90年代後半より日本の音楽映像シーンを最前線で目撃し続けたライター林 永子(a.k.aスナック永子)が、映像の現場を牽引するプロフェッショナルにインタビューを行う連載企画。

第3回のゲストは撮影監督として活躍する堀越優美氏。16mmフィルムでのCM撮影から最新のデジタル機材、ジンバルワークまで、手法を限定せず表現の最適解を模索し続ける、彼女の映像哲学とキャリアを紐解く。

堀越優美(YUUMI HORIKOSHI)|プロフィール

神奈川県横浜市出身
日本大学芸術学部映画学科卒業。機材レンタル会社CRANKにてフィルム・デジタル機材の整備を担当。その後フリーランスでCM・映画・MVなどの撮影アシスタントとして活動。カメラマン重森豊太郎氏、田中創氏に師事。2022年カメラマンとして独立。

フィルム撮影と現像を自ら行う学生時代

――前回の清水絵里加さんに引き続き、撮影監督として活躍されている堀越優美さんにお越しいただきました。
女性の映像制作者が増加している昨今ですが、撮影監督はまだまだ少ない中で、将来的に撮影の仕事に就きたい若者たちの参考にもなるようなお話を伺っていきたいと思います。早速ですが、普段はどんなお仕事を手掛けていらっしゃいますか?

まず、撮影アシスタント時代は、7割が広告映像でした。2022年に独立した以降は、CM、MV、ドキュメンタリー、ライブハウスでのライブ撮影など、いろいろなジャンルの撮影に携わっています。使用機材も案件によって、Alexa、VENICE、SonyのFXシリーズ、RED、など、ケースバイケースで使い分けています。

――撮影監督を目指した経緯を教えてください。

最初から「撮影監督になりたい」という強い思いがあったわけではないのですが、小さい頃から映画が好きだったので、高校卒業を機に日大芸術学部映画学科に入学しました。そこで撮影録音コースを専攻したのが大きなきっかけです。

当時は、フィルム撮影が授業のベースとしてあり、学内には教員が監修のうえで学生が使えるフィルムの現像所もありました。フィルムで撮影して、外部のラボには出さずに学内で、自分で現像して、プリントする、そんな一連の工程を行える環境があったからこそ、より一層奥深いフィルム撮影の楽しさに気付けたのだと思います。

――大学卒業後の進路は?

機材レンタル会社CRANKで1年間、機材研修生としてアルバイトしました。学生時代は、進路について漠然としていたのですが、「フィルム撮影が楽しい」という強い思いもあり、撮影を仕事にする方向を選択しようかなと。ただ、プロが現場で、どんな機材を使って撮影しているのか、全く知らなかったので、まずは機材会社に入り、学生の時には触れられなかったプロユースの機材について学ぼうと。

当時の撮影機材はフィルムとデジタルが半々、ちょうど乗り替わりのタイミングで、どちらも勉強出来たことが大きな経験でした。機材会社にはプロの撮影部の方も出入りされているので、話を聞いたり、コネクションを作ったり。その後、フリーのアシスタントとして撮影部に参加した流れです。

――とてもビジョンがしっかりしていて、計画的ですね。アシスタント時代は、どんな現場についていらしたのでしょうか。

本当にいろいろなジャンルの、いろいろなチームに、撮影助手としてお世話になりました。最も多かった撮影監督は重森豊太郎さんと田中創さん。お2人が師匠となります。学生時代に培ったフィルム撮影の経験を、どうにかしてプロの現場で活かしたいという思いが強くあったので、主にフィルムを扱う重森組のチーフになれた時には、願いが叶い、やりがいもありました。また、重森さんは打ち合わせなどでの話の組み立て方や進め方がとても上手くて、カメラマンとしてのスタンスの勉強にもなりました。

「堀越さんだからこその16mmフィルム撮影」

――独立した2022年以降のお仕事についても教えてください。

独立当時は、重森さんや田中さんとお仕事されていたプロデューサーの方々からお声がけいただいた仕事が多かったです。特に思い出深いのは芳賀薫さんの演出で、阿部寛さんがご出演されたCoca-Cola「檸檬堂」CM。黒バックのシンプルな撮影でしたが、一連の動きをレールで移動し、さらにズームしながら撮る、独特の緊張感がある現場でした。

※参照 Coca-Cola 檸檬堂 鬼レモン CM 「驚く店主」篇 15秒

――フィルム撮影の案件もありましたか?

サプリメント「すっぽん小町」のローカルCMで、初めて自分でフィルムを回しました。プロデューサーが、チーフ時代にお世話になった方で、「堀越さんだからこそ16mmフィルムで撮影しよう」と提案してくださいました。演出の副島凛さんも16mm撮影の経験はないと仰っていましたが、「やりましょう」と。出演者が子供だったので、長回ししたいところだけれども、フィルムなのでできないという不安要素もありましたが、逆に、制限があるからこそ1カット決め打ちで、緊張感をもって撮影に挑みました。

※参照 すっぽん小町[小町15秒CM]ママのうた 畳んだそばから…篇

――広告映像でも、フィルム撮影にこだわりたい?

機会があれば、積極的にやりたいと思っています。ただ、今は、デジタルも含めたいろいろな手段がある中で、最も有効的で、面白くできる方法論を模索しています。

例えば、秦基博×TOMOO「青葉」のMVは、最初はフィルムでのフィックス撮影を計画していたのですが、実際はデジタルで、当日の雰囲気と流れに合わせて、手持ちで撮ることに。機材はARRI ALEXA MINIにZEISSファーストのレンズの組み合わせを起用しています。フレキシブルな対応となりましたが、結果的にとても撮れ高がよかったです。

※参照 秦 基博×TOMOO「青葉」Music Video

――今、注目している撮影機材があれば教えてください。

DJI Ronin 4Dで撮影を行う堀越氏

最近ではないかもしれませんが、映画「怪物」でも活用されたDJI Ronin 4Dが出た以降は、ジンバルワークのオーダーが増えています。カメラがついていて、レンズを変えるだけで、オートフォーカスも効く。ハイクオリティなカメラ、例えばVENICEを乗せたい時にはRS2を使いますが、ワンオペの現場やフォーカスマンがいない時には、Ronin 4Dを使用します。最近撮った作品例は、リュックと添い寝ごはん「会社員」MV。ジンバルの精度を活かし、ワンオペで機動力高く撮影しています。

※参照 映画「怪物」15秒CM(ストーリー篇)

――広告映像やMV以外の事例についても教えてください。

「ゼンショーグループ」のリクルートムービーを、Canon EOS R5で撮影しました。社員に密着したドキュメンタリーで、ターゲットは就職活動中の学生の方々。お芝居ではないので、その場で被写体に合わせて、なるべく自然な形で、長回しで撮っています。

――これから手掛けたい仕事やジャンルはありますか?

映画は、必ず一度経験したいです。重森さんのアシスタント時代に、関根光才監督の映画「生きてるだけで、愛」で、初めて16mmフィルムの映画に携わらせていただきました。関根監督と重森さんが、現場で話し合いながらカット割りを決めて行く中で、1カットの重みを痛烈に感じました。ラストシーンでは、照明技師の中須岳士さんが、外から打った赤と青のライトで光の演出を作り込まれて、光の大切さについても再認識し、感銘を受けました。

※参照 映画「生きてるだけで、愛」

――最後に、撮影の仕事に就きたい若者にアドバイスをお願いします。

自分が好きな世界に、まずは飛び込んで、いろいろな人とセッションしてみてください。その環境にじっくり関わると、チャンスが生まれる。「継続は力なり」。諦めずにやって行くことが大事だと思います。

WRITER PROFILE

林永子

林永子

映像ライター、コラムニスト、ラジオパーソナリティ。「スナック永子」やMV監督のストリーミングサイト等にて映像カルチャーを支援。