txt:岩沢卓(バッタネイション) 構成:編集部

高知さんさんテレビ
報道制作局 報道制作部 副部長 服部淳一氏(写真右)
技術局 技術部 副部長 吉本憲司氏(写真左)

1997年、高知県に民放3番目のテレビ局として開局した「高知さんさんテレビ」。同局では、Roland V-1SDIを活用し、小規模な機材構成での生中継を実現しているという。そこで、V-1SDIを使用した生放送に携わられている同局の服部淳一氏と吉本憲司氏に実際の活用方法などについてお話を伺った。

視聴者宅のリビングにセットされた中継機材

“中継車を出せない現場でも、スイッチングをしたい。そんなニーズに応えてくれるコンパクトなスイッチャーを探していました”

――V-1SDIを生放送で活用されているとのことですが、どういった形で使われているのでしょうか?

服部氏:最初に使用した現場は、番組のクリスマス特別企画として、小学生の女の子にクリスマスプレゼントとしてベッドを生中継で届ける、というものでした。生放送中に行うサプライズ企画で、一般のご家庭にカメラを仕込んで生中継を行うということで、リビングルームでのオペレーションとなりました。そのため、コンパクトなスイッチャーが必要なので、展示会で見つけてから気になっていたV-1SDIを使うことに決めました。同番組は視聴者様から感動したなどの反響が非常に大きかったです。

サプライズプレゼント企画の系統図と見取り図

吉本氏:見取り図と系統図を見ていただけるとわかるのですが、視聴者の方のご自宅のリビングに機材を並べさせていただくため、ほんとうにコンパクトなスペースで行なう必要がありました。また、お子さんにサプライズがバレないように、お父さんに、いつも使っている家庭用ビデオカメラで撮影を行ってもらいました。HDMI端子も付いているので、民生機器の混在もしやすく、GoProなどもHDMIでそのまま入力したりと、便利に使っています。

アウトドア用の折りたたみデスクに収まる機材量

リビングのテレビでオンエアチェックを行なった

――導入のきっかけは、どういったものだったのでしょうか?

服部氏:以前から、簡易中継機としてLiveUを導入して、県内各地からの中継に活用していたのですが、単純な1カメ中継だけでなく、2カメ以上を使った演出が出来ないかと考えていましたので、小型スイッチャーについては、他社製品含めて検討していました。

吉本氏:バッテリーでの運用もできるので、イベント会場からの生中継などで、撮影場所を移動しつつ、寄り引きの画を現地で切り替えられるが良いですね。

服部氏:LiveUについては、すでに複数台導入していたので、よさこい祭りの会場から、2台のカメラでそれぞれ伝送を行い、局内でスイッチングして、生放送に出すということも行なっていました。2カメであるという目的は達成できたのですが、カメラごとのディレイ量が異なったり、局側からインカムで指示を送る際に、見ている画面とのズレがあるので、スイッチャー含めてカメラマンの近くにいたいよね、という話はしていました。

中継にマルチカメラを導入できるようになって番組の自由度が高まった

吉本氏:中継車を用意する場合、コスト面だけでなく、中継車の駐車場所やケーブルの引き回しなどを考えると、ある程度中継できる場所が限定されていたのですが、V-1SDIとLiveUを組み合わせることで、それまでの制限を感じずに生中継を行うことが出来ています。

服部氏:先ほどの、プレゼント企画などは、住宅街のなかからの中継になるので、やっぱり中継車が停まっていたり、ケーブルが出ていたりすると、サプライズ演出も難しいですし、ご近所さんも気になってしまうと思うんですよね。そういった点をクリアできたのも、これからの番組制作の自由度は上がったと思っています。

カラオケ中継での系統図と見取り図

――DSKやPinPなどの機能も使われることはあるのでしょうか?

服部氏:カラオケで90点以上の得点を出すチャレンジ企画を生中継した際には、ワイプを使って、フェーダーを途中で止めておいて、2画面を合成するような使い方をしたりもしました。

吉本氏:基本的には、最終的な画面合成などを局側で行なっていますので、シンプルな映像切り替えに使用していることが多いです。技術的な面では、カメラマンからタリーが欲しいと言うリクエストが来ているので、RS-232を使ってシステム構築が出来ないかと考えています。

V-1SDI

WRITER PROFILE

岩沢卓

岩沢卓

空間から映像まで、幅広いクリエイティブ制作を手がける兄弟ユニット「岩沢兄弟」の弟。 デジタル・アナログを繋ぐコミュニケーションデザイン・プランニングを行う。