オンラインのみでの開催が主だったセミナーやカンファレンスも、オンラインとオフラインを組み合わせたハイブリッド形式のイベント開催が増え、新しいスタイルとして定着してきた。

2023年1月にハイブリッド形式で開催された「Regional Scrum Gathering Tokyo 2023」(RSGT2023)の会場では、RolandのV-160HDを使用して、会場スクリーンと配信画面という別々の視聴環境に合わせた映像・音声を一台のスイッチャーから送出が行われた。ハイブリッドイベントの映像演出面における機材選定のポイントなどについて、技術担当の清田さん原田さんのお二人にインタビューを行った。

良い機材はスタッフのモチベーションを上げる

株式会社オレンジボックス 清田高博氏(左)
ドウガベース 原田健太郎氏(右)

――まずは、清田さんから自己紹介をお願いします

清田氏:

愛知県田原市にある株式会社オレンジボックス代表の清田です。駅伝やスポーツ、株主総会やイベントなどの大規模ライブ配信の他、シネマカメラによるプロモーションビデオやCM制作まで、全国様々な場所でイベント企画制作から映像制作・ライブ配信まで幅広く手掛けています。
異業種からの映像業界への転身組で、元々は生花関係の仕事からスタートし映像業界へ飛び込み、テレビ局のENG取材など現場で必要な知識を覚えていきました。

――映像業界に飛び込むまでは、全く別のお仕事だったんですね

清田氏:

そうですね、ENG取材の現場で働きながら実地で学んだことが大きいですね。ショルダーカメラからスタートしたことで、業務用機器や放送用機器の重要性や、それを扱える人材が重要であることも意識できるようになりました。

――最近では、ハイブリッドイベントを担当されることも多いとのことですが

清田氏:

大型ビジョン映像などイベント演出で培った経験を元に、コロナ禍でのハイブリッドイベントなども多く担当させてもらっています。原田さんには多くのプロジェクトでテクニカルスタッフとして協力してもらっています。

――原田さんは映像業界一筋と伺いました

原田氏:

そうですね。映像系の学校を出て、都内のテレビの技術プロダクションに就職しました。現在は、愛知県豊田市を拠点に活動をしています。

――自社スタジオもお持ちなんですよね?

原田氏:

地元・豊田の方が気軽に、動画による情報発信ができるスペースを作りたいと、2020年2月に動画の"撮影・配信・収録"が出来るスタジオ「ドウガベース」をオープンしました。自社スタジオを活用した案件から出張配信まで担当しています。

清田氏:

原田さんのように体系だった知識のある人こそ、ハイブリッド配信などの現場では必要とされているよね。

――配信自体が身近になったからこそ映像技術の積み重ねが必要ということですね

清田氏:

イベント現場では、お客さんのやりたいことに柔軟に対応することが大事ですが、そのためには、「どうしたら出来るのか」という部分で技術的な裏付けだったり、最新の知識を仕入れておくことが重要になってきますね。
お客さんのやりたいことを実現するために必要な機材があれば導入しますし、導入をするにあたっても前提となる知識が、横断的である必要が高まったと思います。

原田氏:

現場が終わってから「この機材があればもっとこう出来たよね」とか「あの機材を持ってきていて助かったよね」という会話をスタッフ間でしていることが多いですね。

清田氏:

良い機材を導入することでスタッフのモチベーションも上がるし、提供できる価値もアップできる。という視点で積極的に機材の更新・導入を行っています。

原田氏:

それは、機材好きのスタッフが集まっているからこそ成立することかもしれないですね。

――機材導入する時のポイントなどはありますか

原田氏:

私の場合は、オールインワンで完結できるものという視点で選んでいます。初めて導入したRolandのV-60HDが革命的な機種でしたね。

清田氏:

僕の場合は、必ずしもオールインワンにこだわらずにいますけど、現場での対応力の高さとSDI入出力が出来ることというのが大きなポイントですね。

V-160HD導入でオペレーションがシンプルに

    テキスト
※画像をクリックして拡大

――今回のイベントではV-160HDを使用されていますが

原田氏:

V-60HDでは入出力が足りないことも増えてきたので、V-160HDを追加導入したばかりです。V-60HDの上位機種として、必要な機能がコンパクトにまとまっていることが大きいですね。ハードウェアスイッチャーの安定感があって、入出力の自由度が高いのが良い点ですね。

清田氏:

SDI、HDMIと入出力できる信号の自由度が高いのはスライド用パソコンなどが多い現場での安心感に繋がりますね。

――V-160HDのiPadアプリ(V-160HD Remoto)を使っての操作もされていましたが

原田氏:

プロジェクタースクリーン・Zoom・YouTube Liveなどに対して、それぞれ別の映像や音声を送りたいといった場合にも(iPadの大きな画面で)マクロを使うことでオペレートのミスを減らすことが出来ています。

 

清田氏:

これまで複雑だったオペレーションがシンプルになれば、イベント進行や演出に対して割ける時間も増えるわけで、最終的な満足度アップにも繋がると思っています。

原田氏:

ハイブリッドイベントが増えたことで、配信でケアすべきことは実はすごく多いです。映像・音声・配信のスタッフ間での連携やフォローがより大事になってきているので、コントロールのシンプルさやインターフェイスのわかりやすさは、本当に重要になってきていますね。

清田氏:

担当領域の専門知識を持ちつつ、お客さんの要求に柔軟に応えるために、お互いの担当分野もカバーするというか、何をやっているかお互いにわかっている。操作がシンプルだと、ちょっとした理解をしやすくなりますよね。

原田氏:

(V-160HDの出力には配信用のUSB-Cがあるので)Zoomなどのウェブ会議システムとの接続では、USBケーブル一本だけ挿せばOKなのが本当に助かっています。たくさんのコンバーターを繋がなくて済むのはトラブル回避という意味でも重要なポイントですね。

V-160HDは柔軟さが求められるハイブリッドイベントで活躍する一台

今回のインタビューでは、現場で柔軟に対応するために、必要な機材投資を継続的に行っていくという姿勢が印象的だった。

そして日々柔軟な対応に奔走するオペレーターの声に応え、この2月にVer.2.0へアップデートしたV-160HD。実際にこのイベント後、Ver.2.0にアップデートした原田氏によれば、出力端子毎に60pや60iの出力フォーマットをコンバーターなしで構築できる点や、USBテンキーで特定の機能操作を割り当て、作業分担できる点は以降のハイブリッドイベントで活躍しているようだ。

V-160HDのコンパクトさは、オペレーション卓周りをシンプルにすることが出来る。そして、さまざまな出力先・出力方式が求められるハイブリッドイベントでこそ、技術・演出の両サイドで無理なく要望に答えられるようになるだろう。

WRITER PROFILE

岩沢卓

岩沢卓

空間から映像まで、幅広いクリエイティブ制作を手がける兄弟ユニット「岩沢兄弟」の弟。 デジタル・アナログを繋ぐコミュニケーションデザイン・プランニングを行う。