オールインワンの小型4Kカメラ登場

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Panasonic初の4Kカメラ、LUMIX GH4。同社のミラーレス一眼カメラの最上位モデル。センサーサイズはマイクロフォーサーズ

小型軽量ミラーレス一眼カメラで4K映像を内部収録。この春、Panasonicから発売されたLUMIX GH4(以下GH4)は、現存する4Kカメラで最もお手軽な1台なのは間違いない。価格はボディだけで16万円程度、重さはレンズを装着した状態でもほとんどの場合で2kg程度。リーズナブルで小型軽量、そしてSDカードに4K映像を内部収録できるとなれば、これまで4Kカメラのラインナップを眺めながら様子見していたユーザーも、思わず手を出してしまうのではなかろうか。ライバル他社から大きく遅れての4Kカメラ市場への初参戦となったPanasonicだが、遅れを挽回するだけのポテンシャルをGH4は有している。

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DCI4K(4096×2160)とUltra HD(3840×2160)という2種類の4K解像度が用意されている。なお、DCI4KはC4K、Ultra HDは4Kと表記されている

動画機能に絞って基本スペックを整理してみる。GH4は同社のミラーレス一眼LUMIXシリーズの最上位モデルで、マイクロフォーサーズ(17.3mm×13mm、有効画素数4608×3486pixel)のLive MOSセンサーだ。もちろんスチルも撮影でき、マイクロフォーサーズ対応レンズを交換することも可能。4Kといっても解像度は2種類あり、DCI4K(4096×2160)とUltra HD(3840×2160)のいずれかとなる。

DCI4K(4096×2160)選択時フレームレートは24fpsで固定。Ultra HD(3840×2160)なら23.98fps、24fps、25fps、29.97fpsから選択できる。4Kの収録コーデックは、8bit/YUV4:2:0のH.264/IPB圧縮方式で、MOVとMP4からファイル形式を選択できる。ちなみにメーカーいわくMOVとMP4で画質の違いは無いとのこと。4Kでもビットレートは100MbpsなのでデータサイズはAVCHDのおよそ4倍といったところだ。この効率的な圧縮方法によってSDカードでも記録が可能となった(SDHCのクラス10レベル以上を推奨)。

HDカメラとしてもスペックは充実

フルHDでの撮影機能も充実している。ファイル形式はMOVとMP4に加えAVCHD ProgressiveやAVCHDも用意されている。MOVもしくはMP4でのフルHD撮影時には、圧縮方式とビットレートを選択可能。All-Intra(フレーム内圧縮方式)の200Mbps、IPB(フレーム間圧縮方式)の100Mbpsもしくは50Mbpsだ。4K解像度も凄いことではあるが、フルHD解像度でのAll-Intra&200Mbpsも注目に値する。

また、フルHDの100Mbps選択時であれば、2~96fpsまでの可変フレームレート撮影に対応。24fpsのタイムラインで96fpsの素材を展開すれば4倍のスローモーションが得られることとなる。実に多彩な演出方法を提供してくれるカメラといえる。その他、ゼブラパターンやフォーカスピーキング、マスターペデスタル調整、カラーバー表示(SMPTE/EBU/ARIB)、タイムコード対応、シンクロスキャン撮影など、動画カメラと呼べるだけの機能が備わっている。

4K内部収録に加えてHDMIから10bitの4K出力も装備

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カメラ内部での記録メディアはSDカード

さらにGH4の性能・拡張性を高めるのは、カメラのHDMI4K出力だ。SDカードに4K収録をしながらの場合は8bit/4:2:2の非圧縮4Kクリーン映像を出力でき、SDカードでの収録をしなければ10bit/4:2:2の4K映像を出力できる。将来的に4K対応の外部収録器が整備されれば、より高品質な4K映像をレコーディングできる。このHDMIアウトはHDダウンコンにも対応しているのでHDによるモニタリングや収録も可能だ。

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フルHDの100Mbpsモードならバリアブルフレームレート撮影も可能

GH4はリグや外部レコーダーといったものを一切必要とせずに、カメラ一台で4K映像を捉えることができる。「いかに簡単に撮影に臨めるか」ということを考えると、カメラ一台で完結する利便性は大きい。Blackmagic Production Camera 4Kも4K映像を内部収録できるが、いかんせん撮影時には外部給電などの理由からリグが必須となってくる。それに対しGH4はレンズを装着しメディアを入れれば瞬時に臨戦態勢が整うのだ。お手軽さは群を抜いている。

ちなみに筆者お勧めの撮影スタイルは一脚やゴリラポッドとの組み合わせだ。これならGH4の「小型・軽量」という特性を損なうことなく、フットワークも軽快に疲れることなく撮影を進められる。メニュー階層はシンプルで分かりやすい。撮影モードの設定など、頻繁に使うことが想定されるメニューは、Fn2ボタンのQuick Menuでアクセスできる。

3.0インチの有機ELモニターは小さくても視認性は十分。バリアングルというのも非常に実践的でタッチの感度も優秀で反応が良い。バッテリーの持続力も素晴らしい。カメラの電源をおよそ1時間ONにし続け、40分ほどの素材を撮影した際、バッテリーの残量は1/3しか減らなかった。

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micro HDMIから4K映像が出力される。内部記録をしいていなければ10bit/4:2:2の信号を出力可能

マイクロフォーサーズが持つ4Kフォーカシングの優位性

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GH4とゴリラポッドの組み合わせで軽快に撮影。機動力は抜群だ

4K撮影の一番の課題はフォーカシングだ。解像度が増せばフォーカシングもよりシビアになっていく。GH4のフォーカスアシストは優秀で、特に拡大フォーカス機能は非常に優れもので4Kでは特に頼りとなる。タッチパネルでフォーカスを確認したい場所にタッチし、その指定部分を拡大表示させる機能だ。

指定位置を指のドラッグで移動させることもでき非常に使い勝手が良い。Panasonicの純正レンズであればオートフォーカスも機能するし、顔認識などの追尾モードもある。また、言うまでもなく被写界深度はカメラのセンサーサイズに大きく依存する。GH4のマイクロフォーサーズというセンサーサイズは、被写界深度が浅くなり過ぎないという意味で、4K撮影では扱いやすいともいえる。フルサイズやスーパー35mmのセンサーサイズのカメラと比べて、かなりフォーカスを合わせやすいのだ。

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バリアングル液晶モニターも使い勝手が良い

映像の質感(色)、トーンを決めるのは主にガンマカーブだ。GH4には昨今流行のLogガンマはまだ搭載されていない。しかしシネライクVとシネライクDという文字通り「シネライク」なガンマカーブが用意されている。シネライクDが一番ダイナミックレンジを稼げるカーブで、Logの一歩手前といったところだ。シネライクDで撮影した映像を見てほしい。

非常にコントラストの強い風景を撮影したのだが、明部と暗部の情報が結構粘り強く残っている。厳密な検証はしていないが、ダイナミックレンジは10ストップ以上ありそうだ。ポストプロダクションでカラーグレーディングをする時間があるのであれば、シネライクDで撮影することを強く推奨する。

GH4のセンサーは4:3、マイクロフォーサーズのLiveMOSセンサーで有効画素数1605万画素(4608×3486)。しかし4K動画を撮影する際には、ピクセル等倍で記録されるのでクロップが生じる。センサー幅をフルで使うHDの画角が一番広く、DCI4KやUltra HDのほうが、画角が狭くなってくるのだ。最初は少々戸惑うかもしれない。

編集は同じくAdobeで完結

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新たにシネライクガンマが搭載。シネライクDが最もダイナミックレンジを稼げるガンマカーブだ

ポストプロダクションの軽快さについても、触れなければならないだろう。4Kでもビットレートは100Mbpsなのでファイルサイズはかさばらない。ボディ同様ファイルも軽い。Adobe Premiere Pro CCで素材を展開したところ、DCI4K 24fpsの素材がフル解像度でも問題なく再生する。ちなみに編集マシンのスペックはHPのZ620、搭載するビデオカードはNVIDIA GeForce GTX780だ。

もちろん、ファイルのデータレートと画質はトレードオフの関係なので、ファイルサイズが小さければ良いとは、一概に言えない。ただ、フル解像度でサクサク再生・編集できるのはストレスフリーでGH4のアドバンテージだ。特に、納期の短い切羽詰まったプロジェクトでは、需要が高まるだろう。

HR14_03_09b.jpg シネライクDで撮影した素材。カラーグレーディング前。ハイコントラストな風景だが、明部と暗部が想像以上に残っていた
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HR14_03_10b.jpg 写真右:写真の素材にカラーグレーディングを施した。最初に暗部をしめてコントラストを調整。次に明部と暗部の彩度を弱め、中間部の彩度を強めた
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HR14_03_11b.jpg フルHD
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HR14_03_12b.jpg DCI4K
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HR14_03_13b.jpg Ultra HD
同じアングル、同じ焦点距離で撮影した3種類の映像。フルHD→DCI4K→Ultra HDと徐々に画角が狭くなる
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HR14_03_14.jpg Adobe Premiere Pro CCで編集。DCI4K、24fpsの素材がフル解像度でノーマル再生できる
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拡張ユニットで、更に確実なシステム設計も可能

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オプションのインターフェイスユニットAG-YAGHG

オプションとして用意された拡張インターフェイスユニットAG-YAGHG(業務用モデルAG-GH4Uには標準付属)も面白い。SDIで4K出力ができたり、XLRの音声入力に対応、主にDSLRで足りない機能をアシストするユニットだ。

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■拡張インターフェイスユニットの仕様
  • 10bit 4:2:2、Quad Link 4K(SDI×4、Square Division方式)に出力対応
  • HDMI(4K/HD)出力搭載
  • XLR音声入力(LINE/MIC/+48V切替、2ch)と音声マニュアルボリューム、レベルメーターを搭載
  • 外部タイムコード入力(BNC×1)に対応
  • DC12V電源入力を装備し、大容量の業務用バッテリー(他社製)が使用可能

GH4とインターフェイスユニット、AG-YAGHGを組み合わせての撮影は、基本的に三脚に乗せてのスタジオ収録が現実的な運用方法だと考えられる。外部電源が必要となったり、バリアングル液晶モニターが回転しなくなったりするからだ。さて、スタジオグリーンバック撮影でGH4&AG-YAGHGの組み合わせを試してみた。AG-YAGHGのHDMI出力をBlackmagic DesignのDeckLink 4K Extremeに入力しPC(HPのZ820)でキャプチャ(ストレージはSSD RAID)。

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AG-YAGHGとの組み合わせでスタジオグリーンバック収録

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HDMIからの非圧縮信号をキャプチャした

GH4の4K内部収録は、H.264コーデックによる8bit/4:2:0。それに対し外部出力は非圧縮の10bit/4:2:2信号だ(ただしSDカードで記録中の出力は8bit/4:2:2)。キーイングによる合成結果に、10bitと8bit、4:2:2と4:2:0でどれほどの違いが生じるのか確認した(写真参照)。10bitと8bitとの間に大きな違いは見られないが、4:2:2と4:2:0で比較すると4:2:0のエッジ部分の甘さが目に付く。こだわりの高画質を狙いたいときに投入すると効果的だ。

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写真左:8bit/4:2:2、写真右:8bit/4:2:0。グリーンバックで撮影した素材をAdobe After Effects CCでキーイングした
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写真左:8bit/4:2:2、写真右:8bit/4:2:0。8bit/4:2:0ではエッジ部分の抜けの悪さが目立つ
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オールインワン・小型のGH4には大きな期待が詰まっている

カメラ1台で4K撮影。起動も早く、一日中持っていても疲れない。お手頃さと軽快さでワンマンオペレーションにも適した4Kカメラだ。GH4は4K撮影の裾野を大きく広げていく一台となるだろう。小型で軽量であるということから、無人ヘリコプターでの空撮や、狭小スペースにおける撮影といったところで4Kの撮影も簡単に行える。さらには100Mbpsというファイルサイズを考えれば、インタビューやドキュメンタリーといった長回しのケースでも大いに活躍が期待される一台であるといえる。発売から圧倒的な人気を誇るGH4のポテンシャルは、まさに計り知れない。

txt:神保貴行(マリモレコーズ ) 構成:編集部


Vol.02 [High Resolution! 2014] Vol.04