モノクロでありながら、赤いバラに見えるグレーディングを目指す
今回のクライアントの要望は「タイトルバック用の赤いバラの画像をモノクロにしたいのだが、モノクロにしても赤いバラっぽくに見せたい」というもの。モノクロなのだが赤色を感じさせる画像にしたいということらしい…。
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一般的に映像や画像のモノクロ化は、カラーホイールツールの下段にもある“彩度”の数値:0.00にすることで可能だ。アプリケーションによっては“-100”と表記する場合もあるが、要するにカラー成分表示しないことでモノクロにしている。
だが、今回の課題である真っ赤なバラの場合、彩度数値:0.00ではどうだろう?葉のグレーの濃さ(明るさ)に比べて、花びらは濃すぎる(暗すぎる)と感じるのではないだろうか?
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オリジナル画像でいえば、緑色の葉を濃く暗く、赤色の花びらをもう少し明るい印象に仕上げることでクライアントの要望に応えられそうである。
この結果に得るために、DaVinci Resolveにはいくつかの方法が存在するのだが、今回は最もシンプルな“RGBミキサーツール(以下:RGBミキサー)”を用いることにする。
RGBミキサーツールを使ったモノクロの実現方法
01左下のツールパレット内に、カラーホイールやカラーマッチと共に”RGBミキサー”は収納されている(図はRGBミキサーのデフォルト状態)。
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02パレットの下段にある”モノクロ”にチェックを入れることで映像はモノクロになり、赤・緑・青の各出力はR:0.21・G:0.71・B:0.07の各1本のスライドバーだけになる。
図02-02※画像をクリックすると拡大します
03ここで、あらかじめRGBミキサーの挙動を説いておく。例えばレッドの数値を上げれば、映像内のレッド成分が明るいグレーに変わってゆく。その時、同時に“補色”の関係にあるシアン(水色)の数値は下がり、シアン成分が暗いグレーになる。逆にシアンの部分を明るくしたければ、レッド数値を下げることになる。
同様にグリーンとマゼンタ(ピンク色)、そしてブルーとイエローも、一方の数値を上げて明るくすれば、補色関係にあるもう片方が下がって暗くなる。
実際に01ノードにRGBミキサーを調整してみる。まず、R値を徐々に上げて花びらを明るくする(今回はR:0.80)。次に、G値を徐々に下げて葉を暗くする(G:0.31)。反対に、B値は上げて(イエローを下げて)B:0.50に。最後にもう一度、R値を少しだけ上げて(R:0.85)完成とした。彩度を数値:0.00にした場合と比べて、いかがだろうか?
図02-03※画像をクリックすると拡大します 図02-04
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葉を暗くするためにG値とB値をコントロールした理由
葉のカラーについて、ひとつ補足を。葉は緑色なのでグリーン成分ばかりだと思われがちだが、実はイエロー成分もかなりの割合で入っている。特に新緑の若葉は大部分がイエロー成分だ。
葉のシアン、マゼンタ、イエロー各成分の様子。イエローもかなりの割合で入っている
葉を暗くするためにG値を下げるだけでなく、B値を上げることで補色のイエローを暗した理由がここにある。
今回は、赤いバラと緑色の葉の案件だったが、人物の肌色や青空をモノクロ化する時にも利用できる。人肌はRとBを調整することで日焼けした肌にしたり、色白な人の表現も可能だ。
また、青空はBを下げるだけでなくRを上げることで、グッと暗く落としてドラマチックな風景を演出できる。RGBミキサーを使って、思い通りのモノクロ表現に挑戦してほしい。