キヤノンから登場したVCM(ボイスコイルモーター)搭載の単焦点シリーズ。写真撮影だけでなく、動画撮影においても高い性能を発揮できるよう設計された「ハイブリッドレンズ」だ。14mm、20mm、24mm、35mm、50mm、85mmと超広角から中望遠をカバーする計6本がラインナップとして展開されている。今回はこのうち14mmを除く5本のレンズと、キヤノンのフルサイズカメラ「EOS R6 Mark III」を携え、光の祭典・神戸ルミナリエへ向かい写真と映像の撮影を試みた。

筆者は過去何年にもわたってルミナリエの光をカメラを通じて記録してきたが、レンズ交換をこれほど迷わず行えた撮影は初めてだった。撮影を通じて見えてきたのは、優れた光学性能だけでなく撮影者を自由にする「システムの統一性」だった。本稿では、撮影現場を通じて見えてきた「RF F1.4 L VCMシリーズ」の真価を詳しくレポートする。

RF F1.4 L VCMシリーズとは何者か:写真と映像を横断するハイブリッド単焦点

写真と動画の両面で優れた性能を実現するキヤノンの「ハイブリッドレンズ」シリーズ。現時点では、「RF24-105mm F2.8 L IS USM Z」や「RF70-200mm F2.8 L IS USM Z」といったパワーズーム対応レンズのほか、大口径かつ小型軽量の単焦点Lレンズ 「RF F1.4 L VCMシリーズ」がラインナップに用意されている。

今回撮影に使用させてもらったのは、以下の単焦点レンズ5本だ。

  • RF20mm F1.4 L VCM
  • RF24mm F1.4 L VCM
  • RF35mm F1.4 L VCM
  • RF50mm F1.4 L VCM
  • RF85mm F1.4 L VCM

※2025年2月5日に新たに「RF14mm F1.4 L VCM」が発表され、2026年2月20日に発売を予定している。これで「RF F1.4 L VCMシリーズ」は全6本のラインナップとなった。

今回使用した5本のレンズには、共通する特徴がある。第一に、厳しい撮影シーンにおいても画面全域で高画質を実現する光学設計であること。開放絞り値F1.4による大きく美しいボケ味はもちろんのこと、画質劣化の原因となる諸収差を低減している。

単純に描写性能が優れているだけであれば、キヤノンの「Lレンズ」一般にも共通することだが、VCMシリーズはほかにも際立った特徴がある。それは静止画と動画の両面で優れたパフォーマンスを発揮できるように設計されているということだ。

例えば、フォーカシング。重い大口径レンズ駆動に適した「VCM(ボイスコイルモーター)」によるフォーカス制御を採用している。これにより、静止画撮影時における高速・高精度なAFと、動画撮影時における静かで滑らかなピント合わせを両立した。

さらに、アイリスリング(絞りリング)を備えており、静粛かつ滑らかに絞りを調整可能だ。まるでシネマレンズのような操作性だが、「EOS R5 Mark II」や「EOS R6 Mark III」などのカメラであれば静止画撮影でもこのアイリスリングを使用できる。

さらに、レンズファンクションボタンを搭載しておりカメラ内設定から、様々な機能を割り当てることができて便利だ。

操作部のデザインまで全レンズで一貫して統一されている。アイリスリングを搭載しているのは他のRFレンズには見られない特徴だ

また外観にも特徴がある。焦点距離の異なるレンズだが、いずれもレンズの外寸とフィルター径が揃っている。外寸はΦ約76.5×99.3mmと、コンパクトなサイズ感で静止画においても動画においても取り回しが良い。また、フィルター径は67mmで統一されているので、NDやブラックミストなどの効果を加えるフィルターを共用できる。

5本のレンズすべて、外寸がΦ約76.5×99.3mm、フィルター径が67mmで統一されている

規格統一がもたらす準備段階からのアドバンテージ

コンパクトで統一感のある「RF F1.4 L VCMシリーズ」は、撮影の準備段階からその恩恵を感じることができた。撮影のために必要な機材をパッキングしていると、EOS R6 Mark III 1台とVCMレンズ5本がPeak Designの「カメラキューブ S」に、まるで測ったかのようにジャストフィットで収まったのだ。VCMシリーズは、最大径と全長が統一されているおかげで、このようにカバンに効率的に収納できる。

さらに、このカメラキューブを同社の「トラベルバックパック 30L」に飲み込ませ、空いたスペースにDJIのジンバル「RS 5」を滑り込ませる。フルサイズのカメラとレンズ5本という重量級のラインナップを持ち歩いているとは思えないほど、機材一式がコンパクトに、かつ機能的に収納できた。この機動力はVCMシリーズの隠れた真価だろう。

バッグインバッグの「カメラキューブS」にカメラとレンズ5本がぴったり収まる。バックパックにはまだスペースに余裕があるのでジンバルやフィルター類など、必要な機材をすべて詰め込むことができた

今回は「EOS R6 Mark III」と「RF F1.4 L VCM単焦点レンズ5本」に加えて、「EOS R」や、Peak Designの「トラベルトライポッド」を携えて、神戸ルミナリエの撮影に臨んだ。ハイブリッドレンズの性能を発揮するべく写真と動画を同時進行で撮影を行ったので、その作例を紹介しながらその機能性についてレポートしたい。

夜景撮影で見えたF1.4レンズの描写力と焦点距離の使い分け

実際に撮影してみると、レンズの光学性能にすっかり魅了されてしまった。開放絞りF1.4での撮影は、夜間のイルミネーション撮影においては感度を低く抑えることができて高画質な写真撮影ができた。開放から当たり前のようにシャープな写りなので、心置きなくF1.4を多用して撮影することができる。

レンズ交換をしながら、様々な焦点距離でその個性を活かしながらイルミネーションの多様な一面を切り取った。どのレンズも目立った弱点がないので安心して撮影ができる。レンズの操作性まですべてが統一されており、良い意味で描写に癖がないので、まるで20mm~85mmのF1.4通しズームレンズを使っているかのような感覚だった。

    テキスト
20mm F5.6 SS1/50 ISO200、キヤノン EOS R、RF20mm F1.4 L VCM、広角レンズで遠近感を強調してイルミネーションをダイナミックに表現した
※画像をクリックして拡大
    テキスト
20mm F4 SS1/50 ISO125、キヤノン EOS R6 Mark III、RF20mm F1.4 L VCM、スケールの大きい建造物だが、20mmの広角レンズのおかげでその迫力を余すことなく記録できた
※画像をクリックして拡大
    テキスト
24mm F2.8 SS1/50 ISO400、Canon EOS R、RF24mm F1.4 L VCM、水たまりができていたので広角24mmでルミナリエが鏡映しになるように切り取った
※画像をクリックして拡大
    テキスト
24mm F1.4 SS1/50 ISO100、キヤノン EOS R、RF24mm F1.4 L VCM、光のトンネルの入り口から終点まで。開放F1.4でもシャープに描写できていることに驚いた
※画像をクリックして拡大
    テキスト
35mm F1.4 SS1/50 ISO100、キヤノン EOS R、RF35mm F1.4 L VCM、35mmは人間の視野に近いので自然な印象で写真に記録できる
※画像をクリックして拡大
    テキスト
35mm F1.4 SS1/50 ISO800、キヤノン EOS R6 Mark III、RF35mm F1.4 L VCM、標準的でありながらもやや広めの画角なので、前景と後景をバランスよく収めることができてとても扱いやすい
※画像をクリックして拡大
    テキスト
50mm F2.8 SS1/50 ISO100、キヤノン EOS R、RF50mm F1.4 L VCM、50mmは扱いやすい画角でありながら、視点をどこかに誘導するのに効果的だ
※画像をクリックして拡大
    テキスト
50mm F1.4 SS1/50 ISO100、キヤノン EOS R6 Mark III、RF50mm F1.4 L VCM、巨大なイルミネーションを前にすると広角レンズに頼りがちになるが、50mmレンズを用いるとほどよく距離感を圧縮して記録できて表現の幅が広がる
※画像をクリックして拡大
    テキスト
85mm F1.4 SS1/60 ISO125、キヤノン EOS R、RF85mm F1.4 L VCM、85mmを用いて大胆に切り取った表現を試みた。今回はイルミネーションが主役だが、これを背景にポートレートを撮るのにも適しているレンズだ
※画像をクリックして拡大
    テキスト
85mm F1.4 SS1/60 ISO100、Canon EOS R6 Mark III、RF85mm F1.4 L VCM、中望遠の焦点距離は背景ボケも魅力だ。イルミネーションの玉ボケが映えるような構図で撮影した
※画像をクリックして拡大

フォーカス操作にともない画角変動が生じる「フォーカスブリージング」を徹底的に抑制していることも特徴だ。ムービーでピント送りするようなシーンではブリージングによる画角変化が起こると映像の妨げになってしまうが、「RF F1.4 L VCMシリーズ」ならそういった心配は無用だ。

    テキスト
同じ場所でピント位置を変えて撮影。奥と手前、どちらにフォーカスしても画角の変化がほとんどない。ブリージングが抑えられていることでピント位置が動くような映像表現がしやすい
※画像をクリックして拡大

近年のキヤノンレンズの中にはカメラ側の「レンズ光学補正」の設定からブリージング補正を適用できるものがあるが、「RF F1.4 L VCMシリーズ」の場合は光学的にブリージングを抑えているのでそういった機能に頼る必要がない。「レンズ光学補正」内のブリージング補正機能では画角が狭まる副次効果があって使いづらい場面もあったが、そんな懸念からも解放される。

レンズ交換がストレスにならない理由:操作統一とジンバル運用の相性

限られた時間のなかで何度もレンズ交換をするのは不安だったが、「RF F1.4 L VCMシリーズ」はサイズが統一されているおかげでスムーズに機材をセッティングして撮影を円滑に進めることができた。

例えば、ジンバル撮影の際には、レンズ交換にともないバランス調整が必要になる。ところが、外寸は5本すべてがΦ約76.5×99.3mmに揃えられており、質量は85mmを除く4本が500g台に収まっている。このおかげでバランス調整はごく最小限で済む。レンズ交換しても、ジンバルのバランス調整は2か所を数mmほど調整するだけですぐに撮影できるようになった。

従来であれば重さも形状も全く異なるレンズでバランス調整をいちからしなければならなかったことを思うと、VCMレンズではそういった負担が劇的に軽減された。何より、レンズの全長が変わらないため、ジンバルに装着した際の形状が変わらない安心感が大きい。暗い現場で「どこかが干渉するかもしれない」と怯えることなく、ルーチンワークとして素早くリバランスを終えられる。些細なことのようだが、こういった使い勝手の良さが精神的支柱となり、ひいてはそれがクリエイティブに集中することにつながる。

コンパクトなサイズで統一されているのでジンバルとの相性もぴったり。レンズ交換の際の面倒なバランス調整もほとんど必要なく、わずかな微調整で完了する

また、フィルター径が67mmで統一されているのも非常に快適だった。動画撮影ではNDフィルターが必要になる一方で、写真撮影の際にはフィルターを外して撮影したいという場面が珍しくない。また、レンズ交換にともないフィルターも交換するというシーンが数多くある。そういったシーンでも、同じフィルターを使いまわすことができるので混乱することなくセッティングができた。

手がかじかむ冬の夜の撮影現場だったが、フィルターリングを回して付け外しする時間を最小限に収めることができたのは大きなメリットだ。このリズムの良さが、撮影者の集中力を削ぐことなく、次々と新しい構図への挑戦を後押ししてくれる。

67mmサイズのフィルターをすべてのレンズで共用できる。異なるフィルターやステップアップリングを用意する手間と費用が省けるのは大きなアドバンテージだ
今回の撮影では磁気で脱着できるタイプの可変NDフィルターを主に使用した。磁気タイプのフィルターなら、ワンタッチで脱着できるのでフィルター交換も一瞬だ

こういった扱いやすいシステムのおかげで、限られた時間のなか撮影を円滑に進めることができた。特に、EOS R6 Mark IIIは、静止画と動画を同時進行で撮影する今回のスタイルにおいて、VCMシリーズの特性を素直に引き出してくれる良いボディだった。このカメラで映像作品を制作したので参考までにご覧いただきたい。ジンバルを駆使しながら、ルミナリエの光の立体感と、VCMシリーズのブリージングの少なさが伝わるよう構成している。

総評:撮影のリズムを止めない規格統一の「システム」がクリエイティビティを加速させる

「RF F1.4 L VCMシリーズ」の光学性能や機能性は、キヤノンの「Lレンズ」の称号に恥じない素晴らしいものだった。シャープでクリアな描写、開放絞りF1.4の大きく美しいボケ、場面に応じて適切にピントを合わせてくれるオートフォーカス、抑制されたフォーカスブリージング…あらゆる面で優れた性能を誇る。

撮影中は何度もレンズ交換を行ったが、規格が統一されていることによる取り回しの良さは想像以上だった。フォーカスリングやアイリスリングなどの位置、回転の重さ・滑らかさも統一されていてすべてのレンズの操作性が共通している。複数の機材を使い分けるのは撮影者の負担になりがちだが、撮影システムに一貫性があるおかげで扱いに迷いがなく、心理的にも気持ちよく感じた。

優れた描写性能とサイズや操作性の統一。これらが合わさって、キヤノンの「RF F1.4 L VCMシリーズ」は他にない唯一無二の魅力を有している。今回の撮影を通じて、クリエイターの撮影現場での自由度を劇的に高めてくれることを実感した。「RF F1.4 L VCMシリーズ」は、単なるレンズラインナップを超えた、一つの完成された「撮影システム」と言えるのかもしれない。

今回のルミナリエ作例写真・映像まとめ

Luminarie 2026 – Photo Garage – AKIRA ODA


尾田章|プロフィール
カメラのある日常の楽しさを発信する"くらしフォトグラファー"。カメラ機材の使い方、写真の撮り方などをYouTube、運営ブログ「KOBE FINDER」にて"Aki"として初心者にもわかりやすく解説。