
はじめに
まずはじめに今日紹介する「S1RII」が「先代S1R」の後継機なのかどうかという点を先に話したい。
S1RII発表後、ネット界隈では多数の称賛の声があがった反面、「もっと性能を静止画に振ったカメラが良かった」「6000万画素クラスのカメラが欲しかった」など、S1RIIを残念に思う声も聞かれた。
かくいう私も、スペックシートを見る限りスチルと動画のバランスのとれたS1RIIが、「高画素スチル機フラッグシップS1R」の後継機と名乗ってよいのかと疑問に思っていた。「S1RII」ではなく、バランスのとれたフラッグシップ機S1の後継機として「S1II」こそ相応しい名称なのではないか?そんな風にも考えていた。
しかし、あえて言おう。このカメラは間違いなく「S1RII」である。筆者としては先代「S1R」の後継機を待ち望んでいた人にこそ、このカメラを使ってもらいたい。本稿ではそんなS1RIIの魅力が少しでも伝えればと思い、書きしたためようと思う。
新型4430万画素イメージセンサー

S1Rの後継機として皆さんが一番気にされている点はやはり撮像素子ではなかろうか。S1Rではカメラ有効画素数4,730万画素のセンサーが採用され、6年前当時でも「高画素のLUMIX」として話題になったのを覚えている。
それに対し新型S1RIIではカメラ有効画素数約4,430万画素と先代より画素数を減らした形で登場した。
S1RIIの発表前には「Laica社のSL3と同じ6000万画素を搭載してくる」という噂があり、登場したS1RIIの減った画素数に落胆して人もいたが、ほとんどの人がLUMIX開発陣の選択を好意的に受け止めていたように思えた。
今回S1RIIに搭載された新型4430万画素センサーでは、
- 像面位相差オートフォーカス
- メカシャッター時10コマ/秒(AFS/MF時)
- 電子シャッター時40コマ/秒(AFS/AFC/MF)
- ISO80~51200(拡張40-102400)
- ラチチュード最大14ストップ(ダイナミックレンジ拡張 ON時、V-Log)
- ブラックアウトフリー
と、他社のフラッグシップ機と比較しても遜色ない性能である。
LUMIXのマーケターはひたすらにこのセンサーの詳細を明らかにしないが、スペックを見る限り積層型センサーに匹敵する読み出し速度を実現しており、筆者が業界筋の方と話す中では積層センサーではないかという意見もある。ここは俗にいうセンサーの製造メーカーとの「大人の事情」があって明らかにできないのであろうと思うが、スペックだけが真相を物語っていると私は思っている。
中でも電子シャッター時40コマ/秒は群を抜いている。6000万画素を有するLaicaSL3は電子シャッター時15コマ/秒なので、その速度の違いをわかってもらえると思う。LUMIXは海外、特にヨーロッパでのシェアが非常に高い。特にツール・ド・フランスなどの自転車競技が盛んで、それらを写真に収める際もシャッターの高速化要望は高かったのだと推測する。今回S1RIIが更なる高画素化に踏み切らなかった理由はそこにあると思う。
その代わりと言っては何だが、得意とするS1Rで培ってきた4500万画素付近の画像処理能力を高め、より高精細で美しい色合いを追求してきたLUMIX開発陣に筆者は諸手で拍手を送りたい。そして6000万画素を期待していたLUMIXユーザーの方にもぜひS1RIIを手に取って試しに撮影していただければと思っている。
また、メカシャッターも金属部品などを使用して秒10コマを達成しているが、筆者の推しポイントはそこではない。最近LUMIX S9ばかり使っているせいかメカシャッターの振動とカチっとしたシャッター音が非常に心地よく感じる。最近手に取ったカメラの中では上位に入る品質の良さだ。このカメラを手に取る機会があったらぜひシャッターを切ってほしい。心地よい音が聞けるはずだ。
作例とインプレション
今回の作例は三重県でこの季節だけ営業を行う「鈴鹿の森庭園」にてライトアップされたしだれ梅を撮影してきた。高画素機で最も気になるノイズ感を確かめるべく、夜間の撮影とした。 撮影は8.1K30pをV-Logで撮影したものを、DaVinci Resolveにてメーカー提供の709Lutで戻して若干コントラストと色見を触っている。
夜間の撮影ではあるが、しだれ梅自体はライトアップされているので、ISO800~4000程度の比較的低ISOで撮影できており、ノイズ感はあまり見られない。作例外の映像でテスト的にISO12800で撮影してみたが、そこまで来るとノイズが目立ってくる。ただしDaVinci Resolveのノイズリダクションで十分処理できるレベルのノイズ感だった。
今回、レンズはSIGMAのシネレンズFF High Speed Prime Line 28mm T1.5と65mm T1.5の2本を使用して撮影した。非常に抜けの良いクリアに撮影できるレンズなので、S1RIIの素性をそのまま表現できていると思う。ぜひ作例からS1RIIのポテンシャルを感じ取ってもらえればと思う。
外観


外観はS1Rと比較すると大きくサイズダウンした。S5IIと比較しても奥行が1.7mm大きいだけで、正面から見た高さと横幅はほぼ同じだ。重さも1016g(本体、バッテリー、SDカード1枚含む)から約795gと22%近い軽量化を果たした。
小型化をすることで、長時間の撮影でも疲労感を感じにくくなり、手の小さい人でも扱いやすくなった点は評価したい。
そんな「ほぼS5II」な大きさのS1RIIではあるが、中身は全くの別物となっている。S5IIと同じ軍艦部には冷却ファンが搭載されており、長時間収録でも熱停止が起きにくくなっている。マイクロフォーサーズのスチル機フラッグシップG9PROIIでは、その軍艦部にはジャイロセンサーが搭載され、手振れ補正の高機能化に一役買っているが、S1RIIではグリップ内に小型化されたジャイロセンサーが搭載され、5軸 8.0段分(B.I.S時)の手ブレ補正を実現している。つまりS5IIとG9PROIIの良いとこ取りをした訳だ。


チルトフリーアングルモニターではこれまでのLUMIXにない上下方向へのチルト動作を実現。背面液晶の見やすさはもちろん、USB-CやHDMIケーブルを接続した状態でのバリアングル液晶の操作でもモニターに干渉しないなど、撮影時の利点は多い。S5IIより奥行1.7mmの大型化だけでこの機構を入れてきたことは驚愕に値する。ちなみに液晶モニターのサイズは3インチで、LUMIX S5IIやGH7と同じである。保護フィルムが余っている人はそのまま使用できるので使ってほしい。

LUMIXではじめて「写真/動画/S&Q切換スイッチ」が搭載された。今までもLUMIXに慣れているユーザーにとっては使いやすい仕様ではあったのだが、このスイッチが搭載されたことにより、写真や動画の設定を完全に切り分けて保存できるなど、LUMIXらしいユーザーフレンドリーな仕様となっている。カスタムダイヤルがC1~C5とあるが、それがスチル用と動画用で、単純に倍使えるのは嬉しい限りだ。個人的には一押しの改善ポイントになった。
撮影者側と被写体側それぞれに録画状態を示すタリーランプが搭載され、ファインダーの左隣りには撮影時の不用意な誤動作を防止する操作ロックレバーも搭載され、正面レンズ左側にはサブ動画記録ボタンがつくなど、挙げだしたらキリがないほどS5IIとは差別化されており、似ているのはサイズだけだ。逆にこれだけの機能をよくこのサイズに納めたものだと感心してしまう。
サイズ感がここまで似ているのであれば、S5IIからの買い替えでケージの流用ができるのでは?と考えるのは真っ当なことだろう。答えは、残念ながらNOだ。

SmallRig社とTILTA社のフルケージでしか確認できていないが、ボディの奥行サイズが増しているためか、S5IIのケージをS1RIIに装着した場合、バッテリー部の蓋がケージに干渉してしまい開閉が出来なくなっている。新規にケージを購入する際は必ずS1RII対応のものを購入されることをオススメする。
ちなみに筆者はSmallRig製S5II用ケージをリューターで削り開閉できるように改造してみたが、労力からして一般の方にはあまりオススメできない。メーカーの保証も受けられなくなると思うので、改造する際は各自の判断で行ってもらいたい。
ほぼノンクロップの4K60p、4K120p
LUMIXフルサイズセンサーカメラを使っているユーザー悲願の「ほぼノンクロップでの4K60p」ではないだろうか?
今までのSシリーズでは4K60pで撮影しようとすると約1.5倍クロップしてしまい、場合によってはレンズ交換などが必要だった。しかしS1RIIではほぼ全ての記録フォーマットにおいて最小のクロップに留めており、これであれば画角の狭さに苦慮せず、積極的にハイフレームレートを選択していけるのではないかと思っている。
センサーの読み出し速度の高速化などの、ある意味、副産物として4K120pでの撮影も可能としており、より滑らかなスローを用いた映像表現を撮影できる。ただし4K120pの場合はオーバーサンプリングされないため、画質劣化が生じ、AFも被写体認識せず合焦速度も低下する点については留意しておきたい。もし4K120pを使う上で早いAFを使いたい場合は、PIXEL/PIXELに設定すると約2倍程クロップするがAF速度は改善された。
以下に筆者の調べた範囲でのクロップ率を明記しておく。
◇撮影領域がFULLの場合
- 5.9K(60p/50p/48p):約1.11倍
- 5.8K(60p/50p/48p):約1.04倍
- C4K(120p/100p):約1.1倍
- C4K(60p/50p/48p):約1.04倍
- 4K(120p/100p):約1.17倍
- 4K(60p/50p/48p):約1.11倍
- FHD(120p/100p):約1.17倍
- FHD(60p/50p/48p):約1.11倍
◇撮影領域がPIXEL/PIXELの場合
- C4K(120p/100p):約1.1倍
- 4Kビデオ(120p/100p):約1.1倍
「スチル機のフラッグシップモデルなのだから、動画性能はいらない」などの意見をよく目にする。動画とは静止画の連続体であり、スチルカメラとしての性能を上げれば必然的に動画性能も上がってしまう。S1RIIにおいても高速な読み出しのできるセンサーと、それを支える画像エンジンがあるからこそ、このスチル性能と動画性能の両立ができるのであり、その両方を楽しんでほしいというメーカーの思想から、S1RIIが高次元でのバランスを保ったハイブリット機としてデビューした経緯を受け入れてほしいと思う。
AIを使ったオートフォーカス
LUMIX S5IIで初めて「像面位相差センサー」を採用してから、早くも6台目の像面位相差センサーを積んだLUMIXである。S1RIIではAIを活用した人物の顔瞳認識AFを搭載しており、より高精度にフォーカスを合わせてくれるようになった。
今までオートフォーカスが弱いと言われ続けてきたLUMIXだが、ようやく他社のオートフォーカスと比較しても遜色のないレベルまで追い付いてきたように見える。S9等でも使われてきた従来のオートフォーカスにおいても、精度は向上した。我が家の写真嫌いな猫に協力してもらったが、目が見える時は即座に目を捉えていた。このカメラならもう少し歩留まりよくたくさんの記録を残せると思う。
ハイブリットズーム
LUMIXS9で導入された「ハイブリットズーム」という機能がある。ズームレンズに搭載されている光学ズームと、センサーから得た画像をクロップして得られる電子ズームを違和感なく同時に行うズーム機能のことだ。
S9やS5IIにてFHDサイズで撮影する場合、テレ端約3.1倍だったハイブリッドズームが、S1RIIではテレ端で約4.2倍まで向上している。4K30pでも約2.1倍(S9では約1.5倍)までズーム倍率を拡張でき、24-70mmなどの標準ズームレンズでもFHD撮影において24-294mmの12倍望遠ズームレンズとして使用できる。
筆者が考えるこの機能の最大の利点は、持ち出すレンズを軽くする事ができる点だ。多少望遠側に弱いレンズであったとしても、望遠側をハイブリットズームで補ってあげれば、広角から望遠まで快適に撮影できる。しかも従来のクロップズームのようにワイド端からテレ端まで常に〇倍のように固定されないので、ワイド端倍率もそのまま楽しめる。
実際使ってみると違和感の無さから、標準ズームレンズが元々望遠ズームレンズだったのかと思えるほど快適に撮影できた。電子ズームを敬遠していたという方にもぜひ使ってもらいたい機能だ。
新しい動画手ブレ補正機能「クロップレス」モード
LUMIXのお家芸と言っても過言ではない手ブレ補正機能。他社と比較してもその性能は群を抜いてよく効く。今回S1RIIでは新たに「クロップレス」モードを搭載してきた。
従来の手振れ補正機能では、その強度に合わせた分だけクロップされてきた。しかしクロップレスモードでは本来レンズが補正される際に発生する画角の外の部分を利用して手振れ補正を実現している。従来切り捨てられるだけの画像を利用するという、今までにない発想だ。
ただこの機能には欠点もあり、この機能実現にはレンズ情報を必要とするため、LUMIX純正のレンズでのみ使用可能となっている。筆者が思うに自社ラインナップが乏しくSIGMAなど他メーカーに頼っている状況であるなら、ぜひ他社のレンズでもファームアップで少しづつで良いので実現してほしい機能である。
シネライクA2
映画感覚を容易に再現する為に生まれたフォトスタイルのシネライクシリーズに新たな仲間が登場した。「シネライクA2」だ。筆者はこれらの色味を上手く表現する言葉を持ち合わせていないので、「LUMIX Magazine」から引用させてもらう。
既存の「シネライクD2」「シネライクV2」は広いダイナミックレンジを特徴としながらも、「シネライクD2」はやわらかいトーンと浅めの色味、「シネライクV2」は高いコントラストと鮮やかな色味を特徴としています。
「シネライクA2」ではダイナミックレンジの広さは継承しつつ、ナチュラルな表現をベースに、色ごとに明度に特徴を持たせることで深みのあるルックに仕上げています。
(LUMIX Magazineから引用)
先日行われたCP+2025のLUMIX S1RII 開発者トークセッションの中では「シネライクA2のAはオールマイティのA」と発表されていたが、シネライクシリーズにオールマイティという言葉は適応しにくく、実際のところはLUMIX GH7で採用された「ARRI LogC3」をイメージしたフォトスタイルではないかと推測される。表だって言えないのは大人の事情だと筆者は思っている。
実際に使用した感じはシネライクD2に似た表現をしてくれる。若干色味が違うが筆者には詳しく判別ができなかった。これまでシネライクD2を使ってきたユーザーなら違和感なく使えるはずだ。皆さんにも実際に使ってもらい、各々でこの新しいフォトスタイルを味わってみてほしい。
ダイナミックレンジ拡張
新機能として「ダイナミックレンジ拡張」が登場した。以前マイクロフォーサーズ機に搭載されていた「ダイナミックレンジブースト」と混同しやすいが全く別の機能だ。ダイナミックレンジブーストは、明暗2枚の画像を合成してDRを広げる技術だが、ダイナミックレンジ拡張は単純にV-Logのダイナミックレンジを14Stop/13Stopから選択する機能となっている。
ダイナミックレンジとISO/電子シャッターの幕速がトレードオフになっているので、ISO400(下限)でローリング歪みがあっても14Stopで撮りたい場合はON、ローリング歪みを避けたいか、ISO200(下限)で撮りたい場合はOFFを選択してもらえばよいと思う。ローリングが目立たない被写体で、NDフィルターを使うなら、積極的にONにしてこの機能を使ってほしい。
ただし、ダイナミックレンジ拡張が使えるのは解像度に関係なく30pまで。60p以上は13STOP(公表値)ということになる。消費電力が上がり、バッテリーの消費が早くなる点も注意したい。この機能を使う際はバッテリーに余裕をもって使用してほしい。
電源OFF時のシャッター閉幕機能

デジタル一眼カメラの宿命とも言われるセンサーゴミ問題に対し、LUMIXも次なる一手を打ってきた。それがこの電源OFF時シャッター閉幕機能だ。デジタル一眼カメラはレンズが交換できるという利点のかわりに、イメージセンサーが外気に晒されゴミが付着するリスクを備えている。
以前は付着したゴミに対し有効なスーパーソニックウェーブフィルター(SSWF)を搭載していたLUMIXも存在していたが、昨今ではセンサーシフト式が主流となっている。決して有能とは言えないセンサーシフト式なので、ゴミが取れる割合もあまり高くない。そこでシャッター幕を閉じてセンサーの露出を減らしゴミの付着リスクを減らそうという機能がようやくLUMIXに搭載されたのだ。
筆者の印象からすると、デジタル一眼レフ時代には当たり前にあった機能だったように感じるので、正直今更感が否めない。だがこの機能によってゴミの付着が少しでも改善されればと期待はしている。
ちなみにこの機能は購入時OFFとなっているので、各自の判断でONに切り替えて使用してほしい。
耐熱性能


ここからは筆者が若干不安に思う点を書きしたためる。
LUMIXの耐熱性能が優れているのは周知の事実だと思う。真夏の炎天下でも熱停止を起こさず長時間撮影できることも有名な話だ。先日行われたCP+2025ではLUMIX GH7が4K60p 422 10bit LongGOPという負荷の高いコーデックを79時間もの間RECし続けるという記録を樹立したのも記憶に新しい。とにかくLUMIXは熱で止まりにくいのだ。
LUMIXをこれまで使ってきたユーザーにとっては当たり前の話だが、LUMIX S1RIIにおいてはどうだろうか?これまでと同じように止まらず撮影できるのかを3月という気候の中ではあるがテストしてみた。
◇テスト条件
室温21~22℃ ファン動作AUTO2 USB-C給電 背面液晶チルト引き出し状態でテスト実施
使用メモリーカード:Angelbird CFexpress 2.0 Type B AV PRO CFexpress SE 1TB (1785MB/s)
- C4K 422/10bit ALL-I(H) 59.94p 800Mbps:
26分で高温表示、39分50秒で停止。記録容量223GB - 4K 422/10bit ALL-I 29.97p 400Mbps:
75分でも高温表示せず。ボディ背面温度も42度から変化なし。最終的に8時間28分16秒まで高温表示されずRecできた。 - 4K 420/10bit LongGOP 119.88p 300Mbps:
34分40秒で高温表示、52分08秒で停止。記録容量105GB - 8.1K 420/10bit LongGOP 29.97p 300Mbps:
24分25秒で高温表示、36分36秒で停止。記録容量74.2GB
結果として、S1RIIは止まる条件もあることがわかった。LUMIXでも止まるのだ。
フルサイズセンサーを実質8Kで収録すれば、その発熱量は相当な量であろう。いくら空冷ファンを搭載していたとしても、条件として相当厳しいはずだ。そう考えれば止まるのも致し方ないことだろう。
もちろん止まらない条件もあるので、上手く運用していただければ問題はない。筆者も運用のしやすい4K30pのALL-Iが今回のテストで止まらなかったことで安心感は得ているが、正直言うと8.1K30pが40分足らずで停止してしまったことに驚いている。ファンの動作音を無視して設定を「強」で固定すればもっと長時間撮れるだろうし、ファームアップで使えるようになる外部レコーダーを使えばS1RII自体の熱問題も解消されるだろう。
ただ、このLUMIXは内部収録で長時間の録画をすると止まることもある。スチルカメラの形状をした機体での8K収録の限界をここに見た気がした。
消費電力について
S1RからS1RIIへ変わり、バッテリーもLUMIXお馴染みのDMW-BLK22へと変更された。LUMIXユーザーからはバッテリーの共用化は新たな予備バッテリーを購入しなくてもよいなど利点も多く歓迎の声が多数聞けたが、実際のところはどうだろうか?
筆者の感想になるが、バッテリーの持ちはかなり悪い。決して撮影できない訳ではないが、動画撮影をしていると細かいショットを50カット撮れない印象だ。動画の長回しを考えるとモバイルバッテリーなどからの外部給電を検討しないと難しいと感じた。スチルの場合も何枚撮るかによるが、予備のバッテリーを複数本用意するか、外部給電を検討した方がよいと思う。
ただこれは高画素になったイメージセンサーやそれを処理する画像エンジンの負荷の多さなどの影響が大きいので致し方無い事だと理解はしている。
一点不満があるとするならば、外部給電をするにあたりUSB-Cポートがそれに占領されてしまう点だ。USB-Cポートは他に外部SSDへの記録にも使用できるが、給電でポートが塞がってしまうと使用できない。縦位置グリップが別売されているが、そちらもバッテリーが1個入るだけでUSBポートなど外部給電に対応しておらず、「縦位置グリップに搭載するバッテリーが外部SSD記録時の電力不足を補う※」と銘打つ割には、電源の確保が疎かになっているようにすら感じる。スチルの場合であれば問題ないのだが、動画も撮れるハイブリット機を謳うのであればここはしっかりしてほしかった。
※ SSDへの外部記録では全ての動画記録モードで収録できますが、C4K120p以上の動画品質を記録する場合、別売のバッテリーグリップもしくはDCカプラーが必要になります。
総括
LUMIXは常に全力で製品を我々消費者に届けてくれている。そんな気概が今回も十分に感じられるカメラが登場してきた。
今回採用された4430万画素のイメージセンサーは必要十分に高画素で撮れ、AIを使って高精度化されたオートフォーカスは様々な被写体を認識してフォーカスを外さない。秒間40コマの高速読み出しは被写体の表情を余すところなく捉えてくれる。正直、今時代の「高画素機」と胸を張って言えるかどうかは定かではないが、スチル機のフラッグシップ機としては間違いなくその存在感を示してくれていると感じた。
そして動画機としてもLUMIXらしい高いポテンシャルを秘めたカメラになった。しかし反面、筆者は不安を覚える。ここまで完璧に機能を詰め込んだLUMIX S1RIIはLUMIXにおいて「動画のフラッグシップ機」ではない。
「スチルカメラ」という形状をしている間は、このS1RIIを超えるのは難しいだろうと考えている。そう筆者に思わせるほど、このカメラは完璧に近いカメラなのだ。筆者はこれからもLUMIXの進化を戦々恐々と見つめていきたいと思う。ぜひ皆さんにもこのS1RIIという完成されたLUMIXを触ってほしいと願う。
あきあかね
1977年生まれ。本業の傍ら2020年よりYouTubeにて映像作品や製品レビュー等を発信している。
近年では副業として企業VP制作や自治体からの依頼で映像制作や配信業務を請け負うサラリーマン映像作家として活動中。
WRITER PROFILE
