
Z5の登場から5年。ニコンは2025年4月25日、フルサイズミラーレスカメラ「Z5II」を発売する。
Z5IIは、Z6IIIほどの動画性能は求めないが、Z5やZfでは物足りない──そんなユーザーに向けて、最も"ちょうどいい"1台だ。かと言って動画性能は決して低くない。むしろそこまでやるの?という機能まで入っている。
レフ機時代におけるエントリーモデルといえば、上位機種との性能差が大きいことが常だったが、ミラーレス時代の現在、その差は着実に縮まってきている。価格を抑えるために機能を削るのではなく、用途やスタイルに応じて"必要な機能を選んで載せる"というアプローチに変わってきた。今回紹介するZ5IIも、まさにそんな哲学を体現する一台だ。
本記事では、Z5IIの映像機能を中心に、写真機能にも触れつつ、その実力を詳細に検証する。
見た目はZ6III、中身は本気。Z5IIの外観と操作性をチェック

Z5IIの外観は、先に登場したZ6IIIとの類似性は非常に高く、一見しただけではどちらの機種か判断に迷うほどだ。サイズはZ5より若干厚くなったが、手に持った感触はしっかりしておりZ6IIIなどと遜色はない。
上面の液晶ディスプレイがなく、モードダイヤルが右肩に移動している点は先代のZ5から継承されている。これはこれで片手でモード切り替えもできるので便利に感じた。
ボタンやダイヤルの配置は、Z9以降のニコンZシリーズのレイアウトが基本的に踏襲されており右手操作に集約されている。Z9以降の既存のユーザーであれば迷うことなく操作できるであろう。

レンズマウント横のファンクションボタンも上位機種と同じく2個付いている。ニコンのカメラはホールドする小指以外の指でボタンやダイヤルの操作をするので操っている感覚がとても楽しい。各ボタンをカスタマイズすると自分の体の一部として使うことができる。

その他の特徴として、以下が挙げられる:
- SDカードダブルスロット(UHS-II対応):Z6III以上の機種はCFexpress TypeBを採用しており、RAW動画や写真の連写などの書き込み速度においてZ5IIは少し劣る。ただしZfはSDとmicroSDのダブルスロットなのでZ5IIの方が上だ。

- 入出力端子:USB-C(給電可)、Micro HDMI、マイク、ヘッドフォン、リモートコード HDMIはフルサイズでなくMicroとなる。

- バリアングル液晶:210万ドットに進化

- EVF:約369万ドット/3000nitsの明るさで、Z6IIIに迫る視認性
- ピクチャーコントロールボタンを新設:Z50IIにも付いていたピクチャーコントロールボタンが付き、気軽に素早く気分に合わせ動画や写真の色合いを変えることができる。

- タリーランプは残念ながら非搭載:下の写真はZ50IIのタリーランプ部。映像撮影にはタリーランプがあると便利だったのだが。

- 手ぶれ補正機能:中央7.5段、周辺6.0段。望遠レンズで手持ち撮影も安定した撮影ができた。
- サイズ・重量:134×100.5×72mm/約700g(バッテリー・カード含む)。Z5(675g)より微増、Z6III(760g)より約60g軽くなっているが、実際手にしてもその差はほとんど感じない。
Z9/Z8と同じ心臓部「EXPEED 7」搭載。高速処理と快適操作の源
Z5IIの心臓部である画像処理エンジンは、最新世代の技術が惜しみなく投入されている。Z9やZ8と同じく最新の画像処理エンジン「EXPEED 7」を搭載。これにより起動やメニュー操作から画像再生、そして高速連写にいたるまで、ストレスを感じる場面はほとんどない。
起動後すぐに録画開始が可能。電源スイッチをオンにする動作から約2~3秒後には録画が開始している。個人的な願望だが、REDから今後登場するであろうシネマカメラにもEXPEEDを積めば起動が早くなるのではないかと考えてしまう。
顔も動物も、電車も飛行機も。Z5IIの"賢さ"を体感できるAF性能
9種類の被写体形式、人物、犬、猫、鶏、車、バイク、自動車、列車、飛行機。AF速度や認識に関して、比較はしていないが極限状態でなければ上位機種と遜色ないのではないだろうか?それくらいスムーズに認識した。山の中を歩いていたら突然現れたカモシカさんにもばっちりピントを合わせてくれた。

夜の撮影も安心。Z5IIのAFとセンサー性能
Z5IIは2450万画素の裏面照射型CMOSセンサーを採用。実際の暗所AF性能は-10EVを実現。Z5の-4.5EVから飛躍的に進化しており、暗所でも確実な被写体検出が可能になったそうだ。目視で確認したがこのセンサーは、Z6IIIに搭載されている部分積層型CMOSセンサーとは異なる。-10EVはZfと同じなのでセンサーもZfと同じものかもしれない。

映像表現の要となるISO感度については、最高感度はISO51200。N-Log撮影時にネイティブISO 800と6400の2つの感度を基準として切り替わる。ISO4000などを使うより一気に6400まで上げてしまった方がノイズが減る場合もある。
バッテリー性能は?
Z8、Z6IIIと同じEN-EL15cを採用。連続記録の実測ではN-RAW、H.265ともに約1時間30分程度でバッテリーが切れた。十分な駆動時間と言えるだろう。さらに長時間記録する場合はモバイルバッテリーなどからUSB-Cを使って給電するような使い方が良いだろう。

この価格帯でRAW動画? Z5IIの映像機能を本気チェック
驚くべきことに、Z5IIはN-RAWの内部記録に対応している。SDカードでの運用になるため、データ容量の大きいProRes RAWは非対応だが、それでもこの価格帯のモデルでN-RAWが使えること自体が異例だ。なんの前情報もない状態でカメラをチェックしていて「N-RAW」の文字を見た時、思わず変な声がでてしまった。
この価格帯で動画内部RAW収録ができるのはBlackmagic DesignのPoket CameraシリーズとLUMIX GH7くらいだが、フルサイズセンサーなのはZ5IIだけだ。N-RAWは扱いやすいのでこれを機にぜひ試してほしい。
主な動画性能は以下の通り:
- N-RAW収録対応:4K30P/24P。FX(フルフレーム)とDX(クロップ)で撮影可能。ビット深度は12bit。他の機種ではN-RAW動画の画質の選択ができたが選択はできない。ファイルサイズ的に標準画質だと思われる。SDカードの書き込み速度による制限と推測できる。
- H.265(LongGOP、4:2:0 10bit)収録:ビット深度は10bit。4K UHD 60P(1.5倍クロップ)4K 30P/24Pはフルフレーム、FHD 120P対応
- N-Log対応(RED監修のLUT使用可能)
- 商品レビューモード、動画セルフタイマー:液晶を反転させるとそれぞれのボタンが現れる。「商品レビューモード」はカメラに近いものにピントを合わせてくれるので顔にピントが引っ張られず、商品にピントを合わせてくれる。「動画セルフタイマー」は2秒と10秒が設定できる。YouTube動画を作る際など、少しでも前の余白を減らし編集を楽にしてくれる。


熱停止の有無と持続時間を検証
4Kを超える高解像度で撮影をする近年のカメラは熱処理との戦いである。室温約20℃各フォーマットで連続記録し熱による停止までの時間を計測した。
- N-RAW 4K30P:途中で停止することなく2時間5分※を2周、記録することができた。
- H.265 4K60P:3回計測した内、2回は2時間5分を途中で停止することなく記録することができたが、1回は1時間20分で温度上昇マーク、1時間35分で停止した。
※ニコンのカメラは2時間5分で一度停止する。
N-RAWは画像処理エンジンの負荷がH.265より低いのとSDカードがCFexpressより発熱が少ないので停止することなく記録できたのだと推察できる。
自分だけの色が作れる。あのクリエーターの色が使える。Z5IIの"フレキシブルカラーピクチャーコントロール"
ニコンのカメラは元々、ピクチャーコントロールによりいろいろな色味で撮影をすることができたが、昨年発売したZ6III以降新たに「フレキシブルカラーピクチャーコントロール」が追加された。ニコンの純正現像ソフト「NX STUDIO」を使って作った色味をカメラ内に取り込むことができる。フレキシブルカラーはLUTよりも多くの情報(シャープネスなど)も反映することができる。
またNikon Imaging Cloudには有名クリエーター(現在32人)の作ったフレキシブルカラー用のレシピが公開されており、気になるクリエーターの色味をカメラに取り込むことができるので、自分で色を作るのが苦手な人も楽しむことができる。動画の場合はSDR時のみ使用可能だが、完成の色味を見ながら撮影できるのは大きな利点だ。
機能面の項目でも紹介したが右上部に追加されたピクチャーコントロールボタンを押せば素早く登録したカラーを設定できる。

RED監修LUTで、映画のような色をZ5IIで
昨年子会社化したRED社監修のN-Log用のLUTで簡単にシネマカメラのようなしっとりとしたフィルム調の色合いを再現できる。筆者も最近はこのLUTをベースにカラーグレーディングを行っている。あらゆるシーンにマッチするLUTなので、ぜひ試してみてほしい。
Z5IIでN-RAW / N-Logを使用して撮影。RED監修N-Log用LUTで色付けをしました。一部露出を軽く調整した以外は修正をしていません。手軽に落ち着きのあるシネマルックを表現できるのはいいですね
※このサンプル映像はZ50IIで撮影しています
実際に使用して感じたZ5IIの魅力
Z6IIIの映像機能が"やりすぎ"なくらい強力だったため、Z5IIはそのスチル寄りバランスモデルとして登場したのかと思っていた。だが、触れてみると印象は変わる。Zfの中身の再構成だろうという先入観は裏切られ、最新世代のテクノロジーがきちんと注がれていると感じた。
Z9などの上位機種で培ってきた技術を成熟させ搭載したのが、このZ5IIだ。ハードウェア的に可能なことは全て注ぎ込む。使うかどうかではない。「選択肢はユーザーに預け、機能は惜しみなく提供する」という、最近のニコンの姿勢が、このZ5IIにも貫かれている。

性能や価格を見てもZ5II(約25万円)はZ5(約18万円)よりZ6II(28万円)に近いポジションで、Z6III(43万円)と比べて約18万円もの差がある。Z5の正統な後継でもあるが、Z9を頂点とする最新世代の技術を、手の届きやすい価格帯に落とし込んだ良機と言える。
カメラを購入する際、価格も重要な要素であるが、Z5IIは数年で陳腐になるような技術でなく、ここから先数年、間違いなく長く愛着を持って使えるカメラだ。

製品情報
- 製品名:ニコンZ5II
- 発売日:2025年4月25日
- 価格:オープン
市場想定価格
Z5II:税込258,500円
Z5II 24-50 レンズキット:税込299,200円
Z5II 24-200 レンズキット:税込358,600円
井上卓郎(Happy Dayz Productions)|プロフィール
北アルプスの麓、長野県松本市を拠点に、自然やそこに暮らす人を題材とした映像作品を自然の中にゆっくり溶け込みながら作っている。現在は企業や自治体のプロモーション映像や博物館などのコンテンツを中心に、映像作品を手がけるかたわら、ライフワークとして自然を題材とした作品を制作しています。一応DaVinci Resolve認定トレーナー。
代表作:ゴキゲン山映像「WONDER MOUNTAINS」シリーズ、「くらして歳時記」など
WRITER PROFILE
