親指サイズの超小型ウェアラブルカメラとして、独自の映像表現を切り開いてきたInsta360 GOシリーズから、4K撮影に対応した最新モデル「Insta360 GO 3S」が登場。超広角FOVによるハンズフリーのノーファインダー(一人称)撮影やユニークなアングルからの撮影ができるアクションカメラのGO 3Sについて、その進化を検証する。

概要

Insta360から、初の360°カメラ以外の製品として、2019年に登場した初代Insta360 GOは、ウェアラブルカメラの存在と可能性を、一躍、一般市場に認知させた。その後、2021年には、GO 2が発売され、ケースがそのまま充電器やリモコン、スタンド、持ち手としても利用できるという商品企画がユニークであった。昨年、登場したGO 3においては、タッチディスプレイが実装されたアクションポッドに本体を取り付けることで、アクションカメラ的な撮影利用も可能となり、必要に応じて、本体単独でウェアラブルカメラとして使用できるという画期的な仕組みを具現化している。

そして、2024年6月13日に発売されたGO 3Sは、GO 3とほぼ同じサイズのまま、最大4K 30Pの動画撮影を達成した最新モデルである。

ハードウェアについて

Insta360 GO 3Sは、前モデルのGO 3同様、アークティックホワイトとミッドナイトブラックの2色のカラーバリエーションとなっている。

大きさは、25.6×54.4×24.8mmと、GO 3より奥行きが僅かに1.6mmほど厚くなっているが、殆ど同じサイズと言って良いだろう。本体の重さは、39.1gとGO 3より3.6gほど重くなっている。アクションポッドは大きさが画面格納時 63.5×47.6×29.5mm、画面展開時が63.5×86.6×29.9mm、重さは96.3gと、GO 3のものと変わらない。2.2インチフリップ式タッチスクリーンが搭載され、ライブプレビュー、設定、カメラコントロール、素材の再生等が可能になっており、バッテリー(充電)機能もある。本体と分離した状態でも、アクションポッドから、リモート制御ができるので、基本的には、スマホを必要としない。因みに、Insta360 GO 3アクションポッドはGO 3Sアクションポッドと互換性がある。

レンズは、4Kの解像度をサポートするために、GO 3のそれとは変更されて、F2.8 16mm(35mm換算)となっている。

演算能力が1.5倍のプロセッサーが採用され、従来よりも鮮明な映像の撮影を可能にしている。

カメラ本体の防水性能は、GO 3の水深5mに対して、GO 3Sは10mまでと、2倍に向上した(レンズガードを使用した状態で、防水等級IPX8。アクションポッドは防滴使用であり、防水非対応)。

ストレージは、内蔵のみの対応で、64GB、128GBの選択肢がある。4Kのデータ量に対応するためか、GO 3にあった32GBのモデルは、今回はラインナップされていない。

バッテリー容量は、GO 3と同じく、本体が310mAh、アクションポッドは1270mAhとなっている。連続録画時間は、カメラ単体で38分、アクションポッドと組み合わせた場合は140分(室温25℃のラボ環境において、スクリーンおよびWi-Fiを無効にして、「動画モード」の1080p@30fpsで検証)。

通常版には、カメラとアクションポッド、レンズガード、磁気ペンダント、簡易クリップ、ピボットスタンドが同梱されている。

その他、アクションキット、トラベルキット等があり、それぞれ目的に応じたアクセサリが用意されている。磁気ペンダントは熱放性が、簡易クリップは磁気強度が改善され、レンズガードにいたっては、新しい曲線デザインが採用されている。

また、多目的クイックリーダーは、充電しながら撮影データをmicroSDカードに速やかにバックアップすることができる。さらにファイルをダウンロードしなくても、スマートフォンで直接編集が可能になっている。

他のスマホアプリ使用中も、バックグラウンドでダウンロードを実行することができ、ファイルの準備が整うと通知が届く仕組みとなっている。

Insta360 GO 3Sは、2色展開
フリップ式タッチスクリーンを立ち上げて、自撮り仕様に
本体とアクションポッド。各々の内側に、充電端子が配置されている
Insta360 GO 3S通常盤を開封した状態
ピボットスタンド。カバーとベースを一緒に保つためのアタッチメントが付属されている。写真は、GO 3S本体を装着した状態
簡易クリップをキャップのつばに装着
磁気ペンダントを使って、TシャツにGO 3Sを装着。放熱性が改善された
別売りのモンキーテイルマウントを用いることで、手すりなどにGO 3Sを固定することが可能だ

画角や解像度について

画角においては、新たに「メガ広角」が、加わった。「メガ広角」は、広視野角であると同時に、垂直方向の歪みが補正されているので、都会のビルが映り込むような撮影などに適していると思われる。

その他のアングルには、「アクション広角」、「超広角」、「デワープ」、「狭角」がある。

動画の解像度については、GO 3の最大2.7Kに対し、GO 3Sは4K(3840×2160)30fps、最大動画ビットレートも80Mbpsから120Mbpsに増加している。GO 3の2560×1440 24/25/30/50fpsが廃止され、2752×1530 50fpsという選択肢が追加されている。スローモーション時のフレームレートは、GO 3のフルHDの最大120fpsに対し、GO 3SはフルHDの最大200fps、2.7K 最大100fpsとなった。フォーマットは、MP4だ。動画モードは、動画、FreeFrame動画、タイムラプス、タイムシフト、スローモーション、プリ録画、ループ録画、インターバル録画である。

4Kのクリップを、PCアプリのInsta360 Studioから書き出す際に、ドルビービジョンを適用したところ、シャープでビビッドな仕上がりが得られた。ドルビービジョンとは、ダイナミックレンジが拡大しトランスコーディングにより、細部のデティールが改善され、リアルな色表現に仕上がる技術である。YouTubeにアップした状態では、HDR動画として認識される。「標準」のカラープロファイルで撮影した作例と比較すると違いが判る。

静止画の解像度は、アスペクト比16:9の場合、4,000×2,250。4:3の場合は4,000×3,000、1:1は2880×2880、2.7:1では3968×1472となり、こちらも、それぞれ増加した。写真フォーマットは、JPEGとDNGである。写真モードは、写真、HDR写真、インターバル、スターラプス。カラープロファイルには、標準、鮮やか、フラットに加え、ポートレートが追加されている。

「アクション広角」
「メガ広角」
「超広角」
「デワープ」
「狭角」

4K 30fps メガ広角「標準」(カラープロファイル)

4K 30fps ドルビービジョンを強化

    テキスト
静止画作例 4000×2250(16:9)PureShotを適用
※画像をクリックして拡大

新たな特徴について

次に、GO 3Sに備わった新機能や、改善点をみていこう。

手ブレ補正

手ブレ補正は、「オフ」、「標準」、「高」、「最大」が選択できる。手持ち、車載、スポーツと撮影内容に応じて、使い分けていきたい。以下に、比較の作例動画をアップしている。

手ブレ補正「標準」

手ブレ補正「高」

手ブレ補正「最大」

傾き補正

​​​​​​補正をオンにすると、最大10°以内の傾きを水平補正するので、水平を取りにくい状態で撮影をする場合に便利だ。ただし、「アクション広角」を選択している場合には、この機能はサポートされない。

簡単切り替え

GO 3Sでは、スマートフォンのように簡単にアスペクト比を変更できるようになった。GO 3 Sを横使いに構えれば横型に、縦使いに構えを変更すれば縦型のアスペクト比に、自動的に素早く変更ができる。

ズーム機能

アクションポッドのアイコンを長押しすることで、最大2倍までズームを利用できる。もちろん、アプリでも操作は可能だ。段階的なズーム指定もできる。

最大2倍のズーム機能が利用できる

1倍〜2倍へのズーム切り替え

スローモーション 2.7K 100fps

スローモーション 1080p 200fps

インターバル録画

新たに追加されたインターバル録画機能では、設定した間隔で、一定の時間、断続的に動画を撮影してくれるので、撮影行為を意識せずに、行動や体験を自動的に記録することができる。定点観測的な記録撮影にも有効だ。撮影後は、Insta360アプリの自動編集によって、ハイライトシーンを分析、抽出して繋ぎ合わせて、BGM付きの動画に仕上げてくれる。GO 3Sを、マグネットペンダントや簡易クリップに装着して、無意識にVlogや旅の記録を撮影することで、後から思わぬ発見が得れることもあるのではないだろうか。

インターバル録画は、設定メニューから選択することになる。一連の撮影モードの中には配置されていないので、迷わないようにしたい。

インターバル撮影した動画を、Insta360アプリの「Flashcut」のテンプレート「日常の記録」を用いて、自動編集した作例動画

Apple Find My

GO 3Sには、iPhoneやMacBook等のApple製品を失くした際に使用する「探す」アプリを用いて、カメラを探し出す機能も追加されている。超小型サイズであることは、メリットであると同時に失くしてしまう恐れもある訳で、万一の事態にも備えることができるのは有り難い。「探す」アプリを使って、GO 3Sの位置を特定するためには、最新バージョンのiOS、iPadOS、macOSを使用することが推奨されている。

AIジェスチャー制御

GO 3Sでは、ジェスチャーによって、ハンズフリーの操作も可能である。手の届かない場所にカメラを設置している場合や、周囲がうるさくて、音声コントロールが使用しにくい場面等で、手軽に自撮りや集合写真を撮影することができるので便利だ。用いるジェスチャーは、カメラに手の平を向けることで、動画の撮影が、ピースのサインで写真撮影が開始される。テストしたところ、まるで魔法のように遠隔での撮影開始と停止が可能となり、スムーズな反応であった。0.4~1.2mの距離が、ジェスチャーを認識しやすい。

日本語音声操作

GO 3Sは、日本語音声による操作が可能になっている。録画開始、録画停止、写真撮影などのコマンドを音声指示によりコントロールすることができる。こちらの反応も良好であった。

音声設定

GO 3Sの音声設定は、「風切り音低減」、「ステレオ」、「方向性強調」の3択になっており、従前から変更はない。「風切り音低減」は、以前はくぐもった音質になりがちであったが、かなり改善された印象だ。以下に、比較の作例動画をアップしている。

風切り音低減

ステレオ

方向性強調

まとめ

GO 3Sは、ネーミングから鑑みると、マイナーチェンジモデルのような印象を受けるが、解像度が4Kになった点はもとより、画角に「MEGAビュー」が追加されたり、インターバル録画や縦横のアスペクト比を自動で認識する点など、大きな改善が見られる。主にVlogやプライベートな使用目的が思い当たるが、解像度が増加してことで、仕事や作品の撮影にも組み入れやすくなった。既存のカメラやスマホでは撮れないクリエイティブなアングルに挑戦してみたくなる。

その他、傾き補正、ズーム機能、AIジェスチャー機能、日本語音声操作、Apple Find My機能など、徹底的にユーザーの使い勝手を追及するInsta360の発想と姿勢は流石である。

キッズ・モードも実装されており、ボタン操作の無効、通知音のオフ、インジケーターランプの減光により、誤操作を防止する。

Insta360 GO 3Sの価格は通常盤の64GBモデルが税込61,800円、128GBのモデルが税込65,800円、カメラ単体の場合、64GBが税込36,800円、128GBが税込41,800円、アクションポッドのみが税込22,800円となっている。

2.7K 50fps 雨中の中、地面に直置きで撮影。
カメラ本体はハウジングなしで防水仕様であるから、水中はもとより、雨中の撮影も、ある程度、トライできるだろう

WRITER PROFILE

染瀬直人

染瀬直人

映像作家、写真家、VRコンテンツ・クリエイター、YouTube Space Tokyo 360ビデオインストラクター。GoogleのプロジェクトVR Creator Labメンター。VRの勉強会「VR未来塾」主宰。