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Exhibition (展示会)は製品アピールと、リクルーティングの場

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Pixarブースのリクルーティングコーナー。インターンを希望する学生などが押し寄せていた

SIGGRAPHでの華やかな催しとして Exhibition (展示会)がある。今年の展示会はSIGGRAPH会期中後半の3日間開催され、156社の展示ブースが並んだ。大規模ブースは少ないながらも、各社小粒で充実したブースが立ち並ぶ。展示会場では製品紹介はもとより、開発者の話しや、製品を駆使しているユーザーの話しなど、現場の本音を聞けるのが展示会の醍醐味だ。

統計では SIGGRAPH参加者は平均5時間展示会場に居るそう。なかでもレンダリングソフトウェア RenderManを扱うPixarのブースが人気で、無料配布されるポスターやグッズを目当てに、連日長蛇の列がのびていた。SIGGRAPH会場にはJob Fairという求人ブースが並ぶ、求職のための専門コーナーもあるのだが、展示会場は製品紹介の場であるとともに、企業のリクルーティングの場でもあるようだ。製品紹介よりも、盛んに求人チラシを配布しているブースもあった。

盛り上がる展示会会場から

展示会の最近の傾向としては、三次元プリンタの価格帯が下がり、応用として各種三次元プリンタサービスも広がってきたこと、フォトストックのように動画素材や、音素材、三次元データを扱うアセット販売の流れができていることが感じられる。では、展示会の156ブースの中から目立ったものを取り上げよう。

Autodesk / iPad用彫刻アプリ Sculpt 123D

Autodeskの扱うMaya、Softimage、3ds maxと主要CGソフトのバージョンアップ版が色あせてしまうくらい、会場で話題になっていたのがAutodesk製iPad用の彫刻アプリだ。車のモデルや動物のモデルなど、ベースとなる彫刻モデルをピックアップし、そのモデルの形状を削ったり盛ったりしてオリジナルの彫刻を制作する。現実の彫刻であれば、一度何かを削ってしまうとやり直しが効かないが、デジタルならではの「盛り」の作業が平易に出来たり、やり直しがきくのも良いところ。現在は試用期間のため無料だが、将来的には85円(日本国内価格)の有料アプリとしてリリースされる予定。

http://itunes.apple.com/app/123d-sculpt/id446119510?mt=8#

My Robot Nation / KODAMA Studios : オモチャ専用3Dプリント

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Webで編集し、三次元プリントしたロボットおもちゃ

My Robot Nationは、三次元プリンタを活用したオンラインサービス。Webでロボットのパーツや色をチョイスしてオリジナルのロボット筐体をデザインし、デザインしたロボットを三次元プリンタで出力、送付してくれるサービスだ(現在サービス準備中)。残念ながらブリキのオモチャ風のようには手足を動かすことは出来ないが、ポーズやパーツ、デカール(表面のマークやロゴなどの模様)を細かく設定できる。

http://www.myrobotnation.com/

LadyBug3 / PointGrey / 360度パノラマカメラ

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真っ赤な LadyBug3筐体

LadyBug3は、Googleストリートビューの撮影にも使われている360度撮影可能なパノラマカメラ。1つの筐体に6つのカメラが搭載され、カメラ内部で自動的にパノラマ合成した映像が利用できる。12メガピクセル級の映像が約15fpsで取得できる(解像度を落とせばfps値が向上する)。IEEE1394bインタフェースのみ。簡易防水機能あり。赤色モデルと黒色モデルがある。

DSC06513.JPG http://www.ptgrey.com/products/ladybug3/ladybug3_360_video_camera.asp

OpenStage / organic motion / マーカーなしモーションキャプチャシステム

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2人同時でのマーカー無しリアルタイムキャプチャ例

旧来、モーションキャプチャというと、特殊なスーツを着たり赤外線を反射する特殊な球体をつけたりと、システムが複雑で規模の大きなものであった。近年、ハリウッド映画などでモーションキャプチャデータの活用が進むに連れて、有名俳優や大物ミュージシャンなどがモーションキャプチャのアクターとして活躍することが増えるようになり、変なスーツを着たり、マーカーをつけずにデータが取得できるマーカーレスモーションキャプチャが台頭しつつある。

OpenStageは8台程度の専用のハイスピードカメラによる映像解析によって、普通の服装でモーションキャプチャデータの取得ができるシステム。旧StageのアップデートバージョンであるOpenStageは、複数人の同時トラッキングや、人以外のオブジェクトのトラッキングが可能となった。実際の発売は2011年第四半期の予定とのこと。

http://www.organicmotion.com/

pond5 / pond5 : ストックメディアサービス

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pond5の効果音ライブラリの一覧

pond5はそのストックサービスを、メディア全般に広げたメディア素材のマーケットプレイス。販売されるメディアデータは、ビデオクリップ、イラスト、音楽、効果音、After Effects の特殊効果用プロジェクトファイルなど。ビデオクリップも SD、HD様々な解像度で、著作権フリーのものが安価に多数用意されている。

http://www.pond5.com/

DepthQ / Lightspeed Design : 小型立体視プロジェクタ

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DepthQの新機種HDs3D-1は、特殊な調整無しに1台で利用可能な小型立体視用プロジェクタ。HDMI、VGA入力端子を持ち、1280×720の解像度で投影できる。約3.2kgの重量。立体視投影時においても、2700ルーメンの明るさがある。販売価格は約3,000ドルとのこと。

http://www.lightspeeddesign.com/

PERCEPTIVE PIXEL / Perceptive Pixel : 巨大タッチパネルディスプレイ

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PERCEPTIVE PIXELでは、27、55、82、88、160インチのマルチタッチディスプレイ製品があり、展示ブース82インチフルハイビジョンのマルチタッチディスプレイが展示されていた。タッチパネルの応答時間は速く、ディスプレイのピクセルそのものを触って操作しているような精度の高いものであった。

http://www.perceptivepixel.com/

mocha Pro / Imagineer Systems : モーショントラッキングツール

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お馴染みのmochaはモーショントラッキングツール。撮影時のカメラのぶれを除去したり、カメラの移動に追従した映像表現ができる。mochaの特徴として、動画中の面をトラッキング対処としてとらえるため、単に特徴点を指定するモーショントラッキングと比べ、カメラが傾いたり、高速に動いて滲んだりしても、良質なトラッキング結果が得られるとのこと。また動画中の余計な影やオブジェクトを除去したり、カメラ撮影時にパースが斜めに傾いてしまったような映像も補正することもできる。MacOS、Windows、Linuxに対応。

http://www.imagineersystems.com/products/mochav2

SpacePilot PRO / 3dconnexion : 三次元マウス

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SpacePilot PROは液晶ディスプレイ付き、至れり尽くせりの三次元マウスだ。実売価格で約4万円強ほど。通常のマウスと同じ X/Y軸の移動の他に、押し込んだり引いたりすることによるZ軸方向の移動や、ひねり、傾きなどを平易に入力することができる。搭載されている液晶ディスプレイではファンクションキーの設定を確認することができる。また液晶画面上でメールやカレンダー、RSSフィードの確認ができるため、メインのパソコンでのフルスクリーン作業が中断されずに、細々とチェックできるのが利点だそうだ。

http://www.3dconnexion.com/products/spacepilot-pro.html

Tobii T60 / tobii : アイトラッキングディスプレイ

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tobiiはユーザーのコンピュータ操作や、画像や映像の見ている場所を計測することのできるアイトラッキング機能付きのディスプレイ。液晶ディスプレイの下部に視線感知機構が内蔵され、大げさな機材ではなく、一体型のtobiiディスプレイで計測できるのが特徴。専用の解析ソフトウェアや、専用ツールを開発するためのSDKが用意されている。60Hzでデータ取得できる製品T60と、120Hzでデータ取得できる製品T120がある。画面の上下左右の点を見つめるというキャリブレーション作業をすると計測精度があがるそうだが、幼児用などにキャリブレーションしなくともある程度のデータは計測できるそう。

http://www.tobii.com/

まとめ

展示会場には出展せず、近隣のホテルにてユーザー会やプレス発表、プライベート展示を行っていた企業もあり、展示会場に出ていたものが全てでは無い。またここでは紹介できなかったが、CG関連書籍の販売や、CG関連の専門学校、メンター制度を取り入れ、プロに教えてもらうことのできるチュートリアル製品などもあり、優秀なCGアーティスト、CG関連技術者を育てるという業界全体の広がりが感じられる展示会であった。


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WRITER PROFILE

安藤幸央

安藤幸央

無類のデジタルガジェット好きである筆者が、SIGGRAPHをはじめ、 国内外の映像系イベントを独自の視点で紹介します。