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txt:栁下隆之 構成:編集部
PXW-FS5の電源供給まわりの解決策
筆者は現在PXW-FS5を2台体制で運用している。後継機も発売されているが、スーパー35mmセンサーの使い勝手の良さでなかなか手放せない存在だ。配信からVPまで、フルHDでの撮影であれば、一眼+カメラリグの組み合わせよりも、遥かに軽量で運用しやすいカメラで重宝している。
そんな訳で、PXW-FS5はそのコンパクトなボディに機能を凝縮した良いミニマムサイズの大判ビデオカメラだが、現場での運用を考えた場合、電源供給を伴う周辺機器との組み合わせでは、一気にシステムが肥大化してしまう傾向があった。
例えばワイヤレスのレンズコントローラーや映像トランスミッターなどを組み合わせて、大判センサーならではのシネマカメラ的な使い方を考えた場合、15mmロッドサポートとVマウントバッテリー+DC-DCコンバーターなど。本来の小型軽量の大判センサー機というメリットは完全にスポイルされてしまう。
あれこれと散々悩んだ末に行き着いたのが、IDX社が発売している互換バッテリーSB-U98だ。
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スライダーやステディカムなどで運用する際は、ワイヤレストランスミッターやフォーカスコントローラーなどのアクセサリー装着は必須。Vマウントバッテリーを装着した状態では、システム重量が増大して運用に支障が出てしまうが、SB-U98であればカメラへの電源供給と同時に、2口のD-Tapで外部機器に給電すると、Vバッテリープレートなどを用いなくても、必要な機器にまとめて電源供給できるのだ。USBの5Vで駆動できる周辺機器であれば、同様にバッテリーのUSBポートから給電可能。最近ではカメラや周辺機器のセットアップにスマートフォンを使うケースもあり、USB給電も現場では重宝する事この上ない。
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例えばPD-MOVIEのような1モーターのワイヤレスフォーカスコントローラーに加えて、CW-3のフルHDでの映像伝送を併用した状態で運用しても1本で3時間半以上動作して、余程の長丁場な撮影でない限り1日2本でなんとか足りる感じだ。
現地で充電が可能であれば、バッテリーチェンジ後に再充電して、2.5本分くらいの感覚で運用すれば概ね1日の撮影で支障はないだろう。
三脚、スライダー、ステディカムと目紛しく機材を入れ替えながらの撮影では、このセットアップの利便性が高く、一度使えば定番セットアップになるだろう。
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筆者所有のFS5は2台運用の現場ではこのような感じで、奥の1台は三脚+ショルダーで、もう1台を機動性重視と使い分けた。
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ステディカムでの運用が主であれば、以下のようなミニマムセットアップはどうだろか?
スタンドにモニターレコーダーと受信機をセットアップして、モニタリングのベースとする。モニターレコーダーは本線収録では無くてプレイバック用。長回しになりがちなステディカムショットは演技の修正も多いので、ベースでプレイバックする事でカメラワークの修正に専念できる。
カメラをステディカムから取り外せば、そのまま三脚運用できるメリットもあり、1台のカメラを効率良く運用するのに、このバッテリー使用が最適解だと思う。
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そして筆者が最も注目した使い方。FS RAW出力をキャプチャするためにATOMOS SHOGUN INFERNOとの組み合わせを試してみた。
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実はINFERNOでFS RAWからProRes RAWでキャプチャする場合には、大変大きな電力を消費する。これはSony純正のNP-F970では保護回路が働いて通電をカットしてしまう程なのである。筆者はこの動作回避のためにVマウントバッテリー運用をしていた時期もあったが、これでやっとカメラ本来の機動性が取り戻せる。
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セットアップとしては、カメラにSB-U98装着。SB-U98からD-TAPでSHOGUN INFERNOに給電。バッテリーステータスはカメラである程度把握できるので、いちいち外部機器のバッテリーステータスを確認する必要もない。唯一収録メディアの残量だけはレコーダー側で確認が必要だが、運用+機材の省力化に加えて、充電周りの負担が減る事は大変ありがたい。特にロケが長丁場の場合は、複数種のバッテリーを管理しなくて済むのは効率が良い。
内部収録のビットレートに限界のあるFS5の延命処置には外部レコーダーとの連携が必須だ。FS RAW出力を上手くハンドリングする事で今しばらくは第一線で活躍してくれるはずである。HD収録前提であれば単体運用でもまだまだ現役ではあるが、4K収録が必要な状況ではカメラ+外部レコーダーに加えて、SB-U98などの電源周りのアクセサリーの組み合わせが運用効率改善の鍵になるだろう。FS5ユーザーの皆さんは本バッテリーの導入を検討してみてはいかがだろうか。
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