3.11後に思う事

3.11、未曾有の大震災が日本を襲いました。多くの方々の尊い命が奪われました。亡くなられた方々のご冥福と共に、被災された方々の心身が1日も早く回復されますよう、お祈り申し上げます。

被災地復旧の見通しも立たぬまま、余震や福島の原発事故など、不安要素の波状攻撃が相次いでおります。この災害に対し、いち生活者ができることといえば、義援金や物資の寄付などの支援活動と節電に加え、心身の自己管理を怠らない、風評被害に加担しない、自分より人を優先的に大事にするという、日常生活の極めて当たり前な心がけを実行するより他にありません。

一方、日本の経済に携わる社会人として、私のようなライターも含め、表現を生業としている多くの人々が「今、自分がするべき仕事とはなにか」、真剣に思索しています。素晴らしい音楽や芸術や映画や文学やファッションやデザインが人を癒し、励ましや潤いを与えることはいうまでもないけれど、それはある一定の生活水準を前提とした上で獲得する豊かさであり、現在急を要するものといえば、衣食住環境を立て直すための支援であることは明白です。被災地にエールを送りたい。日本に元気を漲らせたい。

しかしかなりの電力を使用するメディアに携わる者に関しては、無駄なエネルギー使用は控えるべきではないか。仕事を自粛するべきか。いや、経済をまずは回すべきだ。節電を念頭において仕事の方法論を組み立て直そうか。個々に悩ましい決断を迫られていることと思います。

そんな中、クリエイター有志が、被災地支援サイトの立ち上げ『SAVE JAPAN PROJECT』『LOVE FOR NIPPON』、全国から集めた支援アイデアを実行するキャンペーン『IDEA FOR LIFE』、日本を応援する海外のキャンペーン『designers for japan 』他、寄付、救援物資の送付、フリーマーケットの開催と売上げの寄付などなど、実に様々な活動を迅速に行い、被災地への支援を呼びかけています。作品を作った映像作家もいる。

糸色-I toshiki-

映像:Qotori film inc. 音楽:野田洋次郎
映像作家、島田大介とRADWIMPS野田洋次郎氏による共作映像です。この作品は電気を一切使わずに撮影されました。特設サイトには義援金やメッセージを受付けるコーナーが併設されています。

きみでいて ぶじでいて

音楽家、菅野よう子の書き下ろした楽曲に、映像クリエイター関根光才、PIKAPIKAアニメーションでお馴染みのトーチカを筆頭とした映像クリエイター陣が集結。使用画像は一般公募により送られた写真です。

それぞれ方法論は違えど、また、賛否両論は多々あれど、今、自分に出来ることを見定め上でアクションを起こしている。大地震という自然災害に原発の人災事故が加わり、日本は戦後史上最大の危機を迎えています。人々の不安はますます増し、被害はさらに広がる。だからこそ、人々の心を明るく照らし、希望で満たす娯楽や文化が必要です。その際「自分たちのやりたいことを内輪で楽しくやってお金ももらってラッキー」という前時代的かつ幼稚なモチベーションは存在意義の欠片もないし、用もない。「自分自身およびそのアイデア、表現、感情が、人々や地域や経済の復興ツールになる」ことを、葛藤しながらも強く意識する自負と鳥瞰の視野を持つクリエイターを、私は支援します。私自身も上記を信条に、襟を正して頑張ります。どうか、この国に希望の光を灯して下さい。その活動に期待と祈りを捧げます。

WRITER PROFILE

林永子

林永子

映像ライター、コラムニスト、ラジオパーソナリティ。「スナック永子」やMV監督のストリーミングサイト等にて映像カルチャーを支援。