Apple社からCreator Studio(以下:CS)が発表された。同社の「ProApp」と呼ばれるものたちや、iWorkなどのソフトをまとめたアプリ群だ。それではその内容を見ていこう。

Creator Studioの概要

10種類のアプリ

図 Creator Studioに含まれるアプリ

Creator StudioはFinal Cut 系、Logic系、Pixelmator Proのクリエイティブ系とiWork系、フリーフォームを含む10種のソフトウェア群だ。ほとんどのアプリがすでに出荷されているもので、一部をすでに使用されている方もいるだろう。そういう方も今回のCSによって、今ある制作能力をさらに押し上げてくれるだろう。

構成

アプリケーションの構成は次のとおりになる。

Final Cut 系
Final Cut Proを中心に囲む、過去より続くビデオ編集に向けたソフトウェア達。Final Cut Pro、Motion、Compressorが含まれる。

Logic系
Logic Proを中心に囲む、過去より続くオーディオ編集に向けたソフトウェア達。Logic Pro、Main Stageが含まれる。

Pixelmator Pro
ラスター(ビットマップ)/ベクターをサポートした静止画作成ソフトウェア。

iWork系
いわゆる「オフィスソフトウェア」。Pages(文書作成)/Numbers(表計算)/Keynote(プレゼンテーションスライドの作成)が含まれる。CSではプレミアムなテンプレートの追加などが行われる。

フリーボード
複数のアカウントから編集/視聴可能な無限キャンバスアプリ。

構成内容表

これまで無償で提供されていたものは引き続き無償で提供されるが、CSでの利用で「+αの性能」となる。

全てが、iPadOS/macOS両方での対応ではないことも気をつけたい。

それでは、オーディオ系は専門外なのでビデオ制作に利用することが多いと思われるFinal Cut系アプリとPixelmator Proを取り上げて見ていきたい。

Final Cut系アプリ

余談ではあるが、実はこのFinal Cut 系のアプリのバンドルは今から20年程前に存在していた。その名は「Final Cut Studio」と言い、Final Cut Pro / Motion (Live Type) / Compressor / Sound Track Pro / DVD Studio Pro / Color / Cinema Tool Kit が含まれていた。これらのことや「Creator Studio」という名称に考え深いものがある。

Final Cut Pro for macOS 12
Version12になったFinal Cut Pro。AIベースの機能が追加され、さらに機能向上ではないが細かい部分のリファインもされ、より使い勝手を上げた。使用できる機能の制限はあるが基本的にIntel Macでも動作する。

ビジュアル検索

図 ビジュアル検索

映像の内容を解析して、検索ワードに該当する内容をリストアップする。例えば、映像中に犬が写っているシーンがあれば「Dog」で検索すればそのシーンがリストアップされる。
※基本的には英語使用環境のみ

文字起こし検索

図 文字起こし検索

文字起こし(※英語使用環境のみ)で作成した内容で映像のシーンを検索する。
※但し基本的には英語使用環境のみ

ビート検出

図 ビート検出

オーディオの内容を解析して、小節/拍での区切り線が表示される。リズムに合わせた編集の手法としては基本の方法だが、容易にこれができるガイドとなる。

Final Cut Pro for macOSは現在のスタイルの「Final Cut Pro X」(2020年から「Final Cut Pro」に変更)から数えて約15年経つが、デビュー当時からのその先進性は現在においても色褪せることはない。誰もが映像を編集できるその使いやすさとそれを目立たず陰で支える基本性能。映像に詳しくないクリエイターでも高品質な映像を作成できるだろう。

Motion 6

MotionもFinal Cut Proと同様に15年以上歴史があるアプリだ。macOSのパフォーマンスを活かし高速に動作する。モーショングラフィックスにおいては、必要十分の機能を持ち、コンポジション作業にも対応する。「知る人ぞ知る隠れた名アプリ」と言えるアプリ。Final Cut Pro向けのタイトルやテンプレートが作成できる。

図 Motion 6(マグネティックマスク)

マグネティックマスク機能

マグネティックマスクはAI機能を利用して、数クリックで映像中のオブジェクトを切り抜く機能だ。前バージョンのFinal Cut Proから搭載された機能だが、今バージョンからMotionでも使用できるようになった。

Compressor 5

Compressorも15年以上続くアプリだ。簡単な操作でmacOSが対応するデータ形式に変換する。バッチ処理/分散レンダリング/ウオッチフォルダなどの機能を装備しており、生産性を向上してくれる。Final Cut Proの書き出しプリセットの作成や、直接Compressorのタスク登録が可能だ。

図 Compressor 5

AIVP(Apple Immersive Video Package)の作成

AIVPの作成機能の追加。簡易プレビュー機能も搭載している。エンコードではMV-HEVC、APACオーディオを作成する(32GB以上のRAMが必要)。

Final Cut Pro for iPad 3

Final Cut Pro for iPadもVer.3となり順当に進化を進めた。macOS版で追加された機能はいずれも追加され、さらに「モンタージュメーカー」という簡易自動編集機能のほか、バックグラウンドタスクや外部モニタ再生など基本機能も追加された。

モンタージュメーカー

図 モンタージュメーカー

モンタージュメーカーは、使用する分の複数のクリップを選択して機能を追加すれば、自動的にハイライト区間を抽出し、BGMを選択すればそのリズムにあった編集を自動的に行う。

外部モニタ再生

図 外部モニタ再生設定

USB-Cポートに接続したモニタ、または「画面ミラーリング」で接続されたデバイスに、ビューアの表示内容が表示できる。

セカンドモニタ表示時の改善

図 iPadでの表示と接続した4Kモニタでの表示

これはApple社からの紹介はないのだが、ステージマネージャーを使っての外部モニタでのアプリFinal Cut Pro for iPadの表示時に、これまではiPad本来のアスペクト比になり、多くの場合、接続したモニタの表示エリアを活かすことができなかった。しかしこのバージョンから活かすことができるようになった。

バックグラウンドタスク

図 バックグラウンドタスク

これはiPadでの映像制作においての大きな課題を解決するものだ。これまでは、プロジェクトのレンダリングや書き出し中はアプリを切り替えると問題があったが、バックグラウンドレンダリングでレンダリング中でも安心して別のタスクができるようになった。

ただし、注意したいのはFinal Cut Pro for iPadが動作するiPadの全てが、バックグラウンドタスクに対応しているわけではない。現に所有のM1 iPad Proではバックグラウンドタスクで動作せず画面には処理が終わるまでFinal Cut Proを開いているよう表示される。iPad A16モデルでも同様にできなかった。

Apple社公式のドキュメントではM3以降を搭載したiPadモデルとなっている。

Final Cut Pro for iPadはこれまでの課題であった、書き出し時のバックグラウンドタスクを手にして生産性を上げた。惜しむ点はver1時から予告があるものの実現されないプラグイン機能だがCSで提供されるプレミアムコンテンツがそれに代用となるのでろう。

Pixelmator Pro 4

元々はPixelmator Proは以前にApple社が買収したPixelmator Team社のソフトウェア。その際からmacOSの特色ある機能を大きく採用し、とても強力なソフトウェアだったが、Apple社の一部になることで、より洗練されてリリースされた。

ラスターとベクターデータの混在

図 Pixelmator Pro

Pixelmator Proはラスターデータ(ビットマップ)とベクターデータが扱える。EPSやSVGなど読み込めるので、指定ロゴを使用時にも良いだろう。

豊富なテンプレート

図 豊富なテンプレート

Pixelmator Proには豊富なテンプレートが用意されている。それらはどれもApple社らしくとてもセンスが良いものでそれだけでも価値を感じるほどだ。そしてそれらの多くはプレイスホルダー(置き換え)が割り当てられているため、簡単に自身の内容に変更できる。

図 プレイスホルダー

macOS/iPadOSそれぞれに用意

図 iPadOSでの画面

CSではmacOS版とiPadOS版が用意されている。機能的にはほぼ同等(書き出しなどに若干の違いなどある)で、ファイルの互換性ももちろんある。UIはそれぞれのOS向けに最適化されている。

iPadをメインにしている筆者にとって嬉しい内容であり、ようやくiPadで常用したい静止画加工アプリがでた。実はiPadで気軽に静止画加工できるアプリは意外と少ない。あっても大袈裟だったり、機能不足であったりと。それに比べPixelmator Proは筆者にちょうど良い。

映像制作においてAdobe社のPhotoshopの存在は大きい。ただ「Photoshopの数%の機能使ってるんだろう?」と思う人が多いのも事実だ。シンプルで必要十分な機能を持ったPixelmator Proはそういった方にもおすすめだ。

まとめ

PRONEWSをご覧になっている方の多くは映像に関心がありFinal Cut Proを中心にCSに関心があるだろう。ただ正直なところ、Final Cut Proがどんなに性能が良くても現在の「出来上がった」映像制作専門業務における使用は厳しいと感じる。ただ、純粋に「映像を制作する」という目的には最高な環境だ。純粋にクリエイティブな作業を望む方に勧める。

サブスクリプション金額はかなり戦略的で、一般なら年間17,800円(2026.2 時点)、学割を使用できる方は年間4,800円という破格の金額で利用できる。ただ、サブスクリプションにおける懸念は、価格の変更が割と起きやすいことだ。特に為替の影響が受けやすい傾向があるのも事実だ。

CSはサブスクリプション形式だが、個々のアプリで過去に単体で発売されたものは引き続き買い切り販売も行われる。しかしその際はCSで得られる特典はない。

これは筆者の希望でもあるが今後、現在iPad版が出ていないアプリのiPad版が追加され、CSはより魅力が増すのではないだろうか。そう言った意味では、Creator Studioの今後の動向が見逃せない。

WRITER PROFILE

高信行秀

高信行秀

ターミガンデザインズ代表。トレーニングや技術解説、マニュアルなどのドキュメント作成など、テクニカルに関しての裏方を務める。