AVCCAMからVARICAMまで半導体メディア収録が標準に
パナソニックの2008年は、フラッシュメディア記録カメラレコーダーの年だったと言っても過言ではない。4月のNAB Showで新製品発表したP2HDのほか、業務用では初めてAVCHDフォーマットを採用したAVCCAMなど、振り返ってみればテープ収録が出来る機種はほとんど無かったに等しい。
P2HDやAVCHDのカメラレコーダーに対して、性能に疑問を持つ人もいるかもしれない。しかし、最近の機種はさすがパナソニックと言えるもので、性能は着実に向上している。P2HDカメラレコーダーAJ-HPX3000Gを使用して、実際に映画の撮影も行ったが、暗部(夜中の照明がほとんど使えないような場所)でもノイズは極めて少なく、暗部・明部ともに凄い描画力を見せてくれた。このAJ-HPX3000Gをベースに、VARICAMの機能を上乗せして今秋発売となったのが、AJ-HPX3700G/AJ-HPX2700Gだ。この2機種は、間違いなく性能を発揮してくれるだろう。AJ-HPX3700Gで残念なことは、バリアブルフレームレートが1〜30fpsまでであること。「VARICAM」を謳うなら、AJ-HPX2700Gと同様に、60fpsまでバリアブルフレームレート撮影を可能にして欲しかった。
パナソニックのカメラレコーダーで今年1年、最も売れたと思われるのはP2HDカメラレコーダーAG-HVX205A。P2カードではSDからHDまで収録でき、さらにminiDVによるテープ収録も可能なマルチパーパスな1台だ。筆者も頻繁にPVの撮影や番組の収録でAG-HVX205Aを使っているが、PVの時はP2HDで、番組の時はテープ収録でと使い勝手の良い1台となっている。
今年登場したカメラレコーダーで、テープレスによって軽量化も出来て、手軽にHD撮影を可能にした機種と言えば、AVCCAMカメラレコーダーAG-HMC155だ。テープを使用しないぶんノイズの心配も少なくなっている。大容量メディアを何枚も使用することは高価なP2カードでは難しかったが、記録メディアにSDHCカードという汎用フラッシュメディアを採用したことで、購入しやすく、何枚も使用できるようになった。
カメラをサポートする新製品としては、AVC-Intra対応小型レコーダーAG-HPG20(2009年2月発売予定)は使うのを楽しみにしている機材の1つ。現在、現場でP2HDを多用しているので、小型レコーダーがあるかないかで効率は大きく変わってしまう。小型レコーダーがあれば、バックアップにカメラを使用することから解放されるし、P2コーデックであればリアルタイムに再生して確認することもできる。バッテリー駆動が可能なので、電源を取れないロケ先でも安心してプレビュー出来てしまうのだ! AG-HPG20で、リアルタイムではないけれども外部HDDにある素材をUSB経由で確認できるようになったことは、現場においてものすごく重要なこと。HDDにバックアップしたデータを現場で確認出来るので、フラッシュメディアの取り扱いにおける心配が軽減できるのではないか。AG-HPG20の現場利用だけでなく、編集段階でのスタジオ使用にも期待大。コンバーターとしての機能もあり、例えばIEEE 1394入力からP2カードへの記録をしたり、HD-SDIへのスルーOUTも可能だ。さらに、P2から出力する場合は、ダウン/アップ/クロスのコンバートが可能ということで、P2HDデッキとしての新しい使い方の1つになるかもしれない。
半導体メディアのバックアップワークフローを増やせ!
仕事の性質上、半導体メディアはテープに残らないことがネックになっている人も多数いると思う。現在、デジタルシネマカメラに求められているモノとしては、やはり低価格。そしてレンズ交換式、メディアは基本はテープ、イメージセンサーは2/3型CCDとった感じだ。こう並べてみると、なかなか該当するカメラが無い。上位機種のAJ-HPX3700Gなどでは、半導体メディアとテープの両方を採用するのは難しいかもしれないが、AG-HPX555クラスであれば可能なのではないだうか? もしこれが発売されれば、相当人気のある機種に変貌すると思うのは、おそらく筆者だけでは無いはずだ。
映画や番組などの撮影が長時間になる現場で、半導体メディアだけで収録というのは不便だし、不安になる。現場で半導体メディアがすぐ足りなくなる。コピーに意外と時間がかかり、待ち時間が発生する。コピーしたHDDのデータが消えてしまわないか? 編集に入ってからの素材の管理はどうすればもっとも効率的なのか? とにかく心配や不安がつきまとっている。テープ収録でノンリニア編集をしているならば、何らかの事情でコンピュータのデータが飛んでも、テープのキャプチャーからやり直せばいい。しかし、半導体メディア収録の場合は、データをコピーした後に消去して使い回すので、コンピュータのデータと一緒に消えてしまう可能性もゼロではない。こう考え始めると本当に怖く、テープ収録の安心感を半導体メディアはまだまだ超えられない。現場でHDDへコピーする以外の方法で、何らかのバックアップ方法を考案して欲しいと切に思う。
半導体メディアとテープの両方が使えるカメラを増やして欲しいというパナソニックへの要望に限らず、次世代のカメラに求める機能という意味では、ソニーはCMOSではなくCCDでカメラを作って欲しいし、レンズ交換式の機種では1/3型センサーではなく、せめて1/2型センサーにして欲しい(特にHDV)。最近はレンズ交換式ミニボディーのHDカメラも登場してきているが、IRISをフォーカスやズームと同じくリング式にして、限りなく業務用ENGに近い操作性のカメラが増えてくれるといいなぁ。
あと、ちょっとマニアックかもしれないが、2/3型CCDとPLマウントを採用したフルHDのカメラも欲しい。ビデオカメラに、PV・映画でよく使用されているPLマウントの35mmフィルムカメラのレンズを装着して撮影することは結構ある。しかし、コンバーターも意外と高価だし、コンバーターのセッティングに意外と時間を使ってしまったり、さらには重量が重くなってしまう難点もある。それならカメラがPLマウントなら問題は解決済みで、あの描写力がすぐに手に入る。ソニーのF35はPLマウントを採用しているが、これの低価格版があったらなと…。発売されればPV業界、デジタルシネマ業界で爆発的に使われるのではと思うのだが。
メーカー問わず、本気で1度は使ってみたい機種としてはRED Digital CinemaのRED ONE。放送機器レンタル会社でもレンタルが開始となり、実際に使えるようになってきた。しかし、日本のインディーズ映画では予算オーバーになってしまうシロモノなので、日本での商業映画での事例報告を待って検討したい。もっとも2K・4Kで撮影をするのは、本当に予算を使える現場だけになりそう。REDでもフルHDくらいで撮影が出来る低価格帯のシネカメラが登場してほしい。
船迫 誠(ファンタビット)