ファイルフォーマットとは?

現在ファイルベースワークフローで利用されているファイルフォーマットやコーデックは多岐にわたっているが、そのほとんどがMPEG由来のものだ。MPEGも1、2、4とあるがその基本となる圧縮技術は同じで、放送や通信など様々な用途に適応できるようにその時代の技術を取り入れながら成長している。

圧縮のためのコーデックには様々なパラメーターがあり、放送や通信などある程度用途が限定される場合に用途にあわせたセットで対応するほうが効率が良い。そこで、プロファイルとして特定用途向けにセットしたものを採用することで、効率や汎用性を実現している。

たとえば、食堂でイタリア料理やフランス料理、中華料理など様々な料理を常に提供できるように用意しておくためには、シェフや調理器具など全てを用意しておかなくてはならない。これをフランス料理専門にしたり定食化することで効率化するのと同じようなものだといえる。こうして決められた定食も地域や時代に伴ってアレンジされることもある。同様にあるメーカーが採用したプロファイルもそのメーカーが独自に改良を加えることもある。このあたりが様々なファイルフォーマットやコーデックが乱立する原因といえよう。

本特集Vol.03「ファイルフォーマットとワークフロー」の項目でも解説したが、ここで改めてコーデックを整理してみよう。

H.264、MPEG-4

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「H.264」「MPEG-4」「H.264/AVC」「H.264/MPEG-4 AVC」「MPEG-4 AVC/H.264」「H.264|AVC」など一般に様々な表記がされているが、これはITU-T(国際電気通信連合 電気通信標準化部門=International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector)とISO/IEC(国際標準化機構=International Organization for Standardization/国際電気標準会議=International Electrotechnical Commission)が別々に規格化を進めていたものを、両者がJVT(Joint Video Team)を組んで共同で規格化したことによる。H.264という名称はITU-Tが、MPEG-4はISO/IECの規格番号である。

正式には、ISO/IEC 14496-10 (MPEG-4 Part 10 Advanced Video Coding)となっており、動画圧縮符号化標準の部分を指している。細かくいうとMPEG-4には音声符号化技術(ISO/IEC 14496-3)や各種プロファイル(ISO/IEC 14496-2)規定など20ほどの規格がある。H.264はITU-Tの規格番号だが、プロファイルとレベルにより解像度やフレームレートの種類が多数存在する。

フレーム間圧縮(Long GOP)方式を採用したのが、ソニーのNEX-FS100やHXR-NX5Jなどで、フレーム内圧縮(I-only)方式(AVC-Intra)を採用したのが、パナソニックのAG-HPX375やAG-HPX250が代表的なカメラといえる。またパナソニックのAVCCAMはMPEG-4 AVC/H.264 High Profileを採用している。

AVCHD

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AVCHD(Advanced Video Codec High Definition)はソニーとパナソニックがハイビジョン映像を8cmのDVDに記録するために策定したもの。規格として策定された2006年当時は、フラッシュメモリーの容量やコスト、記録スピードなどが民生機のカメラに採用するには敷居が高かったため、テープに代わる記録媒体としてDVDを採用したものである。ビットレートは最大で24Mbps、DVDに記録する場合は18Mbpsまでになっている。記録媒体がDVDといってもコーデックはH.264/MPEG-4 AVCなので、全てのDVDプレーヤーで再生できるわけではなく、データ記録用にDVDを採用したにすぎない。音声はドルビーデジタル (AC-3) 方式(LPCM:オプション)を採用、多重化にMPEG2-TSを採用している。

その後、720p(1280×720ピクセル)記録のAVCHD Liteや1080/60p記録にも対応しているが、これはH.264 High Profile /MPEG-4 AVCのプロファイルを元にAVCHD用に追加された部分といえる。現在ではカメラ本体の内蔵メモリーや外部メモリーカードへの記録が主流となっており、パナソニックのAG-HMC45やAG-AF105、ソニーNXCAMなどがこのフォーマットを採用している。

AVC-Intra

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H.264/MPEG-4 AVCというとLong GOPが一般的だが、I-only圧縮を採用したのがAVC-Intraといえる。Long GOPではなくI-onlyということは、画質を維持するためにデータの容量が大きくなり、それなりの転送レートが必要になってくるので、汎用のメモリーでは転送レート的に無理が出てくる。パナソニックはP2カードでこうした問題を解決し、AVC-Intraという名称で製品に採用している。

I-onlyの記録は編集が前提となる業務用を考慮してのことで、DVCPRO HDなど従来のコーデックでも採用していたものである。AVC-Intraのフォーマットとしては、現在AVC-Intra 100(1920×1080、サンプリング10bit/ 4:2:2、ビットレート 100Mbps)とAVC-Intra 50(1440×1080、サンプリング10bit/ 4:2:0、ビットレート 50Mbps)の2つがある。

MPEG-2

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MPEG-2は1995年7月にISO/IEC JTC 1のMoving Picture Experts Groupによって決められた標準規格で、ISO/IEC 13818という規格である。ソニーのXDCAMやXDCAM EX、キヤノンXFシリーズ、池上通信機GFCAMなど各社が幅広く採用しているコーデックだ。

MPEG-2のプロファイルには、Simple、Main、SNR Scalable、Spatially Scalable、High、422、Multiviewがあり、レベルにはLow、Main、High-1440、Highの4種類がある。MPEG2ではこのプロファイルとレベルの組み合わせで定義されており、各社のカメラもその組み合わせのコーデックを採用している。

また、MPEG-2にはDVD-Videoのような蓄積メディア用途のプログラムストリーム(MPEG-2 PS)と、放送や通信に向いたトランスポートストリーム(MPEG-2 TS)が規定されており、記録、蓄積、放送と幅広く普及しているコーデックである。

HDV

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HDV(High-Definition Video)規格は、日本ビクター、ソニー、キヤノン、シャープの4社により主にビデオカメラの記録用途として策定されたもので、DV規格と物理層であるテープ記録フォーマットを共有することにより、量産されているDVのハードウェアやテープメディアなどが共有できるというメリットがあった。

テープには、オーディオとビデオ(MPEG-2 TS)をDV記録時のVideoセクターに記録するため、DV記録のAudioセクターという余白が残り、ここに非圧縮の音声データ(48kHz/16bit)を記録するオプション規格もあり、4chオーディオに対応することも可能となっている。

最近はテープに記録するHDVカメラの新製品の発売は殆ど無いが、ソニーのHVR-S270JやHVR-Z7J、CanonのXL H1Sなどが現行機種として販売されている。

ビデオカメラやレコーダーなど収録で使われるコーデックは規格化されたコーデックを採用している。これは、収録したものを編集など後処理を行う関係からどのようなコーデックかがわかっていないと既存の編集システムなどでハンドリングできなくなってしまうからだ。業務用では特殊な用途または後処理も含めて全てを完結したシステムとして用意できれば良いが、そうでなければ撮影したものをただ再生するだけになってしまい普及は望めない。

反面、編集で用いる中間コーデックは、その編集システムの中だけで使用するコーデックであっても問題はなく、詳細はほとんど公表されていないが、Apple ProResやAvid DNxHDなど編集用のコーデックで記録可能なカメラやレコーダーが発売されている。

Apple ProRes

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ProResのバージョンには、オフライン編集向けのProRes 422(Proxy)、ニュース、スポーツ、イベントなどのプロジェクト向けのProRes 422(LT)、合成処理とDI向けのProRes 4444のほか、ProRes 422、ProRes 422(HQ)の5つのバージョンがある。いずれもI-only圧縮でバリアブルビットレートとなっている。Apple Final Cut Proのための編集用コーデックとして開発されたものだが、AJA KiPROやARRI ALEXA、Atomos Ninjaといったカメラやレコーダーの記録用コーデックとしても採用が進んでいる。

Grass Valley HQX Codec

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Canopus HQ Codecの発展形ともいえるコーデックでバリアブルビットレート、イントラフレーム圧縮を採用しているところはCanopus HQ Codecと同じだが、4kまでの解像度に対応したほか、放送フォーマットに捉われない様々なフレームレートやピクセルアスペクト比に対応している。

映像データの量子化(Q)と圧縮後の映像フレームの最大サイズ(M)という2つのパラメーターを設定することができるようになっており、圧縮比1/2から1/25、ビットレート45から600Mbpsまで設定できるようになっている。

Avid DNxHD

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SMPTE 2019の VC-3で規格化されたコーデックを採用しており、Avid DNxHDコーデックのソースコードは無料でライセンス供与されている。編集用のコーデックとしてもっともオープンになっている。編集用中間コーデックを収録にも採用し、シームレスなワークフローを池上通信機とのコラボレーションで実現している。Avid DNxHD 220x、Avid DNxHD 220、Avid DNxHD 145、Avid DNxHD 36の4つがある。


Vol.03 [ファイルベース新時代] Vol.00