「第2回 全国こども体験フォーラム」オンライン配信にV-160HDおよびV-60HDを使用

公益財団法人ボーイスカウト日本連盟は、2022年1月にキッザニア東京にて行われた、「第2回 全国こども体験フォーラム」において、ローランドV-160HDおよびV-60HDを使用し、リアル会場のビジョン出しとオンライン配信のハイブリッド運用で実施した。

同事業は、独立行政法人国立青少年教育振興機構、公益社団法人ガールスカウト日本連盟、KCJ GROUP株式会社(キッザニア)と、公益財団法人ボーイスカウト日本連盟が協力し、文部科学省委託事業として実施した。企画、演出、技術までをボーイスカウト日本連盟の加盟員である全国のボランティアスタッフにより運用され、一部カメラマンなどは外注したが、ほとんどがボーイスカウトのメンバーによる運営で行った。

会場はキッザニア東京内の劇場と呼ばれるエリアで、スクリーンやスピーカー、照明などが既設されているまさしく劇場。子どもたちがファッションショーの体験などで普段使用している。

この劇場に来場してのフォーラム参加、およびZOOMを利用してのオンライン配信を行う、ハイブリッド型のイベントとして構成。パネラーとファシリテーターの5名がステージ上でスライドやVTRを映しながらのトークに加え、キッザニア東京内で行った「ボーイスカウト・ガールスカウト体験ブース」との中継、また当日ボーイスカウトが実際に活動している有栖川宮記念公園からも中継を行うという内容だった。

ステージには返しモニターを設置。配信などは客席2階から行った
カメラマンへはワイヤレスでプログラムアウトをリターンとして返し、ワイプ合わせなどはスムーズだった

当日のシステム構成

入力ソースは、劇場内のカメラ3台、パネラーのプレゼンテーション、VTR、中継映像(ZOOM)のほか、パネラーに返すカンペや質問などのテキスト情報も用意。出力先が、(1)劇場内プロジェクター、(2)パネラーへの返し、(3)プログラムアウト収録、(4)ZOOMへの配信(UVC)となり、映像系統としては3系統に向けて違う映像をスイッチングする必要があり、2台のスイッチャーで構成した。

まず、AUXアウトで2系統出力ができるスイッチャーとして、V-60HDを、プロジェクターおよびパネラーへの返し用のスイッチャーとして選択した。次に、当日ギリギリまで新型コロナウイルス感染症への対策として、パネラーが自宅からZOOMなどを介して参加する可能性も考慮する必要があり、入力ソースの増加が懸念されたため、入力が多く、かつSDI/HDMIを柔軟に選択できるV-160HDをメインスイッチャーとして選択した。実際にはオンライン参加のパネラーはいなかったためソース数はそこまで使うことはなかった。

手前:V-160HD、奥:V-60HD
ZOOMの配信管理、スライド、カンペなどの表示担当
劇場内プロジェクター、返しモニターにそれぞれ違う画を送るV-60HD

プレゼンテーション画面とVTRは、プロジェクターと本線映像では別に切り替える必要があったため、V-160HDとV-60HDに分配して入力し、それ以外のカメラソースなどは、V-160HDのプログラムアウトを、V-60HDに入力する2段構成とした。

    テキスト
配信のシステム図※画像をクリックして拡大

V-160HDを活用したワークフローで運用をスムーズに

ここからはV-160HDの機能について言及する。

パネラー、ファシリテーターのトーク時には、プレゼンテーション画面にワイプを2つ入れる構成を想定し、パネラーに事前にプレゼンテーション用のテンプレートを配布、それに沿ってプレゼンテーションを作成してもらったおかげで、固定したワイプ窓にパネラーとファシリテーターを入れることができた。PinPを4つまで設定できるのは、様々な構成を検討でき、演出上も自由度があがって良い。

また、VTR再生には、再生用コンピュータからの映像ソースをBlackmagic Design UltraStudio HD Miniを経由して、フィルキーでDSKにアサインし、VTRの入り・明けのスイッチングをせずにカメラ映像に戻ることができた。

場面ごとの画面構成が複数あるため、メモリー機能を活用し、それぞれ転換時には1クリックでプレゼンテーション+パネラーワイプ入り、プレゼンテーション+パネラーワイプ+ファシリテーターワイプ入り、など事前に構成を作っておけたのは、非常に便利であった。

スイッチャー用のプログラムアウト、マルチビューアウト、V-60HDへのプログラムアウト、本線収録用プログラムアウト、カメラマンへのリターン用プログラムアウト、中継先への返し用会場内カメラアウトと、6系統フルに出力を使ったが、自在にアウトプットをアサインできるのは、V-160HDの特徴的な機能だろう。

前日夕方からのセッティングだったが、会場の都合であまり時間もとれない中では、本体に画面がついていることで、セッティングを早く進められたのも良かった。プレビューモニターやコンピュータを接続しないと設定ができないスイッチャーもある中で、この画面ひとつついているだけで、非常に重宝する。もちろん、映像が正しく来ているかどうかの確認も本体だけでできる。

今回はマクロやシーケンス機能は使わなかったが、より演出の凝った配信などには、非常に有用だろう。ボーイスカウトのボランティアスタッフの中には多少映像機器に明るいスタッフもいたが、操作もわかりやすく、準備期間が短い中でも難なく運用することができた。

初心者でも使いやすいV-160HD

V-60HDは過去に使ったことがあり、今回もイメージ通りの使い方ができた。一方 、V-160HDは初めて使ってみたものの、ローランドのスイッチャーを使ったことがある人なら迷うことはもちろんなく、初めて使うにしても、少しマニュアルを読めば、ほとんどの機能を使いこなせるようになるだろう。入力・出力の柔軟さ、本体に画面がついている便利さ、豊富なエフェクト系など、てんこもりでいながら使いやすいスイッチャーだった。

WRITER PROFILE

柏原一仁

柏原一仁

リリーヒルワークス代表。銀一株式会社にて映像機器・写真用品のセールス・マーケティングを経て独立。好きな食べ物はからあげ。