ナブブラリVol.05 岡英史編
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ファンタスティックな日々御礼
展示会3日も終了し、Fantasticな活動は今日でおしまい。PRONEWS LoungeでNAB2011総括をしたので見返してほしい。また来年この時期にファンタスティックな情報をお届けしましょう!
さて3月11日に起きた東日本大震災を受けた日本に対して、日本の出展者/視察参加者にとっては、今年は特別な開催となった。NAB本体からも犠牲者および被災者へ向けて同情のメッセージと、出展者や参加者へ向けて協力の申し出などがwww.nabshow.comのトップページに掲載される等、世界の国々から日本、そして日本企業と視察参加者への優しい思いやりを寄せてくれる光景を随所で目の当たりにした。そしてこの苦境にあっても、日本のメーカーが常にこの業界をリードし、新しい世界を切り開いている様を証明してくれた今年のNABShowだった。
「ローバジェット・プロダクション」小寺信良(ポスプロ関連担当)
小寺信良(ポスプロ関連担当)
今回のNABのテーマは何か、と問われたら、僕の担当のポスプロ的視点から言うと、「ローバジェット・プロダクション」というのを一つのテーマとして挙げたい。
初日のレポートにも挙げたように、Black Magic Designが映像セレクターではない、ちゃんとフレームシンクロナイザーまで内蔵したブランキングスイッチャーを995ドルで出したことは、業界的には衝撃であろう。さらに機能はそれほど多くないとは言っても、2M/Eのスイッチャーが4995ドルというのでは、現在多くの小型スイッチャーをリリースしているメーカーは、来年どうするか態度を決めなければならないだろう。
今期投入されるBlack Magic Designの製品群
もっとも現状スイッチャーを使用する職種として、次第にプロダクションユースが減ってきているという現状がある。これは編集がノンリニアベースに移行したからだ。案外ポストプロダクションが受ける影響は少ないだろう。
もっとも影響を受けるのは、ライブ中継およびマルチカメラ収録だ。これまでその手の作業はスイッチャー搭載の中継車を出すというのがスタンダードだったが、今後はフリーのスイッチャーさんが、キャスター転がして自分のスイッチャー持ち込み、ということもあり得る。しかもこれらはHDスイッチャーであり、もう一つしかもを加えると、HD-SDI搭載クラスのカメラもいらない。HDMI出力までのモデルや、デジタル一眼が中継・マルチカメラ収録に使えるようになるのだ。
これまでカメラのほうはコンシューマ機を利用するなどバジェットの圧縮が行なわれてきたが、後処理まで含めて全体的にコンパクトになることが予想される。しかもクオリティが下がるわけではなく、むしろ別の撮り味を持つ収録チームが誕生する可能性もあるわけだ。
現状ポスプロ勤務の方は、ローバジェットの波が業界が脅かされるのではないかと否定的に見る人もあるかもしれない。しかしこれまで映像制作のワークフロー全体の中で、一つのパートを受け持つだけにしか過ぎなかった人たちが、イニシアチブを持って自分自身の作品を繰り出すことができるという間口が広がる動きになる。
会社組織で動く制作と、フリーランスが集まって動く制作、この2つの道が大きく分かれていくのではないかという気がする。
展示会3日目石川幸宏(デジタルシネマ&DSLR関連担当)
DSLR関連で気になったサウンド機器が”Que Audio”。DSLRにはこれまでサイズと音質を両立するジャストフィットの製品が見当たらなかったが、豪州メーカーQue Audio社のD「DSLR KIT」は、約7cmほどの細い高感度マイクの性能は非常に良質で、マイクホルダー、コード、専用ホットシューアタッチメントとウインドジャーマーがついて、なんと299ドル!さらに釣り竿のようなマイクブームに自立用ベースが付いた「SNIPER KIT」は479ドルとどちらもお値打ち価格だ。
S3Dは今年も様々な展開を見せている。大型S3Dでは、3ALITY Digitalが、センターホールとサウスホールの中庭に3D中継車を持ち込み、バスケットボールコートを作り、その様子を3ALITYのカメラ3セット(1つはクレーン)で追うという、ライブ中継を想定したパフォーマンス展示を行っていた。
ここ数年の3D制作界を牽引して来たパナソニックは、昨年発売の世界初一体型二眼式カメラレコーダー「AG-3DA1」 に加え、 P2HD収録により、更なる高画質化と撮影機能をアップしたショルダータイプの3Dカメラレコーダー「AG-3DP1」 を発表。この発表に伴い、AVC-Intraの上位コーデックとして水面下で研究開発が行われていた新コーデック「AVC-Ultra」も初の公式公開となった。またマルチフォーマットライブスイッチャー「AV-HS450」を新発売の 3Dアウトプットボードを装着することで、映像エフェクトに対応した本格的な3D映像のスイッチングが可能になっている。
ちなみにパナソニックの小型業務用制作カメラでは、ファイルベースドハイブリッドカメラの新ラインナップ(「P2HD」AG-HPX250、「AVCCAM」AG-AC160・AG-AC130)を初公開。この2台共がほぼ同じ”ボディーレスデザイン”と社内では呼ばれているという、ボディのほとんどがレンズ鏡筒部のようなデザインになっている。
思った以上に忙しい3日目岡英史(ファイルベース関連担当)
岡英史(ファイルベース関連担当)
本日はアポ有り無しの取材(映像素材)が一体何本だったか解らない位ブースに脚を運んだ気がする。なので余り面白そうなブースを探せるわけでもなく黙々と素材を集めるのみ。何処のブースに行っても「疲れてますねぇ~」と言われて居たので本当に疲れた顔をしていたんだと思う。
まぁ連日全ての仕事を100%こなせている訳では無かったがそれでも連日朝は6時に就寝、9時には会場に行けるように仕事を纏める感じだ。今この原稿を書いている時も半分寝てるような感じで怠けてると時々「あちぇgc:さむてつぃfdjkmcs」てな文章になってる。w
SONY:一番の大きい事柄はやっと4kが撮れるカメラF65の登場と二眼式3DショルダーカメラであるPMW-TD300なのだが、個人的にはやはりPMW-F3に目が傾いた。カメラ自体は既に販売しているが今回の目玉は何と言ってもOP扱いである電動ズームレンズとショートズームレンズの発表。ショートズームはどちらかと言えばワイドレンズ×2的な物だと思うがワイド端11mmは強烈。そして電動ズームは14倍でオートアイリスや手ぶれ補正、もしかしたらオートフォーカスも付くかも知れない。コレでようやくF3がマルチパーパスカメラになった。因みに価格は「ちょっと高い」らしい。
Panasonic:こちらも二眼式3DカメラであるAG-3DP1の発表展示に加えてハンドヘルドシリーズHPX-250とAC160/130が加わった。両機の最大の違いはフォーマット。P2及びAVCHDを採用しているがその外見は殆ど同じ。エコボディと言うそうだがあくまでも業務機なのでこう言う部分でのコストダウンは大歓迎だ。またそのデザインも従来の物とは全くかけ離れたデザイン。少なくとも筆者的にはこちらの方が好みだ。
JVC:GY-HM750はアメリカでは初お目見え。しかし元々HM790が販売されているので特に大きい印象は無いかも知れない。しかし民生機の3DカメラであるTD1にハンドルやキャノン入力を付加し業務用途に最低限使えるバージョンアップをしてきた本体との接続は専用コネクタではなく有線式のようだ。さらにはCESでお目見えしたファルコンブリット搭載の4Kカメラがリファインされて展示されていた。
Canon:XA10が新発売だが日本では既に販売されているので今一興味は湧きにくいところ。と言うかかなり使わせて貰ってるのでもう何年も前から在るような錯覚になっているのかも知れない。他には日本発売未定のレンズとしてPLマウント2種、業務ENG用で1本を参考出品。
総評
やはりInterBEEとは力のかけ方がメーカーや出品者両方共にパワーを感じる事が出来た。とにかく今回初参加も踏まえて楽しい事だらけ。来年も是非ここに来れるように1年間仕事を頑張るとするか…。
デジャブーNAB。ガジェット選択の生命線猪蔵(モンドガジェット関連担当)
猪蔵(モンドガジェット関連担当)
いよいよ最終日、伝えたい思い以上の情報量で埋没する日々が続くが、それを払拭すべく、会場を練り歩いた3日間であった。その会場で散見し、気になっていたのが、日本国内での発売が延期となってしまったiPad2である。 昨年もちょうど米国で先攻リリースされたiPadを巡って、NAB開催時期には争奪戦が続いた事を思い出す。
それから早1年。踊らされている感もあるが、良いのである。今回カメラが実装された事から、もし入手できたらその場で写真を撮り140文字書き込み即アップできる最高の取材ツールになりうると確信した。
胸が高まったのもつかの間。その夢はもろく崩れ去る事になった。まずiPad2の入手困難な事。もちろん3ヶ所ラスベガスに軒もあるアップルストアには、毎日数台入荷しているが、朝5時には、列に並ばなければならない事。そして一番の要因が、カメラを使っての撮影スタイルが全く持ってイケテナイ事にあるのだ。NABは、放送機器展といえどもガジェット好きが多い事はいうまでもない。実際にiPad2も会場の中で多々見る事ができた。そこで見かけた取材陣のなかに写真を撮っている人がいたのだが、それを見て、一気に萎えてしまったのだ…。
これは、非常に大事な要因でもあるのだ。道具にはその道に向いた様式美がありそれを必要とする。それはデザインであり使いやすさであり、使いたいと思わせる魅力である。それが自分のガジェットへの選択眼かもしれない。
今回iPad2以上に会場でもその事を思わせる事が多々あった。新しく世の中に投入されるプロダクトは、技術そしてユーザーからのリクエストなど多くの意見や考えが結集し生み出された物である。しかしプレスカンファレンスに参加し、なぜそんなデザインに…?なぜそういう仕様に…?と頭をよぎる事が2、3度ではない。
スペック重視のマーケティングもあるが、意外と主役であるプロダクトは威風堂々としているもので、やはりその面構えは良い。
役不足な主人公へ溢れるばかりの思いをつぎ込むためにその周辺機器は存在するのだと感じる。周辺機器がもてはやされるという事は、逆に言うと脇役を飲み込む主人公の不在を物語っているのではないだろうか?主役の登場が待ち望まれているのはずなのだ。メーカーさんよろしくお願いします!