パナソニックは、マイクロフォーサーズミラーレス一眼カメラ 「DC-GH6」を2022年3月25日に発売する。希望小売価格はオープン、市場想定価格はボディのみの「DC-GH6」が税込26万3,000円前後。標準ズームレンズ(12-60mm F2.8-4.0)が付属した「DC-GH6L」が税込33万7,000円前後。
次世代プラットフォーム採用で高い次元のスペックを実現
従来比約2倍と大幅に高速化したヴィーナスエンジン搭載
GH6は、4つの大きな特徴を持っている。1つ目は、新世代のプラットフォームの採用で、従来できなかった技術が一気に実現可能としている。それにより、動画系の技術が大きく進化している。
GH6ではエンジンにまったく新しい新世代の画像処理LSI「ヴィーナスエンジン」を採用。これにより、演算処理能力は従来比で約2倍の進化を実現。S1HやS1Rなどのフルサイズフラッグシップ機よりも高速なエンジン搭載により、既存の上位機よりも高い処理性能を実現可能としている。画質の向上やオートフォーカスの性能の向上など、さまざまな性能の向上を実現可能にし、解像感やS/Nは新エンジンにより画質性能が大幅に向上している。
また、一般的には同じ画素数のフルサイズとマイクロフォーサーズのセンサーを比較すると、フルサイズの方が高い解像感を実現可能と言われている。しかし、GH6の場合は、近しい画素数のフルサイズ機と比較しても、同等やそれ以上の解像感を実現できるという。これはエンジンの性能に依るが大きいとしている。
高解像と高速性に優れた新開発25.2Mセンサー搭載
GH6では、25.2Mセンサーの新開発Live MOSセンサーを採用。これまでのGH5シリーズは、20.3M画素のLive MOSセンサーを採用してきたが、GH6では25%ほど画素が多いセンサーを搭載。GH6では、25.2Mセンサーを生かした1億画素のハイレゾショットに対応する手持ち撮影にも対応している。
エンジンとセンサーの一新により、広色域で撮れるように強化している。GH6では、フルサイズ機と同じV-Log/V-gamutフォーマットを採用し、絵合わせをしやすいように仕上げることが可能となっている。
最大13+ストップのダイナミックレンジが得られる「ダイナミックレンジブースト」搭載
単一露光で2種類の画像を取得してリアルタイム合成きる新しい機能「ダイナミックレンジブースト」を搭載。これまで豊かな階調と解像感のある描写を実現する機能として、2つの標準感度設定を実現する「デュアルネイティブISO」技術があったが、それの進化発展形に近い技術を採用している。
ダイナミックレンジブーストは、暗い画と明るい画を同時に撮る処理を1回の露光で同時にキャプチャが可能。それをリアルタイムに1画素単位ですべて合成処理を行い、明部から暗部まで情報量がきちんと存在する状態で画を撮ることを可能としている。最大13+ストップのダイナミックレンジが得ることが可能で、これまでマイクロフォーサーズの高画素機では不可能だと思われていたダイナミックレンジの撮影を可能だという。
ただし、ブーストモードは、常日頃絶対に使える機能ではなく、フレームレートやISOに制約がある。フレームレートは60fpsまでになり、ISOはV-Logの場合はISO2000からの少し高い位置からのスタートとなる。新エンジンの性能向上によりISO2000でもゲインアップによるノイズは最小限に抑えているが、NDで落とすといった配慮が必要になることが予想される。
表現の幅を広げる動画性能の向上
一新された動画記録モード
動画記録モードは、LUMIXとして初めて搭載する5.7K60PやCinema4K120P、アップルProRes 422 HQモードなど一新している。各モードはクロップレスかつフルエリアで撮ることが可能。さらに、スローモーション系の撮影モードも含めて、MOVとアップルProResのフォーマットに対応。2つに関してはすべて10ビット対応となっている。MP4のような互換優先の動画フォーマットは8ビットだが、制作用に使う記録モードはすべて10ビット対応となっている。
また、記録モードでは、LUMIXとして初めて4:2:2 10ビットをカメラ内に記録できる。これによってグレーディング耐性の向上が可能。これらのモードはすべて記録時間無制限で撮影が可能で、高データレートモードでも問題なく撮れる仕様になっている。
多彩なスローモーションに対応
スローモーション表現は大きく2つの機能に対応する。高速に動くものをそのまま記録する「ハイフレームレート」と変換して記録する「バリアブルフレームレート」の2つを搭載。いずれもすべて10ビットに対応する。
4K120Pは、各社ハイエンド機に搭載が増えてきているモードだが、Z CAMや特殊なカメラは除くとおおよそ45万円以上程度の価格帯に搭載されている。GH6は、20万円台半ばで4K120Pを撮れるので、市場では目を引く存在となりそうだ。バリアブルフレームレートに関しては、フルHDは300fpsまで撮影可能だ。
また、ProRes 422とProRes 422 HQのカメラ内記録をGH6で初めて対応。RAWではないが、中間コーデックのダイレクト記録ができるようになっている。もっとも高データレートのモードでは、約1.9Gbpsモードでの記録が可能。これ以外にも、800MbpsのALL-Intraなど、より高画質な記録モードが増えていている。ちなみに、アップルProResのフォーマットが唯一、4:2:2 10ビットが高解像を撮れるモードになっている。
内蔵マイクで24bit音声記録
GH6は、初めて音声フォーマットのカメラ内の24bit記録に対応。従来、XLRマイクロホンアダプター「DMW-XLR1」をつけたときのみ24ビット仕様だったが、今回内蔵マイクもピンジャックやマイク端子もすべて24bit対応を実現。最近、オーディオのビット深度が話題になっているが、このあたりをGH6では強化をしている。
さらに4chの音声収録に対応で、出演者が多いときにマイクでそれぞれ別のチャンネルで拾うことが可能。バックアップで撮る場合でも異なるマイクで収録し、収録ミスに備える仕様を実現している。
アシスト表示の実用性が向上
撮影アシスト系では、これまで「V-LogLビューアシスト」機能が「.cube」のファイルに対応。また、マニュアルフォーカスのアシストの機能を搭載し、動画ライブビュー中に拡大表示ができるようになった。セーフティーゾーンマーカーや色温度をケルビンで表示する機能を搭載し、業務用途で使うときにより使いやすい仕様になっている。
機動性、操作性の向上
5軸手ぶれ補正システムは7.5段に向上
GH6の手振れ補正は、ボディ内にLUMIXの中でももっとも段数の高い5軸7.5段の高精細ジャイロセンサーを搭載。 マイクロフォーサーズのユーザーには、開放F値0.95のNoktonなどのマニュアルフォーカスレンズを使っている人も多いが、このようなマニュアルフォーカスのレンズを使っていてもボディー側できちんと止められそうだ。また、ジャイロセンサーとエンジンの処理性能を活かしながら静止画系の機能も進化していて、手持ちハイレゾにGH6では初めての対応している。
AF、MFを改善
オートフォーカスも強化している。GH6ではオートフォーカス系処理を約3倍の高速化を実現。これまでは顔認識の枠が出ているがピンが来ていないのようなことがあったが、顔の移動に演算が追いついていなかったのが原因だった。GH6では、そのあたりを改善している。
また、アルゴリズムの改善で、苦手だった背景抜けや追従性の改善、ウォブリングと呼ばれるピント位置が前後に揺れる現象を重点的に抑制しや追従性の改善などが行われている。 苦手なシーンの改善に取り組んでいる。
物理的にレンズの駆動範囲を制御するフォーカスリミッターと呼ばれるモードを搭載している。「手前のみピンが行かないようにする」「奥のみピンが行かないようにする」のような物理的にリミットをかけられる機能である。例えばジンバルで人を追いかけていく撮影の時は、無限側を範囲から外すことが可能。フォーカスリミッターを事前に設定することで、使い勝手の向上が可能になりそうだ。
メニューの視認性改善やジョイスティックの操作性を改善。ジョイスティックは8方向に対応し、右左で人物や瞳の直感的な切り替えを可能としている。
モニター機構は、チルトフリーアングルを採用。S1Hで評価の高かった機構を、ロック機構をなくして進化をさせている。チルトだけでも使えるし、フリーアングルとしても使える。HDMIケーブルとの接触もないで、便利に使えそうだ。
ファインダーは、368万ドットOLEDファインダーを搭載。ファインダーとモニターの同時表示が可能で、ファインダーをのぞきながら被写体側はアングルチェックを同時に可能としている。
信頼性と拡張性が向上
GH6では、放熱システムやマグネシウム合金の採用で軽量と耐久性の両立、-10°まで耐えうる防塵・防滴・耐低温設計を実現。このあたりは、LUMIXのフラッグシップモデルの仕様を引き継いでいる。
バッテリーパックは、S5やGH5Ⅱと共用の「DMW-BLK22」を採用。一部制約があるが、従来のGH5に対応する「DMW-BLF19」も使える。しかし、高解像の5.7Kや120Pのような高速モードやアップルProResの3つは旧バッテリーにはエラー表示が出て対応できない仕様になっている。多少の注意は必要だが、従来のGHシリーズのユーザーは予備として使うことは可能だ。
記録メディアは、CFexpress Type BカードとSDカードに対応。GH6ではCFexpressカードに800Mbpsや1GMbps、1.9GMbpsの記録を可能としている
今後のファームウェアアップデートで、動画RAWデータ出力やアップルProRes形のフォーマットの種類の増加、SSDへのダイレクト記録にも対応が発表されている。
■動画RAWデータ出力
- ATOMOS NINJA V+へのC4K 120P動画RAWデータ出力
■アップルProRes対応の拡充
- C4KおよびFHDのアップルProRes 422/ProRes 422 HQ(発売時は5.7K 30P対応)
■HDMI出力の強化
- 4K 120P動画出力
■USB SSD対応
- USB SSD記録
小さなボディに大きなポテンシャルを秘めたカメラ登場
GH6の魅力は、従来から一新されたプラットホームを採用し、LUMIXの中でももっとも先進的な機能をマイクロフォーサーズに載せてきているところだろう。マイクロフォーサーズでありながら、フルサイズクラスに迫る画が出せたり、フルサイズだと高額なハイエンド機でなければ手に入らない撮影モードが20万円半ばの価格帯で手に入ることも可能。
再び、フルサイズ機とマイクロフォーサーズ機の論争を巻き起こすきっかけとなるようなポテンシャルを秘めたカメラの登場と言って良さそうだ。