image :Ryota Baba
PRONEWS AWARD 2020大賞は…!?
大晦日である。今年最後の記事となるPRONEWS AWARD 2020大賞の発表をしよう。
まずは2020年のカメラ業界から振り返ろう。2020年のカメラ業界は窮地に立たされた年だった。中国の取引先部品メーカーからの調達に目処が立たず発売を延期する新製品が相次いだり、外出自粛でカメラの出荷台数は大きく落ち込んだ。特に今年春のカメラ出荷台数は悲惨な状況だったという。
ライフスタイルの変化が起きると、カメラはスチル撮影よりも動画機能に注目が集まった。緊急事態宣言で一気にテレワークが広がるとWebカメラやPC用ヘッドセットの売り切れが続出。売り場からWebカメラが消えると、SIGMA fpのWebカメラが注目を浴びるという出来事が起きた。
各カメラメーカーも、自社のミラーレスカメラのWebカメラ化で必要なアプリケーションをリリース。デジタル一眼カメラは、高画質なオンライン会議用のWebカメラとして使用される機会が一気に増えた。メーカーは、一眼カメラがWebカメラとして重宝される時代がくるなんてまったく予想していなかったはずだ。
そしてもう一つカメラ業界の大きなニュースは、業務用カメラとミラーレス一眼カメラを混ぜたシネマカメラの誕生だ。これまでミラーレスカメラと業務用シネマカメラには大きな溝があったが、その両方の長所を混ぜ合わせたシネマカメラが各社から登場してきた。100万円以下で個人でも購入可能、ミラーレスカメラクラスのAF搭載、小型軽量でワンマン撮影が可能なシネマカメラが、カメラ業界の新しい潮流として広がりつつありそうだ。
今年のPRONEWS AWARD 2020大賞は、そんな中から代表的な製品を選出した。編集部の2020年の答えがこれだ。
- 大賞
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プロフェッショナルカムコーダー FX6
ソニー
大賞はFX6とした。ソニーは、100万円を切る価格帯でフルフレームシネマカメラを実現した。受賞理由は、競合製品の中でも唯一手頃な価格でフルフレームシネマカメラを実現したところだ。
特筆すべきは、α7S III譲りのオートフォーカス性能。顔検出AFと瞳AFを備えた627点の像面位相差AFに対応している。特にシネマカメラで、瞳AF搭載は驚きだ。低照度性能もずば抜けていて、基準感度ISOは800だが、高感度ISOでは12800。夜ロケなどでも対応しやすい高感度性能を実現している。もちろん電子NDフィルタを装備し、2つのXLR入力、10ビット4:2:2 4K120P、HD/240fpsに対応と隙がない仕様も特長だ。
ソニーは、フルサイズ対応シネマレンズ「FE C 16-35mm T3.1 G」を発売。Eマウントとソニーのシネカメラが今後どのように映像業界を盛り上げていくのか?今後が楽しみだ。
2021年の展望
映像関連の大型展示会は年間通して中止を余儀なくされた。PRONEWSでは年間通じて国内外の展示会をレポートしているが、最初に影響の出た展示会は2月のCP+だった。当時は「中止は過剰反応」「すぐに収束する」なんて楽観的な意見も聞かれた。しかし、収束の兆しはいまだにまったく見えない。NAB、IBC、Inter BEEのすべてのリアル開催は中止。展示会はオンライン開催、各メーカー独自のオンライン発表会は定例化しつつある。
2021年の映像業界系展示会は、かなりイレギュラーだ。毎年ARRIやREDの出展で注目されているロンドンのBSC Expo(2021年1月30日~2月1日)は中止、国内最大の写真展示会CP+(2021年2月25日~2月28日)はオンライン開催のみ、毎年4月開催のNABは2021年10月9日~13日へ延期、毎年6月開催のCineGear LA EXPOは2021年9月23日~26日へ延期、IBCは2021年9月10日~13日。つまり、2021年はメーカー関係者や報道関係者、来場者が一堂に会する大型展示会は秋まで予定されていない。大型展示会は9月、10月に集中する予定だ。
2020年の展示会はほとんどがオンライン開催で、実機を見たり、各社を回って予想もしなかった製品に出会えたり、メーカー担当者や来場者とのコミュニケーションは皆無で、残念な年でもあった。オンラインがどんなに高精細になっても、展示会は現地へ赴いたほうが面白い。2021年はパンデミックの収束を願いつつ、ぜひともリアル開催を実現してほしいと願うばかりだ。
2020年は、様々なことがありつつも多くの製品やサービスがリリースされた1年となった。果たして2021年はどういう年になるのか?思いを馳せつつ、1年の幕を下ろしたいと思う。そして2021を迎えたいと思う。