txt:柏原一仁(銀一株式会社) 構成:編集部

映像表現の追求

今回は「映像表現の追求」をテーマに話を進めていきたい。ステディカムを触ったことがある人はどれくらいいるのだろうか。読者の中には結構いるのかもしれない。触ったときの第一印象は?「面白い」「不思議」「感動!」いろいろあるだろう。だが、そこから一歩進むと「難しい」が必ず付いて回る。

リグ写真

そう、ステディカムは難しいのだ。しかも、何やら説明書を読んでフムフムナルホドとなるようなものでもないのである(そもそもまともな“扱い”に関する説明書はついていない)。

まず、このとっかかりの難しさで皆くじける。ただ、先輩カメラマンや知り合いでステディカムを理解している環境が身近にあれば、スムーズにスタートできるだろう。ぜひとも周りに”ステディ仲間”をつくってほしい。とはいえ、なかなかそんな環境が皆手に入るわけではないし、自分でゆっくり理解したり、切磋琢磨しながら学びたいというニーズもあるだろう。

オペレーターズハンドブック/DVD

Vol.01でご紹介したように、オペレーターズハンドブックという分厚い本(英語)や、EFP Training VideoというDVD(英語)もある。これらを見ながら基礎を学ぶのも良いだろう。また、おすすめしたいのは世界中で開催されているワークショップだ。

ワークショップの様子

ワークショップはステディカムの構造、バランシング、身体へのフィッティング、ワークの仕方、現場での振る舞いなど多岐に渡る内容を盛り込む。 現在行われている“Tiffen Steadicam Workshop”は、ゴールド、シルバー、ブロンズの3つのコースに分かれ、それぞれ5.5日、3日、2日の期間で実施される。

そのほか各国で独自に行われる1日のみのトレーニングなどもあるが、オフィシャルトレーニングは上記の3つだ。それぞれのワークショップは基礎から行われ、いきなりゴールドワークショップに参加することもできる。違いは日数と、ステディカムの大きさ(搭載重量)、高度な撮影テクニック(ドリーやカーマウントなど)の有無なのでステディカムを扱ったことがない人でも安心して参加できる。

そしてこの日数の違いは、その多くがどれだけシーケンス(具体的なシーン撮影)練習を行うか、というところである。「具体的なシーケンスを撮る」という練習を、昨日までステディカムを触ったことがない人もベテランも、皆混じって行うのである。

ここで初めて技術を学ぶと同時に、画作りという感性を学ぶ機会だということに気付く。この道具がどういう画を撮るのに向いているのか、またどう撮るといいのか、これをひたすら教え込まれる。正解は一つではなく、グループ(通常3~4人で構成)内のほかの参加者の画を見ながら、自分だったらどう撮るかを考える。考えて、やってみる。うまくできない。「もう1回!」となる頃には、次のシーケンスへ……。これを毎日繰り返していく。

ひたむきに映像表現を追求していく。もう少しこうだったら良い画になるんじゃないか、それを模索しつづける。何度もそれを繰り返していくうちに、ステディカムでどういう画が撮れるのか、どういうワークが向いているのか、どこで使うべきか、そのセンスがあっという間に身に付いていく。ステディカムだけで成立する作品はそう多くはないが、一方でステディカムで撮影した映像は没入感があり官能的な、訴える画をその映像に加える。映像制作のエッセンスとしては最高のパートナーだろう。ステディカムは技術も大事だが、感性がより重要だ。ワークショップを通して「それを教えてくれるのはやはり人なんだ」と気付く。

面白いのは、オペレーターがオペレーターに教えるというこの仕組み。自分のテクニックや感性を惜しげもなく教えてくれる。ステディカムのコミュニティは大きくないので、皆交流が多い。一見商売敵になりそうだが皆教え合い、シェアしあう。お互いが高め合えるからだ。

さらに映画やCMを撮っているオペレーター、ブロードキャストのオペレーター、ブライダルや企業VPがメインのカメラマン、趣味の人まで、撮影ジャンルを飛び越えてコミュニティを形成しているのも、ほかにない特長だろう。世界中のオペレーターのコミュニティにあなたも足を踏み入れてみてはいかがだろうか。次回は「じゃあステディカムじゃなくても電動ジンバルでいいんじゃないの?」というあたりを掘り下げていく。皆聞きたいけどあまり話のネタにならない話題。お楽しみに。

WRITER PROFILE

柏原一仁

柏原一仁

リリーヒルワークス代表。銀一株式会社にて映像機器・写真用品のセールス・マーケティングを経て独立。好きな食べ物はからあげ。