txt:岩沢卓(バッタネイション) 構成:編集部
地元の人々に親しまれているKTS鹿児島テレビ
鹿児島県で2番目に開局した民放テレビ局として地元の人々に親しまれている鹿児島テレビ放送株式会社。「KTSの日」や「鹿児島ラーメン王決定戦」など多くの人を集めるイベントも開催している。今回は、YouTube Liveを使ったライブ配信をテレビ局が行うことの意義や、使用しているシステムなどについてKTS鹿児島テレビ 番組推進室 部長 桐野俊策氏にお話を伺った。
始めたきっかけ
KTS鹿児島テレビ 番組推進室 部長 桐野俊策氏
桐野氏:来場者15万人以上を記録した「鹿児島ラーメン王決定戦」というイベントでは、イベント終了後に特別番組の放送があるのですが、イベントの様子をリアルタイムで届ける手段としてネット配信を利用することにしました。最終日のランキング発表は注目度も高いので、速報性を重視してインターネットライブ配信をしています。
また、VR映像や360°配信など、現状の地上波では実現できないこともインターネットを活用して行っています。360°全天球ライブ配信はマラソン大会でも活用し、大きな反響を得ることができました。
減災への取り組み・災害情報の発信として
桐野氏:エンターテインメント要素だけではなく、地域の防災情報をいつでもライブ配信できるようにスタンバイしています。報道用スタジオカメラの映像をスイッチャーに入力していますので、すぐにネット向けにライブ放送ができるようになっています。
鹿児島の場合は、火山や台風などの災害情報を必要とする場面も多いですし、離島部に多い局地的な災害の情報など、今までのテレビ放送ではどうしても時間を取り続けることが難しかったものについても、インターネットを通じてカバーできるようにしています。テレビ局が持つ取材力を生かすかたちで、より地域の減災に役立つ情報発信の方法を常に模索しています。
受信方法の多様化
桐野氏:スマートフォンが普及し、本体のバッテリーも大容量化したことで、災害時の情報ツールとしても重要なものになっているという認識はあります。我々テレビ局は、災害時にも放送を続けられるようになっていますが、災害に遭われた地域の方々が、たとえば停電の際に情報を得ようとすればテレビよりもスマートフォンを通じて情報を得るということも起きますので、信頼できる情報源として、テレビ局の重要性があると考えています。
システムについて
桐野氏:スイッチャーは、放送機器の流用のしやすさからHD-SDI端子を持つV-1SDIを使用しています。コストパフォーマンスの面からもシンプルな操作性の面からも満足できるものだったので、製品が発表されてから早い段階で採用することを決めていました。
放送とインターネットライブ配信では、求められる内容も必要とするデータの質も異なります。また、掛けられる予算にも限りがあるのでコンシューマー機などもうまく組み合わせて使用しています。なので、HD-SDI/HDMIの両方の出力端子があるのは、コンバーターを新たに用意する必要がないので、選択のポイントになっています。設定を変える際のメニュー画面がHDMI出力から出てしまい、本線となるエンコーダーにも表示が出てしまうので、設定関連はUSB接続したPCから行うようにしています。
あくまで、メインはテレビ放送になりますが、視聴者のみなさんとの接点を増やすことや、より実験的なコンテンツ作りを行うために、これからもいろいろとチャレンジしていければと思っています。