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NAB 2022は4月27日に終了した。展示会場に4日間取材をして感じたことは、クラウドを活用した動画制作の時代が本格的に到来してきたということだ。そこで最後のNAB 2022 Dailyでは、NABの会場でクラウドサービスを全面的に押し出していたBlackmagic DesignとAdobe、ATOMOSの各社ブースの様子を紹介しよう。

Blackmagic Cloudで世界中のどこからでも同時作業が可能

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Blackmagic DesignはNAB最大のブース面積で、Blackmagic Cloudやライブプロダクションスイッチャーを展示した。その中でも特に注目はDaVinci Resolve 18を複数人同時に作業が可能になるBlackmagic Cloudだ。

Blackmagic Cloudとは、DaVinciプロキシワークフローを実現する新しい技術で、ビデオ、オーディオエディター、カラーリスト、VFXアーティストなどすべて、Blackmagic Cloudを介してどこからでもResolveプロジェクトファイルにアクセスが可能になる。

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DaVinci Resolveに新しく搭載されたログイン画面

また、プロジェクトファイルをクラウドに取り込むための、Blackmagic Cloudと組み合わせて使用​​する独自の3つのネットワークディスクを発表した。1つはBlackmagic Cloud Podで、自身は内部ストレージを搭載していないが、任意のUSB Type-Cディスクをつなげることで、ネットワークストレージに変える事が出来る。USB-Cポートが2つ搭載されているので、1台のBlackmagic Cloud Podで2つのディスクをネットワーク上で同時に使用することが可能。2つ目はラックマウント可能で8TBのフラッシュストレージ搭載のBlackmagic Cloud Store Mini。3つ目は大容量でデスクトップ型のBlackmagic Cloud Storeシリーズで容量が20TB、80TB、320TBの3つのモデルをラインナップする。なお、複数のBlackmagic Cloud PodやCloud StoreはDropbox経由で同期することもできる。

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あらゆる用途に適したネットワークストレージ・ソリューション「Blackmagic Cloud Store」

Adobeはメディア、プロジェクトファイル、フィードバックを一元化して、どこからでも共同作業を実現

AdobeもNABに帰ってきた。コロナ禍以降初めての展示会出展だ。Adobeブースの目玉はPremiere ProとFrame.ioの統合だ。Adobeは2021年にFrame.ioを買収し、現在はCreative Cloudサブスクリプションの一部として組み込んでいる。タイムラインを離れることなく、Premiere ProとAfter Effectsの内部からコメントと注釈を直接作成でき、プロデューサーやクライアントなどとクラウドを通じてシームレスにコラボレーションが可能だ。

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映像の特定のコマに印を付けたりコメントをつけることが可能。そのまま相手に届けることができる

また、撮影から編集までのアクセスをほぼリアルタイムになる「Camera to Cloud」も話題だ。メディアの高速アップロードとダウンロードを行い、すべてのサブスクリプションの一部として100GBの専用Frame.ioストレージを提供する。

Camera to Cloudのデモ。REDのKOMODOで撮影した素材をクラウドを通じて即転送。Premiere Proで読み込むことが可能になる

さらに、新たなパートナーシップも見逃せない。AtomosはFrame.ioに接続できる2つの新しいデバイスを市場に投入したり、モバイル編集アプリのFiLMiC Proとの新しいFrame.io統合などを実現。映像制作の常識の打破してくれそうな注目の機能となりそうだ。

ATOMOSはクラウドワークフローを実現するデバイスやアクセサリーを発表

ATOMOSもNABに合わせて大注目のニュースを発表し、ブース展示していた。NinjaVおよびNinjaV+用のネットワーク接続デバイス「Atomos Connect」と、新しいクラウド対応のモニターレコーダー「Shogun  Connect」、クラウドベースのワークフロー「ATOMOS Cloud Studio」の3製品だ。

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NINJA VやNINJA V+専用のアクセサリーATOMOS CONNECTを展示
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ATOMOS SHOGUNをベースに、HDRモニタリングやRAW収録機能、ネットワークやクラウドワークフローなどの機能を統合した「SHOGUN CONNECT」

Atomos Connectを取り付けたNINJA V/V+と7インチレコーダー一体型のSHOGUN CONNECTは共に、幅広いミラーレス一眼レフカメラでクラウドへの直接転送が可能になる。1080P、H.265(HEVC)プロキシファイルを生成してFrame.ioに自動アップロードしながら、ProResまたはDNxファイルで収録できる。

Atomos Cloud Studioは、Atomos Capture to Cloud、Atomos Live Production、Atomos Streamの3つの機能を搭載。Capture to Cloudは映像を共有、Atomos Live Productionはビデオスイッチャーとサウンドミキサー、Atomos Streamはライブストリームを配信するためのオールインワンソリューションを備えている。

クラウド型映像制作サービス「ATOMOS Cloud Studio」のスニークピークを公開。機能の1つATOMOS Live Productionはクラウドベースのコントロールルームで、ビデオスイッチャーとサウンドミキサーの操作が可能

2023年度のNABは4月15日~19日にラスベガスで開催決定

最後に、NAB主催者は今年の参加者総数を発表した。52,468人の参加者があり、そのうち海外からは155か国、11,542人の参加があったことを発表した。コロナ禍前の2019年度開催の参加者は91,460人だったので、40%ダウンと大幅に減少したことになる。ちなみに、2019年は約1,600の出展社に対して、今年は約900とこちらも減少している。

しかし出展社や参加者は半減したといってもイベント全体は活気に満ちていたし、製品を見られて話を聞けて体験できることは刺激を得られる貴重な機会であった。

なお、2023年度のNABは、4月15日から19日に開催。同時にNAB100周年を祝う行事を行うことも発表された。