石村孝之|プロフィール
WOWOWエンタテインメント株式会社 エグゼクティブ・ディレクター。
WOWOWのマスターや回線センターのシステム構築に携わったほか、IP回線やFPUを使った映像伝送全般に従事。
2017年より現職に就き、他社向けの配信・伝送運用サービスの立ち上げを手がける。
現在は「LMS(Live Multi Studio)」の技術営業を担当。
自ら現場の最前線に立つことも多く、安定性と低コストを両立させた映像インフラを常に追求している。
はじめに
筆者が所属する会社とTBSテレビが共同展開している映像・音声・制御信号伝送ソフトウェア「LMS(Live Multi Studio)」において、SDI入出力を担うBlackmagic Design社のUltraStudioおよびDeckLinkシリーズは欠かせない必須アイテムとなっている。デバイスの圧倒的な普及率や、開発者向けSDKが公開されておりソフトウェアへ容易に組み込める点が主な採用理由だが、もう一つ決定的な要因となっているのがインターレース映像に対応している点だ。
LMSはUVC(USB Video Class)デバイスからの入力にも対応しているが、そのUVCデバイスの多くは映像がデインターレース処理された上でキャプチャされる。一方でUltraStudioは、インターレースかどうかが判別できるため、それに応じたエンコード処理をすることで元のインターレース信号をそのまま再現したSDIが出力できる。いまだインターレース運用が主流の放送業界において、そのアドバンテージは極めて大きい。
そうした中、2026年7月にBlackmagic Designから新たなUltraStudioシリーズ5機種(UltraStudio Express Recorder 3G、UltraStudio Express Monitor 3G、UltraStudio Mini Replay 12G、UltraStudio Mini Recorder 12G、UltraStudio Mini Monitor 12G)が発売された。今回はその中から、現場での利便性が特に高い「UltraStudio Express Recorder 3G」と「UltraStudio Mini Replay 12G」の2モデルについて実効性をレビューする。
外観と省スペース性
従来モデルの「UltraStudio Recorder 3G」と比較した場合、新登場の「UltraStudio Express Recorder 3G」(およびMonitor 3G)は同等のコンパクトサイズを維持している。また、「UltraStudio Mini Replay 12G」は従来機より一回り大きい筐体サイズとなっているものの、12G-SDIに対応し、かつキャプチャと再生の同時処理を可能にしている点を考慮すれば、非常にコンパクトに抑えられている。
UltraStudioシリーズ共通の大きな強みは、外部電源アダプターを必要としない点にある。Thunderboltバスパワー給電で駆動するため、限られたオペレーションスペースになることが多い配信現場において、配線を大幅に削減しつつ省スペース運用が行えるのは非常に助かるポイントだ。
USB4対応による接続性の向上(Express Recorder 3G)
従来のRecorder 3G(Monitor 3G)ではThunderbolt 3接続が採用されていたが、今回よりUSB4(Thunderbolt 4)接続が採用された。
現時点ではUSB4搭載PCの普及率は発展途上であるが、今後急速な普及が見込まれる。特に現状において「USB3端子はあるがThunderbolt 3には非対応」というPCが多いことから、今後「USB4対応・Thunderbolt非対応」のノートPCが増えると予想され、このスペックにおいても互換性を保って運用できる恩恵は非常に大きい。
1台で入力と出力が同時に利用可能(Mini Replay 12G)
LMSは1台のPCで映像の送信(入力)と受信(出力)を同時に行う双方向伝送に対応している。従来、ノートPC等で同時送信・受信を行う場合は、UltraStudio HD Mini(または4K Mini)を使用するか、PCIe拡張ボックスを用意してDeckLinkカードを装着する必要があった。
これに対し「UltraStudio Mini Replay 12G」は、12G-SDI INへの映像入力と、12G-SDI FILL/KEY OUTからの映像出力を1台で同時に実行できる。コンパクトかつ手頃な導入コストでこれが構築できるようになったことは今後の運用において強力な追い風となる。
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入力SDI信号への自動同期(フレームシンクロナイザーが不要に)
LMSで送信と受信を同時に運用する主なユースケースとして、出先からの中継映像受信と同時に、スタジオからの送り返し映像を送信する運用が挙げられる。
Ref(リファレンス)入力端子を備えたDeckLinkやUltraStudio HD Mini等であれば、外部同期信号を入力してLMSからの出力された映像信号をスタジオ内の映像信号と同期させることが可能だったが、Ref入力を備えない従来の小型UltraStudioでは、厳密な同期を図るためには後段にフレームシンクロナイザーを設置する必要があった。
「UltraStudio Mini Replay 12G」は、入出力を同時に使用している際、入力SDI信号に同期したSDI信号を出力する仕様となっている。これにより、わざわざフレームシンクロナイザーを挟むことなくシステム全体の同期を保てるようになった。
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12G-SDIによる4K伝送への対応(Mini Replay 12G)
LMSの上位プランでは、4K解像度映像の伝送に対応している。
UltraStudio Mini Replay 12Gは、マルチレート対応の12G-SDIを搭載しており、最大2160p60(4K/60p)のキャプチャおよび出力に対応する。手のひらサイズの省スペース機器で4K 60p映像の同時送受信を行える点は、4K中継や高精細配信現場において大きな威力を発揮する。
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アルファチャンネル付き映像のFILL/KEY同時出力
LMSはmacOS同士の伝送時、TouchDesignerプラグイン等から送られたアルファチャンネル付き映像を、インターネット越しに遠隔地へ送ることができる独自の機能を備えている。
LMSアプリ側で出力先デバイスに「UltraStudio Mini Replay 12G」を指定し「Output Fill/Key」を有効にするだけで、アルファチャンネル付き映像からFILL(映像)信号とKEY(アルファ)信号を分離し、独立した2本のSDI端子から同時に出力できる。スイッチャーのダウンストリームキーヤー(DSK)へ直接入力することで、テロップやCGグラフィックの同期送出が非常にスムーズに行える。
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おわりに
今回検証した「UltraStudio Express Recorder 3G」と「UltraStudio Mini Replay 12G」は、従来の小型モデルが持っていた「入力または出力の単機能運用」や「Ref入力非対応による同期の課題」といった制約を見事に解消したデバイスだ。
特に「UltraStudio Mini Replay 12G」は、これまで大型インターフェースやPCIe拡張ボックスを必要としていた「1台での同時送受信」「4K/60p伝送」「アルファチャンネル(FILL/KEY)同時出力」を、手のひらサイズのバスパワー環境で実現しており、LMSのような双方向映像伝送ソリューションの現場運用を大きく進化させるポテンシャルを備えている。
放送業界で不可欠なインターレース対応や厳密な信号同期といった信頼性を担保しつつ、ワンオペ配信や持ち込み機材の軽量・省スペース化を追求したい制作現場にとって、最新のUltraStudioシリーズは非常に心強い選択肢となるはずだ。




