txt:ノダタケオ 構成:編集部

V-8HDのシステム・プログラムがver.1.10へ

ローランド株式会社のHDビデオ・スイッチャー「V-8HD」のシステム・プログラムがver1.10へアップデートされたことは、PRONEWSでも既に紹介があった通りです。コンパクトサイズながらHDMI 8入力/3出力を備えるV-8HDは「映像入出力がHDMIのみ」という弱点はあるものの、「映像合成と多彩な映像エフェクト」機能をもち、「シームレスに呼び出しできるプリセット・メモリー機能」によって、他のビデオ・スイッチャーに負けない柔軟さがあると感じています。

私自身、所有しているメインのビデオスイッチャーがこのV-8HDへ代わり、まだ3カ月ほどの短い時間ではあるのですが、いくつかのライブ配信の現場で実際に活用をしているところです。システム・プログラムのバージョンがまだ若いころは、なんとなく心もとないところがあったものの、アップデートによって、ここ最近は安定さが増してきたような印象があります。

本体での操作も考慮されたプリセット・メモリー保存数の拡張

今回のVer.1.10へのアップデートの目玉のひとつは、「シームレスに呼び出しできるプリセット・メモリー機能」の保存数が8から24へ拡張されたことでしょう。

「映像合成と多彩な映像エフェクト」機能をもつV-8HDは表現の柔軟さがある一方、映像切り替えを行う過程で思わぬミスタッチによって意図しない形となってしまうことが少なからずあります。こうしたトラブルを防ぎ、確実な映像切り替えを行なうために日頃からV-8HDのプリセット・メモリー機能を活用している方はきっと多いはずです。

V-8HDのプリセット・メモリーは本体中央部にある「MODE」ボタンを青点灯(モードをMEMORYに)させたのちに、1-8の「AUX/PinP SOURCE/MEMORY」ボタンで1番から8番までの保存されたプリセット・メモリーをそれぞれ呼び出すことができます。

さらに今回は、プリセット・メモリーの保存数拡張に伴い、9番以降のプリセット・メモリーを本体の物理ボタンで呼び出すオプション(NUMBER OF MEMORY SW)も追加されています。

9番から24番までのプリセット・メモリーを本体の物理ボタンで呼び出すには、“PRESET MEMORY”メニューのなかにある“NUMBER OF MEMORY SW”の値を「8」から「24」へ変更すると、A/PGM列の1-8のボタンとB/PST列の1-8のボタン(クロス・ポイント・ボタン)が、プリセット・メモリー9番~24番を呼び出す役割をします。

つまり、9番のプリセット・メモリーを呼び出したいなら本体の「MODE」ボタンをMEMORYへ変えたあとに「A/PGM列の1」のボタンを、24番を呼び出すなら「B/PST列の8」のボタンを押すことで、9以降24までのプリセット・メモリーも本体の物理ボタンからダイレクトに呼び出すことができます。

一般的に考えれば、プリセット・メモリーの保存数が拡張されても、本体の物理ボタンから呼び出せるプリセットメモリーは「従来通りの1から8までのまま」で「9から24のプリセットメモリーを呼ぶならシステムメニューやiPadアプリ(V-8HD Remote)からのみ」という仕様になりそうなものです。

しかし、クロス・ポイント・ボタンをフル活用することによって、1から24までのプリセットメモリーを本体のボタンからダイレクトで呼べるようになっているのは“開発陣の綿密に考えられた計画的な機能拡張の結果”であり、また、それ(NUMBER OF MEMORY SWを「8」にするのか「24」にするのか)をユーザーが自由に選択できる柔軟さがあります。

ただ単に保存数を増やしただけではない「プリセット・メモリー保存数の8から24への拡張」とこれらの関連設定たちは、開発陣からユーザーへのとても素敵な活用提案のひとつであると感じるのです。

出来そうで出来なかったPinP、DSKのON/OFF連動が可能に

今回注目したいもうひとつのアップデートは「PinP、DSKのON/OFFをビデオ・フェーダーの操作やAUTO TAKE、CUT TAKEに連動させるEFFECTS TRANSITION SYNC機能の追加」です。

例えば「CAM1(Input 3)」に「LIVELOGO(Input 2)」と「TELOP(Input 4)」が合成されている映像(画像右上のPGM画面)から、「PC(Input 5)」に「CAM1」をPinPした映像(画像左上のPVW画面)へ切り替えようとしたとき、これまでのV-8HDでは

  1. DSKの「ON」ボタンを押してLIVELOGOを外す(=DSKをOFFに)
  2. PinP2の「ON」ボタンを押してTELOPを外す(=PinP2をOFFに)
  3. CUT TAKE/AUTO TAKE(またはA/PGM列のInput 5)ボタンを押して「CAM1」から「PC」へ切り替え
  4. PinP1の「ON」ボタンを押して「CAM1」をPinPで表示(=PinP1をONに)

といった4つの操作手順が必要になります。もちろん、この操作手順を一手ずつ行うのも良いのですが、これまでは、このようなPinPやDSKをはじめとした映像合成の組み合わせを「瞬時に切り替えたい」ときには、先に触れたプリセット・メモリー機能を使うのがとりあえずの最適解となっていました。

しかし、今回追加されたEFFECTS TRANSITION SYNC機能をONすることによって、上記の状態からCUT TAKE/AUTO TAKEボタンを押すか、ビデオ・フェーダーの操作をするだけ(一手のみ)で、映像を切り替えることができます。

ちなみに、EFFECTS TRANSITION SYNC機能によるPinP、DSKのON/OFF連動は「PinP1のみ」「PinP2とDSKは連動させるけど、PinP1は連動させない」といった、V-8HDを操作する人それぞれの好みに応じて選ぶことが可能ですし、「どれも連動させない(これまで通り)」も選択できます。

「ビデオ・フェーダーの操作やCUT/AUTO TAKEで、PinPやDSKのON/OFFを連動させる」のは“V-8HDで出来そうだけど、出来なかったこと”のひとつ。特に「切り替えたい映像合成した結果をPVW画面で確認したうえで、PGM画面へ反映(TAKE)させたい」「これまでCUT/AUTO TAKEボタンとPinP/DSKのONボタンを両手で同時押ししてた」人には、このEFFECTS TRANSITION SYNC機能がその一助となってくれるはずです。

マイナーバージョンアップながらアップデート内容は盛りだくさん

この他にも「JPEGファイルの読み込みに対応」「音声のAUX出力にDELAYを追加」に加え、「プリセット・メモリーに名前を付ける機能を追加」など、バージョン番号からみるとマイナーバージョンアップとなっているものの、内容はメジャーバージョンアップと表現しても良いぐらいさまざまな機能の追加や改善が施されています。

今回のアップデートは、V-8HDをお持ちの方に「ファームアップデート必須!」とオススメできるものになっていると思いますし、これからV-8HDを手に入れたいと考えている人にとっても「購入のきっかけに繋がりそうなアップデート」になっていると言えそうです。

WRITER PROFILE

ノダタケオ

ノダタケオ

ライブメディアクリエイター。スマホから業務機器(Tricasterなど)までライブ配信とウェビナーの現場を10年以上こなす。