大田徹也|プロフィール
株式会社サウンド・シティ ビジュアルdiv. COLORIST。
永年コンポジターとして活動後、2011年カラリストに転向しCMやMV、映画などを手掛ける。
今回幸運な事に9月22日に発売されたばかりのMac Studio M5 Ultraに触れる機会を得た。
ここ数年ポスプロ各社ではアプリケーションによってはMac Studioのリプレイスが進んでいる。今回発売されたMac Studio M5 Ultraはポスプロ実務に耐えうるのか、過去のMac Studioに比べてどこまで進化したのかをアプリケーションを通して検証していく。
外観は今までのMac Studioに変更はなく非常にコンパクトにまとまっている。
今年3月に行われたMac Pro開発終了の発表は非常にショックだったが、Appleシリコンの進化によるグラフィック性能の向上と、Thunderbolt 5による拡張性を考えると、このコンパクトなサイズで十分なのかもしれない。

背面の拡張性も変化はない、このUSB Type-Aもいずれオミットされる時が来るのだろう。
検証の前にMac Studio M5 Ultra、M3 Ultra、M2 Ultraのスペック一覧を改めて確認しよう。
| M5 Ultra | M3 Ultra | M2 Ultra | |
| 発売日 | 2026年9月22日 | 2025年3月12日 | 2023年6月13日 |
| CPU | 最大36コア(12+24) スーパーコア+高性能コア |
最大32コア(8+24) 高効率コア+高性能コア |
最大24コア(8+16) 高効率コア+高性能コア |
| GPU | 最大80コア | 最大80コア | 最大76コア |
| Neural Engine | 32コア | 32コア | 32コア |
| メモリ帯域幅 | 1.2TB/s | 819GB/s | 800GB/s |
| トランジスタ数 | 非公表 | 1840億 | 1340億 |
| 最大メモリ数 | 256GB(最大512GB) | 512GB | 192GB |
| macOS | Golden Gate 27.0 | Sequoia 15.7 | Sequoia 15.7 |
執筆時点でM5 Ultraの512GBが未発売のため256GBとなってしまっているが、それ以外はすべて上限の構成となっている。macOSに関してはM5 Ultraは最新の27.0、M3 Ultra、M2 Ultraは実務の互換や安定性の関係で15.7となっている。
さて上記スペック表ではGPUがM3 Ultraから最大80コアのまま進化していないように見えるが、実際には80基のGPUそれぞれにNeural AcceleratorというAI処理を高速化する機構がM5 Ultraでは組み込まれている。そしてNeural Engineを含めた4基のチップ(ダイ)を1つの巨大なプロセッサとして統合するマルチダイ(チップレット)となるクアッドダイアーキテクチャ構造によって、ダイ間帯域幅が4.4TB/s以上の高速化を実現し、あたかも1つの巨大なチップのように動作する。
続いて作業速度に直接つながるSSDについても確認しよう。
| M5 Ultra | M3 Ultra | M2 Ultra | |
| WRITE | 16501.5 MB/s | 8937.9 MB/s | 7341.3 MB/s |
| READ | 13047.5 MB/s | 5664.0 MB/s | 5394.5 MB/s |
| SSD型番 | APPLE SSD AP8192Z | APPLE SSD AP4096Z | APPLE SSD AP8192Z |
※Blackmagic Disk Speed Test 5GB計測

今年3月に発売されたMacBook Pro M5 Max搭載SSDのパフォーマンスの時点で期待していたのだが、M5 Ultra搭載SSDはM3 Ultraに対して2倍近い速度が出ている。
Blackmagic Disk Speed Testのメーター限界値が10GB/sのため、走らせた瞬間にメーターを振り切ってしまった。Blackmagicは限界値を見直す時が来たようだ。
ストレージに関しては、Thunderbolt 5の接続速度と冗長性からOWC ThunderBlade X12の導入が現場では増加している印象だ。実測でWRITE 6,063MB/s、READ 5,160MB/sと以前の内蔵SSD並みの速度に加え、96TBや48TBの大容量な選択肢があり非常に需要が高いのだが、このM5 Ultraの内蔵SSD速度を見てしまうと如何にして内蔵SSDを実務運用に展開出来るか模索するほどの魅力がある。
では早速実機を使って検証を始めていく。
検証の流れは、M5 Ultraでプロジェクトを作成し各種検証を行い、その後プロジェクトデータをM3 Ultra、M2 Ultraに読み込み検証を行った。

17ノードの8K書き出しでM3 Ultra比3.08倍。AI処理も大幅に高速化したDaVinci Resolve Studio
グレーディングの分野では圧倒的なシェア率を持つオールインワンソフトウェアのDaVinci Resolve。国内ポスプロのグレーディングルーム拡充に一役買い、現在では導入していないポスプロを見かけないほどに浸透した。私自身もカラリストに転向したきっかけになった思い入れ深いソフトである。
今回撮影素材の中では比較的処理の重い部類の ネイティブRAW RED V-RAPTOR 8K DCI(8192×4320)23.976fpsを主軸に様々な検証を行っていく。
検証条件:8K RED RAWを最高品質でデコードし、ANEとGPUを比較
DaVinci Resolve STUDIO 21.1.0(2026年9月8日リリース)
Color Managementは、ACES2.0に設定、Output TransformでRec.709 BT.1886に変換した。
DaVinci Resolveでは、ネイティブRAWのデコード設定をメーカー毎に調整できる。
REDは、Decode qualityはFull res.premium、Bit depthは16bitの実務と同様の最高品質設定にした。

その他にAI Toolsのfull resolutionチェックボックスとREDのGPU使用をDebayerに設定している。

さらにGPU configurationで、DaVinci Neural EngineをGPU、Apple Neural Engineから選択できるので、ANE(Apple Neural Engine)、GPUそれぞれで計測を行った。

Magic Mask 2:AIマスク処理がM3 Ultra比2.07倍に高速化
他社に先駆けて2020年に搭載されたAIマスクMagic Maskだったが、その後の2024年Final Cut Proがより使いやすいマグネティックマスクを発表、負けじと翌2025年DaVinci Resolveに搭載されたのが、今回のMagic Mask 2だ。そして同2025年Premiere Proにオブジェクトマスク搭載とまさにAIマスクの群雄割拠となっている。


Magic Mask 2の結果は、ANEでM2 Ultra→M3 Ultra 128%、M3 Ultra→M5 Ultra 207%、M2 Ultra→M5 Ultra 264%と出だしからM5 Ultraのパフォーマンスをまざまざと見せつけられる結果となった。ANEとGPUの差についてMagic Mask 2では明確な差は出なかった。
ResolveFX Relight:GPU処理が2倍に向上。UHDで24fps再生を達成
DaVinci Neural Engineで3D深度マップの生成を行い、映像の深度やサーフェスマップを自動解析し、撮影後に人工的な光源調整ができる便利なプラグインだが、非常に処理が重いことでも有名だ。
今回の検証でもRED RAW 8K DCIの素材を8K DCIタイムラインでは現実的な結果が出なかったので、素材をUHD(3840×2160)のProRes 4444 XQに変換し、タイムラインもUHDまで落とした上で検証を行った。

ノードは、01 分配用ノード、02 Relight サーフェスマップを作成、03 Relightで光源調整を行い、04で全体のグレーディングをしている。
Resolve FX Relightはリアルタイム処理になるので、検証は再生フレームレートで比較を行った。

素材やタイムラインをUHD(3840×2160)まで落としたのもあるが、M5 Ultraでギリギリ24fps再生できた。GPUでM2 Ultra→M3 Ultra 120%、M3 Ultra→M5 Ultra 200%、M2 Ultra→M5 Ultra 240%とM5 Ultraのパフォーマンスの高さが明確となった。しかし実務ではノードはさらに多くなるのでリアルタイム再生はまだ難しいのかもしれない。
今回の検証ではANE(Apple Neural Engine)を可視化する目的として、mactopによるモニタリングも行った。しかしApple公式APIにはANEの直接的なデータが存在しないため、mactopのANEの項目は消費電力から推察する擬似計算による表示だという点だけは注意しておきたい。
ANE稼働状況はM3 Ultraに比べM5 Ultraはより効率的に稼働しているのが見て取れる。これがM3 Ultraに対しM5 Ultraの156%高速化につながった。
しかしGPUを含めてみると、M5 UltraのGPU処理は200%高速化しており、ANE以上にGPUの効率化がすごい。これは先述のNeural Acceleratorや、クアッドダイ設計による恩恵なのだろう。
Face Age Transformer:処理速度は2.29倍、それでもリアルタイム再生には届かず
AIパフォーマンスの最後としてDaVinci Resolve 21に搭載されたばかりのFace Age Transformerで検証を行った。Face Age Transformerは、DaVinci Neural Engineにより映像内の人物の顔を認識し、スライダー調整するだけでリアルタイムに若返らせたり、年老いた見た目に変化させる驚異的なツールだ。
今回も処理を優先しUHD(3840×2160)ProRes 4444 XQを使用し、UHDのタイムラインで検証した。

M5 Ultraでもリアルタイム再生は無理だったが、GPUでM2 Ultra→M3 Ultra 117%、M3 Ultra→M5 Ultra 229%、M2 Ultra→M5 Ultra 267%と、こちらもM3 Ultra世代までとM5 Ultraでは圧倒的な性能を発揮した。
8K RED RAW書き出し:M3 Ultra比1.56倍。デベイヤー処理の負荷が課題
素材を再びREDネイティブRAWに戻し、撮影素材と同じ8K DCI(8192×4320)23.976pのタイムラインで4分の編集を行い、各カット3ノードのシンプルなグレーディングを行った。出力は8K DCIのままと、タイムラインをUHD(3840×2160)にダウンサイズした2種類を各タイムラインの解像度でProRes 4444 XQで出力した。


結果は8K DCIで、M2 Ultra→M3 Ultra 118%、M3 Ultra→M5 Ultra 156%、M2 Ultra→M5 Ultra 183%とこちらも今まで同様M5 Ultraのパフォーマンスが明確となった。
UHD(3840×2160)でも、M2 Ultra→M3 Ultra 112%、M3 Ultra→M5 Ultra 165%、M2 Ultra→M5 Ultra 185%と8K DCIと似た傾向だ。しかしUHDは面積比で1/4程度なのにレンダリング時間は1割程度しか減らなかった。
コアはM5 Ultra、M3 Ultra共に似た挙動となっている。同じ100%でも根本の処理能力が違うのだろう。またCPU稼働も50%程度と8K RAWデベイヤー処理が負担となっている。
8K ProRes書き出し:M3 Ultra比1.58倍。RAWとの差も明らかに
次はCPU負荷による影響を取るために、8K DCI RED RAWを8K DCI ProRes 4444 XQに変換して、同じ検証を行った。

結果は8K DCIで、M2 Ultra→M3 Ultra 125%、M3 Ultra→M5 Ultra 158%、M2 Ultra→M5 Ultra 197%と8K DCI RED RAWと似た傾向となったが、デベイヤー処理がないことで全体的に150%ほど速度が上昇した。また8K DCIとUHDでレンダリング時間の差が現れ始めた。
コアの稼働もCPU負荷が明確に減っているのがわかる。
実務想定の17ノード処理:M3 Ultra比3.08倍、M2 Ultra比3.45倍を記録
最後に実務想定のノードで検証した。素材は②と同様に8K DCI ProRes 4444 XQ。トラッキングやWINDOWなどの16ノードと、処理が重めなResolveFX Film Look Creatorを組み合わせた合計17ノードで出力した。


これはパフォーマンスに顕著な差が出た。8K DCIで、M2 Ultra→M3 Ultra 112%と変わらないが、M3 Ultra→M5 Ultra 308%、M2 Ultra→M5 Ultra 345%と処理性能の差が今までで一番出る形となった。また8K DCIとUHDで350%程度とおよそ面積比の影響が色濃く出る結果となった。
OpenEXR再生:SSD読み出し13GB/sでも4ストリームが限界
DaVinci Resolveの検証の最後に先述の内蔵SSDのパフォーマンスを試してみた。 素材はリニアフローではメジャーなOpenEXR 32bit float PIZ、UHD(3840×2160) 23.976p、シーケンスも同様にUHD(3840×2160)23.976pとした。
UHD OpenEXRが1Fで86MB、秒間で2GB/s程度となる。内蔵SSDのリードが13GB/sなので理論上6ストリーム再生できるスペックだが実際はどうだろうか。さらに先ほど同様に実務グレーディング17ノード構成それぞれで検証した。
これは予想に反し4ストリームがリアルタイム再生の限界となってしまった。
ディスクの読み込みは7.7GB/sとまだまだ余裕なのだが、5ストリームの時点でCPUが限界を超えコマ落ちとなった。
こちらも残念ながら2ストリームがリアルタイム再生の限界だった。
ディスクの読み込みやCPUも4ストリームの半分程度の負荷だが、GPUが限界に近く、3ストリームの時点でコマ落ちとなった。
高速な内蔵SSDの速さだけではままならない結果となってしまった。
8K書き出しは約1.3倍、AIマスクは約1.2倍。Final Cut Proの進化は堅実
次いでApple内製ソフトであるFinal Cut Proだ。
ノンリニア動画編集ソフトで一時代を築いたFinal Cut Pro、近年はAIの導入や、サブスクへの転向など中々に目まぐるしい。
やはりApple内製ソフトなのでMac Studioに搭載されたProResビデオデコード/エンコードアクセラレータや、Final Cut Proに最適化されたGPU(Metal API)の割り当てがどのような結果となるか非常に興味がある。
今回も処理の重い部類であるネイティブRAW、RED V-RAPTOR 8K DCI (8192×4320)23.976fpsを使ってパフォーマンス検証を行った。
検証条件:8K RED RAWを使用。新旧Macで異なるアプリバージョン
- M5 Ultra
Final Cut Pro 12.4 (2026年9月30日リリース) ※要macOS Golden Gate 27 - M3 Ultra、M2 Ultra
Final Cut Pro 12.3 (2026年6月30日リリース)
このFinal Cut Proの検証のみ複数のバージョンに跨ってしまった事を謝りたい。 M3 Ultra、M2 Ultraは実務で現役使用しており、macOSをGolden Gateにはできなかった。
マグネティックマスク:AI解析は約1.2倍。期待ほどの差は生まれず
このマグネティックマスクの恩恵を受けたコンポジッターは多いのではないだろうか、以前の職場でもAIマスクのためだけにFinal Cut Proを導入し、AIマスクの選択肢の一つとして活躍していた。

撮影素材と同じ8K DCI(8192×4320)23.976p 11秒のアナライズを行った。
M5 Ultra環境でも流石にリアルタイムのアナライズは無理なようだ。

結果としては、M2 Ultra→M3 Ultra 117%、M3 Ultra→M5 Ultra 120%、M2 Ultra→M5 Ultra 140%と順当な結果となったが、Apple Neural Engineを強化したM5 Ultraには圧倒的な結果を期待していただけに拍子抜け感は否めない。
しかしANE使用率はM5 Ultraになり効率的に稼働し、GPUへの負荷軽減が見て取れる。
この後タイムラインをUHD(3840×2160)に落とし数度計測を行ったが全て8K DCIと同じとなった。タイムラインではなく素材の解像度に依存しているようだ。
8K書き出し:M3 Ultra比1.31倍。UHD出力との差はわずか6秒
撮影素材と同じ8K DCI(8192×4320)23.976pのプロジェクトで4分の編集を行い、各カットはシンプルなカラー調整を行った。
出力は8K DCIと、UHD(3840×2160)のProRes 4444 XQ、Compressorは使わずFinal Cut Proの共有メニューからの出力を使用した。


結果としては、8KでM2 Ultra→M3 Ultra 117%、M3 Ultra→M5 Ultra 131%、M2 Ultra→M5 Ultra 153%こちらも順当にパフォーマンスを上げる結果となった。 そして興味深いのは、UHD(3840×2160)の書き出し結果だ。この傾向はM2 Ultraの頃からのようだが、面積比で4倍以上あるのにM5 Ultraでは6秒差と誤差のレベルに近い。
M5 Ultraのコア稼働状況をみても、8K DCIとUHDでCPUとGPU使用率にわずかな違いはあれど非常に似た挙動となっている。
面積比で書き込み速度は4倍の差がついているが、書き込み15GB/sのパフォーマンスを持つSSDには誤差のレベルだろう。そして当然ではあるがANEは全く稼働していない。
GPUの張り付きから見てここが限界なのだろう。
AIマスク処理が1.5倍に高速化。Premiere Proの8K書き出しには最適化の余地
次いで全世界シェアNo.1と言って過言ではないAdobeのPremiere Proだ。 ポスプロ業界においてもAvid Media ComposerやFinal Cut Proの牙城を崩しただけでなく、オフラインとオンラインという垣根をなくしPremiere Proでそのまま完パケるのが当たり前になって久しい。公式のAI機能の取り入れにも目を見張るものがある。
他のアプリケーション同様にREDネイティブRAW、RED V-RAPTOR 8K DCI(8192×4320) 23.976fpsを使ってパフォーマンス検証を行った。
検証条件:Premiere Pro 26.5.2で8K RED RAWを検証
Adobe Premiere Pro 26.5.2 (2026年9月リリース)
オブジェクトマスク:AI解析がM3 Ultra比1.5倍、M2 Ultra比2.43倍に高速化
個人的な話になってしまうのだが、DaVinci ResolveのMagic Mask 2で良い結果が得られない時に真っ先に頼るのがPremiere Proのオブジェクトマスクだ。選択エリアをドローイングで指定できるので細かいパーツの足し引きなどで非常に助かっている。
検証は撮影素材と同じ8K DCI(8192×4320)23.976p 11秒のアナライズで行った。


結果としては、M2 Ultra→M3 Ultra 160%、M3 Ultra→M5 Ultra 150%、M2 Ultra→M5 Ultra 243%と、M5 Ultraではリアルタイムに近いなかなか好感触な結果だ。
他と同様にタイムラインをUHD(3840×2160)に落とし検証を行ったが8K DCIと同じとなった。Premiere Proでも素材の解像度による影響が大きいのが見て取れる。
コアの稼働状況にも大きな変化がある。M5 UltraになりANEが効率的に稼働するのと同時にGPUも高負荷で動いている。
このANEとGPUの並行高負荷処理を可能にしたことで、M2 Ultra比較で2.5倍近い処理スピードにつながっている。
8K書き出し:M3 Ultra比1.45倍。GPU稼働率から見えた最適化の余地
こちらも撮影素材と同じ8K DCI(8192×4320)23.976pのプロジェクトで4分の編集を行い、各カットはLUTの適用と、Lumetriカラーによる調整を行った。
出力は8K DCIと、UHD(3840×2160)のProRes 4444 XQ、Media Encoderには送らずPremiere Proから直接出力を行った。
結果としては、8KでM2 Ultra→M3 Ultra 103%、M3 Ultra→M5 Ultra 145%、M2 Ultra→M5 Ultra 150%と、M5 Ultraによるパフォーマンスの違いが明確となる結果となった。

UHD(3840×2160)の書き出し結果でも、M3 Ultra比較で153%と8Kに近い比率で挙動している。また他のアプリケーションと違い面積の影響が顕著に出ている。
1点筆者の環境によるものなのか、なぜかUHDに関してのみ何度計測してもM2 Ultraの方が3%程度早い結果となった。
さらにコアの稼働状況にも他のアプリケーションとは大きな変化がある。すべての筐体で8K DCIの出力においてはGPUは使い切っておらず、M5 Ultraで70%前後、M3 Ultra、M2 Ultraで60%前後しか稼働していない。ディスクの書き込みはM5 Ultraで1GB/s、M3 Ultraで743MB/sとレンダリング結果に近いアベレージで、ディスクの書き込みにもまだまだ余力がある。
だがこれがUHDになると全ての筐体でGPU稼働率が常に100%となった。
ディスクの書き込みを見ても、M5 Ultraで615MB/s、M3 Ultraで407MB/sとこれもレンダリング結果に近い結果で当然まだまだ余裕である。
8K DCIの出力に関してはGPUの余力を残しているというより、最適化に向けてまだまだ改善の余地を感じた。
非圧縮UHDのエフェクト処理が約1.4倍。Autodesk Flameで見えた進化と限界
一般的には知名度は低いが、ポスプロのハイエンドVFXフィニッシングソフトウェアとして、30年近くトップに君臨し続けているAutodesk Flame。私自身もカラリストに転向するまで長く愛用していた。当時のOnyx 3000なんて2mを超える巨大な筐体で動いていたものが20cm角のMac Studioで動いているのがいまだに信じられない。
Flameは他のアプリケーションと違い取り込んだメディアを内部で非圧縮に変換して動作するため、非圧縮 UHD(3840×2160)23.976fpsを使ってパフォーマンス検証を行った。
検証条件:Flame 2025.2.7で非圧縮UHD素材を使用
Autodesk Flame 2025.2.7(2026年6月10日 リリース)
※すでに次期Flame 2026、Flame 2027がリリースされているが業界で主流となっているバージョンで検証を行った。
エフェクト処理:M3 Ultra比1.44倍。一方、ProRes出力では差がつかず
UHD(3840×2160)23.976p 30秒のクリップに、OpenFX Sapphire "S_FilmEffect"を適用してレンダリングを行った。ただし他のアプリケーションとは構造が異なり素材もレンダリング結果も全て非圧縮ファイルとなる。

結果は、M2 Ultra→M3 Ultra 117%、M3 Ultra→M5 Ultra 144%、M2 Ultra→M5 Ultra 168%と他のアプリケーション同様にM5 Ultraは確かなパフォーマンスを発揮した。
念のために他のアプリケーションに合わせてUHD(3840×2160)ProRes 4444 XQのローカルディスクへの出力を行った。しかし非圧縮ファイルからProRes 4444 XQ変換のみ行っているためかM3 Ultra、M5 Ultraで差が全く出なかった。

またこれは体感的なもので数値化するのは難しいのだが、Mac版特有の操作のレスポンス改善が感じられたことも重要なポイントの一つだろう。
画像生成は約2.4倍、動画生成は3倍。ComfyUIで見せたAI性能と発熱
最後にAI処理に特化したM5 Ultraに期待を込めてComfyUIを使ってローカルAI生成を行った。ローカル生成の魅力は、クラウドサービスのようなクレジットコストの問題がなく、機密漏洩のない生成が無制限に行える利点がある。またComfyUIはノードベースなので制御と再現性が高く細かい修正に向いている。
静止画生成:Z-Image-TurboでM3 Ultra比2.42倍の処理速度を記録
Z-Image-TurboはAlibabaの研究チームが開発した軽量でフォトリアルに特化した画像生成AIモデルだ。
今回のノード構成はプリセットを基準に、英文で150〜250文字のプロンプトで生成を行った。

結果は、M3 Ultra→M5 Ultra 242%と、M5 Ultra環境では処理の速さから、プロンプトの調整とseed変更を行い時間を忘れて生成に没頭してしまった。
非常に申し訳ないのだがComfyUIについての検証は、M5 UltraとM3 Ultraのみとなってしまった。このことは後述する動画生成で説明させていただく。
コアの稼働に関しては、GPUが100%とメモリの使用量が46GB程度とM5 Ultra、M3 Ultra共に似た挙動となった。残念ながらANEに対応していないのか全く動いていない。
動画生成:M3 Ultra比3倍に高速化。一方、GPU温度は85℃前後に到達
MiniMax H3は、中国のAI企業"MiniMax"が今年2026年7月末に発表した音声同期型のオムニモーダル動画生成AIモデル(Hailuo 3.0)だ。テキスト、画像、動画、音声を統合的に理解し、高品質な動画を一度の生成で行えるのが特徴だ。
今回もノード構成はプリセットを元にした。別途生成した静止画と700文字前後のプロンプトで生成を行った。
しかし何度かエラーが出てしまい、ClaudeにエラーメッセージとJSON(JavaScript Object Notation)を読み込ませ、何度か修正を行うこととなった。AI生成の修正をAIに行わせている時は、何とも言えない気持ちとなった。

最終的な生成サイズは一般的な864×480 24fps 5秒で行った。
レンダリングを押した直後に驚いたのが、今までどんな負荷をかけても静かだったMac Studioのファンが爆音で回り始めた。本体をスタジオのデスクに設置していたのだがレンダリングの7分間ずっと爆音でファンが回り続け、GPUは85°C前後となかなかの温度になった。
そしてマシンルームで適切な温度管理をしている実務用M3 Ultraも同様にファンが回り始め、マシンルーム内でも75°C前後で推移しそれが20分間続いた時はちょっと心配になった。幸いMac Studioは冷めやすいのだが、検証のために同条件で3回程度レンダリングを行い続けた結果、M3 Ultraより悪条件となるM2 Ultraの検証を見送らせていただいた理由だ。

結果は、M3 Ultra→M5 Ultra 300%と、静止画生成同様にM5 Ultraのパフォーマンスが明確となった。
コアの稼働に関しては、GPUが100%とメモリの使用量が90〜100GB程度とM5 Ultra、M3 Ultra共に似た挙動となった。こちらもANEに対応していないのか全く動いていない。
発熱の不安はあるもののM5 Ultraでここまでのパフォーマンス改善は中々魅力的だ。
しかし現時点でのメモリの使用量を考えると最低でも256GBは必須となるだろう。
読み出し13GB/sでもOpenEXRは4ストリームが限界。最高峰Macにも残るボトルネック
Mac Studio M5 Ultraは、クアッドダイアーキテクチャによる圧倒的なダイ間帯域幅や、15GB/sを超える超高速な内蔵SSDを備え、ポストプロダクションの現場において次世代のスタンダードとなり得る極めて高いポテンシャルを持っていると言える。
DaVinci Resolveにおける8K RAW処理や各種AI機能や、Final Cut ProやPremiere Proなど、M3 Ultra世代を大きく凌駕する処理性能が実証されたと言える。
従来ボトルネックとなっていた重いAI演算やレンダリング時間も、GPUやANE(Apple Neural Engine)の協調処理により、劇的に短縮されている。
しかし一方では、OpenEXRマルチストリーム処理等では依然としてCPUやGPUの限界に達する場面も見られるが、それらの制約を差し引いても、今後のポスプロ実務の効率化と高度化においてM5 Ultra導入の有用性は疑う余地がないだろう。
M2 Ultra比で最大3.45倍の性能。Mac Studio M5 Ultraはポスプロの次期主力となるか

Mac Studio M5 Ultraは、発売から3年以上経過しているMac Studio M2 Ultraユーザーは間違いなく更新すべきだろう。そして発売から1年半しか経過していないがMac Studio M3 Ultraユーザーも検討に値するパフォーマンスを発揮した。
メモリ構成も一般的な4K/8Kポスプロ実務においては、256GBあれば十分すぎるほどのヘッドルームが確保でき、コストパフォーマンスと将来的な拡張性のバランスが最も優れていると言えるだろう。しかし8K/12K超高解像度コンポジット作業や、大規模ローカルAIモデル(LLMや画像・動画生成AI)を扱う場合は、512GBモデルを選択するべきだろう。
そして高速な内蔵SSDも作業の快適さを考えるなら増設しておきたいのが正直な感想だ。
メモリやSSDが非常に高騰している時期だが購入後の増設ができないので、是非今回の検証を参考に慎重に検討してほしい。