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受信部、ヘッドセット、バッテリーが一体化のリーズナブルなヘッドセット登場

放送や映像に関わる業界やイベント業界では必需品と言っていいインカムだが、放送局で使用しているようなものは高価で高性能だが運用も難しいし、イベントなどで使われているような特定小電力トランシーバー等では安価であっても性能的には混線やノイズで聞きにくい場合なども多いだろう。ここに切り込む形でHollylandもヘッドセットインカムを提供している。そして昨年から新たなフラッグ機として販売を開始しだしたのが、ヘッドセットインカム「Solidcom C1 Pro」(以降:C1 Pro)だ。

放送局等でよく使われているインカムは受信部とヘッドセットが別々になっていて、取り扱いに注意が必要だったりすると思うが、C1 Proは受信部とマイクがヘッドセットに収められており、バッテリーもホールド部分に押し込む形で一体化されていて、軽量でありながら取り回ししやすいのが特徴だ。

また放送業界などでも広く使用できるよう、首掛けスタイルで使うこともできるC1 Pro In-Earバージョンも昨秋から販売を開始。ただネックになるのは価格帯だ。4本のセットで20万円を超えてしまう。

そうなると製品としては出来が良くても購入するには二の足を踏んでしまうわけだが、今回紹介する「Solidcom SE」(以降:SE)は4本セットで7万円台と格段にリーズナブルで、小規模チームにとっては本当に使い勝手の良い商品になっている。今回は簡単にSEの使用感と性能説明、またどのような場面で有効に使用できるかも提案させてもらいたい。

高性能なのに安価で小規模チームに特化したSolidcom SE

今回、撮影スタッフ2人での保育園の運動会撮影と、小規模のスタジオでブースとフロアがガラスで仕切られている状況でSEをテストした。

まずSEの外観はC1 Proと同じように受信部やマイクはヘッドセットに、バッテリーはホールド内部に差し込む形で一体化されている。重量もバッテリー込みで約190gと軽量。イヤーパッドは大き目で耳をすっぽり覆う感じがフィットしやすく、ヘッドセットの方向も左右お好みで切り替えることもできる。サイズ調整もヘッドフォンと同じように無段階ではないが、ヘッドセットとホールド双方で軽快に行えるので柔軟性が高く、長時間の装着でも圧迫感のない付け心地だ。

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作業環境で気になるのは騒音だと思うが、当然のようにノイズキャンセル機能が搭載されている。保育園の運動会で使用した感触では、かなりよい具合でノイズキャンセルを行ってくれる。イヤーパッドが耳を覆ってくれるので、ノイズキャンセルと相まって相手の声は聞き取りやすいものだった。

運動会の撮影などでは汗だくになってしまうわけだが、SEは防水仕様となっているため多少の雨や汗などで使用できなくなることはない。ただ完全防水ではないということなので過信は禁物だが、安心できるのも事実だ。

通信に関してもとても良好だ。ガラスで阻害されることもなく、体育館の端と端でも問題なく通信できる。カタログスペックでは350mの伝送距離が確保されているとのことで、頼もしい限りだ。そしてこの伝送距離でありながら2.4G帯を使用し、自動周波数ホッピング機能も備わっているのもうれしい。当然技適マークも取得済みなので、電波法も気にすることなく免許なしで使用可能なのだ。

SEは親機1台に対し子機4台まで接続が可能で、最大5人で使用することができる。販売セットとしては2台セット、4台セット、5台セットと用意されており、チーム規模に合わせて購入することができる。またPTTボタンを押すことでマイクをミュート状態にしたり、ミュート状態でPTTボタン長押し状態で一時ミュート解除できるPTT機能が備わっている。電源を入れればマイク部分のLEDインジケーターが点灯し、ノンミュート状態は緑、ミュート状態は赤く点灯し、現在の状態が容易に判別できる気の利いたつくりになっている。

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バッテリー使用時間は子機で12時間、親機で10時間と長時間使用でき、バッテリー充電ベースも付属している。セットには持ち運びに便利な収納ケースも付属されており、SE一つ一つを袋に入れて収納できる。またイヤーパッド等の交換もできるようにアクセサリーが充実しているのもありがたい。

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さて、インカムといえばやはり首掛けスタイルが定番と言えるだろう。では、SEは首掛けスタイルで使えるのだろうか?

SEは首掛けスタイルができてしまう。価格は半額以下だが首掛けスタイルが可能なのだ。ただし、Hollylandの USB-C-3.5mm変換ケーブルを別売で購入し使用しなければならない。

この価格帯でここまで機能が充実しているのだから、2人以上5人未満のチームには最適なインカムだと言えるだろう。

どのような場面で有効に使用することができるか?

放送局や大型のスタジオではやはり5人以上で使用することが多くなるわけだからSEとしては力不足というか、接続数不足なのは当然だろう。ではどのような場面で有効に使用できるか考えてみよう。

今回私がテストで使用していた場面ではとても有効に使えた。少人数での屋外屋内を問わない撮影チーム。小規模のスタジオでガラスなどでフロアとブースが仕切られている場合。少人数での撮影に関しては、撮影するカメラマンの意思疎通が無駄な撮影を行わなかったり、撮影漏れを出さないためには必要で、SEで自分が何を撮っているのか、サブカメラマンにここを撮影してほしいなどの指示を出すことで、無駄な撮影や撮り逃し等を格段に防げる。

小規模のスタジオでも、隔絶された空間では指示を伝えるためにドアを開閉しなければならないなどの手間と時間がかかってしまう。SEでそのままコミュニケーションが行えればそんな手間と時間はかからないのだ。

このほかにも似たような状況で言えば、結婚式などではSEはとても有効だと思う。撮り直しができない状況ということで、失敗は許されない。そんな状況でマスターカメラマンとサブカメラマンで事前に打ち合わせをしていても、現場は千差万別、状況は刻々と変わるわけだからリアルタイムでのコミュニケーションが必要なことは往々にしてある。

そんな時にもSEを使用していればその場を離れることなく指示を出せるのはパフォーマンス向上にもつながるだろう。これはビデオであろうとスチルであろうと言えることだと思う。

撮影などに関わらない小規模のイベントなどでも活用できるだろう。スマホなどでも代用することは可能だが、ハンズフリーというメリットはやはり大きい。お客様対応などで両手を使わなければならない場合、通信相手とコンタクトするためにスマホを手に対応することは難しい。SEであれば指示だけを聞くのであればミュートにして、必要な時にボタンを押してミュートを解除ということも簡単に行える。

そして私がSEを使って一番の使いどころだと思ったのはドローンチームで使用することだ。ドローンの操縦者はドローンの飛行中には基本的に機体から目を離すことはできない。本来、プロポのモニターを見ることも許されていない。機体を見ずに飛行させるためには目視内の限定を解除する必要があることから、複雑な操作が伴う通信装置は使用できない。

そこで補助者などとの通信をSEで行えばハンズフリーでリアルタイム、ノイズキャンセル機能で明瞭なコミュニケーションをとることができ、安全第一のドローンの現場では必ず重要なアイテムとなるだろう。

このように小規模のチームに特化した手に入れやすい価格帯のSEは、仕事のクオリティーとともに効率も格段にあげてくれるヘッドセットインカムだということは間違いないだろう。

小山田有作|プロフィール
you-artsの屋号で映像の仕事を始めて20年。企業PVやセミナービデオなどを中心に、ディレクションから撮影、編集に2DCGの作成などを行っている。スチルの撮影もこなし、現在はYouTubeの番組制作も携わっている。

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。