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前回のコラムで書いたオーディション審査員を務めたゴールデンエッグプロジェクト(以下:GEP)の撮影が、コロナ禍の中始まった。今回の長編作品では脚本と撮影、編集という形での参加である。

脚本は有難いことにベテランの映画監督、香月秀之監督と一緒に執筆させて頂き、筆者も大いに勉強になった。80名近い参加者全てに役名とセリフがあり、それぞれに衣装合わせとリハーサルを行うだけでも撮影までに膨大な時間がかかった。

撮影に入って最初に感じたことは、俳優がなかなか決まった「立ち位置」に立てないということだ。これは演技を全くしたことのない俳優でも、劇団などに長く所属し舞台演劇経験が長い俳優でも同じで、照明やカメラアングルによって決まってくる俳優の立ち位置は非常に重要になるのだが、なかなかリハーサルと本番で同じ立ち位置に立つことができない。

今回は演技ワークショップの延長であったので、演出を担当する香月監督は脚本の解釈を俳優たちに任せ、演技させた。しかし、映像作品にだけあるカメラを意識しての演技は、経験が浅い多くの俳優たちに混乱をもたらしたといっていいだろう。

俳優は自由に演技するのだが、フレームインのタイミングや地面にマークがついた場所にフレームインするという映像の俳優に求められることは多く、アップで撮影しているときなど半歩ずれただけでもフレームに入らずに撮り直しになってしまう。頭でわかっても技術的なことも含めて実際の演技に反映することはとても難しいのだ。

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また、立ち位置や座る位置が実際には近づき過ぎたり、離れ過ぎていても、レンズを通してみると違和感ないことなど、実際の撮影で学ぶことは多い。また、演技にある程度の自由が与えられたことによって、変に動き回ったり、小道具に凝ったりと「演技する」という本質からズレてしまっていると感じた俳優も何人かみられた。

あまり意味なく動くことは視聴者の意識を散漫にすることとなるうえ、撮影も今回のような小規模撮影では広角レンズで撮影する必要があり結果、アップが少なくなってしまう。小道具を使うなということではないが、特に脚本に書いていないタバコやものを食べるという行為は編集のつながりを考えると、カットごとに同じ芝居をしないといけないということが足かせとなり演技の幅や集中力を落としてしまうことになる場合が多い。

もちろんこれらは映像現場の経験を積むことによって改善されることだと思うし、この経験がワークショップの意味でもある。映画やテレビドラマなど実際の商業作品でセリフがあるような役を貰うことは簡単ではない。今回のワークショップで意識の高い俳優たちが学んだことは多いと思う。

撮影準備の段階で、今回は参加する俳優が多く、彼らに多くのセリフを言ってもらうために設けた様々な場面を効率よく一挙に撮影できる場所が必要で、東映の大泉撮影所はじめ、いくつかの大きな撮影スタジオを使って撮影した。

普段、低予算の撮影が多い筆者にとってこれらのスタジオ撮影で一番ありがたかったのは場所が広いということだった。広角レンズを使用する必要がないので歪み、ディストーションが気にならない。

今回はBlackmagic Pocket Cinema Camera 4Kで撮影したのだが、アダプターを付けて筆者が長年愛用している古いニコンの50mmレンズを多用した。マイクロフォーサーズ規格のカメラに使うと35mm換算で約100mmの望遠レンズになるが、撮影場所が広いので被写体から距離をとり、マイクロフォーサーズ規格の弱点ともいえるボケの少なさを望遠レンズである程度カバーできる。ただ、最近のレンズと比べると逆光にとても弱く、レンズフードに工夫が必要だった。

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2月初旬に始まった撮影は、天候やコロナ禍の影響でスケジュール変更が相次ぎ大変ではあったが、3月中旬にようやく終わることになっている。2022年11月の公開に向けて今から完成を楽しみにしている。

WRITER PROFILE

土持幸三

土持幸三

鹿児島県出身。LA市立大卒業・加州立大学ではスピルバーグと同期卒業。帰国後、映画・ドラマの脚本・監督を担当。川崎の小学校で映像講師も務める。