撮影編に突入!と、その前に

VR制作2回目は、前回のレクチャーを踏まえて、いよいよ3D 180°VR撮影に挑戦する。

まずは先日のPRONEWS編集部員での会議後、いくつかVR撮影のテストを行った。1つはモデル撮影をしてみた。モデルさんに立ってもらい撮影をしてみたが、超広角な映像の真ん中に1人だけポツンと人物がいるのはあまりVRの魅力を感じることができなかった。それよりも、目を引くのは、偶然周囲に映り込んだ無関係の人達を見る方が面白く、ついつい興味を惹かれる。

ライブハウスでの模様。バンドと観客の動きを見ても十分興味深い

さらに、ライブハウスでのバンドも撮影してみた。こちらはバンドのソロパートの際にそれぞれのプレイヤーの方を向くことができるのが嬉しいし、画面端に映り込んだお客さんの中にいた赤ちゃんをあやす人達を見るのも面白かった。画面の中でバンド演奏以外の起こる出来事に、ついつい興味が引かれてしまう。

「その場を切り取る」というコンセプト

これらを踏まえて改めて思い出したのは、先日のレクチャーでキヤノンの矢嶋氏の言葉だ。「その場を切り取る」というコメントだった。あたかもその場にいる没入感のある体験ができるのが3D 180°VRの魅力だ。それを引き出せるような撮影内容を考えることにした。

なかなか見ることができないシーンで、我々が切り取ることのできる場面にはどのようなものがあるだろうか。

例えば、スタジオでのスチル撮影の現場にVRカメラを設置して、モデルさん、カメラマン、ディレクターなどが作業しているところをクライアントのような気分で眺める、なども案としてはあがった。しかし、PRONEWSらしさで考えると「取材現場」が面白いのではないか、ということになった。

編集部では様々な場所で取材を行なっているが、その結果が記事になるだけで、取材現場は普段は表に出ることはない。その場にいるかのような体験は面白いのではないかと確信した。

写真家/映像作家であるGoto Aki氏を訪ねて

今回は写真家/映像作家であるGoto Akiさんのご自身のアトリエでの取材の様子を、Canon EOS R5 CとRF5.2mm F2.8 L DUAL FISHEYEの組み合わせで3D 180°VR撮影することになった。

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以下、撮影現場で感じたことを列挙してみる。

現場でのカメラの設置

機材設置といっても本当に簡単だ。R5 CとRF5.2mm F2.8 L DUAL FISHEYEの組み合わせは非常にコンパクト、小さめの三脚に乗せて水平を取るだけで完了する。これが以前のようなカメラ2台でのVR撮影となると時間と手間がかかることは言うまでもない。一つ注意点としては、レンズの真下も映ってしまうので、もし三脚の映り込みがNGの場合は、カメラの位置を三脚よりも少し前に出す工夫が必要だ。今回、我々は、あえて見切れる演出で進めた。

ピント調整の確認

R5 Cの液晶画面のみではピント位置の確認が難しい場合もあるので、今回は外部機器で出力し、タブレットを外部モニターとして使用した。通常とは異なる全周魚眼の映像になるため、周囲がどこまで映り込んでいるかなどの確認も必要となり、より大きなモニターがあると状況確認には便利だろう。

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バッテリー

今回は撮影時間も長くなかったこともあり持ち合わせのバッテリーで間に合ったが、R5 CはUSB給電にも対応している。長時間の撮影では外部バッテリーを用意しておくといいだろう。

EOS VR UtilityとVR撮影時のフォーマット

実現場に入って最初に簡単なテスト撮影を行なった。現場で撮影したファイルをEOS VR Utilityで変換したが、うまくいかなかった。記録フォーマットをMXFにしてしまっていたのが原因だった。EOS VR UtilityではMP4とRAWには対応しているがMXFには対応していない。

お恥ずかしい話だが、別件で記録フォーマットをMXFの設定のまま、そのまま撮影を行なったのが原因だ。VR初心者以上に、撮影時には、気を付けなればならない点だ。テスト撮影の重要性も再確認できた。できる限り撮影現場で、EOS VR Utilityで変換して確認することをおすすめする。

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撮影アングル

今回は、

  • インタビュアーも映り込むアングル
  • インタビュアーは映り込まないアングル
  • インタビュイーにより近づいたアングル

の3つのアングルで撮影をしてみた。また、インタビュー中にあえてスチルカメラマンが端に映り込むように移動するなどの動きも入れてみた。

カメラと被写体となる人たちとの距離感については様々な演出が考えられるので、今後も検討してみたい。

撮影を終えて

GOTO AKI
1972年生まれ。風景写真に自然科学の視点とスナップ撮影の手法を取り入れ日本の風景写真をアップデートし続けている。2020年写真展・写真集「terra」にて日本写真協会賞新人賞受賞。gotoaki.com

通常の撮影とは違う点がいくつもあり、戸惑いながらの撮影ではあったが、EOS R5 CとRF5.2mm F2.8 L DUAL FISHEYE、そしてEOS VR Utilityの組み合わせによる設置、撮影、変換の手軽さは十分に体験できたし、新たな記録の仕方、映像の楽しみ方として多くの人に挑戦してもらいたいと思った。

また、これは反省点だが、現場にVRゴーグルを持参していれば、EOS VR Utilityで変換したファイルを視聴する状態ですぐに確認することができたので、次の機会では是非その部分も挑戦したいと思う。

GOTO AKI氏へのインタビューは、後日VR映像で見ていただきたい。CP+2023では、最終日2月26日にGOTO AKI氏がキヤノンブースでのセミナーに登壇する。