大石結花氏の動画制作インタビューメイン画像

現在ニューヨークで独立され、テクノロジー系やガジェット系のレビュアーとして活躍中のクリエイター、大石結花さん。Apple新製品の速報レポートやクリエイティブに関する動画が人気で、YouTubeチャンネル登録数は10万人を超えている。

これだけの登録数を誇る人気コンテンツはどのような編集環境で作られているのか?PRONEWSとしても大石さんのSNS投稿を通じて以前から気になっていた。そんな願いが通じて、今回はオンラインで大石さんをインタビューする機会に恵まれた。10万人の心を動かす動画制作の舞台裏について伺ってみた。

VlogはほぼiPhoneで撮影

――本日はよろしくお願いいたします。東京は午前10時ですが、ニューヨークは何時でしょうか?

大石氏:

よろしくお願いします。こちらは夜の8時です。

――遅くまでご対応ありがとうございます。ご活躍はいろいろなところで拝見しておりますが、改めて自己紹介をお願いします。

大石氏:

今のメインのプラットフォームはYouTubeの自分のチャンネルでテクノロジーやクリエイティブ系の動画を発信しています。ガジェットの使い方やソフトウェアの使い方を通して、皆様がもっとクリエイティブな生活を身近に感じてほしいという思いでコンテンツの発信を行っています。

大石結花さんインタビュー説明画像

――大石さんのYouTubeコンテンツの中でもApple関係は必見ですね。Apple新製品の現地速報レポートや"まいにちNotion"、フィルムカメラの話などいつも楽しみです。

大石氏:

Apple関係は人気コンテンツですね。Appleさんとはよく一緒に仕事しており、Apple Eventにも呼んで頂いたりしてます。
昨年12月、Apple CEOのティム・クックさんが約3年ぶりに訪日しましたが、その時に一緒にiPhone 14 Proを使って東京・丸の内の動画や写真を撮るフォトウォークに参加しました。イルミネーションの中を、レンズを使い分けたり、シネマティックモードを使う時に意識してることなど、いろいろお話をしまして、ティムさんも楽しんで頂けたようで良かったです。

――Apple CEOとフォトウォークなんて相当貴重な体験ですね。ちなみに普段のYouTubeのコンテンツ制作は、どのようなカメラやマイク、照明を使われていますか?

大石氏:

メインカメラは、ソニーのFX30です。それをATEM Mini Pro ISOに繋いで、2台のカメラの時は2ライン繋いで収録しています。基本的には1カメで正面から喋るコンテンツがほとんどで、ATEMにSamsung Portable SSD T3を繋いで記録しています。
マイクはRODEのWireless GOを2個持っていて、その音声をATEMで収録しています。あとはライティングは、Aputureの120D Mark IIをメインのセットアップとしています。ラジオDJ風の演出にしたい時はAston Originのマイクを画面に入れて、音声は別録をしたりしています。

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ブルックリンの収録スタジオの様子。カメラはソニーのFX30

――野外では、どのような機材で撮影されていますか?

大石氏:

野外はほとんどiPhoneで撮っています。iPhoneは毎年新機種が登場し、ここ数年はミラーレスカメラを持ち歩く必要がなくなるほど性能は向上しています。iPhoneで外撮影する時は、Momentというスマートフォン用カメラブランドのマグネットで着脱できるMagSafe対応アダプタとマンフロットのミニ三脚を組み合わせて、自撮りをしたり三脚を使ってVlogを撮ることが多いですね。
外の音声収録も、外部マイクは使っていません。iPhone本体のみです。風切り音はDaVinci Resolveで後から直すことはありますが、身軽さが勝って外だとiPhoneが大活躍しています。

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MagSafe用Moment三脚マウント。マンフロットのミニ三脚を組み合わせた状態

――iPhone単体で、あそこまできれいに撮れるのですね。ちなみに動画の更新ですが、どれぐらいのペースで行われていますか?

大石氏:

週に2本ぐらいを目指しています。コンテンツカレンダーのようなのを作って、Notionで管理しています。いつ公開してもいいコンテンツもあれば、クライアントさん主導のコンテンツもあります。その時期的な、季節によって出したいものもあるので、それをカレンダーの中でパズルのよう組み合わせてスケジュールしています。

チームの共同編集はBlackmagic Cloudで実現

――2021年夏からチームで動画編集を開始したと伺っています。きっかけは何だったのでしょうか?

大石氏:

編集作業には「私しかできない部分」と「私ではなくても大丈夫な部分」があります。特に編集のカットやグラフィック制作は私ではなくても結果はあまり変わりません。そこの部分の作業を手伝ってほしいという思いで、クリエイティブアシスタントを募集しました。その結果、2021年8月からSahiroさんとnanaさんが仲間に加わり、Yukaチームを結成して活動しています。
nanaさんはカリフォルニア、Sahiroさんはテキサス、私はニューヨークで3人ともタイムゾーンはバラバラです。基本、チームはずっとリモートで運営しています。

――チームだと共同編集が重要になると思うのですが、現在、使用されている編集ソフトは何でしょうか?

大石氏:

iMovieからFinal Cut Proに移行し、その後Premiere Pro、DaVinci Resolveの順番で乗り換えてきました。DaVinci Resolveへの移行はクラウド対応がきっかけでした。
Premiere Pro時代の共同編集は、Dropboxにすべて素材を上げて、私か編集スタッフのSahiroさんがPremiereのプロジェクトを作ってすべてフッテージを繋ぎ込んでカットや編集を行い、そのプロジェクトファイルをDropboxに上げて共有していました。
しかし編集したものを受け取って開くまでに何ステップも必要でした。そして修正や追加のお願いが発生した際に、やっと開けたとしてもやり取りが面倒となり、「自分で作業したほうが早い」と思うことが悩みでした。
Blackmagic Cloudにしてからは、無駄なやり取りが全くなくなりチームでの編集効率が上がりました。Sahiroさんが作業したものをタイムラインロック操作でロックすると、私はすぐ開けます。「ここをもう少し直してほしい」とSahiroさんに伝えると、Sahiroさんはすぐに作業ができます。フィードバックがすぐにできて、コミュニケーションコストを一気に下げることができた感じがしました。

――Blackmagic Cloud導入後は、どれぐらいの時短を実現できた感じでしょうか?

大石氏:

時間的には恐らくそんなに大きく変わることはないと思います。ただ、ファイルのやり取りのストレスから開放されるので、気持ちは全然違います。
以前の共同作業のやり取りは面倒で、できるだけ最短のやり取りで終わらせたいという気持ちがあって、直したくても直さないでアップすることがありました。Blackmagic Cloud導入後は「自分ですべて編集した方が早い」という気持ちがなくなり、チームのやり取りの回数も増えています。時短よりもクオリティの向上を実現できるようになりました。
例えば、2022年6月のApple Eventでは、2日間で5本のコンテンツを公開できました。この本数を実現できたのはSahiroさんの存在と編集をクラウド化したからであり、恐らく従来のワークフローでは、5本一気に作ることは不可能でした。
その時は、私が撮影した動画をDropboxに上げて、撮影してる間にSahiroさんがプロジェクトを作ってカットを開始し、私が撮影が終わったら動画を再びアップして、アップしてる間にSahiroさんの作ったタイムラインをリアルタイムで確認しました。スピードとクオリティの面で、従来ではできなかったレベルを実現できることをすごく感じました。
編集のクラウド化により、私達のような小規模チームでも大きな成果を上げれる時代が来たと感じています。

    テキスト
マーカーを使って注目してほしいところにメモを残したり、パワービンを使って、よく使うアニメーションなどのテンプレートを保存しているという
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――最後にiPad版DaVinci Resolveが登場しました。どのように評価をされていますか?

大石氏:

今のワークロをすべてiPadでできるのならば、大変嬉しいです。カフェに行ってiPadだけで作業をしたいのですが、今のバージョンの状態ですと少し難しいかもしれません。
私が最後に使った時は、まだバグがあるようで、Dropboxと繋げられませんでした。あと、エディットページがありません。グレーディングがあるのは大変評価できるのですが、普段はエディット機能で編集をしているので。エディットページの追加を待ち望んでいます。

クラウドベースの共同編集はまだまだ先の話と思われがちだが、もう手の届くところまで降りてきている。しかしまだまだ情報は少なく、実際の運用には手探りが必要なのも事実である。リモート編集やファイルのやり取りを楽にしたいという方は、大石さんの体験談を参考にしつつ、Blackmagic Cloudをチェックしてみてはいかがだろうか。