多くのCGソフト、映像機器が並ぶ展示会場。今年の傾向は?

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展示会初日の朝、なだれ込む様子 ©2014 ACM SIGGRAPH

CESやNABとまでは言わないが、学会付属の展示会としては、規模も内容も大変充実しているのがSIGGRAPHの展示会だ。今年は150社以上の企業が出展し、例年のごとくJob Fairという求人求職の場も併設され、朝早くから常に人が往来する活気のある領域であった。

今年から展示会場内に設けられた新しいコーナー「MIX」は、メジャータイトルではなく、主にインディーズの3DCGゲーム体験コーナーだ。開発者と意見交換できることも功を奏して、常に待ち行列ができているほどの人気であった。

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インディーズコーナー「MIX」。IntelやUnityらがスポンサー

さらに賑わっていたのは、フランスや韓国などのベンチャー企業が出展する国単位のブースや、Oculus Riftの体験コーナーであった。ここでは、新しくリリースされたばかりのOculus Rift DK2ヘッドマウントディスプレイで、パフィシックリムの操縦席の映像を体験できる。

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Oculus Riftパフィリックリム体験コーナー

また展示会場外であるが、人の往来の多い場所にStudio Xperienceという仮設置されたスタジオコーナーが用意された。バーチャルスタジオ用の機材や、収録の流れなどを見学することができるようになっており、放送業界の最新機材に触れることができた。

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Studio Xperienceコーナー

最近のSIGGRAPH展示会は、CGやグラフィックスに限らず多岐に渡っている印象だが、今年の展示会は特にだ。展示会傾向は以下のとおり。

  1. 3Dプリンタ、3Dスキャナの浸透。安価な機器と、高品質高機能な機器への二極化
  2. 各用途における定番ツールが定格化し、各社定番ツールをいかに使いこなすかがテーマに
  3. 物理ベースマテリアル、物理ベースレンダリングと、現実世界に近づけたCGを指向する流れに
  4. 展示ブースも求人求職の場、プロジェクト単位で、常に人材が流動している
  5. 市販品を組み合わせての利用と、ハイエンドの専用機器との二極化が進む
  6. CG以外の分野にも応用、活用がなされている。車業界、ファッション業界など

活気あるSIGGRAPHの展示会場!

■CGプロダクションの最高峰、ピクサーブース
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例年、ピクサーの映画キャラクターで埋め尽くされる同ブースだが、今年は劇場公開作品が無いため、シンプルなブース構成。数ヶ月前にピクサーの主要レンダリングツールRenderManが495ドルに大幅値下げ(教育機関は無料)されたこともあり、多くの人が訪れたようだ。グッズとして配られるゼンマイ仕掛けのティーポットは、今年は金色で、歴代のティーポットも展示されていた。
http://renderman.pixar.com/

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■360度スティッチ動画
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VideoStitchは360度撮影ビデオのソリューション。フランスブースの中の展示の一つだ。GoPro Hero3を6台組み合わせて電源供給も可能なカメラマウントで360度、一気に撮影する。399ユーロで販売中。フレームレートにもよるが、解像度は3840×1920~5600×2800となる。

さらに高解像度のGoPro 10台バージョン、最大解像度8000×4000のカメラマウントもあるそう。これらの撮影動画を専用のツールでつなぎ合わせ、ヘッドマウントディスプレイOculusや、iPad/iPhoneでパノラマ動画映像を楽しめる。主にライブやイベントの記録などに用いられるとのこと。このソリューション自体は、純正のカメラマウント以外で利用可能で、設定も容易だそうだ。
http://www.video-stitch.com/

■360度カメラ
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Freedom 360は、パノラマ撮影用のカメラマウント専門の会社。本マウントで撮影したパノラマ動画は先に紹介したVideoStitch、Kolor、PTGuiで利用できる。GoPro Hero3+用の499.95ドルのシンプルなカメラマウントから、674.95ドルF360 Explorer+ GoProの防水ハウジングのまま装着でき、衝撃保護フレーム搭載のカメラマウントまで。またFreedom 360ブランドのパノラマビューアーがiOS用にリリースされている。
http://freedom360.us/

■立体キャプチャカメラVECTRA H1
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Canfield Scientific社のVECTRA H1は、立体キャプチャ用のカメラ機材。基本は、医療用途で、解剖学や皮膚病の患者カルテの作成などに用いられているそうだが、コンピュータグラフィックス分野での利用も期待されているそう。その他、Canfield Scientific社では、顔と体同時に3Dスキャンする装置や、iPhoneやiPadに装着する顕微鏡製品もリリースしている。
http://www.canfieldsci.com/imaging_systems/facial_systems/VECTRA_H1_Imaging_System.html

■高品質3Dプリンタの目指す先カラフルカラープリンタStratasys
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3DプリンタメーカーStratasysからは、発色の鮮やかなマルチカラー3DプリンタObjet500 Connex3や、出力色見本が展示されていた。プリント可能なサイズは500×400×200mmまで。黄色やピンク、真黒など鮮やかな発色に感心するとともに、素材もマットなものから、半透明のものまで選択できる。価格は33万ドルとのこと。プリントサービスなどでの利用が期待される。
http://www.stratasys.com/

■OTOY、これでも最少サイズ、輝くLightStageの展示
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リアルタイムレンダラーを開発するOTOY社はホログラフィックディスプレイを2015年までにリリースを予定しており、専用コンテンツの作成ツールのひとつとして、全面LEDで囲まれたLightStageが展示された。LightStageはPaul Debevec氏が考案したバーチャル照明環境で、様々な環境における照明を再現する装置として、数多くの映画で活用されている。全ての方向のフルカラーLED照明をコンピュータでコントロールし、どのようなライティングも可能とするのだ。
http://render.otoy.com/newsblog/?p=547

Job Fair

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Job Fair求人ブース風景 ©2014 ACM SIGGRAPH

Job Fairは、展示会場奥に設置された求人求職コーナー。世界各国からCGプロダクション、映像プロダクションが、CG技術者、CGアーティスト、映像作家などをリクルーティング目的で出展している。最近のCGプロダクション業務は、とても細分化され、利用するツールも定番化している。映画業界のみならず、テレビドラマも映画スタイルの制作が広がっていることもあり、募集企業は映画産業だけとは限らない。勤務地も世界各国に広がっており、優秀な人材はどこでも引っ張りだこだ。

ハリウッド映画の大作であれば、数百人規模でチームが編成される。一方、とても複雑で、挑戦的な映像であれば、1ショットの制作にプログラム開発も含め、数十人のエンジニアやアニメーターが関わることもあるそう。会場では、自身のポートフォリオ(作品集)を手にアピールする学生風の参加者や、細かな質問にも丁寧に応える各募集企業のメンバーが会場いっぱいに広がっていた。

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「Toy Story」などで知られるピクサーの求人票とインターンの募集ハガキ

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スターウォーズの特殊効果などで知られるILMの求人票。拠点も職種も細かく分かれている

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Job Fair出展企業一覧。全部で25ブース



txt: 安藤幸央 構成:編集部


Vol.02 [SIGGRAPH 2014] Vol.04