DJIからお手軽価格の「DJI Goggles N3」登場!FPVのハードルがさらに下がるか?[OnGoing Re:View]

DJI初の廉価版FPVゴーグル

DJIはこれまでに没入感あるFPV操縦+マニュアル操縦が可能なドローンのラインナップとして、日本国内ではDJI FPV、DJI Avata 2、DJI Neoを発売してきた。

これらは無線免許の要らない2.4GHzを使用、RTF(Ready to Fly)タイプであり、従来の5.8GHz帯の電波を使用し、機体の自作や設定など専門的な知識が必要だったFPVドローン導入のハードルを下げてくれた。

中でも先日発売された「DJI Neo」は、機体単体価格が税込33,000円という驚きの安さで、FPV飛行にも対応。ただしNeoのFPVゴーグル操縦に必要な「DJI Goggles 3」は税込72,600円。送信機も合わせると機体価格が安いNeoでもセットで10万円オーバーとなる。

この価格面で、Neoでゴーグル操縦をやってみたいが購入に踏み切れないユーザーも多かったと思う。

今回発表された「DJI Goggles N3」はそんな層を狙って税込34,320円(ゴーグル単品価格)と低価格でリリース。さらに驚きなのが、「DJI Neo Motion Fly Moreコンボ」(DJI Neo、Goggles N3、RC Motion 3、バッテリー3個、充電ハブ1個のセット)が税込79,200円というところ。

無線免許不要かつハイクオリティなFPV飛行を8万円以下で実現可能にしてしまうとは、DJI恐るべし…。

本記事ではDJI Goggles N3の細かい特徴や使用感、DJI Goggles 3との違いについて紹介。また本製品がマッチするユーザーについても考察する。

DJIからお手軽価格の「DJI Goggles N3」登場!FPVのハードルがさらに下がるか?[OnGoing Re:View]

単眼式と2眼式の違い

まずDJI Goggles N3は単眼式ゴーグルである。従来の自作FPVドローンユーザーにはお馴染みだが、FPVゴーグルはVRゴーグルと同様に、両目で1つの画面を見る「単眼式」、両目で別々の2つの画面を見る「2眼式」の2種類がある。それぞれの特徴は以下の通り。

単眼式

  • 1つの画面を両目で見るため没入感はあまりない
  • 視度調整機能がないが、メガネをかけたまま装着可能なものもある
  • 構造上大きくてかさばるので、持ち運びが不便
  • 重心が偏りがちで、付け心地はあまりよくない
  • 低価格のものが多い

2眼式

  • 両目で2つの画面を見るので単眼式よりも没入感がある
  • ただしVRゴーグルとは異なり両目とも同じ画面なので、立体視は不可
  • コンパクトなデザインで持ち運びしやすい
  • メガネは使用不可だが視度調整機能付きのものもある
  • 高価格のものが多い

余談だが、単眼式ゴーグルは見た目が素潜り漁で使う水中メガネに似ていることから、一部FPVドローン界隈では「海女さんゴーグル」と呼ばれていたりする。

自作FPVドローンを使ったレースや撮影の現場では圧倒的に2眼ゴーグルユーザーが多くみられる。

DJI Goggles 3は2眼式だが、今回のDJI Goggles N3は単眼式だ。ここがN3ゴーグルの低価格を実現している大きな要因だと思われる。

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写真左:Goggles N3 写真右:Goggles 3
N3は両目の仕切りはあるが1画面を見る単眼仕様

使用感

装着感はなかなか良い

実際に装着してみると、単眼式のデメリットである重心の偏りによる付け心地の悪さはほとんど感じない。

そもそもこの重心の偏りの原因は、一般的な単眼式ゴーグルが本体部分にバッテリーを内蔵している場合が多く、重心が前に行っているためである。

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写真左はアナログ映像受信用単眼ゴーグル。前方に重心がありゴムバンドの力で支える
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Goggles N3、Goggles 3はどちらも装着用バンド後方にバッテリーを配置しているため前後のバランスが良い

DJI Goggles N3と3はどちらもバッテリーを後ろにつけることでカウンターウェイトの役割を果たし、前後のバランスが取れている。さらに両者の重量差は60g程度しかない。

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実際に装着しているところ

見た目は明らかにN3が大きいが、装着感としてはあまり変わらない印象だった。

光漏れがほとんどない

多くの日本人がFPVゴーグルを装着する際の悩み…、それは鼻が高い外国人向けに設計されたフォームパッドが平たい顔にフィットしないことだ。

これによりゴーグルと顔に隙間が生じ、視界に外光が入ってきてしまうため没入感の質が下がってしまう。

DJI FPV用の「DJI FPV Goggles V2」はこれが顕著で、フォームパッド交換等の対策をしないと光漏れが気になる状態であった。Goggles 3ではかなり改善されているが、筆者の場合は少し光漏れが残っていた。

今回のN3ゴーグルではその光漏れがほとんどないと言っていいレベルになっており、多くの日本人ユーザーにもフィットする形状になっている。

メガネに対応。大きめでも余裕あり。

N3ゴーグルは眼鏡をかけたままでも装着できる。これはDJI FPVのGoggles V2でも可能ではあったが、筆者が常用しているラウンドタイプで大きめの眼鏡だとかなりぎりぎりで、脱着時にゴーグル内で干渉し、ずれてしまうこともあった。

N3はV2ゴーグルよりさらに余裕がある設計になっており、筆者の眼鏡をかけたままでも余裕で装着可能。さらに大きめの眼鏡でも対応可能だと思われる。

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ラウンドタイプの眼鏡でもまだスペースの余裕がある

細かなスペック、比較

DJI Goggles 3、DJI Goggles N3のスペックを表にまとめてみた。

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Goggles N3はGoggles 3と比較し、以下のような違いがある。

ポジティブ面

  • 価格が安い
  • 視野角が広く迫力あるFPV映像
  • 伝送距離がそのまま同じ
  • ヘッドトラッキングなどの機能はそのまま同じ
  • 新機能のARカーソル対応

ネガティブ面

  • リフレッシュレートが60Hzまで
  • 対応機種がAvata 2、Neo限定
  • リアルビュー(ゴーグル外に搭載されたカメラ映像を投影)機能が非対応

これらを総合的にみて、コストパフォーマンスは抜群に高いと感じる。

新機能

DJI Goggles N3は廉価版ながら新機能も搭載されている。なかでも特徴的なのがARカーソル機能。

これはDJI RC Motion 3とペアリングすると、AR(拡張現実)カーソルを使用して、機体の離陸前、またはブレーキの作動中やホバリング中に、ゴーグル内の各種カメラ設定などを調整したりできる機能である。直感的な操縦が可能なモーションコントローラーの使用感をさらに向上させる機能であり、特にVRゲームに慣れた層には馴染みやすいものだと思う。

Goggles N3がマッチするユーザー

Goggles N3は低価格ながら必要十分な機能を備えたFPVゴーグルである。特に初めてのFPVドローン操縦を手軽に楽しむためのセットとしては、税込79,200円のDJI Neo Motion Fly Moreコンボ(DJI Neo、Goggles N3、RC Motion 3、バッテリー3個、充電ハブ1個のセット)が完璧と言っていいレベルの製品に仕上がっている。

さらに本格的なマニュアル飛行を行う場合はDJI FPV Remote Controller 3の購入、そしてさらに本格的な撮影を行う場合はAvata 2の単品購入、といったステップアップの流れができているところもさすがはDJI、といった感じだ。

手軽にNeoでFPV操縦を楽しみたい人から将来的にAvata 2で本格的なFPV空撮を行いたい人まで、幅広い層にマッチする製品だと思う。

藤倉昌洋|プロフィール
新潟県在住のドローンオペレーター。株式会社NK2-Tech代表。YouTuber「NANKOTSU」としてドローン初心者向けの情報を中心に配信中。

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編集部

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。