PRONEWS RADIO Vol.02
※併せて聞くと効果あり!
LIVE HDRに大きな関心
石川幸宏 |
欧米では4K、8Kといった解像度アップの技術競争にはあまり着目はしておらず、やはり光の諧調である明暗をどこまで再現出来るかという、映像のダイナミックレンジへの指向性が高い。ここに来て一昨年ぐらいからの流れであるHDR(ハイダイナミックレンジ)技術への各メーカーの投資も急速に進んでいる感がある。
ソニーブースでは、HDRについての展示が今年も積極的に行われていたが、その中でも今年のトレンドは「LIVE HDR」だ。昨年くらいまでのHDRに関する展示は、主に制作系におけるものがほとんどで、Log/RAW収録で撮影した素材をポスト作業でカラーグレーディングしてHDR化するといったものだった。しかし、放送局の中で最も関心が高いのはライブ映像におけるHDR技術だという。
例えば、屋外のサッカー等の試合の半屋根があるグラウンドでのライブ中継では、直射日光があたる日向と屋根の日陰の明暗差が激しく、特に動きの速いスポーツでボールや選手を追いかける際に明部と暗部を始終行き来するカメラではその光度調整も非常に難しい。またゴルフのトーナメント中継では、空に飛んで行くゴルフボールは現行のHDではすぐにボールの行方を見失ってしまう。そこでライブ中継のカメラへのHDR機能化が注目されているわけだ。
実際にソニーが今年1月に開催した「ソニーオープンinハワイ」でHDC-4300を使用してこの4K HDRライブ中継の実験が行われ、ティーショットの際の空の中でもはっきりと小さなゴルフボールの軌道が視認出来たという。HLG=ハイブリッドログガンマは、昨年秋のIBC2015 Vol5でもレポートしたが、TV向けにNHKとBBCが共同提案しているライブ中継用に設定されたLogガンマカーブ。これが今後米国でも採用されていくようで、その期待値は高い。しかしライブ中継ではまだ普通のHD放送がメインで、色調整もHLG側にだけであわせてしまうと、HD放送の画像はキレイに映らない。さらにそこにリアルタイムという世界が要求される。
そこで、ソニーがいまやHDRモニターの代名詞となっているBVM-X300の大型機種として出してきたのが、今年7月発売予定の55型4K有機ELモニター、PVM-X550だ。このモニターがユニークなのは、画面を4分割できることで、S-Log3、ST2084、HLG、普通のHDという状況を同キャリブレーションされたOLEDモニターの1画面内で比較視聴することができ、S-Log3もしくはHLGのカラー調整を実際に放送されるHD画像への出力を見ながら調整出来るため、4K HDR素材を収録しながら、それとほぼ同等のHD画像を放送することができる。今後のLIVE HDRには非常に有効なツールとなりそうだ。他社でもHDRモニターの開発が進んでおり、今年は池上通信機が4K LCDのHDR対応モニターの展示を行っていた。
眠れないNAB
岡英史 |
毎年ラスベガスに来る度に興奮して眠れない…訳ではなく、単純に毎日のタスクが多すぎて寝る時間が無いだけ。毎晩美味しいもの食べてカジノで遊んでるんだろ?と思われる方もいるかと思うが、正直NABに来てカジノフロアはただの通過点。出来れば無いホテルを探したいくらい。今回はモンキーヒルズ猿田氏が夜は遊ぶぞ!って事で選んだStratosphere Casino, Hotel & Towerだが、その当人も全く遊べてない位時間が無い。真面目に仕事をしてると言う事なのでFacebookのおふざけタイムラインは信用しないように…たぶん。
■Canon COMPACT-SERVO 18-80mm T4.4 EF
もうTL等で情報は掴んでいる方も多いと思うこのレンズ。ようやく低価格帯のEFマウントでのCINEズームレンズが登場した。CINEと表現するのは少々間違いかも知れない、ビデオレンズと表現するのが正しいだろう。明るさT4.4は正直数値上は暗いかも知れないが、ビデオレンズと考えればそんな事は無い。それよりもミドルレンジ帯の価格でレンズワークが出来るものが登場したと考えるべきだ。EF系ズームのBFのズレが気になる方は確実にお勧め。C100等のEFマウントカメラがようやくしっかりとしたビデオカメラになる。デモ機申請しているので試用リポートが楽しみだ。因みにT4.4=F4.4ではない。
■ATOMOS SHOGUN INFERNO
将軍様が更にパワーアップして帰ってきた。3月にFLAMEが登場したばかりなのに、更に機能が充実しての登場。SDI×4本による4K入力やHDR等々低価格帯のモニター付キャプチャーBOXとしてはてんこ盛りの機能である物が全てくっついた感じだ。今回はまだ本調子ではないので細かい機能までは試すことが出来なかったが、SHOGUNユーザーは間違いなく買換えの一品だ。
■JVC GY-HM660
1/3inch撮像板カメラとしては驚異のF12の明るさを手に入れたGY-HM660。JVCのカメラは暗いと未だに思っている方はさすがに勉強不足。今回を機会に是非さわって欲しい。またS35センサーを搭載しているLS300CHも新規に120fpsのハイスピード撮影が可能になった。またJ-LogがJ-Log1となりそのカラースペースも豊かに変わった。LS300CHでどうにもこうにも駄目な部分が全て改良されたのはユーザーとしても嬉しい。
■Sony Video Journalist Backpack
3年前からNABで発見したビデオジャーナリストキットが今年も微妙にバージョンアップして展示されていた。トップエンドはPMW-X200をベースに三脚やレポーターマイク、ワイヤレス、LEDライトや三脚まで全てがワンパッケージになったもの。Sony USAしか取り扱いが無いのが非常に残念。価格もワンパッケージと考えるなら丁度良い値段感だ。是非日本でも販売して欲しい。
ポスト4Kが目指すもの
江夏由洋 |
NAB2日目もラスベガスは大いに盛り上がっています。新しい目玉となるようなカメラこそ今回はありませんが、例年以上の活気にコンベンションセンターはあふれています。今年のテーマは、VRやHDR、ドローン、IP、ハイフレームレートなどいくつも挙げることができる中で、どこもポスト4Kの行く末を模索しているように思えました。
人でいっぱいのコンベンションセンター。活気であふれています
「4K」という技術はある意味成熟の時期を迎えています。各社からすでにカメラもそろい踏みですし、「デジタルシネマ」が描く大判センサーの映像はすでに市民権を得たといっていいでしょう。「4Kカメラ」と聞いて、驚く人はいません。だからこそ今、その先にある技術こそが今回のNABのテーマでもあると思います。
デジタル一眼もNABのレギュラーメンバーへ
Eマウントレンズも積極的に展開
HDRはSonyブースの目玉に
私が一番驚いたのはSonyのブースです。SonyがNABで掲げるプロフェッショナル機材にデジタル一眼のα7S IIやα7R IIが堂々とラインナップされていたことでした。今までのNABでは個人で所有できるようなカメラが展示されることはなかったですし、しかもデジタル一眼という位置づけの機材がFS7やFS5と肩を並べて紹介されているのはびっくりしました。価格が安いとか、デジタル一眼カメラだからとかではなく、あくまでも性能や機動性を重視したSonyの展示展開に感動すら覚えます。F55の新機種登場の噂もありましが、地道に有益なファームウエアのアップデートを続ける姿勢も素晴らしいと感じました。LOG映像の次世代フォーマットとしてHDRを見せる方向性も、これからの4Kの在り方を提唱したいSonyのメッセージが込められているのかもしれません。
人でいっぱいのLytro発表会
初お披露目となったLytro Cinema Camera。とてつもなく大きい
セミナーでは具体的な編集ワークフローが紹介された。いよいよ実践へ
そんな中、今日発表になったLytro社のLytro Cinema Cameraは新しい時代を作る一台となりました。おそらく次世代の技術としては最先端であり、かつ映像技術としては「夢」を形にしています。このカメラは映像を撮影するのではなく、その場の空間を光とともに切り取るというカメラです。実際に撮影されて制作されたショートムービーも紹介されました。レンズという概念は全く存在せず、撮影後にフォーカスやシャッタスピード、絞りなどを変えることができます。自分の好きな被写体の好き場所にピントを合わせたり、ある一定の距離より離れた被写体や背景を合成のために切り抜くこともできます。信じられません。発表の会場には300人を超えるほどの人が集まり、このカメラが照らす未来を一緒に考えました。2006年にREDが4KRAWのカメラを発表した時のことを思い出します。今はまだ雲をつかむような話ではありますが、丸太のような大きさのカメラで実現した最新技術は、もしかしたら映像制作の概念を根底から覆すものになるかもしれません。
僕らが技術に求めるものは、作業の効率化や、作品のクオリティー向上だけではないと思います。やはり一番のモチベーションは「どんな作品を作ってみようか」と思える気持ちです。明日もそんな目線で会場を練り歩いてみます!
テレビ放送の歴史を振り返る
猿田守一 |
放送技術の最先端の展示会がNABなのですが、展示されている中でひときわ目に付くのがセントラルホールとノースホールを結ぶ通路にあるMuseum of Broadcast Technologyという団体の展示がある。ここではテレビ放送の歴史を垣間見ることができる。
いまだ現役の撮像管カメラやテレビモニター、また2インチVTRなどは大きな音を立てながらテープを擦っていた。この2インチVTRはAMPEXのVR3000という当時のポータブルVTRである。この映像を映し出しているのはJVCのこれもまた古いカラーモニターである。モニターには1970年代のものと思われる未編集の素材が流れていた。今現在HDや4Kに見慣れた現在の人たちでも、この映像を見て半世紀も前の物と思う人はどれだけいるだろうか。やはりCRTの映像は自分にとても合っていると感じた。
それとは正反対の最新の映像といえばVRなのかもしれない。広々とした体験コーナーでは人々が白い椅子に座りVR用ゴーグルと立体音響のヘッドフォンをかけた状態でそれぞれの人たちが上下左右と自分の周りを見ている様はとても滑稽に見えた。これが未来の姿なのか?