運用性や収録システムとしての多様性に期待

4K/8Kは総務省のロードマップに従い規格の策定、民生機や放送機器の開発が行われ、着々と本放送に向けての準備が進んでいる。4Kの実用化に向けた放送はCSやIPTV、ケーブルテレビ局などで開始され、8Kもパブリックビューイングという形で一般の人たちも触れる機会が増えた。

InterBEEの会場でもエントランスにモニターが設置され、NHKによる8K放送を実際に受信して披露したほか、スカパー!による4K HDR放送の受信もディスプレイされていた。4Kのテレビモニターも一般化し、DMMではAmazonや楽天などのECサイトを中心に、50型のモニターが6万円を切る価格で販売されている。

数年前までの4Kはデジタルシネマを意識した製品が多かったが、放送が始まったこともありUHD(3840×2160)対応のカメラが増えている。キヤノンはCINEMA EOS SYSTEMを数年前に立ち上げたが、今までのデジタルシネマ系ではなく、放送用のカメラとして使いやすいデザインを採用したEOS C700を発表した。

C700はCodex社のレコーダーCDX-36150を装着することで最大120Pの4K RAWの収録が可能。ソニーが発表したFS7 IIは電子式可変NDフィルターが搭載され、被写界深度を変化させずに撮影が行えるなど画作りに趣をおいたカメラといえるだろう。これらはいずれもレンズ交換式でHDRや4096×2160収録にも対応しておりアメリカのテレビドラマでは、フィルムで撮影されていた現場を意識した仕様となっている。

パナソニックは昨年AG-DVX200を発売したが、今年は広角24mmからの20倍ズームを搭載した小型ビデオカメラAG-UX180を発表。小型ビデオカメラならではの機動力アップを図っている。JVCケンウッドは受注生産だが、カメラマンが撮影しながらゲームスコアの入力が行えるGY-HM200BBを発表し、CATVや小規模プロダクションによるスポーツイベントの収録への可能性を広げている。

4Kカメラは、池上通信機や日立などからスタジオ・中継用の4Kカメラが発表され、今年は本格的な放送に向けて多様なカメラがそろった年といえよう。もちろん、その先の8Kカメラもアストロデザインや池上通信機、日立、キヤノンが試作品を中心に出展している。

PRONEWS AWARD 2016 カメラ部門ノミネート製品

  • キヤノン 4KカメラCINEMA EOS SYSTEM EOS C700
  • ソニー XDCAMメモリーカムコーダーFS7 II
  • パナソニック 4Kメモリーカード・カメラレコーダーAG-UX180
  • JVCケンウッド スコア重畳機能を搭載したカメラGY-HM200BB
  • アストロデザイン 8Kスーパーハイビジョンカメラ8KカメラAH-4801-B

何が受賞するのか…?

PRONEWS AWARD 2016 カメラ部門受賞製品発表

カメラ部門
ゴールド賞
4KカメラCINEMA EOS SYSTEM EOS C700

キヤノン

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これまでのCINEMA EOS SYSTEM Cシリーズと異なり、ユーザーが撮影現場に応じて自由にカスタマイズできるモジュールデザインを採用。ハンドルやマイクホルダーなどが標準で同梱され、様々な撮影シーンに対応可能だ。

また、SMPTE ST 2084規格のHDR映像を確認できる有機EL電子ビューファインダーEVF-V70やCodex社製のレコーダーCDX-36150などのオプションのほか、PLマウントモデルも用意されており、放送からデジタルシネマまで様々な用途に対応する。カメラ本体は300万円ほどだが、EFマウントレンズの選択や、記録メディアもHD/2KではSDメモリーが使用可能。さらに初期投資からランニングコストを含めてリーズナブルなシステムを組めるほか、必要に応じてRAW収録などシステムアップできる。

HD、UHD、4K DCIなどそれぞれ求められる仕様やアクセサリー、撮影現場が異なり、要求されるスペックや運用形態に合わせるのは難しいが、モジュール構成や豊富なEFマウントレンズの利用、最大120Pの4K RAWの収録や最大15Stopのダイナミックレンジ、デュアルピクセルCMOS AFといった基本性能も充実しており、オールラウンドで活用可能なカメラといえるだろう。

カメラ部門
シルバー賞
XDCAMモリーカムコーダーFS7 II

ソニー

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大判センサーの魅力の一つとして浅い被写界深度が挙げられるが、これは絞り値によって変わってしまう。一定の絞り値(被写界深度)で撮影したい場合は照明をコントロールするかNDフィルターによって光量を調節する必要があった。FS7 IIは独自開発の電子式可変NDフィルターの搭載により、絞り値を任意に設定することが可能でで被写界深度を一定にしたままでも露出調整が可能となっている。映像制作における画作りという点で画期的といってよいだろう。

また、手持ち撮影時のホールディングから三脚への設置など、撮影におけるカメラバランスや運用性など長年カメラを設計してきたノウハウが生かされている。また、HD収録時では、最大180fpsでの連続撮影が可能なほか、別売オプションによりRAW収録時最大240fpsでの撮影にも対応可能。付属のWi-Fiアダプターによるワイヤレスリモートのほか、オプションによりTC IN/OUT、GENLOCKなどのマルチカメラオペレーション、RAWレコーダー、ワイヤレスマイクなど撮影に必要な様々なオプションが用意されている。

カメラの基本性能や機能のほか一般的なスペックの良さだけでなく、画作りやカメラバランス、運用性など実使用時における重要項目を長年のカメラ作りにおけるノウハウをもとにうまくまとめたカメラといえる。

総括

いよいよ本格始動した4Kだが、現状トータルで見るとコスト面や運用性などネックになる部分が残っているという現状がある。加えてHDRなど当初あまり想定されていなかった部分での規格化など、数年前ロードマップが前倒しされたことで、規格化や製品化、実際の運用がほとんど同時進行で進んでいる。民生機もちょっとフライング気味でテレビモニターが発売されたり、PCモニターなどビデオ以外の周辺業界も4Kの方向に向かっている。

今年のノミネートは、こうした状況を踏まえ運用性や収録システムとしての多様性、コストパフォーマンスをポイントにしている。キヤノンEOS C700とソニーFS7 IIは、価格的には2倍以上C700のほうが高価だが、ともにレンズ交換が可能で、様々な撮影シーンに対応しているほか、HDRや4K60pへの対応やオプションによりRAW記録ができることなどかなり拮抗している。ただ、キヤノンはEFレンズという豊富なレンズが使用でき、HD収録時は安価なSDメモリーが使用できることなど運用性を考慮しゴールド賞としている。


Vol.00 [PRONEWS AWARD 2016] Vol.02