SIGGRAPHアワード表彰
御年86歳のHarold Cohen氏の受賞風景
SIGGRAPHでは、毎年CG業界に貢献した研究者やアーティスト、今後が期待される若手の研究者、SIGGRAPHの運営に貢献した人物を表彰する。今年特に注目を浴びていたのは、人工知能によるデジタルアートHarold Cohen氏のDistinguished Artist Lifetime Achievement Award(アーティスト功労賞)の受賞であった。人工知能による芸術作品的な画像が、あと少しで人間の芸術家に匹敵しそうになりながらも、その差は、大きな乗り越えることのできない壁となって立ちはだかっていそうだ。
Harold Cohen氏のAARONによる作品ページ
http://www.aaronshome.com/aaron/gallery/index.html
Computer Animation Festival詳細
先に受賞作を紹介した、Computer Animation Festival(CAF)より、受賞作以外からもすばらしい作品をピックアップして紹介する。CAFでは477本の作品が審査され、受賞作品のうち30本は北米、38本はヨーロッパ各国、オーストラリア&ニュージーランドが3本、アジアから2本と、欧米勢が強い。アジア圏は、冬に開催されるSIGGRAPH ASIAを狙っている関係もあるかもしれない。
まずは、作品群の全体像を3分弱の予告編映像で把握するのがお薦めだ。
今年はとても細かく審査分野がわかれ、純粋なアニメーション作品、子供向けのアニメーション作品、広告作品、編集されたコンピレーション作品、短編アニメーション作品、実験映像、ゲーム映像、リアルタイムグラフィックス、ストップモーション作品、学生作品、手書きアニメーション作品、特殊効果作品、ビジュアリゼーション作品となる。それぞれの分野で正当な評価が得られるための配慮だと思われるが、今後は特定のカテゴリに当てはまらないような斬新な作品の登場も期待される。SIGGRAPHの場合、受賞作品の本数が制限されているわけではなく、素晴らしい作品であれば、本数に関係なく審査を通過するため、その年によって、受賞作の本数が異なる。
■Samsung:King of TV City
広告映像部門での選出作品の一つ、数々のハリウッド映画をイメージさせるシーンの連続から始まる。それぞれ元ネタが何の映画だかすぐに解るだろう。ジェスチャー操作可能なテレビ製品の広告映像だ。CGMeetupによるメイキング解説はこちらから。
http://www.cgmeetup.net/home/making-of-samsung-king-of-tv/
■Artifacts
デモシーン映像の中でも特に映像が美しく、インタラクティブな操作無しでも映像として評価される作品は、CAF本体の方にエントリーされ「DEMOSCENE」部門として評価される。本作は、Tokyo Demo Fest 2013で最優秀賞をとったEddie Lee氏による作品だ。Windowsで動作するたった6.8MBのプログラムで、OpenGL、OpenCLが駆使されている。
※デモシーンとは主に北欧で発達した、極小のプログラムで音楽とともに素晴らしい3DCG映像を自動生成するデモプログラム、またはそのプログラムによる映像のこと。メガデモとも言われる
■Morphium
デモリール本編
メイキング
学生部門。ドイツの名門アニメーション学校に通うLinus Stetter氏の作品。莫大な予算と人材のハリウッド映画と争うこと無く、自分が習った事柄を最大限駆使して作り上げたユーモラスな映像に好感が持てる。Showreelの1分30秒あたりから。
成熟してきたReal-Time Live!
Real-Time Live!は、コンピュータの性能向上にともない発達してきた分野だ。ゲーム映像や、デモシーンにおける映像生成のように、リアルタイムで生成されるコンピュータグラフィックスの素晴らしさ、見るだけではなく、インタラクティブに操作できるコンピュータグラフィックスの素晴らしさを評価するために数年前に開設されたCAFの一つの部門だ。
■Maturing the Virtual Production Workflow:Interactive Path Tracing for Filmmakers
バーチャルカメラInsight VCS
メイキング
完成映像
MotionBuilderと、NVIDIA K6000を活用し、V-Rayによるリアルタイムレンダリングと、Insight VCSバーチャルカメラを用い、その場でCGキャラクタ映像を作成するワークフローの提案。
■Fantasia:Music Evolved
1940年の古いディズニー映画の名作「ファンタジア」をご存知だろうか。ファンタジアは、オーケストラのクラシック演奏の旋律とぴったりあったディズニーキャラクタによるアニメーション作品だ。リメイクされた「ファンタジア2000」の方が記憶に新しいかもしれない。ファンタジアはXbox 360によるインタラクティブゲームで、あたかもファンタジアの世界に居て、自分が指揮者でオーケストラを率いているような感覚で、音楽にあった美しい映像をコントロールすることができるのだ。
■Destruction Sequences in Call of Duty:Ghosts
ファーストパーソンシューティングと呼ばれる主人公の視点で空間を動き回るゲームの一種。本作Call of Dutyでは随所に映画的な演出がなされ、ダイナミックで精彩な映像演出が評価された。
■Freeform:Digital Sculpting With Adaptive Surface Topology and Seamless 3D Coordinate Systems
LeapMotionというフリスクの箱ぐらいの大きさのジェスチャーセンサーを用いて、粘土をこねるように三次元彫刻を作成する手法の提案。通常の三次元モデルとは異なり、引っ張って伸ばしたり、端と端をつなぎ合わせたり、素材を寄せていったり、粘土っぽい編集が指先だけで可能だ。
NVIDIA FlameWorks:Real-Time Fire Simulation
リアルタイム描画可能な炎のシミュレーション映像、四方八方、自由な視点で見ることができ、ゲームの中で活用できる演出可能な炎の表現。
■Real Time is Now
http://www.chromeexperiments.com/detail/cabbibo/ブラウザ上で三次元グラフィックスを描画するWebGL、WebAudio、AJAXといった、Webコンテンツ技術を駆使した、Google Chromeブラウザ上で動作する、Webコンテンツ作品。最新のChromeブラウザで、WebGLをONにした状態で動かすことができる。
■Real-Time Animation of Cartoon Character Faces
ごくごく普通のWebカメラ映像だけで、フェイシャルキャプチャし、リアルタイムで3DCGキャラクタの表情アニメーションを作成できるmixamo社FacePlusのデモンストレーション。UnityやMotionBuilderのプラグインとして利用できる。
https://www.mixamo.com/faceplus
■Make Your Own Avatar
txt:安藤幸央 構成:編集部