーページをご覧いただきたい。

EOS R5 Mark IIの動画機としての最大スペックは8K60pである。これはH.265/H.264の圧縮記録こそできないが、RAWでは8KRAWの60p撮影が可能になっている(8K60pRAW記録は圧縮率の高い軽量RAWのみで撮影が可能)。

また、RAW記録では、SRAW形式で4K記録が可能だ。このSRAWは、カメラ内部で8Kピクセルを4Kにオーバーサンプリングを行いつつRAWで記録する方式、と筆者は理解している。そもそも8KRAW記録というものは、映像制作者にとって敷居が高かったり、オーバースペックな解像度であったり、また、メディアコストがかかる。これらの背景を考えるとRAWでグレーディングしたい制作者にとって、SRAWは非常に有効な記録方式であると言える。

言い換えるとRAW記録の利便性を維持したまま、4K動画制作者に適した扱いやすさを実現しているフォーマットがSRAWなのだと思う。

さらにEOS R5 Mark IIではプロキシ記録に対応しており、より映像制作を行う上での利便性を配慮した機種になったと言える。

    テキスト
8K30pRAW記録とプロキシ記録設定
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RAWおよび主要な動画撮影モード

前述のように、EOS R5 Mark IIは8KのRAWおよび、4KにオーバーサンプリングされたSRAWのほかH.265/H.264記録が可能となっている。これらの詳細に関しては別途後述するが、非常に幅広い撮影フォーマットでの記録が可能となっている。ここ最近の各社ミラーレスカメラ、特に動画機能注力機でのコーデックの充実ぶりは目を見張るものがあるが、EOS R5 Mark IIのコーデックの充実ぶりは驚くべきものだ。

詳しくはメーカーの仕様表をご覧いただきたいが、2.6Gbpsの8KRAW記録から35MbpsのFHD 8bit H.264まで存在する。本格的な8K映像制作に適した超高ビットレートから記録撮影に最適な低ビットレートまで存在するのだ。

    テキスト
RAW/XF-HEVC S(H.265)/XF-AVC S(H.264)の大きく5つのフォーマットが選択できる
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別途後述するが、EOS R5 Mark IIの動画RAWフォーマットはDaVinci Resolveで確認したところ、いずれもRAW現像が可能である。

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DaVinci ResolveでのCamera RAWパレットで現像が可能
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EOS R5 Mark IIのRAWフォーマットに最適化されたDaVinci Resolveのバージョンが今後公開される可能性もあるが、現状でも問題なく8KRAWおよびSRAWの現像ができることを確認している。

外観・機構部

フル規格のHDMIポート

初代EOS R5はマイクロHDMIポートを搭載していた。筆者が以前、EOS R5の記事を書いた際にスペックは高いが実使用上の配慮がなされていない。と感じた部分がこのHDMIポートだった。EOS R5 Mark IIではフル規格のHDMIポートが搭載されており、耐久性が格段に高まっている。

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バリアングルモニター

液晶モニターはバリアングルとなっている。特に特徴的なギミックはなく、ごく普通のタイプであるため、モニターを開いた状態で傾けるとHDMIポートと干渉する構造となっている。また、モニターは多くのミラーレスカメラ同様に180°完全に開くことはできないが実使用上で問題になることはないだろう。

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ボタン配置

ボタン類は多い一方で、多くのミラーレス一眼に搭載されているモードダイヤルは初代R5同様に存在しない。つまりスチルの露出モードやカスタムモードの切り替えはモードボタンを押した後にダイヤルで選択するという2アクションが必要となる。このモードダイヤルがない代わりに、コンパクトなボディながら肩液晶が配置できていると言える。

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人差し指でアクセスできるボタンは5つ(それぞれカスタマイズが可能)+1ダイヤル
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親指でアクセスできるボタンは10個(うち一つはマルチコントローラー)+2ダイヤルで、かなりの操作が右手のワンアクションで可能(ただし背面ダイヤルは押し込みタイプではないため十字ボタンとしては機能しない)

肩液晶

EOS R5では前述のようにこれだけのボタン配置ながら肩液晶が配置されている。この液晶はバックライトが備わっており、暗い中での視認性も良い。

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電源OFF時にシャッター幕状態「開/閉」設定が可能

電源OFFの際にシャッター幕の状態を閉じる設定も可能だ。レンズ交換時にセンサーに対する埃付着リスクを低減するシールド的な働きが期待できる。

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タリーランプ

前面にタリーランプが配置されているため、第三者が撮影中であることを確認しやすい。もちろん、このタリーランプのON/OFFは設定で変更ができる。

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動画作例とファーストインプレッション

動画作例

今回撮影した作例も筆者が普段撮り慣れている被写体を中心に撮影を行った。8K撮影の場合はRAW、4K120pの場合はXF-HEVC 10bitをメインに撮影を行っている。また、ポスト処理でのグレーディングとハイライト側のトーンを重視してCanon Log3での撮影を行っている。EOS R5 Mark IIでのCanon Log3でのベース感度はISO800となっており、昼間の撮影はISO800での撮影が中心となっている。また、夜間の撮影ではISO6400を上限として設定を行っている。

動体に関してはサーボAF(オートフォーカス)を多用して撮影を行ったが、夜間の点光源でもAFの迷いは非常に少なく、ほぼAF任せの撮影を行うことができた。航空機の場合は「乗り物」として被写体検出を行うことで高い精度でAFトラッキングが可能となっている。

8K撮影においては流石と思える解像感を感じることができた。そして、多画素ながら筆者が想像していたよりもEOS R5 Mark IIの動画撮影は高感度に強いという印象を持った。

また、60p撮影においては基本的に8KRAWでの撮影を試みた。これはEOS R5 Mark IIの4K60p H.265/H.264の圧縮コーデック記録では8Kオーバーサンプリング4KFine設定ができないことに関係しているのだが、それについての詳細検証は別途後述したい。

作例撮影に使用したレンズ

超望遠撮影以外は編集部よりお借りしたRF24-105mm F2.8 L IS USM Zをメインに使用した。重量は1330gとかなり重量級のレンズだが、これ一本で24mmから105mmをF2.8通しでカバーする利便性と高画質を実現しているレンズだ。

さらにこのレンズはパワーズームアダプター(PZ-E2)との組み合わせによって電動ズームが可能になる。こうしたオプションが用意されている点は動画撮影者として嬉しいポイントである。なお、今回は撮影中にズーミング操作をしなかったためPZ-E2の出番はほとんどなかったが、記録撮影で威力を発揮する組み合わせだと思う。

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RF24-105mm F2.8 L IS USM Zにパワーズームアダプター(PZ-E2)を装着した状態

このパワーズームはカメラ本体側で操作ができるように設定できる。ズーム速度を落とせば手動操作では不可能な低速ズームも行うことができるため、様々な使い方が想定できるだろう。

もう一本は超望遠で使用したレンズでEF400mm F2.8 L USMだ。友人から借りている古いEFマウントの機材だが、夜間の超望遠撮影で多くの撮影で使用しているレンズだ。これにキヤノン純正のドロップインフィルタマウントアダプターを介して撮影を行っている(型番:DP-EF-EOSRND)。

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古いEFレンズ(EF400mm F2.8 L USM)だが動画撮影で使用した限りAF動作も全く問題なく使用でき、さすが純正同士の組み合わせと思わせるものだった。このアダプタはNDフィルタや可変NDフィルタを後玉の後ろにドロップインして使用できるため、昼夜問わず使用できる点は素晴らしい。

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撮影に関して

前述のように撮影は主に8K30pRAW、8K60pRAW、4K120p HEVCフォーマットにて行った。撮れ高を稼ぐために筆者はこの3つのフォーマットをカスタム撮影モードC1~C3にそれぞれアサインを行って撮影に臨んだ。

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なお、カスタム撮影モードでは「登録内容の自動更新:する」に設定すると、それぞれのカスタム撮影モードでの露出やホワイトバランスの設定が自動更新されるので、フォーマットを頻繁に切り替えて撮影するカメラマンとっては非常に有効な手段となる。

また、赤枠のREC表示も近年では多くのカメラマンが対応しており、例に漏れずEOS R5 Mark IIでもREC状態の視認性が高くなっている。

操作系に関して

EOS R5 Mark IIの物理ボタンの数はかなり多い。ダイヤル類も3ダイヤルあるため、シャッタースピード、絞り、ISO感度をいずれも右手親指/人差し指のいずれかのワンアクションで変更できる点はありがたい。筆者のいつもと同じスタイルでそのまま撮影することができたのはこの3ダイヤル構成のおかげだ。

ただ、背面ダイヤルは十字ボタンを兼ねたものではなく、押し込みすることはできない。おそらくこれは筆者が使っていた頃のEOSからの変わらない伝統なのだと思うが、背面ダイヤルが4方向(十字)押し込みを兼ねている機種になれてしまっている筆者にとって、メニュー操作は少し煩わしいと感じることもあった。とはいえ単純に筆者がマルチコントローラーに慣れてないだけなので、この部分は慣れだけの問題なのだと思う。

動画撮影においてはデフォルトではシャッターボタンで録画開始ができない。

おそらくこの仕様はEOS R5 Mark IIの新機能である「動画記録中の静止画撮影機能」との兼ね合いになっているものだと思うが、やはり一等地であるシャッターボタンはREC開始/停止にアサインしたくなるのだ。

今回は動画撮影中静止画記録は使用する予定がなかったことから、下記の設定を行っている。

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RAWフォーマットに関して

8K30pRAW記録の標準ビットレートは2600Mbpsつまり325MB/sesのレートとなる。これは1TBのメディアの場合には50分程度の記録ができるビットレートだ。一方で軽量RAWを使用すると1670Mbpsつまり209MB/secのレートとなる。この状態であれば1TBのメディアを用意すれば80分弱の記録が可能だ。

HEVC/H.264記録に比べればデータレートが大きいが、非圧縮RAWに比べ標準RAWでは約20%のデータ量に、軽量RAWでは約13%のデータ量に圧縮して記録がなされている。

RAWとしては扱いやすいデータ量と言えるだろう。さらにSRAWを使用しかつ軽量RAWをしようすることで30p撮影では420Mbpsでの撮影となる。このフォーマットにおけるデータ量はH.264/H.265のLogGOPよりは大きいものの、RAWであることを意識させないほどファイルサイズが小さく記録できる。

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なお、上表をご覧いただくとおわかりかと思うが、RAW記録では4K120pは撮影できない。EOS R5 Mark IIでは全画素読み出しによる記録だけがRAW撮影の対象であり、画素混合(筆者が推測)である4K120pはRAW撮影ができない仕様となっているようだ。

なお、HEVC記録の場合は以下のように4K120p撮影がクロップなしで撮影できる。

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DaVinci Resolveでの現行対応

なお、EOS R5 Mark IIのいずれのRAWデータはDaVinci Resolveで現像を行うことが可能だ。

ポスト処理でのホワイトバランス、露出調整の圧倒的な自由度はRAWだからこそできるものである。

また、筆者は今回初めてミラーレスEOSの動画RAWファイルを扱ったが、DaVinci Resolveとの相性が非常に良いと感じた。というもの、EOS R5 Mark IIのRAWファイルのデコードはRAWファイルの割には非常に軽快だからだ。特に、書き出しの際にはH.254素材とはまではいかないもののRAWファイルとは思えないほどに書き出しが速いのだ。

画質印象

今回の作例ではポスト処理でのグレーディングとハイライト側のトーンを重視してCanon Log3での撮影を行った。

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ISO6400はノイズ処理を行えば十分実用範囲であり、ハイライトのロールオフも綺麗に描写すると感じた。また、光学ローパスフィルタを搭載しているためか、手持ちで空間周波数が高い被写体を撮影した際のチラつきやモアレをほぼ感じることはなかった。

熱停止に関して

熱停止に関しては公式サイトを見る限り、下記の表記がある。

「自動電源オフ温度:高設定時18分@8KRAW60p(軽量RAW)」

これは最も発熱が多い条件であるため、8K60pでの撮影での長時間記録はできない。

筆者は今回の作例を撮影するにあたって1カットの時間は長くても1分程度だったので熱停止する状況にはいたらなかったが、長時間記録を前提としての撮影は撮影フォーマットの選定を含めて、確実に完走できるように事前テストはしっかりするべきだろう。

なお、公式サイトを見る限りは自動電源オフ温度:高に設定すれば4K60pは120分以上の撮影が可能となっている。

動画性能に関する深掘り

Canin Log3/Log2の最低感度とゲイン切り替えと見られる挙動

EOS R5 Mark IIのLog2/Log3設定時の最低感度はISO800であり、ISO感度の違いによるダークノイズの傾向を見てたものが下記である(Canon Log3)。その結果、Canon Log 2/ Log3、どちらの場合もISO3200とISO4000の間で切り替わっているようだ。EOS R5 Mark IIは少なくともネイティブゲインが2段階あり、その切り替わりはISO4000のように思える挙動だ。

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つまり、照度が低い撮影の場合、ISO3200のような中途半端なISO感度で撮影するよりもISO4000で撮影したほうがよりクリーンな撮影ができるだろう。

今回の撮影でもISO4000のCanon Log3を多用したのはそのためだ。

ローリングシャッター速度(動画撮影時)

EOS R5 Mark IIではスチルの電子シャッター使用時の幕速は筆者の計測では6.2msec(約1/160sec)となった。

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一方で、動画(RAW)撮影時の場合の結果は以下となる。8K30pの場合と8K60pの場合では速度が異なる傾向で30pの場合は17.4msec(約1/57sec)、60pの場合は12.6msec(約1/79sec)という測定結果を得た。

この12.6msecという数値は8Kが撮影できるミラーレスカメラ(ローリングシャッター機)として最速値であるというのが筆者の認識だ。

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一方でSRAWを使った撮影においては8K30pと4K30pが同じ結果となり、8K60pと4K60pが同じ結果となっている。このことからもわかるようにSRAWは8Kからのオーバーサンプリング読み出しで、イメージセンサーの後段(画像処理エンジン側)での記録画素数を圧縮する処理を行っている可能性が高い。つまりSRAWは高解像度8Kを最大限に活かした4KRAW記録ができるような処理となっていると推測される。

コーデック毎の解像感の違い

RAWでの解像感比較

先にSRAW(4K30p/60p)は8Kからのオーバーサンプリング(推測)と記載したが、それぞれの解像感の違いについて調べてみたものが下記である。

以下は、4Kタイムライン上で8Kのままの素材とSRAW(4K)素材を配置し、書き出したものである。30pの場合、8KRAW素材(編集ソフト上でのダウンコンバート)と4KSRAWを編集ソフト上で4Kタイムラインに載せた場合では前者に軍配が上がるようだ。これはある意味当然の結果なのかもしれないが、より解像感を持たせた4K映像制作をする場合は8K素材を使う方が有利なようだ。

ただし、この差はあくまで解像度チャートを映した場合の結果であり、実際の撮影ではその差は感じにくいと思う。むしろ、8Kフル画素を活かした扱いやすい4KSRAWコーデックで撮れることが、この機種の最大のメリットなのかもしれない。

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H.265での解像感比較

次にXF-HEVC S YCC422 10bit(H.265)モードでの解像感の違いをみてみたのが、下記である。先ほどと同じように4Kでの書き出しを前提とした比較だ。

この場合 8K LongGOP ≒ 4K30p Fine Long GOP >4K120p/60p/30p Long GOP
となっている。これはH.265撮影の場合、4K30p Fineが8Kからのオーバーサンプリングから生成されているのに対し、非Fineの4K120p~30pが画素混合(推測)から生成されている画像であることが要因であるようだ。

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このような違いはあるが、RAWのケースと同様にあくまでこれらは解像度チャートに基づく比較であり、実際の被写体ではその差はあまり感じられないかもしれない。

60p/30pでは8K解像度が得られるRAW(60pの場合は軽量RAW)を選択し、4K映像を制作するのがクオリティ上はベストと言えるが、これは「メディアコスト」と「編集パフォーマンス」&「現像の手間」を度外視し、「クオリティ」だけを重視するのであればの話である。各自環境とメディアコストを鑑み、その費用対効果を考慮しコーデックを選ぶと良いだろう。

まとめ

思えば初代EOS R5の登場は8Kというキーワードは衝撃的だったものの、制作環境8Kを扱うにはやや時代が早すぎた感があった。だが、この3年でPCのパフォーマンスは向上し、当時よりも8K素材の恩恵をアマチュアでも十分受けられるようになったと思う。また、前述のようにEOS R5 Mark IIは8K解像度の恩恵が得られる扱いやすいSRAWを使った4K60pができる。そして、より解像感を求めるなら、8KRAW(60pの場合、軽量RAW)までを撮り切れる振り幅の大きさこそが、EOS R5 Mark IIを使うメリットだろう。

EOS R5のスペックは非常に魅力だったが、率直に言って、ユーザーがついてこれないという印象があった。しかし、EOS R5 Mark IIでは潜在能力を活かしつつ、幅広いユーザーが動画性能の恩恵を受けられるようになったといえよう。

スチルメインのユーザーにとっては、8K撮影と8K編集はハードルが高いかもしれないが、4Kでも8Kセンサーの恩恵が受けられるSRAW撮影もぜひ体験してもらいたい。

SUMIZOON|プロフィール

2011年よりサラリーマンの傍ら風景、人物、MV、レビュー動画等ジャンルを問わず映像制作を行う。機材メーカーへの映像提供、レビュー執筆等。現在YouTube「STUDIO SUMIZOON」チャンネル登録者は1万人以上。Facebookグループ「一眼動画部」主宰。「とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ」更新中。

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。