GFX ETERNAが示す映像制作の新たな方向性

Cine Gear LA Expoにおける富士フイルムブースの注目展示は、2025年中の発売が予定されている「GFX ETERNA」である。GFX ETERNAを改めて紹介すると、大きく3つの特徴がある。

1つ目は、GFX ETERNAが採用しているラージフォーマットセンサーに関する点だ。43.8mm×32.9mmという大判センサーを活用することで、従来のフォーマットでは得られなかった映像表現の幅が可能となる。

2つ目は、富士フイルム独自の色再現技術である。フィルムシミュレーションに加え、F-Log2Cといったログガンマ記録においても、富士フイルムらしい色彩設計が反映されている。広い色域(gamut)の中で柔軟に色をコントロールできる仕様となっており、それに対応するフィルムシミュレーションLUT(ルックアップテーブル)も新たに用意される予定である。

3つ目は、レンズとカメラの一貫した開発体制である。FUJINONレンズは、これまでも映像制作の現場で高い評価を得てきたが、今回は富士フイルム自身がカメラ本体との組み合わせを前提に設計しており、画作りの統一性や信頼性の面で優位性を持つ。

このように、フォーマット、色再現、レンズという3つの柱によって、GFX ETERNAは映像制作における新たな選択肢となることが期待されている。

GFX ETERNA+ステディカム運用で示す映像制作の柔軟性

Cine Gear LA Expoの富士フイルムブースでは、2台のGFX ETERNAの実機が展示された。これまでの展示会(2024年のInter BEE、2025年のCP+、NAB)ではガラスケース越しの展示であったが、今回は1台がガラスケースなしで展示され、屋外での稼働状況が披露された。

Cine Gear LA Expoの富士フイルムブース

来場者が直接実機に触れることはできなかったものの、カメラオペレーターによる操作の様子が間近で公開された。特に、Duvoシリーズのレンズを装着したGFX ETERNAがステディカムで運用されるデモンストレーションは、稼働する実機が初めて一般公開された機会であり、製品化への進展を示唆するものであった。

ステディカム運用のGFX ETERNAは、Duvoシリーズの「HZK14-100」レンズと組み合わせて展示された。このセットアップはライブプロダクションにおけるGFX ETERNAの活用を意図しており、電源供給や手元でのサーボ操作などがデモンストレーションされた。これにより、GFX ETERNAがシネマ用途だけでなく、ブロードキャスト用途にも柔軟に対応できることが示された。

HZK14-100レンズは、1.5倍のエクスパンダーを内蔵している。このエクスパンダーは、有効にすることでイメージサークルを1.5倍に拡大し、フルサイズ相当のセンサーに対応する。エクスパンダーを使用しない場合は、スーパー35mmフォーマットのズームレンズとして機能する。

GFX ETERNAはフルフレームモードとスーパー35mmモードの両方に対応しているため、HZK14-100との組み合わせにおいて柔軟な運用が可能である。たとえば、よりクローズアップの映像が必要な場合はフルフレームモードを使用し、1.5倍エクスパンダーを併用することで、エクステンダーに類似した効果を得ることができる。

さらに、ステディカム運用のGFX ETERNAの展示は、GFX ETERNAとENG(放送用)系レンズとの連携に関する可能性にも注目が集まった。GFX ETERNAのボディ前面右側上部にはヒロセ12ピンコネクターが搭載されている。このコネクターの具体的な使用方法については現時点で詳細な発表はないが、将来的には電源供給や、レンズとカメラ間の通信プロトコルを用いたブリージング補正、レンズ収差補正、Tドロップ補正といった機能連携が可能になることが予想される。今回の展示ではヒロセ12ピンコネクターとDuvoシリーズレンズは接続されていなかったが、今後の展開に期待が寄せられる。

デモンストレーションでは、スタビライザーのリグからD-tapを介してレンズへ電源が供給され、手元のコントローラーからサーボを操作できる仕様となっていた。

この展示は、GFX ETERNAが映画制作向けのカメラであるという従来の認識を覆すものであった。GFX ETERNAはライブプロダクションやENGといった用途にも対応可能であり、ハイエンドなシネマ用途にとどまらず、個人によるドキュメンタリー制作など、幅広いシーンでの活用が見込まれる。GFX ETERNAの形状はシネマカメラを意識したものだが、その用途は多岐にわたると考えられる。

GFX ETERNAが示す大型センサー搭載機の新たな方向性

もう1台のGFX ETERNAはガラスケース内に展示し、過去のETERNAフィルムとの関連性を示した。GFX ETERNAというカメラ名は、同社のフィルムブランド「ETERNA」に由来する。富士フイルムは、長年にわたる映画フィルムの色に関する知見をデジタル技術に応用できる点を特徴としており、この展示はその強みを視覚的に訴求する狙いがあった。実際にフィルムで映画を制作する関係者からは、高い評価を得ているとされる。

さらにGFX ETERNAに搭載されてるイメージセンサーユニットの展示もあった。GFX100 IIと同サイズの44mm×33mmの大型イメージセンサーが搭載されている。この大型センサーが小型ボディに収まっている点は特筆すべきである。

このセンサーはハイスピード撮影に対応し、さまざまな読み出しモードが実装されている。具体的には、オープンゲート、標準GFフォーマット、Premista専用モード、35mmフォーマット、アナモフィック風モード、そしてスーパー35mmクロップモードなどが挙げられる。これらの多様な読み出しモードの組み合わせが、このセンサーの最大の特徴である。

GFX ETERNAは電子式の内蔵NDフィルターを搭載しており、映像制作において不可欠なNDフィルターの運用を容易にしている。また、発表された製品ではローパスフィルターも採用されており、撮影感度に関する懸念に対応している。

GFX ETERNAは、同カメラに最適化されたパワーズームレンズ(実焦点距離32-90mm相当)との組み合わせも注目に値する。この組み合わせにより、サーボズームやオートフォーカス、防振といった機能の利用が可能となる。特に中判クラスに対応したズームレンズは選択肢が少なく、オープンゲートにも対応可能なレンズは希少である。今後、他社製レンズの普及が進めば、GFX ETERNAの利用機会はさらに拡大すると予想される。

ALEXA 35 LiveにおけるDuvoレンズの有効性と可能性

国内でもARRI ALEXA 35 Liveの導入が進む中、富士フイルムのDuvoシリーズレンズとの組み合わせが注目されている。特に、Duvoシリーズの25mmから1000mmまでをカバーするスーパー35mm PLマウントレンズ「HZK25-1000」は、ALEXA 35 Liveとの組み合わせにおいて強力な選択肢となっている。

この組み合わせは、日本においても普及していく可能性を秘めている。シネマライクなライブ映像を実現するためにはレンズ選定が重要であり、Duvoシリーズはこの要件を十分に満たしている。

大型センサーを搭載したカメラに対応した箱型ズームレンズ「HZK25-1000」
ARRIのマルチカメラシステム「ALEXA 35 Live」

HZK24-300の国内利用拡大とライブ中継における可能性

Duvoシリーズには、ハンドヘルドでの運用を想定した標準的な24-300mmのPLマウントレンズ「HZK24-300」も存在する。Duvoシリーズのイメージサークルはスーパー35mmであり、主な用途は音楽ライブ中継だが、近年ではスポーツ中継での使用機会も増加している。特に、バスケットボールやフィギュアスケートといった屋内スポーツの撮影に適したレンジであるため、今後さらに活用が提案される見込みである。過去には大相撲やミュージックアワードジャパンなどのイベントでも使用実績があり、日本国内での需要拡大が期待されている。

HZK24-300とソニーVENICEシリーズとの組み合わせ

Duvoシリーズレンズと組み合わせて使用されるカメラボディは、国内ではソニー「FX6」「F5500」が最も普及している。ソニー「BURANO」や「VENICE」といった他社製カメラボディとの組み合わせも可能であり、顧客の多様なニーズに対応できる体制が整っている。