土持幸三の映像制作101

今年度の学生向け映像授業が佳境をむかえている。 既に川崎市の一つの小学校での映像授業を終え、故郷鹿児島の高校へのリモート授業ももうすぐ終了となる。 川崎市の別の小学校ではまだ始まったばっかりで来年2月に終える予定となっている。

皆さんは「GIGAスクール構想」という言葉をお聞きになったことはあるだろうか? GIGAはGlobal and Innovation Gateway for Allの略で「全ての子供のための世界につながる革新的な扉」という意味がこめられているとのこと。 子供たち一人一人にPCを持たせ、高速LANやソフトを使って先生方が子供たち個々に合わせた授業ができるというシステムになっているとのことだ。

このシステムが今年度から筆者が講師を務める小学校でも導入され、以前はパソコンルームにノートPCが置かれていて、子供たちは月に数回触る程度だったのがパソコンルームは無くなり、これからは毎日それぞれが個人のPCを活用することになっている。 以前はPCを触ることに不安を持っていた子供もいたが、今回見た限りでは多くの子供が問題なく使いこなしているように見え、毎日使っている成果の表れだろう。

しかし、映像授業に関していえば、少し問題があった。まずは導入されたPCが、今までウィンドウズだったのがクロームブックに変更され、編集ソフトの情報がなかったこと。 次に、今まで小型ビデオカメラを持ち込んで撮影していたが、そのビデオカメラで撮影した素材が編集可能かどうかということ。 以前、学校にタブレットPCが導入されたときに、ビデオカメラで撮影した素材が思うようにタブレットPCで再生と編集が出来なかった経験だあり心配だった。

筆者はクロームブックに関してほとんど知識がなく、USBメモリーが普通に使えるかすらわからず心配だったので、学校で使用しているクロームブックと同等スペックのものを購入し、数日使ってみた。 結果、拍子抜けするほどウィンドウズと同じように普通?に使えたので、動画編集ソフトをどうするかの検討にはいった。

ただ、普通に使えるとはいえ、クロームブックの基本はブラウザーベースで、ウィンドウズのように必要なソフトをインストールする必要がないため(もちろんインストールもできるが)、マシンスペックはかなり低い。 要するに一般的な考え方でいけば動画編集には向いていないといえ試行錯誤するしかなかった。

幸いクロームブックはスマホ等で使われているアンドロイド用のアプリも使えるので馴染みはないが、使えそうな複数の動画編集ソフトは複数存在し、学校、映像のまち・かわさき推進フォーラムと検討をして、Power Directorのスマホ・タブレット用の無料版を使うことにした。

使用してみて感じたことはスマホやタブレット用のソフトなのでキーボードやマウスを使って操作するより、タッチパネルを使い指で操作したほうが圧倒的にやりやすいということだった。 無料版で広告が多く入ってしまうのは仕方ないが、編集の基本的なことは充分備わっていて映像授業で使うには申し分のないものだ。 子供たちも基本的な操作方法を教えたら、自分たちで教え合い工夫をしながら作品をつくり、筆者もうなるほどの作品をつくった子供もいた。

タッチパネルで編集した方が断然やりやすい
タッチパネルで編集した方が断然やりやすい

撮影はビデオカメラを使わず、PCに2つ付いているカメラのうち、画質の良いメインカメラを使用して撮影することにした。 メインカメラに充分な画質があったのと、撮った素材は自動的にPower Directorですぐに認識されるので編集が簡単になると判断したからだ。

メインカメラの位置が独特な場所にある
メインカメラの位置が独特な場所にある

ただ、PCを三脚に装着するアタッチメント探しが難しかった。 ノートPC用のアタッチメントはPCで撮影することは考慮されていないのか、ガッチリとつくられていて安心感はあるのだが撮影には向かず、タブレット用のアタッチメントは小さくて使用するクロームブック(約1.3kg)を支えるには心もとないものが多く、今でも良い解決策を見つけていない。

「GIGAスクール構想」で映像授業の進め方は多少の変化がみられるが、わかりやすい映像の基本を学び、絵コンテをつくりプレセンして撮影編集して発表するという流れは全く変わらず、今回も子供たちの自由な発想に大きな刺激を受けている。

WRITER PROFILE

土持幸三

土持幸三

鹿児島県出身。LA市立大卒業・加州立大学ではスピルバーグと同期卒業。帰国後、映画・ドラマの脚本・監督を担当。川崎の小学校で映像講師も務める。