いよいよ始まったNAB

猿田守一

いよいよ本日4月19日にNAB2018が一般開催された。我々PRONEWS取材陣は早朝から会場隣のホテルで開催されるAJA社のカンファレンスに参加。その後Blackmagic Design社のカンファレンスに雪崩れ込んだ形だ。

Blackmagic Designからはプレスリリースが出ている商品が多いのだが、実機の展示というのは本日初という物がいくつかあった。今回のメインともいえるBlackmagic Pocket Cinema Cameraがついに4K対応となって帰ってきた。またDaVinci ResolveもVer.15となり、待望のFusionとのシームレスな編集環境を手に入れた。カラーグレーディング・ビデオ編集・音声加工編集・モーショングラフィックスなど全てDaVinci Resolveに入っているという、使いこなせたら最強のツールが無料で手に入る。

今回自分的に注目した新製品は各種コンバーター類である。今までより性能が向し、反比例するかの如く低価格化となっている。驚異的とも思える価格設定に驚くばかりだ。

今回のNABのキーワードは「ST2110によるIP化」ではないだろうか。ST2110とはSDIに代わるIP伝送の新たな規格である。SMPTEで定められている。順次PRONEWSで紹介されていくと思うのでご期待いただきたい。

気になった製品あれこれ

岡英史

■BMD

今日の一番でSNSで盛り上がっていたBlackmagic Pocket Cinema Camera 4K。最近のBMDは独自にWEB配信で新製品の発表をしている為にプレスカンファレンスで新鮮なガジェットは中々なかったのだが、近頃はそれもなくどうしたもんかと思っていたところのこの発表。既にスペックはHPで公開されているが筆者的の印象はまず意外と大きい。Pocket Cinema Cameraが本当にポケットに入るべき大きさななのに対してポケットと言うには流石に無理がある大きさに。一番の特長は今回のモデルにはPhotoボタンが付いているので写真が撮れる!一周回った感じがして面白い。

意外と日本人の手には大きいBlackmagic Pocket Cinema Camera 4K

■ATOMOS

このサイズ感でHDR対応は使いやすい

5inchサイズのNINJA Vの登場。入力はNINJAなのでHDMIのみだが4K60Pまで対応となった。更にHDR対応なのでこのサイズを載せる事が出来る3軸ジンバルや特機類には待ってました!と言うべき録画機と言って良い。一つ残念なのは折角の面白い機材なのに日本では余り広がらないかも?と思うのは筆者だけではないはず!?

■DigiBoom

三軸ジンバル+延長ポール=疑似ドローン

前記したNINJA Vが正に活躍できるようなガジェットを発見!棒の先に3軸ジンバルが付いただけの製品だが、カメラコントロールとジンバルがスティックを持ちながらフルコントロールできる。ブーム自体は2段式の伸縮が出来るので狭い場所でのオペレートも難しくはないだろう。ハイアングルから地面すれすれのローアングルまで前後のバランスが等しい為にスタビライザーの様な操作が可能。更に後部のバッテリーBOX周りにはキャノン入力(音声2ch)がある為、別途ライン音声や被写体に取り付けたラべリアマイクからの喋りも綺麗に録音が出来る。ブライダルでの撮って出しならこれ1台であらゆる映像が撮れてしまうはずだ。

■Sony

なんだかんだで良く出来ている!

1/2inch×3CMOSでの4Kカメラと言うことで業務レンジユーザーの間では色々な情報が飛び交ってるPXW-Z280。色々良く出来すぎていて更に上の機能を望む声もちらほら見かける位。その手の声は確実に技術者に届くのだが、SNS等で書いても流石に厳しい…。こういう展示会にて直接顔を突き合わせて話すことをお勧めする。

それでこのカメラだが4K時の収録はSxS1スロットのみ。もしくは1080サイズのプロキシデーターがメンテナンススロットでSDカードに収録が可能(HD時にはWスロットでSxS収録可能)。デジタルエクステンダーは4Kからの切り出し何で画質劣化は無し、音声ダイヤルはマニュアルの0を超えた所でオートに切り替えるスタイル。筐体上部にあるダブルMIシューはワイヤレス2個搭載しての4ch収録は残念ながら出来ない。α等のXLR入力MIシューなら、本体の2chと合わせてアナログ4ch入力が可能となるが電源消費が大きいので純正のLサイズバッテリーが必要。但し推奨ではないので自己責任で。デジタルエクステンダーはZ190も同じく使用できるので最大50倍のズームとなる。エアショー等の撮影では非常に良い武器になるはずだ。

■JVC

このカメラも非常に良い!

今回のNABでの一推しカメラ。コネクトカムの名前の通り色々な物に接続が可能となっている。色々な物と言うのはSDIx2個・HDMI・VIDEO端子のSD信号まで同時出力が可能。勿論IP伝送も出来る為ありとあらゆるワークフローに割り込ませることが可能だ。既存のスイッチャーに組み込むときはリターン映像がSDIはじめIPでも入力が可能。流石にワイヤレスでの伝送は遅延が出てしまうが有線ではD/D変換分の物理的な物しかない。また入力が可能と言うことはこのカメラで映像キャプチャが出来てしまうと言うことだ。更にWi-Fi機能を使用すれば入力された信号を配信することも可能。正にコネクトカムの名前通り、デモ機貸与が今から楽しみな機種だ。

ノンストップで走る、展示会初日

宏哉

展示会初日は、朝からのAJAブレックファストカンファレンスから始まるのが恒例だ。ここで、コンバーターやキャプチャーボードなどの新製品の発表をしっかりと浴びる。コンバーターなどは、フォーマットやインターフェイスコネクターのトレンドが見えるため、その年のNABのキーワードの幾つかが炙り出される。今年はやはりIP系のSMPTE ST2110だろう。このワードはその後も各所で耳にすることになる。

AJAのカンファレンスで朝食をとりつつ、いよいよ会場に肉薄するのが、BlackmagicDesignのカンファレンス。一般開場直前まで、同社の新製品の発表を見せつけられ「今年も無茶しやがって」とニヤニヤすることが、これから4日間の展示会のための表情筋の準備体操になる。

Blackmagic Designのカンファレンスが終わるのと開場はほぼ同時。カンファレンス終了後、プレス陣はそのまま会場内に流れ込んでいく。既に一般のお客さんと出展ブースの熱気に溢れかえっている。目指すは一路プレスルームだが、サウスホールの端のBlackmagic Designのブースから、ノースホールにあるプレスルームまで相当な距離がある。その移動の途上で、いつもお世話になっているメーカーブースに挨拶回り。今年もNABに来ていることをアピールしつつ、その後の取材へのご協力を軽くお願いして回る。

プレスルーム到着後は、息つく間もなく最低限の取材グッズを身につけて、お目当てのブースへ飛んでいく。今日は徹夜が祟って、活動領域は随分制限された…。まずは、プレスルームに近いセントラルホールから、軽く視察だ。

 

ドローンとジンバルの展開で衰えを知らないDJIは、今年はロボットアームとRONIN 2の組み合わせのデモ。さらに「MASTER WHEELS」というRONINコントローラーを投入。クレーンの先などに取り付けた RONINを精度高くコントロールできる。

次に、個人的に一番気になっている JVCブースへ突入。CONNECTED CAMの名前で展開されるGY-HC900の実機を目の当たりにする。HC900は、B4レンズマウント採用の2/3インチCMOS搭載HDカメラ。ENG収録は勿論のこと、カメラ内蔵機能によるIPストリーミングを無線/有線を問わず実行できるほか、マルチカメラ編成をIPを使って構築することが可能で、タリーやリターン、さらにカメラコントロールなどもLANケーブル1本で使用可能にする。CONNECTED CAM構想は、国土の広いアメリカでは既に展開が始まっており、今後のラインナップも拡張されていく予定だ。

さて、次だ…と言いたいところだが、今日はお昼過ぎに一旦、体力というか眠気の限界が来て、プレスルームで仮眠を取ることにした。夕方前にも動画取材などを行ない、初日ながら疲労と眠気の極致にあったので、本日はあまり無理をせず、残りの3日間に余力を振り分けることとした。

明日からも、各ブースをしっかりと取材したい。

NAB SHOW 2018とにかく広い会場が人で埋め尽くされた

池永玲

いよいよ本日よりNAB SHOW 2018が開催されました。スタート前から始まったBlackmagic Designのブース内カンファレンスの後、会場に一歩足を踏み入れて目に入るブースの数と果てしなく続く会場の広さ。そしてこの瞬間を持ち詫びていたであろう来場者の数。様々な言語が飛び交うNAB会場は世界中から多くの人たちが集まっていることを物語っていました。

Blackmagic Designブースのあるサウスホールからプレスルームのあるノースホールまで会場内を歩いた率直な感想は、とにかく広い。通路には人が溢れたくさんの機材を持って素早く移動するのは困難だと感じました。取材の合間に会場内を歩き2018 NAB Showアプリとガイドブックを頼りに気になるブースを探し場所の確認をするのですが、人が多すぎてなかなか注目の製品までたどり着くのが難しかったです。

本日、いくつかのカメラやスタビライザーなどを実際に手に取りチェックした中で、ウェディング映像撮影にも使ってみたいと直感的に感じたカメラはズバリ「Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K」。$1,295という導入しやすい価格はもちろん、モニターの見え方が良いカメラだという印象です。マイクロフォーサーズレンズマウントなのでレンズをお持ちの方は注目の1台です。

特別ゲスト:NAB2018映像オタク社長的視点

手塚一佳

今回のNAB2018は、一言でいうと「大容量映像が現実化したイベント」だ。

まずBlackmagic DesineのBMPCC 4Kだが、これはCinema DNG 4Kがついにローエンドクラスにまで降りてきた、ということで画期的な製品だ。ただBMD製品群に関しては、筆者はこのBMPCC 4Kよりもさらに、DaVinch Resolve 15のバージョンアップを推したい。フルスペックのマイクロフォーサーズセンサーにDCI対応、4K60Pまでの内部収録機能(CFast収録の場合)とこれはこれでかつてなかった非常に素晴らしい製品なのだが、それはあくまでも、処理を行う環境があってこそだ。

今回のDaVinch Resolve 15では、以前から懸案だったFusionの統合を成し遂げ、他社製品に勝るとも劣らない総合編集環境を実現した。また、他のプレイヤーとのやりとりを簡単にするべくバックアップ機能も強化され、非常に信頼性が増したと感じる。なによりも、WindowsやLinux環境に全く同じインタフェイスで対応しているのが素晴らしい。BMD社がついに映像の業務環境を理解してきた、強くそう感じる。

PanasonicブースとATOMOSブースでは、Apple社が今回のNAB直前に発表したProPes RAWの対応を大々的に発表展示しており、バージョンアップによって、VARICAMやEVA1、そしてATOMOSブース社の各種収録機などで可逆圧縮RAWが利用可能になったというアピールをしていた。これによって、今までは作業場やデータ量の都合であまり現実的でなかったRAW環境での映像製作が身近になる事が予想され、いよいよカラーグレーディングが日常業務化してくるだろう。私のメイン業務の一つであるCG業務も、実写マッチングが容易になる事が予想され、大変に嬉しい。

また、周辺環境も注目だ。AMDでは、複数のグラフィックボードを展示していたが、中でもRADEON Pro SSGは注目に値する。これは、独自のSSGと呼ばれるメモリーをなんと2TBもボード上に配置することによって、8K映像までもグラフィックボード上に乗せてしまおう、という画期的な発想の製品で、対応ソフトウェアであれば普通のPC上で、リアルタイムに8Kの編集再生が可能になる。これは、もういざとなったらこの70万円程度のボードを1枚買えば8Kをいじれる、ということであり、一気に8Kが現実化したと言えるだろう。対応ソフトウェアは今のところAdobe Premier CCが発表されている。

朋栄ブースでも、高輝度高解像度映像の対応が発表されており、HDRの展示が行われていた。高輝度対応も業界の抱えるもう一つの課題であり、特に環境ごとに行わなければいけない輝度レベルの再設定が厄介な問題となっていたが、同社はこれをVIDEO PAYLOAD情報を利用することで解決しており、今後の現実的な運用が見えてきたと言える。

他にも様々な国の様々なレンズなど様々面白い出展も多々あったが、これは後日、私のコラムでご紹介したい。


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