01:カラーマッチツールで収録する機種の違いによる“色調のバラツキ(色調のねじれ)”を解消
テーマを少し逆戻りさせて、今回はプライマリーの前に下準備として行うベース処理の話をしたいと思う。
同じメーカーのカメラを使っていれば、製造時期の多少の違いがあってもカラー設定を同じにすることで、色調はほぼ同じに収録されるだろう(同一光源の下でホワイトバランスを取り、適正露出で撮影することが前提)。
では、GoProやスマートフォン、一眼ムービーカメラ、ビデオカムコーダーといった、メーカーも機種も異なるカメラが混在した撮影では色調の違いはどうなのだろうか?今回は、収録する機種の違いによる“色調のバラツキ(色調のねじれ)”を解消する方法を解説する。
使用するのは「カラーマッチ ツール」(以下:カラーマッチ)だ。
ワークスペース・カラーの画面左下のカラーホイールと同じパネルにあり、カラーチェッカーを摸したアイコンをクリックすることでカラーマッチに切り替わる(図01-01)。
図01-01
次の3機種のクリップを用意した(図01-02)。
図01-02※画像をクリックすると拡大します
- アップルiPhone7
iOS12.3.1にバンドルされたカメラアプリのムービーモードにて撮影(カメラ設定はデフォルト)- ニコンD810
カラー設定(ニコンではピクチャーコントロールと呼ぶ)は「ニュートラル」- パナソニックAG-DVX200
カラー設定(パナソニックではシーンファイルと呼ぶ)は「シーン6」。「CINE-LIKE D」という暗部から明部まで豊かな階調を確保するグレーディングに最適な設定
撮影前にきっちりとホワイトバランスを取っているが、機種間で若干の色温度の違いが見られる。しかし、それ以上に違いを大きく感じるのはコントラストなのだが、実はそれほど大きな問題ではない。実際にカラーホイール・ツールのコントラスト調整用マスターホールのリフト/ガンマ/ゲイン操作で簡単にコントラストを揃えることができる。
では、肝心の色調はどうだろうか?
第一印象は、彩度(色の鮮やかさ)の差に目が行くことだろう。
サイト上では違いが分かり難いかもしれないが、その次に気付くのは植物の黄緑色、そしてビンやボトルの赤~橙色も違って見える。
02:クリップ同士の色調を合わせ込むカラーマッチツール
前振りが長くなった。「カラーマッチ」に移ろう。
カラーマッチは、カラーチェッカー(13~32色のパッチを配列したボード)をクリップに写し込み、カラーチェッカーのオリジナル色との差分を計算してクリップ同士の色調を合わせ込むツールだ。
誤解を恐れずに言えば、各クリップに写っている全てのカラーチェッカーが全て同じに見えるように色を合わせるツールだ。
指定のカラーチェッカーは、「Datacolor SpyderCheckr24」や「DSC Labs ChromaDuMonde24+4」、「X-Rite ColorChecker Classic」など7種類。作例クリップに写しこまれているのは「X-Rite ColorChecker Passport Video」だ(図02-01)。
図02-01
■「iPhone7」のクリップの調整
最初は「iPhone7」のクリップから(図02-02)。
図02-02※画像をクリックすると拡大します
(01)収録されたクリップは少し露出不足なので、ノード01に全体的な明るさ(露出)調整をする。と、その前に、そもそも明るさ調整はカラーマッチの前のノードに調整するのか?後にするのか?
いろいろと試してみたのだが、カラーマッチの前に明るさ調整する方が結果は良さそうだ。
画像全体の明るさ調整をするには、四連カラーホイールの右端、オフセットのマスターホールを使う。波形モニターを確認しながら、オフセットのマスターホイールを徐々に上げて(明るくして)行き、今回はRGB各値「32.00」とした。波形モニター上でも上下にバランス良く収まっている(図02-03)。
図02-03
(02)シリアルノード02を追加して、カラーホイールからカラーマッチのパネルに切り替える。そしてカラーチェッカーを「X-Rite ColorChecker Passport Video」に指定する(図02-04)。
図02-04
(03)次にビューアでの操作に移る。
マウスポインタの種類を切替えるビューア左下のポップアップメニューから「カラーチャート」を選択する。するとビューア中央に「X-Rite ColorChecker Passport Video」のパッチと同数24個の小さな枠が並んだ四角いスケールが表示される(図02-05)。
図02-05※画像をクリックすると拡大します
(04)このスケールは四隅を掴んで自由に変形できるので、写しこまれている「X-Rite ColorChecker Passport Video」に合致させる(図02_06/図02_07)。ちなみにクリップのカラーチェッカーとカラーマッチ・パネルのパッチ配列が上下逆さまになっているが、スケールに上下は関係なくDaVinci Resolveが自動検出してくれる。
図02-06/四角スケールの変形途中
図02-07/合致させた
(05)カラーマッッチのパネルに戻り、構成のパラメータを以下のように選択する(今回のムービーはWebメディアでの公開を想定している)。
- ソースガンマ:カメラ(iPhone7)のガンマ/Rec.709
- ターゲットガンマ:出力先デバイスのガンマ/sRGB(Webデバイスに公開なので)
- ターゲットカラースペース:出力先デバイスのカラースペース/Rec.709(sRGBと同じ色域)
- 色温度:6500K(Webデバイス公開なので)
構成が決まったら、「マッチ」をクリックして適用する。すると、それぞれのカラーパッチが上下に別れて表示されるが、上段がカラーチェッカーのオリジナル色、下段がカラーマッチ後のクリップ上の色調を表している(図02-08)。
図02-08
(06)「Nikon D810」と「Psnasonic AG-DVX200」の各クリップにも同様な処理を施す。
■「Nikon D810」のクリップの調整
ノード01:カラーホイール/オフセットをRGB各値16.00まで下げる(暗くする)
ノード02:カラーマッチ
- ソースガンマ:sRGB(この設定が機種とは異なる)
- ターゲットガンマ:sRGB
- ターゲットカラースペース:Rec.709
- 色温度:6500K
■「Psnasonic AG-DVX200」のクリップの調整
ノード01:調整不要(適正露出なので)
ノード02:カラーマッチ
- ソースガンマ:Rec.709
- ターゲットガンマ:sRGB
- ターゲットカラースペース:Rec.709
- 色温度:6500K
これでカラーマッチは完了だ。
3つのクリップを見比べてみると、彩度が下がり、コントラストも下がっているため、全体に眠い印象に仕上がっている。しかし、機種間の色調のズレが修正されたことで、プライマリー、そしてセカンダリーへとグレーディングする準備が整ったことになる(図02-09)。
図02-09※画像をクリックすると拡大します
カラーマッチ後のプライマリー完了時点の画像も、参考までに上げておくので見比べて欲しい。(図02-10)
図02-10※画像をクリックすると拡大します