ナブブラリVol.03 石川幸宏編
カメラも小型化、高画質化石川幸宏(デジタルシネマ&DSLR関連担当)
昨年に引き続きHDSLR関連やコンパクトなビデオカメラの周辺機器展示が目立つ。今年はさらに様々な大手メーカーのカメララインナップの小型化が進み、高画質のハンディサイズカメラがここに来て一気に市場に出てきたことで、小型機材周辺ガジェットの制作が容易になった。多数の販売店や小さなメーカーが軒を連ねるセントラルホールの中央から奥までは連日活気に溢れている。
その中でもGoPro のHD HEROシリーズの存在は際立っている。スノーボードやサーフィン、カーレースにスカイダイビングといったエクストリームスポーツ映像が、競技者視点による広角カメラで映し出される迫力の映像は、何と言っても撮る側と観る側のホビー感を満足させてくれる。「制作者が作り、視聴者に与える」という、これまでの商業映像から、自分で撮って楽しむ、もしくはその感覚を共有する映像が新たな市場を作り始めて来た。映像制作の裾野がさらに拡げられていることは確かなようだ。会場ではステディカムやポールカム、クレーンなどにGoProを載せて、迫力の面白映像が撮影できるアイディア商品が多く出ていた。またGoPro以外の小型カメラにも再び注目が集まってきている傾向も面白い。
さらに小型化の分野に力を入れて来たのは、これまでDSLRや小型カメラ用の周辺装着機器の分野をリードしてきたZACUTOやredrockmicroなど、サードパーティの小メーカーや販売店だけではない。ARRIからはPCA(Professional Camera Accessories)シリーズと称して、DSLR用、Panasonic AG-AF105用、AG-3DA1用、そしてソニーのPMW-F3用の各々の専用製品として堅牢な設計と材質で作られたプロ向けの商品を本格的にラインナップしている。このシリーズは2008年から展示しており、今年から「PCA」シリーズと呼び名を付けて、商品ラインナップとして確立したようだ。
「SR-R1000」が面白い。今日はソニー三昧小寺信良(ポスプロ関連担当)
小寺信良(ポスプロ関連担当)
会期2日目となる本日は、ソニーブースを中心に取材した。ここもまた新製品がめっちゃ多いので、全体を把握するのに半日仕事である。
今回はSRMASTERシリーズが正式発表になったことで沢山の関連製品が登場したが、現状はカムコーダ関係からスタートするようで、ポストプロダクション用途としてはSRMemoryが4つ到着できる「SR-R1000」が面白い。
SRMASTERシリーズのスタジオデッキ「SR-R1000」
実質4台分のデッキとして機能する作りで、4ポートのスロットにI/Oボードを自由にコンフィギュレーションできる。例えば1IN3OUTにすれば、3台出し1台受けのリニア編集システムができあがるわけだ。 ポストプロダクション向けと言えば、標準で3D制作に対応できるマルチフォーマットスイッチャー、MVS-7000Xを発表した。これまではMVS-8000Gにオプションボードを装着することで3D化/デュアルリンク3G化してきたが、7000Xは最初からシングルリンク3Gに対応している。
3Dや1080/60P制作時には3M/Eだが、1080/60iの制作時には各M/E機能を分割することで、最大6M/Eのスイッチャーとなる。コントロールパネルは従来の8000シリーズと共通のため、本体のボディでしか見分けが付かない。すでに発売済みのマルチイメージプロセッサ「MPE-200」用に、新しいアプリケーションが登場した。 3Dクオリティコントロールソフトウェア「MPES-3DQC1」は、入力された3D映像を解析して、視差量や左右のカメラのコンバージェンスのズレなどを測定し、ログを取ってくれるソフトウェア。3D映像の品質管理に利用する。
3D映像の解析画面
PDFでエラーレポートを作成してくれる機能も
これまでこの手の装置は3alityのSIP2100が使われるケースが多かったが、MPE-200の使い道がまた一つできたということになる。
横にながーい映像を作り出して、任意の場所を切り出せる
もう一つ、昨年InterBEEでも参考出品されていたが、3つのカメラを使って広範囲の映像を撮影し、自由な場所を切り出せるソリューション、バーチャルカメラソリューションソフトウェア「MPES-VC01」も正式に発表された。ソニーブース内に3つのカメラを配置し、好きなところを切り出して映像出力できる。
ソニーブースの天井に取り付けられた3つのカメラ
これまでプロ用映像機器は、一つの機能で1モデルといった作りが主流だったが、MPE-200のようにソフトの入れ替えでいろんな使い方ができるデバイスというのは、非常にIT的である。
走り回った二日目岡英史(ファイルベース関連担当)
岡英史(ファイルベース関連担当)
本日はとにかく走った。一昨日が様子見と言うことで早めに終了もしたのも在るが、ちょっと気を抜いてたらやらなきゃいけないスケジュールが目白押しなのに気づきその分の穴埋めも含めてとにかく顔知りのブースからの取材を行った。アポは取ってあったり、無しだったりなので当然アポ無しの所は時間調整も含めるので同じ場所に二度行かなければならないので余計歩き回ったと言うのが理由。実は現時点で猛烈に疲れていたりする。
今日の取材先ハイライト
英語が超苦手なので基本的には日本語が確実に通じる所ばかりをピックアップ。それでも場所がNABだと出展者のテンションもかなり違うみたいで、まずはNTTからスタート。このブースはNTTの各子会社が集まって共同体の様に出展しているのが特徴。NTTと言うと日本では単純に電話屋と言うのを想像するが、よく考えれば伝送系では他と追従を許さないほどの技術を持つ。今回のメインの一押しでは、4K素材を使った収録をポスプロと監督が別の場所で仕事が出来るように、4kサイズでのリアルタイムプレビューが可能な伝送システムを展示していた。実際のデモを見たが、タイムラグはほとんどみられないレベル。
次にKDDIに向かった。そこでの展示は、大まかには8K映像運用と昨年のIB2010でも展示していたtwitterを使用してのプロファイリングシステム。偶然にも筆者も昨年のInterBEE2010では小寺信良氏の取材同行で撮影しているのだが、その時とは比べものにならないほど精度上げてあるとのこと。NABに来ている方は会期中に一度訪れて自分のIDを検索して見ては如何だろう?
我々ミドルレンジには余り縁が無い朋栄も、ある意味未知の世界のメーカーでもある。それでも最近はハイエンドメーカーにしては価格のこなれた花火等のスイッチャーも在るので興味は持っていたのでアポ無しで慣行。偶然にも対応して頂いた広報の方が自分のtwitterのフォローして頂いてる方と知り、後はリラックスモードで取材終了。特にLTO-5 を使用したアーカイブシステムは中々興味深い。
ナックイメージテクノロジーも同じく我々業務レンジでの撮影では全く関係のないメーカーに当たる。しかしここも前情報が無いままにアポ無しで慣行したが、快く迎えていただき興味深い話を頂いた。特にスポーツ中継に特化したスーパースローカメラをIkegamiとの共同開発し、その実演シーンを見せていただいた。見た目には他のENGシステムに組み込んでも違和感無いようにレンズやCCU含めた全ての物が汎用できるようになっている。他のカメラと違うのはスローが取れるという事だけだ。
最後にREDONE。既に会場ブースを見た人なら、あの賛否両論分かれるブースは印象深いはず。しかし良く聞くとあのTATOOはショートフィルムの一部のシーンでの演出との事。とは言え日本国内であのパフォーマンスは間違いなくアウト!肝心のカメラ展示ではパイレーツオブカリビアン4を全篇撮影したという3Dリグ付きの実機が展示されていた。いよいよ映画も完全ファイルベース化になるのだろうか?
昨日から三脚はリーベックさんにお借りしているのだが本日はそれに加えドリーまでお借り頂いた。実際は上記のメーカーに加え更に2ブースと恒例「ナブブラリ」の2本をこなしたところで終了。明日も頑張ろう。
頓知で一攫千金、夢のあるガジェットこそ我が命猪蔵(モンドガジェット関連担当)
猪蔵(モンドガジェット関連担当)
文化の進化をひもとくと「効率化」、「小型化」が、理想型でありゴールである。これは、映像業界もそうで、カメラをはじめとする機材群のダウンサイジング当然のごとく、ファイルベースについても当然の流れであると言える。今回のNABは、その進化の過程が見られた貴重な展示会だったかもしれない。事象について説明ができないという事は、「理解がない」「その中に概念がない」とも言い換えられるだろう。今回会場を見渡せば頭では理解できるが言葉にならない過程を見た様な気がした。
小粒でもぴりりと辛いぜ!XA10
おそらくファイルベース化に伴う機材の変化は順調に進化するだろうし、カメラもキヤノンが出してきたXA10などは民生機から業務機に変化を遂げた変わり種である。今後は追随してくる製品が多数出てくる事も想像に難くない。これが潮流であり、進化という物だろう。
現在はマイナーな潮流で長屋ゾーンにブースを構える企業も来年は倍増し日の当たる場所にブースを構えるかもしれない。会場入り口近くと言えば、ロケーション最高の花形プレースである。そこに連日PRONEWSでもお伝えしているブラックマジックデザインが大きなブースを構えていた。対面は、老舗グラスバレーである。そのブラックマジックも当初は、長屋ゾーンで見受けた気がする。年々ブースが巨大化して、「またでかくなっている!」と企業成長をブース拡張によって、垣間見ていたのである。今は小さくても何が成長するかはわからないのであるが…。
ガラス部分がフルスピードで回転。バリヤブルでスピード変化でエフェクトっぽくもなる
と思いながら、今日もインタビューの合間に小間ゾーンを歩いていた時に見つけた一品をご紹介。それが、INNOVISIONのSPINTECだ。同社は、 筒型のレンズで狭い場所を小動物の目となって覗く様な画が切り取れるProbe Lensで知る人ぞ知る会社だ。
このSPINTECは、雨の日の撮影をカンタンに実現化してくれる。え?防滴ジャケットをかぶせれば誰だってできるって?ちがいますよ!雨の中で撮影してもレンズのに水滴が着かないんですよ!
狐につままれた様な感じだが、実際に雨が降っているのにレンズ前につけたカバーガラス部分が高速回転し水滴を遠心力で瞬時に飛ばしてくれ、オールウェィズ乾いている状況をキープしてくれる。我々がよく見る雨の中での撮影はレンズに水滴が着きまくりそれをたまにカメラマンが拭き取るという様なイメージがある。
頓知一つで新しい世界を覗かせてくれるそんなガジェットに出会えて幸せ!