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PRONEWS RADIO Vol.03
※併せて聞くと効果あり!
今年のNABのテーマは「放送のIP化」
石川 幸宏
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今年のNABで特徴的だったことのひとつに、会場内外から「Broadcast」の文字が著しく減ったこと、そしてその代わりに「IP」の文字を多く見かけたことがある。これは文字通り、放送の世界が近い将来の4K放送に向けて、これまでのSDIベースのベースバンドからIPケーブルや光ファイバー等を使ったIP伝送にいよいよ移行していく時期の到来を示しているのだろう。
昨年あたりからNABのような展示会場では「SDI is Dead!」というような言葉をあちこちで耳にするようになったが、今年はまさにその黎明期に突入したようだ。その要因として放送のIP技術はこれまでソニーなど、一部の先行メーカーが独自の方法で実現に向けて技術開発を行って来たが、SMTPE(米国映画テレビ技術者協会)がいよいよIP伝送の放送規格が定めたこともあり、今年から本格的に放送局のIP/4K化が進んでいく、IP元年となるだろう。
このIP化自体は映像制作者には直結しないと思われていかもしれないが、放送がIP化されることは、ネットでの映像配信がより近いものになってくるということでもあり、今後の映像コンテンツの作り方にも大きく影響が出てくるかもしれない。
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またVR360°映像のVRグラスによる体験コーナーが多く見られたことも特徴的だ。セントラルホールではGoogleなど数社が集まる「immertive Media」コーナーを設置、またノースホール内には360°VRのなぜか中継車(型の展示ブース?)が設置されるなど、次世代の映像コンテンツを予見させる展示も見られた事は興味深い。
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スタビライザーに見る夢は?
岡 英史
NAB三日目の朝は疲れもピークで毎年、寝坊必至。しかも昨日の砂嵐後気温も急変して砂漠の町とは思えないほど気温が下がった。尚且つ本日は動画取材の数もピークでじっくり見る事が出来ない為、取材中の中から気になったものを取り上げて見た。
■JVC GY-LS300
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JVC 4KCAMの最新バージョンが今回の取材カメラ。M4/3マウントを使いながら、その中身はスーパー35センサーを搭載、変換アダプターを使うことにより多数のメーカーレンズを使うことが出来るが、変換を使うことでケラレが発生する場合が多い。その部分を独自のバリアブルスキャンマッピング技術を搭載しセンサーの有効面積をクロップすることにより、ケラレを解消すると言うもの。イメージ的にはデジタルテレコンを使用してエリアを絞る感覚に近い。実際に今回のNABでもこの機能は大活用しメーカーカンファレンスで、もう少し被写体に寄りたい時などはフルサイズではなくてセンサーエリアを70%程度に絞ることで、テレコンをつけたのと同じ絵が作れる。形は業務用ハンドヘルドだが中身は大番センサーなので、多彩な映像表現ができる。
■スタビライザー
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二つのスタビライズドの違いを見たい。スタビライザーとして真っ先に思い浮かべられるのはステディカムだ。そして近年は三軸ジンバルのMoViがその際たるものだ。この二つは同じような考え方だが実際に取れる映像はまったく異なるもので、各々得意不得意がある。それを判った上で使うのが一番良いのだが、どうしても最近はジンバル系が人気かもしれない。
しかし、それは昨年までの話で今回のNABではステディカムを含めたメカニカルスタビライザーがまた数多く色んなメーカーから出展されていたのが興味深い。何でもかんでも三軸ジンバルから適材適所な機材を使うと言う現場が増えたためだろう。
写真はステディカムの最新型M1と、ワイヤレスリモコンであるフリーフライのミミック。これらの機能は随時アップ予定の動画取材にて確認してもらえればと思う。
■総括
今年も中々面白かったNABshow。Sony・Panasonicと言う二大メーカーが新製品を発表すると俄然業界が沸き立つのもあるが、それらを追従する他メーカーの勢いがまた面白い。今年はドローン元年とも噂されている位ドローンの展示が多かったのも興味深い。
とは言え今年は開催日が若干従来とは違った為に日本からの参加者が非常に少なかった。出来れば現場の人にはこのイベントは是非参加して貰って、グローバルでの映像シーンを機材を通じて感じて貰いたい。NAB参加は、5回目になる。この5年間で自分自身のスキルは非常に上がったと感じている。1年間の自分へのご褒美としてNABは最高の場所かもしれない。
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